スターダストアストレイズ - アズミ - 2013/09/28(Sat) 00:14:41 [No.563] |
└ アウトオブスタンダード・1 - アズミ - 2013/09/29(Sun) 23:08:22 [No.566] |
└ アウトオブスタンダード・2 - アズミ - 2013/09/30(Mon) 01:15:12 [No.567] |
└ アウトオブスタンダード・3 - アズミ - 2013/09/30(Mon) 20:42:55 [No.568] |
GAT-X103バスターは二挺の長大な火砲を背負うその姿からわかるように、遠距離からの支援砲撃を目的としたMSである。 原型機の開発されたC.E.70年当時はコスト度外視の高性能機であったが、2年が経過した現在その性能はもはや最新鋭のMSに伍するものではない。またバスターを始めとする前期GAT-Xシリーズ……通称G兵器は初めてMSを開発・運用する連合の概念実証機としての側面があり、単機あたりはやや汎用性に欠ける側面がある。 バスターであれば携行火器や白兵戦用装備……それこそビームサーベルさえ装備しておらず、格の劣る機体であっても至近距離まで踏み込めば十分押さえられる可能性がある。 ……はずだったが。 「ほう……」 劔のバスターは、戦端が開かれるや否やビームガンを乱射しながら劾のブルーフレーム目掛けて突進した。 初手から定石を外した奇襲。PS装甲(厳密にはVPS装甲)の防御力に飽かせて強引に間合いを詰め、虚を突く算段か。 しかし劾も然る者、訝りながらも機体を傾け、タクティカルアームズの陰に入れる。 このブルーフレームの半身を覆うほど長大な刃はビームの熱量を拡散、減殺するラミネート装甲製であり、艦砲並の大型砲ならともかく、MSの携行火器程度のビーム兵器が相手ならば十二分に盾として機能する。 刀身の向こうでビームが弾けるのを尻目に、劾はガトリングのトリガーを引き絞った。 タクティカルアームズの中央にマウントされたこの90mmガトリング砲は4つの砲身のうち2つがビーム砲になっており、実体弾とビームを交互に発射することが出来る。このため、PS装甲やラミネート装甲など特殊な防御手段にも押し並べて一定の有効性を確保しているのだ。 いかにVPS装甲に身を包むとはいえ、直撃すればバスターとて耐えられはしない……はずだった。 しかし。 『おぉ……』 バスターが前方に倒れこむように……否、実際に倒れこんで弾幕を回避する。 バスターはその砲戦MSの多分に漏れず鈍重な機体である(でなければ、実体火器のリコイルに負けてしまう)。推力も高いとは言えず、いざ敵機と正対すればPS装甲の耐久力に任せて足を止めた撃ち合いに徹するほか無い。そもそも避ける戦い方をする機体ではないのだ。 そのまま転倒する敵機を撃ち抜かんと、ブルーが銃口を向ける。 『ぉぉおお』 だが、その瞬間、バスターが手放したレールガンがあらぬ方向……倒れこもうとする地面に向けて火を噴いた。反動で上半身が跳ね上がり、さらにレールガンを後方に向けて発射。空いた右手を地に突いて、前方に向かって掻き出す。 『ォォォォオオオオオッ!!』 咆哮。メインスラスターが焼け付かんばかりに輝きを放ち、弾丸の如くバスターがブルーに向けて加速する。 先刻ブルーが行った肩部サブスラスターを用いた回避運動を、レールガンのリコイルで乱暴に真似たマニューバーだった。 あれでは補助アームが保つまい――実際、骨折した腕のようにぷらぷらと頼りなく動いている。だが、その損傷に見合う効果はあった。 バスターは既にブルーの目前、タクティカルアームズを剣に変形させている余裕はないし、そもそも長大に過ぎるため密着するほどの距離では使えない。 そうした間合いの為の武器としてアーマーシュナイダーを装備していたわけだが……ここまでに腰の2本とも喪失してしまっている! 「ぐっ!?」 バスターにタックルを食らう形で、2機がもつれあって転倒する。 強かシートに押し付けられて、肺から空気が搾り出された。 『終わりだ、傭兵!』 バスターがどこに隠し持っていたのか、ビームサーベルを振り上げている。前述した通り基本装備ではない、ダガー系が使うES01ビームサーベルだ。端からこれを狙って接近戦を仕掛けたか。 「だが、甘いッ!」 ブルーが身を起こし、馬乗りになったバスターの体勢を崩す。同時に反動で足を振り上げ、爪先でビームサーベルを保持した腕の肘を蹴りつけ――…… その関節、非装甲部を“貫き壊し”た。 『アーマーシュナイダー……そんなところに!?』 そう。ブルーフレームは劾が最も得意とする武器であるアーマーシュナイダーを、両腰に2本、両爪先に2本の計4本装備している。 両爪先の2本は単なる予備ではなく立膝や登攀時のハーケンとしても機能するのだが、今回のように暗器としての役に立つ場面もある。 劾はすかさずブルーフレームの身を捻って起こし、伸び上がるような回し蹴りをバスターに放った。 『うおおっ!? こっ、のォ……』 それでも、即座にオートバランサーを起動させ着地して見せた劔は実際、いい腕をしていた。 すかさず砲を連結し、対装甲散弾砲を用意したこともだ。 『くらえぇーっ!』 発射された散弾が弾幕の壁となってブルーフレームを押し潰さんと迫る。本来、遠距離から広域制圧に使われるモードだ。連結の隙さえ凌げれば、人間の使用する散弾銃と同じく近〜中距離でも圧倒的な制圧力を発揮する。 「……相手に飛行能力が無ければ、な」 基地に来た当初のように、タクティカルアームズが翼のような形状に変形しバックパックにマウントされる。 ブルーフレームが地を蹴り、18mの巨体が弾幕を飛び越えて宙に踊った。 『飛んだ!?』 右側補助アームが機能していない今、バスターはその長大な砲身を片手と片側の補助アームだけで保持している。加えて元より連射に向く銃器ではない。迎撃もままならぬまま、バスターが再び大剣に変形したタクティカルアームズを構え、落下するブルーフレームを呆然と見上げている。 轟音、衝撃。 分割されたままの切っ先でバスターの腰を挟んだまま地に縫い止め、ブルーフレームが立ち上がる。 「俺の勝ちだ、水郷劔」 劾の勝利宣言を肯定するように、バスターのVPS装甲が色を失い、機能を停止した。 [No.568] 2013/09/30(Mon) 20:42:55 |