コテパト。いち。 - アズミ - 2017/12/04(Mon) 10:31:42 [No.651] |
└ コテパト。に。 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 15:43:44 [No.652] |
└ いつもの池水通洋 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 16:02:14 [No.653] |
└ コテパト。さん。 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 21:10:43 [No.654] |
└ コテパト。よん。 - アズミ - 2017/12/26(Tue) 00:05:31 [No.655] |
└ コテパト。ご。 - アズミ - 2017/12/26(Tue) 23:31:12 [No.656] |
└ コテパト。ろく。 - アズミ - 2017/12/28(Thu) 23:08:52 [No.657] |
└ コテパト。なな。 - アズミ - 2017/12/30(Sat) 00:02:36 [No.658] |
└ コテパト。はち。 - アズミ - 2018/01/02(Tue) 14:34:11 [No.659] |
└ コテパト。きゅう。 - アズミ - 2018/01/02(Tue) 22:14:29 [No.660] |
女を伴って康一がアパートに着いたのは、AM4:30を回ったあたりであった。 駅前で買ってきたファーストフードで朝食を済ませながら、ひとまず女のパスポートを検める。 名前はAria Belcantoというらしい。 「アリア……アリアー……えーっと」 「アリア・ベルカント。国籍はイタリア、歳は18」 「そのへんは見ればわかる」 一応、パスポートと就業ビザに問題がなさそうなこと(素人目に、ではあるが)を確認してからアリアに返す。 受け取ったアリアは、それをそのままホットパンツのポケットに突っ込んだ。何ともぞんざいな扱いだが、金品や重要なものは直接持っておく方針とのことだった。他に荷物といえば、傍らに置いた着替えと僅かな化粧、洗面用具だけが入った小型のスーツケースが一つだけである。 「日本には出稼ぎに?」 「そそ、イタリアも南部は不況でキビシくってさー。日本は今なら多制免持ってれば就労ビザ緩いって聞いたから」 「まぁ、最近はよく聞く事情だな」 2004年度に延長されたバビロン・プロジェクト需要のせいで、太平洋沿岸は大規模な護岸工事ラッシュの真っ只中だ。 レイバー操縦者の人手は慢性的に不足しており、政府は打開策として外国人労働者の就労制限を緩和する方向に舵を切って久しく、沿岸の町では目に見えて外国人労働者が増加している。 そういった手合いの大半は手近なアジア出身者だが、何らかの事情でレイバー操縦資格を持っていれば欧州出身者でも同じEU内より日本へ出稼ぎに出たほうが割がいいというのは有り得る話だった。 「っていうか、自己紹介はしたんだけどなー。居酒屋で」 「……すまんが全く憶えてない。……俺は」 「シマコウイチ、21歳。えーっと……トガミだったっけ? 警備会社で働いてるんだよね」 「十神特車警備な」 なるほど、自己紹介は済んでいたらしい。記憶はないが、康一はアリアの言を疑うことはやめることにした。 となると、あとはこうなるに至った経緯なのだ、が。 「……ねぇ、ホントに憶えてないの? アタシの身の上聞いて、帰る場所もないなら面倒見てやるって言ってくれたのも、全部?」 「……憶えてない」 「ひっどーい!」 「だから」 アリアの言葉を遮って手で制する。 実際さすがに、康一としても酷い話だという自覚はあった。酒の入った上でのこととはいえ、猛省はしていた。 「男に二言は無い。責任は取る」 どうあれ、責任は取る覚悟はしていた。 「具体的にはー……まぁ、後で話を詰めるとして。俺に出来る限り責任は、取る」 あったが、手段に関しては口篭らざるをえなかった。 昨日まで童貞の拙い想像力では具体的にどう責任を取ればいいのかも正直わからなかったし、警備会社勤めの若造にはそもそも不可能なことが多い。 例えば、一番無難であろう金で解決するにもそもそも先立つ物がない。 そういう康一の心中を知ってか知らずか、もくもくとフライドポテトを齧っている。 「ンー……そういう大袈裟な話じゃないんだけどなァ」 「そりゃどういう……」 聞き返す康一の懐で、携帯電話が揺れた。出しかけた言葉を引っ込めて取る。 「もしもし?」 『やほぅやほぅ康一さん、非番のところ申し訳ない』 電話口でも間違えようが無い軽薄な口調の主は、勤務先の上司、司深(スー・シェン)であった。 『今ご自宅で?』 「あぁ……ヘルプか?」 『是(シィ)、是。17管区で緊急通報です。どうも2号車だけじゃ心許ない状況のようでして』 「3号車はバラしたままだしな。わかった、すぐ行く」 『2号車は現場に先行します。では、宜しく』 通話を切ると、傍らに置いたままだった上着を引っ掴んで立ち上がる。 「どうしたの?」 「仕事だ」 問うアリアにそれだけ言うと、昨日の格好のままコートを羽織って財布と鍵をポケットにねじ込む。 「え、ちょ、アタシは?」 「話の続きは帰ったらする」 「じゃなくて! ここに独りで置いてかれても困るんだけど!」 「……あー、そうだな」 康一はがしがしと頭を搔いた。 まさか現場に連れて行くわけにもいかないし、さりとてただ待っていろというのも不便だろう。 「仕方ない、これだけ置いてく」 財布から5万と家の鍵だけ外し、アリアに押し付ける。 「何かあったらそれで何とかしろ。夜までには帰る!」 それだけ言い残して、アパートを飛び出す。 独り残されたアリアは、手の中の5枚の万札と鍵を見下ろし、嘆息した。 「……無用心だなぁ」 5万を財布ではなく、胸のポケットに別に入れる。 アリアはドアの鍵を閉めると、ひとまず部屋に散乱したファーストフードの袋を片付けることにした。 [No.652] 2017/12/25(Mon) 15:43:44 |