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No.617へ返信

all 儚くも在る灰色(ぐれい)のセカイ/0 - 咲凪 - 2011/07/28(Thu) 00:29:53 [No.470]
儚くも在る灰色(ぐれい)のセカイ/1 - 咲凪 - 2011/07/28(Thu) 01:01:34 [No.471]
儚くも在る灰色(ぐれい)のセカイ/2 - 咲凪 - 2011/07/28(Thu) 02:16:47 [No.473]
儚くも在る灰色(ぐれい)のセカイ/3 - 咲凪 - 2011/07/28(Thu) 11:08:54 [No.474]
儚くも在る灰色(ぐれい)のセカイ/4 - 咲凪 - 2011/07/31(Sun) 01:26:08 [No.479]
一瞬の虹色、永遠の灰色/1 - アズミ - 2013/07/14(Sun) 21:02:00 [No.551]
廻る祈りの遺灰(くれめいん) - 咲凪 - 2015/01/31(Sat) 02:00:23 [No.617]
一瞬の虹色、永遠の灰色/2 - アズミ - 2015/02/02(Mon) 22:43:47 [No.618]
一瞬の虹色、永遠の灰色/3 - アズミ - 2015/02/06(Fri) 22:12:06 [No.619]


廻る祈りの遺灰(くれめいん) (No.551 への返信) - 咲凪

――私は、灰色になった。

「……なんだぁ、そりゃ」

 高崎の告別式から2日が経った日の夜。
 式には出てくれたものの、あっさりと帰ってしまった理小路の事が気になり、彼女が管理運営をしている掲示板サイト「白夜」を覗いた俺は奇妙な書き込みを見つけた。

「灰色に、なった……ねぇ」

 言葉の意味は判らないが、何か言葉には出来ない不吉めいたものを感じる。
 吉兆や凶兆といった迷信……妖怪の存在が明らかになって以来、かつて迷信と思われてきた“予感”の類はそれまでよりも格段に信用されるファクターとなっている。
 ……が、俺自身が感じているこの胸騒ぎはそこまで大げさなモノではない、吉兆や凶兆を感じ取る能力など俺には無い、こんなものは所謂“気の所為”だ。
 日常のなんでもない場面であれば早々に忘れてしまうような、この些細な気の所為がやけに気に掛かるのは間違いなく、高崎の死が原因だった。
 高崎は気が合うとは言えない性格だったが、一緒にいると不思議と心安らぐ……理屈では無い、友だった。
 その友が死んだ、しかも自殺……俺は正直、悔やんでいる、あいつの事をもうちょっと、あと少しでも、気に掛けていられたら、高崎は死なずに済んだのではないのか?。

 俺は高崎を、死なせないで済んだんじゃあないのか?。

 取り戻せない過去は深い後悔となって、俺の胸の内に渦巻いている……。
 理小路の家を訪れてまで彼女を告別式に連れて行ったのも、この後悔という苦しみがあったからだ。
 今感じている気の所為と断じていいような嫌な感じが頭から離れないのも、きっとその苦しみからだろう、見逃してはいけないような気がした俺は、書き込みの投稿日時を確認した……高崎の告別式の日の書き込みだ。
 スレッドの内容は『私は灰色になった』という一文のみ、他には何もない。
 白夜は……すっかり根も葉もない噂や、くだらない四方山話が書き込まれる程度の、一部の人間・妖怪が世間話をする為のサイトだ、まったく意味の解らないこの書き込みは所謂荒らし行為のようなもので、管理人が削除してもおかしくない……が。
 件の書き込みが放置されているだけではなく、どうやらこの二日間の間……いや、俺が前に部屋を訪ねて以来、管理人である理小路の書き込みは見受けられなかった。

「…………電話にもでねーか」

 不安が大きくなった俺は理小路に電話をかけたが、聞こえて来たのはしばらくの待機音と、留守を知らせる為の録音だけだった。

『ただいまるすにしております、ごようのかたは、ぴーっというはっしんおんのあとに……』
「……録音までひらがなで聞こえらぁ……宮野川だ、用って事は無いんだが、あー……いいや、かけ直す」

 録音にメッセージを残して、理小路にかけ直して貰おうと思ったのだが、自分が電話を掛けた理由を説明するのがどうにも気恥ずかしいというか、バカバカしい気がしてしまった。
 なんだか不安だったから電話をした、なんてメッセージを聞かれてしまうと、後で理小路にからかわれてしまうと思ったからだ。
 だが依然として、むしろ出不精の理小路が、こんな夜に不在だという事実が、俺の不安を一層に掻き立て、俺は一度下ろした電話の受話器をもう一度持ち上げて、電話を掛ける。
 しかし電話を掛ける相手は理小路では無い、本来こんな事を持ち掛けるのは気が引けたが、死んだ高崎を含めて俺達と関わりを持ち、なおかつ、こんな事を相談できそうな相手は“あの人”しか考えられなかった。

「……あ、どうも、宮野川ッス、夜分遅くにすいません、安曇先輩」


【Tips:白夜(びゃくや)】

1999年前半に存在した『妖怪の人間社会での生活を助ける事』を目的とした掲示板サイト。
しかし悪意ある者の荒らし行為が頻発し、とても正常に利用できる状態では無く、1999年5月10日に閉鎖。
便宜上『初代白夜』と呼ばれ、管理者は不明。

1990年6月24日に再開、『2代目白夜』と呼ばれるが、偽2代目サイトであるというのが定説。
世間の注目度は低く、荒らされても居ないが、利用者も少ないといった状況を維持している。
管理者は『理小路・細』、未分類妖怪、新種。

【Tips:未分類妖怪(みぶんるいようかい)】

この世で確認され、名称を与えられた各種妖怪のどれにも属さない妖怪を示す俗語、言葉を変えたUMAのようなモノ。
人間との接触を拒み、独自の生態を維持している『原種』、新たに生まれた新世代の妖怪『新種』の2種類が存在している。
この世に残る怪奇、純然たる畏れ、真なる妖怪、都市伝説、交わらぬ者、第三者、グレーの存在……等と、様々な呼び名がある。
原種は純粋に能力に優れており、新種は特異性が強い事が特徴。


[No.617] 2015/01/31(Sat) 02:00:23

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