![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
――貴方と同じ空気が吸いたい。 彼女の最初の我儘はそれだった。 彼女の口は純然たる発声器官で、鼻は完全なイミテーションだ。 僕は彼女にピッタリの肺と気管を求めて夜の街に繰り出した。 後になって考えてみれば、肺が最も入手が難しい部位だったのだが、幸いにして僕には肺を萎ませずに扱う程度の医学の心得と、最初の一つで彼女に適合するものを引き当てた運の強さがあった。 僕は彼女に新鮮な空気をプレゼントし、二人で郊外の丘にピクニックへ行った。 ――貴方のために美味しい食事を作ってあげたいの。 彼女の次の我儘はそれだった。 我儘とは言ったが、同じ物を食べたい、ではなく僕のために食事を作りたい、という彼女のいじらしさに、僕は正直心ときめいていた。 彼女の口は純然たる発声器官で、当然その先には人工声帯以外に何もない。 僕は彼女にピッタリの胃と食道、腸と膵臓、肝臓を求めて夜の街に繰り出した。 今度は少々苦労した。なにせ、数が多いので彼女に適合するものを一揃え用意するのに1週間もかかってしまった。 僕は彼女に新しいキッチンと料理道具を一揃えプレゼントし、彼女の作った料理でディナーを楽しんだ。 「……また、ダメか」 僕は落胆して、手にした無用の肉塊を摘出皿に放りだした。 手早く縫合針を振るい、開腹した彼女の傷を閉じる。気落ちしていても、この作業を怠るわけにはいかない。術式は慎重を期して終わらせた。 「ごめんよ、僕のリリィベル。君の望みを叶えるには、もう少し時間が必要らしい」 目を閉じたままの彼女の頬を、優しく撫ぜる。 麻酔が効いているため応えることはないが、優しい彼女のこと、僕を責めることはまずあるまい。 だが、僕は焦っていた。 彼女が最後の我儘を言ってから、既に2週間が過ぎている。適合する部品は一向に見つからない。 街に繰り出す回数が増えれば、当然、作業にも粗が出始める。 前回は危うく当局に見つかりかけ、うっかり道具を一部、路上に置き忘れてしまった。目をつけられた可能性を考慮し、この3日間は部品探しを自粛せざるを得なかった。 しかし、そろそろ限界だ。 一刻も。一刻も早く、彼女の望みを叶えてあげたい。 この衝動を抑えるのは、もう限界だ。 ――貴方の子供が、産みたいわ。 彼女の最後の我儘をかなえるため、僕は夜の街に繰り出した。 彼女にピッタリの卵巣と子宮を求めて。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ FILE:1 『切り裂きジャックは電気羊の夢を見るか?』 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ [No.6] 2011/04/24(Sun) 12:40:42 |