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No.620へ返信

all 0096スレ - ジョニー - 2014/07/16(Wed) 22:19:50 [No.590]
宇宙世紀0095.シッガルト紛争 - ジョニー - 2015/02/07(Sat) 13:54:20 [No.620]
シッガルト市鎮圧戦勃発前1 - ジョニー - 2015/04/18(Sat) 14:05:29 [No.622]
シッガルト市鎮圧戦勃発前2 - ジョニー - 2015/05/24(Sun) 20:59:07 [No.623]
[削除] - - 2014/07/17(Thu) 22:36:03 [No.592]
[削除] - - 2014/07/16(Wed) 23:43:07 [No.591]
結局こうなりました( - ジョニー - 2014/07/23(Wed) 23:11:09 [No.593]
ネオジオン残党旧グレミー派閥 - ジョニー - 2014/08/03(Sun) 22:12:42 [No.594]
[削除] - - 2014/08/31(Sun) 22:51:19 [No.599]
ネオジオン残党旧グレミー派閥2 - ジョニー - 2014/08/31(Sun) 23:54:39 [No.600]
連邦軍ベクトラ所属 - ジョニー - 2014/10/04(Sat) 23:01:17 [No.616]


宇宙世紀0095.シッガルト紛争 (No.590 への返信) - ジョニー

宇宙世紀0095.

翌年に起きたラプラスの箱を巡る、ラプラス戦争とも第三次ネオジオン紛争とも呼ばれた争いの影に埋もれる形となった戦いがあった。

ネオジオン残党の一派が月面都市シッガルト市を占拠し、同都市に入港にしていた連邦艦隊を制圧拿捕することで起きた一連の争い。

主にシッガルト事件と呼ばれるこの戦いは後のその扱われ方の軽さに対して、だが、あるいはジオン再興の切っ掛けにもなりえた戦いであった。

無論、ネオジオン残党はその願いも空しく敗れ去った。だからこそ、より大きな戦いとなった翌年の争いの影に隠れ忘れ去られていったのだが………

しかし、この戦いはより大きな戦争に繋がりかねなかったと知る者は、今や殆どいない。それが可能だと知っていた彼らはこの戦いの中で命を散らしていったのだから―――










 ある軍艦の一室で彼は部下からの報告を受けていた。

「そうか、彼らは決起に成功したのか」

「はい。大佐、シッガルト市の恫喝目的で入港した連邦艦隊がエンジンを止めたところを一斉に襲撃して制圧したようです」

 手元の端末に表示された情報を見れば、連邦艦隊は完全に不意を突かれたのか、それでも怠けきっていたのかは不明だが碌な抵抗らしい抵抗も出来ずに制圧されたらしい。
 おまけに提督は接敵した際に真っ先に命乞いをして、言われるままに武装解除に応じてそれを命じたというのだから、報告をしている士官は侮蔑の表情を隠そうともしない。

「ふむ、それで彼らは此方になにか言ってきたかな?」

 尊敬する大佐にそう問われて、士官は屈辱に耐えるように顔を歪めた。

「いいえ。助力は不要とのことです。あのような宙賊紛いのテロリスト共と協力できても、我々とは共闘できないとはっ!」

「落ち着き給え。向こうにも向こうなりの事情があるのだろう」

 思わず激昂して吐き捨て、大佐に宥められて数度深呼吸を行い気を落ち着かせる。

「申し訳ありません、大佐」

「いや、構わんよ。他には?」

「はい。シッガルト市近郊のシッガルト発電基地も制圧に成功したようです」

 シッガルト発電基地は月全体の発電量のおよそ6%を占める大規模発電基地であり、大半がジムUという旧式機ながらもMSの二個中隊を含む相当規模の防衛部隊を有している。
 確かにシッガルト市を拠点とするなら此処の制圧は絶対条件である。喉元といえる位置にMS中隊を含む部隊が存在するのも放置できなければ、それ以前に送電を止められるだけでシッガルト市には致命傷となる。
 故に此処を迅速に制圧できるか否かが決起に於ける最初の問題といえた。
 とはいえ、幾ら数があろうと奇襲によって出撃すらままならぬまま大半の機体が破壊され、出撃できた機体も態勢を整える前にネオジオン残党の高性能MSとそれを駆るベテランパイロットによって性能と技量の差によってあっという間に駆逐されてしまい守備兵力が全滅した事で発電基地は制圧された。


「第一段階は成功したということか。分かった、続報があればまた伝えてくれアンジェロ」

「はっ!」

 腹心の部下が退室し、それを確認してから手元の端末にある情報を映し出す。
 そこに映るのはメイファ・ギルボード。決起したネオジオン残党の幹部の一人と目されている旧ジオン高官の娘。少なくともデータの上ではそうだ。

