0096スレ - ジョニー - 2014/07/16(Wed) 22:19:50 [No.590] |
└ 宇宙世紀0095.シッガルト紛争 - ジョニー - 2015/02/07(Sat) 13:54:20 [No.620] |
└ シッガルト市鎮圧戦勃発前1 - ジョニー - 2015/04/18(Sat) 14:05:29 [No.622] |
└ シッガルト市鎮圧戦勃発前2 - ジョニー - 2015/05/24(Sun) 20:59:07 [No.623] |
└ [削除] - - 2014/07/17(Thu) 22:36:03 [No.592] |
└ [削除] - - 2014/07/16(Wed) 23:43:07 [No.591] |
└ 結局こうなりました( - ジョニー - 2014/07/23(Wed) 23:11:09 [No.593] |
└ ネオジオン残党旧グレミー派閥 - ジョニー - 2014/08/03(Sun) 22:12:42 [No.594] |
└ [削除] - - 2014/08/31(Sun) 22:51:19 [No.599] |
└ ネオジオン残党旧グレミー派閥2 - ジョニー - 2014/08/31(Sun) 23:54:39 [No.600] |
└ 連邦軍ベクトラ所属 - ジョニー - 2014/10/04(Sat) 23:01:17 [No.616] |
「我らが親愛なるリチャード・ホワイト中将閣下は、シッガルト市鎮圧の失敗を望んでいるそうだ! シッガルト市鎮圧作戦が失敗すれば閣下の政敵たるレイニー・ゴールドマン中将閣下の腹心の部下たるフョードル・クルムキン准将は失脚し、ゴールドマン中将の立場も揺るぐことになると息巻いておられた!」 収容したスペースボートから帰還した、この艦の主がブリッジに入るなり大袈裟なまでの動作で両手を胸に当てて演劇のような喋りで語る。 「更にこの作戦での働き如何では、慈悲深くも閣下は我々の過去の罪状を無罪として連邦軍への復帰を果たしてくれると仰られた!」 歌劇のように胸に当てていた両腕を頭上に大きく広げ、熱の籠った口調でリチャード閣下の素晴らしさを説く。 が、一転して恍惚としたような表情を消して、今までの自分の演技をくだらないとでも言うかのように腕を下ろして肩を竦める。 「で、どう思う?」 今しがた熱の籠った劇のような演技を見せた時は打って変わって、自慢の髭を撫でつけながら問いかける言葉は淡々としていた。 「どう思うも何も、胡散臭いとしか言いようがないぞ」 アッシュの奴の約束も大佐の演技もな、と呆れた声で投げ返す。 アッシュとは地球連邦軍将官リチャード・ホワイト中将の彼らの中での渾名で蔑称だ。真っ黒ホワイトで黒と白を混ぜてグレー、灰という意味である。 「まぁそうだなキンケイド大尉。クルムキンの失脚を望んでいるのは本当だろうが、我々に関しては十中八九この戦いで切り捨てるつもりだろう」 頷き、肯定する。 そもそもに置いて今の自分達の飼い主たるリチャード・ホワイトを信用している者達など皆無だ。何時切り捨てられてもいいように用心を怠ったことはない。 「それで、単にそんなことを聞いて来ただけじゃないんだろう?」 「当然だな。まず次の雇主が決まった。とはいえ、この戦いでの活躍如何では内定は取り消されるがな」 無重力の床を蹴って空席のキャプテンシート。自分の定位置に手をかけてそのまま座り込んで一つ頷く。 「つまりはアッシュの奴の思惑通りに、今度の戦いはヌーベル・エゥーゴだけじゃなくて俺達も戦って実力を示す必要があると」 結局はアッシュの罠に飛び込む必要があるのかと呆れるが、まぁそこまで上手い話があるわけがないかと思い直す。 「そういうことだ。ヌーベル・エゥーゴは予定通りエンリケが招集しているな?」 「あぁ、今のところは招集は順調のようだが……連邦艦隊と戦うと聞いて怯えあがってるから督戦隊がいないと戦闘開始前に四散してあっという間に溶けてなくなるぞ」 ヌーベル・エゥーゴは程度の低い宇宙海賊の集まりである、武力で纏め上げた際に一定レベルの統率は敷いたがそれでも普段は個別に民間船を襲って糊口を凌いでいる奴らが大部分を占める。中には連邦艦にも襲い掛かるような強者もいるがそれは稀な例に過ぎない。 隠れ蓑であり、シャトル襲撃などの自分達が出張るまでもない非合法活動をやらせる捨て駒としてはそこそこ使えるが正規軍を真っ向から戦えるような練度では到底ない。統率を敷いた際に派遣した監視役達を督戦隊にしなければ、戦闘前に逃げ消えてしまうのは目に見えている。 「そんなこと分かり切ってたことだろう、督戦隊をやらせて使い潰せばいい。