コテパト。いち。 - アズミ - 2017/12/04(Mon) 10:31:42 [No.651] |
└ コテパト。に。 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 15:43:44 [No.652] |
└ いつもの池水通洋 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 16:02:14 [No.653] |
└ コテパト。さん。 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 21:10:43 [No.654] |
└ コテパト。よん。 - アズミ - 2017/12/26(Tue) 00:05:31 [No.655] |
└ コテパト。ご。 - アズミ - 2017/12/26(Tue) 23:31:12 [No.656] |
└ コテパト。ろく。 - アズミ - 2017/12/28(Thu) 23:08:52 [No.657] |
└ コテパト。なな。 - アズミ - 2017/12/30(Sat) 00:02:36 [No.658] |
└ コテパト。はち。 - アズミ - 2018/01/02(Tue) 14:34:11 [No.659] |
└ コテパト。きゅう。 - アズミ - 2018/01/02(Tue) 22:14:29 [No.660] |
酒の強さは一様だが、酒の弱さは十人十色だ。 その一時で済むもの、次の日まで続くもの、その一時は無事に見えるが後から響くもの、逆にその一時だけは酷いが後に全く残らないもの。 性格が豹変するもの、口どころか手まで出るもの、傍目に全く酔っていないが記憶が完全に飛ぶもの。吐瀉物をぶちまけるもの、さっさと寝てしまうもの。あるいはそれらの複合。 志摩康一は、すぐに寝てしまうタイプだった。許容量を超える酒が入るところっと寝てしまう。 傍からすれば然程迷惑なタイプはないが、しかし程度が酷い。そこが何処だろうと爆睡し、たっぷり4時間は何をしても起きないのだ。 そこがネットを敷いたゴミ袋の山の上であっても、無論例外ではない。 「――……きろー。起きろー」 肩を揺さぶられて、康一の意識は徐々に覚醒の世界は浮かび上がっていく。 酒はもう抜けていた。こうなると後に全く残らないタチで、二日酔いも酒の味を覚えてこの方一度も経験がない。 ぱちり、と目を覚ます。 「……あ、起きた」 目の前に女が居た。 「はよっす!」 「……おはよう」 ぴっ、と雑な敬礼をする女に、身を起こしながら応える。 見知らぬ女だった。……妙に気安いが、見知らぬはずだった。こんな目立つ女、知り合いならば一目でそれと気づく。 白人である。歳は推し量りにくいが、10代後半と踏んだ。光の加減か何処か緑がかって見える金髪で、琥珀を思わせる明るいブラウン。服装はチューブネックにホットパンツと、この季節にしてはひどくラフだ。上着を羽織っているあたり寒くないわけではないようだが、何とも頓珍漢な格好だった。 ただ、そんな格好でも似合ってしまう程度には整った容姿で、何処か子供っぽい所作は容姿以上の愛嬌がある。 ……繰り返すが、見覚えは無かった。 「んもー、こ〜んなところでこてーん、って寝ちゃうんだもん。カラスのエサになっても知らないぞ?」 流暢な日本語だった。ここまで“ガイジンらしくない”日本語を使う外国人は初めて見たほどだ。 「あー……?」 周囲を見回す。 そこは駅前の飲食店街だった。自分が寝ていたのがゴミ捨て場だと改めて認識し、顔をしかめて降りる。直下が生ゴミでなかったのが不幸中の幸いか。 全く、前後不覚になるほどの痛飲なぞするべきではないと改めて思う。やはり独り身のクリスマスの無聊を慰めるなどという口実で飲みになど行くべきではなかったのだ。 友達甲斐のない同僚どもは酔い潰れた康一を放置して二次会に行ったか……いや、あるいは案外同僚も同じように何処かで酔い潰れているのかもしれない。 「ちょっと臭うよ、コーイチ。シャワー浴びたほうがいいんじゃない? 早く帰ろ」 「あぁ……」 とりあえず頷いてしまってから、女の顔を見た。 三度繰り返すが、見覚えは無い。だというのに、彼女は康一の名を呼び、さもこれから一緒に帰るかのような口ぶりだった。 さすがに、疑問を口に出す。 「……ところで、おたくどちらさん?」 街中で覚えのない相手に親しげに話しかけられて、この質問が出すに出せなかった経験はないだろうか。本当に初対面で相手は訪問販売や呼び込みだったりするのが大半だが、もし本当に暫く会っていない友人であったりしたら失礼極まりない。 果たして、案の定。女は機嫌を損ねた様子だった。 「……ひょっとして、憶えてないの?」 「あぁ、その……ごめん」 とりあえず謝っておく。 数年ぶりの友人ならそんなこともあるか、で済むところかもしれないが、女ははっきりと怒りだした。 「し……信じらんない、本当に!? 昨日の夜! 西口のホテル! 酔ってたからってなんにも!?」 西口は此処から駅を挟んで反対側、駅周辺の飲み屋街から歓楽街へ繋がる辺りだ。有体に言うと東口より柄が悪い。 雲行きが怪しくなってきた。とても。 女は一瞬だけとてつもない憤怒の表情を浮かべたが、すぐに急変し今度は沈痛な表情で俯いた。 「……危ない日だから中はやめてって言ったのに」 「待って」 「今更言われてもゴム持ってないって……どうせ後で薬飲むんだろって」 「待ってくれ」 「アタシ怖くって……抵抗できなくて……何度もお願いしたのに3回も……」 「待ってください」 嘘だ。コイツは嘘を言っている。 確かに記憶はないが、自分が? 今日の今日まで童貞だったのにいきなりそんな? AVみたいな鬼畜ムーヴを? いや確かにゴムなんて持ち歩いてないけど待ってちょっと待って嘘じゃないならこれは何かの間違いだだっておかしい前後がおかしいこんなのありえな―― 「あっははははは、うっそうそ! ジョーダンだよジョーダン」 「おい」 はっ倒してやりたい衝動に駆られたが、あまりに肝が冷えすぎたせいか安堵でそれどころではなかった。ついさっきまで見ず知らずの他人になんて心臓に悪い嘘を吐くのだこのアマ。ともあれ助かった――と胸を 「ちゃんと合意の上でヤったからだいじょーぶ!」 ……撫で下ろすのは早かったらしい。 それが証拠に女はあっけらかんとした笑みはそのままに、氷柱の如き冷たく鋭い声音で続ける。 「――……もちろん、責任取ってくれるんだよね?」 「……はい……」 力なく頷く以上、康一に何が出来ただろう。 クリスマスの夜が明けた、日も昇らぬ早朝のことだった。 [No.651] 2017/12/04(Mon) 10:31:42 |