「出来ればこの手を取って欲しかったが、君が直接立つというのならそれもよかろう。お手並み拝見といこうか」








 連邦軍所属艦、ベクトラの艦長室で艦長であるロウ・シン大佐は機密回線にて通信を行っていた。

「では、シッガルト市の鎮圧にはベクトラが当たるのですね」

『そうなるだろう。最も交戦許可が下りるのは最低でも十日は先だな』

 十日は先。それに不満はあっても疑問を呈することはない。
 ゴップの甥を含む捕虜解放の交渉は既に大筋で話はついていると伝えられたばかりだ。つまりは捕虜の解放は十日後の予定ということだろう。

『当初は解放された捕虜に汚名返上の機会を、という話もあったが反対の声が多く撤回された。代わりにベクトラを中心にした部隊での鎮圧になるが、先の話の撤回と引き換えにそこまで多くの戦力は投入できなくなった。すまない』

「いえ、准将が謝る必要はありません」

 あのお飾り部隊が大部隊を率いるなど悪夢といえる、もしその指揮下に入るとなったら部下を戦死させに行くようなものだ。それに比べればベクトラ以外には1〜2隻の戦力であっても歓迎すべき事態だ。

『………私も手を尽くして戦力を集める』

「なにか、気がかりでも?」

 苦悩するように告げる声に疑問を思える。確かにベクトラの戦力は制限されているが、それでもネオジオン残党の鎮圧には十分な戦力を持っているし、それに他の部隊が加われば任務失敗はまずないはずである。
 それでも足りないと思う何かがあるのだろうか。

『………一年戦争終結後、私はグラナダの引き渡し任務に就いた。そこで基地司令も詳細を知らされていないキリシア・ザビ直轄のエリアの存在を知って調査した』

『そこには7発の核弾頭と相当量の核燃料が秘匿されていた。すべて戦術核だったがうち4発はその威力から分類法によっては戦略核に該当する代物だった』

「まさか……」

 准将の絞り出すような声に、そこまで聞かされればその先を想像するのは容易だった。

『シッガルト発電基地の地下にはグラナダで発見された戦略核クラスの核弾頭4発と核燃料が秘匿されている。本来はグラナダから運び出した後の一時保管場所に過ぎなかったのだが……』

『モノがモノだったので迂闊に移送することができず、U.C.0083、コンペイトウの観艦式に参加した艦隊を護衛にルナツーに移送する手筈になっていた……のだがな』

「ですが、あの観艦式は……」

『うむ、結果として核弾頭の移送どころの話ではなくなり移送計画は白紙に戻された。その後もグリプス戦役、第一次ネオジオン戦争……内乱に紛争と戦争続きで移送時の護衛を確保できずに今の今までシッガルト発電基地に止められ続けた。今回拿捕された艦隊は核弾頭の移送も任務に含まれていたと聞いている』

「バカな!?」

 つまりはあの拿捕された艦隊には核弾頭に資料が確実に存在する。
 そして核弾頭に関する資料のある艦隊と、その核弾頭が存在する発電基地の双方を敵に抑えられたということだ。
 おそらくは厳重に封印されているだろうが、十日もあれば核弾頭を確保するには十分すぎるだろう。

「……ネオジオン残党は、それを知っていたのですか?」

『いや、おそらくは偶然なのだろう。今回の移送計画に関してもシッガルト市が親ジオンに傾いているのを危惧したグループと、あの艦隊に箔を付けたい連中の折り合いの末だったらしい。本来なら前者のグループはあの艦隊に移送任務を任せたくなかったらしいが連中に半ば押し切られたらしい』

 思わず顔を覆って首を振ってしまう。
 本当に碌なことをしない。結果的に奴らはネオジオン残党に艦隊丸ごとと更には核弾頭をプレゼントしたようなものだ。

『核弾頭については極秘情報なので表沙汰にすることは出来ない、許してくれ』

「いえ、事情は……分からなくはありませんから」

 部下に核弾頭の存在を知らせず、しかしその存在を警戒し続けなければならない。
 おまけに仮に核弾頭が使用されずに鎮圧出来たとしても、核弾頭4発すべての所在も確認しなければならない。もし核弾頭を持って逃がしたらそれこそコンペイトウの二の舞いになりかねない。
 准将が苦悩するはずである。

「とにかく、全力で任務に当たります」

『……うむ、健闘を期待する』

 モニタに移った准将と敬礼を交し合い、その画面が消えると同時にデスクに思い切り拳を振り下ろした。


[No.620] 2015/02/07(Sat) 13:54:20

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