あいつらで鎮圧部隊の燃料弾薬を消費させられれば御の字だろう」 キャプテンシートに座るイスカンダル艦長であり自分達の纏め役のルーカス・リデル大佐が何を分かり切ったことを冷徹に言い捨てるが反論はない。 まさにその通りだからだ。数だけ多い奴だ、元軍人もそれなりに混ざっているのでもしかしたらMSの1機か2機ぐらい落せるかもしれないがそう上手くはいかないだろう。なら、精々その数を活かして連邦軍の燃料や弾薬の消耗、あるいはパイロットの疲労を誘うぐらいが限度だろう。 「そうだな。なら、次の雇主へのアピールの為にも俺のMkWも出せるようにしておこう。あとはベックマン達のギャプラン3機はともかく、バーネットのガブスレイは……此処の処ご機嫌ななめだからな、間に合うかどうか」 ウォルト・キンケイド大尉は自分を含め特殊な機体を使う面々を思う。ベックマン、ダーリング、ベコフの3人は宇宙専用にカスタマイズされているとはいえ多少弄った程度のギャプランなのでアッシュの横流しによる補給のお蔭で問題はない。 自分のMkWも優先的に残存パーツが送られていたのでまだまだ問題なく稼動する。ただバーネットのガブスレイは元々整備性に問題がある上にMkWや数の多いギャプランの補修パーツを優先した事で予備部品も少なくこのところ細かなエラーが多発していると聞く、整備班がなんとかしているそうだが実戦に投入できるかは微妙なところだろう。 「ガブスレイが駄目なら、その時は予備のマラサイを使わせろ。マラサイ隊とエンリケのバーザム隊はどうだ?」 「そっちは問題ないな。督戦隊のハイザックやガルバルディも同じくだ」 量産機は既に生産が打ち切られていても補修パーツの確保は容易だ。アッシュからの補給もあって全機稼動状況は良好である。 もっとも督戦隊の方は同じ元ティターンズでもイスカンダルやエンリケ、グリプス戦役で沈んだもう一隻と合わせたリデル艦隊の仲間ではないので信用は薄いし腕も自分達よりも幾らか劣っている。 正確にいうなら自分達とヌーベル・エゥーゴで別けて語っているように本当の意味での仲間はイスカンダルとエンリケのリデル艦隊であって、督戦隊と宇宙海賊達は利用する駒であって仲間ではない。故に彼らをヌーベル・エゥーゴと呼び区別している、例え彼らやアッシュ達が自分達を含めてヌーベル・エゥーゴと認識していても内心ではそう区別しているのだ。 MS戦力に大きな問題はない。そのことにリデル大佐は満足げに髭を撫でつけながら頷く。 無論、アレキサンドリア級重巡洋艦イスカンダルとサラミス改級巡洋艦エンリケについても問題はない。 「では、当面はアッシュとネオジオン残党に従って戦うとするか」 「ところで俺達を始末するアッシュの手はなんなんだ?」 連邦の鎮圧部隊と戦う。これには頷いて異議を唱えないが、気になるのは自分達を切り捨てるつもりのアッシュの出方だ。 まさか自分達が最後の一兵まで鎮圧部隊と戦って果てるなどとは流石にアッシュでも思ってはいまい。 「それに関してはお優しいホワイト閣下が援軍を寄越してくれるらしい、向こうの都合で合流は戦闘が始まってからになるだろうがな」 わざとらしく言いながらスクリーンに今回の出張で渡されたデータを映す。 映し出されたのは派遣予定の援軍の概略。 今度の戦いで切り捨てるとはいえ、それを此方が悟っているとはおそらく思っていまい。なら、実体は始末屋の援軍でも此方にある程度知らせねば不審に思われると考えてのものだろう。 「輸送艦にバーザムを満載か。それと……なんだ、これは。アモン・ドッグ?」 「聞いたことのない機体だろう? 名前以外は不明ときた、おそらくそれがアッシュの始末屋の切り札だろうな」 聞いたことの機体が名称のみ記載されている。 カタログスペックすら載っていないそれは明らかに怪しいが、アッシュの性格を考えればブラフという可能性は低い。 アモン・ドッグとやらがどの程度のものなのか不明だが、これとバーザム隊で戦闘中に味方と思わせて奇襲をかければ十分自分達を始末できると踏んだのだろう。 「どの段階で乱入してくるか、あとは何時仕掛けてくるか次第か」 この援軍を装ったアッシュの刺客は最初のうちは味方として鎮圧部隊を攻撃する可能性もある。何時戦場に現れてどのタイミングで銃口を此方に向けるかで対処法が変わってくる。 まぁ敵なのは分かり切っているので奇襲効果はない。乱戦に持ち込まれれば厄介だが自分達なら切り抜けられるだろうと思考する。 詳細不明のアモン・ドッグに関してもMkWで十分対処できるだろうという楽観もある。 「そうだな。この事は後で皆に周知する。それにこれが終われば漸くアッシュとの縁も切れる、次の雇主へのアピールは任せるぞ」 「あぁ精々派手に暴れてみせるさ」 お互い顔を見合わせて不敵に笑い合う。 [No.622] 2015/04/18(Sat) 14:05:29 |