こてふぁて/えくすとら - アズミ - 2014/01/16(Thu) 14:49:33 [No.579] |
└ 世界観(Fate/EXTRAより) - アズミ - 2014/01/16(Thu) 15:33:09 [No.580] |
└ キャスタールート予選1(マスター) - アズミ - 2014/01/16(Thu) 16:03:51 [No.581] |
└ キャスタールート予選2(サーヴァント) - アズミ - 2014/01/16(Thu) 17:41:09 [No.582] |
└ キャスタールート一回戦1(マスター) - アズミ - 2014/01/17(Fri) 17:19:24 [No.583] |
└ キャスタールート一回戦2(マイルーム) - アズミ - 2014/01/17(Fri) 18:08:34 [No.584] |
└ セイバールート一回戦3(サーヴァント) - アズミ - 2014/01/17(Fri) 23:07:26 [No.585] |
└ セイバールート一回戦終了 - アズミ - 2014/01/18(Sat) 00:44:05 [No.586] |
●EVENT● 決戦場に再び仕切りが走り、防壁の向こうが朱に染まる。 勝敗は決した。 処理の怪物(ムーンセル)は己が内部に不要なデータの存在を許さない。敗者は速やかに解体され、電子の海へ消える。 「……勝てなかった、か」 黒ずんだ泥のようなプログラムに覆われながら、ケイジはしかし死の苦痛と恐怖にさえ取り乱すことなく、その場に立ち続けた。 「お前は――憎くないのか?」 ケイジは、問うた。 そうだ。ライダーの言う通り、彼は奪い返すことを選んだ。戦いに身を投じた。 救いをその手に求めながら、憎しみを手放すことも出来なかった。 だが、それでいいはずだ。いいのだと、それが出来なかったからこそ思う。 憎むべきを憎めないのは、ただの不自由ではないか。それが、人として正しいはずがない。 だから、ケイジは問うた。 「お前は――憎く、ないのか。 奪われても、壊されても。生きるためならば、生かすためならば、それは仕方ないと思えるのか? それとも、お前にとって――あの国は――」 大事だ。 取るに足らないものなんかじゃ、ない。 生まれた場所、思い出。それを容易く棄てられるほど、かつての自分は幼くはなかった。 だが、大人でもなかったのだ。憎しみを抱くだけの、余裕がなかった。 この胸は悲しみで満杯で。この腕は救いを求め、救いを与えるので一杯で。 だから、諦めたのだ。憎むことを。 彼のような選択肢は、自分にはなかったのだと。 「だから、か」 だから、彼よりほんの少しだけ真っ直ぐでいられた。 こちらが正しかったわけではない。強かったわけではない。 5日目の襲撃で静観すれば、自分は今日この場に立つことさえ出来なかった。 “彼の方が自由であったから”“敗北を選択できた”。ただ、それだけ。 「だからさんざ言ったのによォ」 呆れたようにぼやくライダーに、ケイジは自嘲気味に笑んだ。 「――悪かったな、ライダー。こんなマスターに付き合わせて」 だが、その総身を死に染め上げられながらライダーは頭を振った。 争いを選んだからこそ、この英霊は殺すことも、殺されることも受け入れていた。 だから言ったのだ。愉しめと。 争って、争って。果てにはどうせ惨めな死しかないのなら。それが人のサガであるなら。 せめて、愉しめと。 それがこの英霊がお堅いマスターに見せた、不器用な情誼だった。 「ハ、謝るなよ。俺は別にあれで良かった。 言ったろ? 戦争は名をあげてこそ、名を知らしめてこそ、だ。 漁夫の利なんかじゃあ、ハクがつかねえってもんさ」 あのマスターたちも見ただろう。カスター将軍の疾走を。第七騎兵隊の勇姿を。 ならば、溜飲は下がる。 勝てなかったのは、少し癪ではあるが――。 「悪くはない戦争だったぜ、大将。……カスター少将、先に帰陣させてもらう」 最後に敬礼を交わして――英霊は、一足先に現世から去った。 そして、その主も――…… 「……あの国を、頼む」 万能の願望器に託した、唯一つの願いを託して。 返事を待たず、電子の海に解体され、消えた。 彼だけではない。 64人のマスターが、戦争の名の下に今宵果てる。 これが、戦争。 これが、聖杯戦争の残すものだった。 ◆ 「考えたんだがな」 マイルームに戻ると、セイバーは唐突に口を開いた。 「アスタ、オマエは願いを持つべきだ」 願い? 聖杯に託す願い、ということだろうか。 それならば既にセイバーに語ったはずだが――…… 「“聖杯を他に渡さない”が願いであるものか。 百歩譲ってもそれは西欧財閥とやらの目的であって、オマエの願いではないだろう」 なるほど。言われてみればそういうものかもしれない。 自分が聖杯を得ることはまず無いだろうが…… 「なるほど、オマエの背に守るべきものがあるのは理解した。 だが、それだけではダメだ。前に進まないものは、今以上の強さを得ることはない。いつか世界に押し潰される。 願いを持つ者は、強い。その一点においてライダーのマスターはオマエより強かったといっていい」 それは異論ない。一回戦は危うい戦いだった。 ……なるほど、このままでは次の勝利も覚束ない、ということか。 ようやくセイバーの言わんとしていることに納得ができた。 「いや、そういう実務的な話じゃなくてだな、うーん……」 セイバーは何やら唸っていたが、やがて諦めたように頭を振った。 「まぁ、いい。ともあれ、願いを見つけろ。 見込みはある。オマエはきっと英雄になれる。 己に、オマエの英雄譚を見せてくれ」 ◆ 一回戦終了 残り人数 128→64 [No.586] 2014/01/18(Sat) 00:44:05 |