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No.654へ返信

all コテパト。いち。 - アズミ - 2017/12/04(Mon) 10:31:42 [No.651]
コテパト。に。 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 15:43:44 [No.652]
いつもの池水通洋 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 16:02:14 [No.653]
コテパト。さん。 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 21:10:43 [No.654]
コテパト。よん。 - アズミ - 2017/12/26(Tue) 00:05:31 [No.655]
コテパト。ご。 - アズミ - 2017/12/26(Tue) 23:31:12 [No.656]
コテパト。ろく。 - アズミ - 2017/12/28(Thu) 23:08:52 [No.657]
コテパト。なな。 - アズミ - 2017/12/30(Sat) 00:02:36 [No.658]
コテパト。はち。 - アズミ - 2018/01/02(Tue) 14:34:11 [No.659]
コテパト。きゅう。 - アズミ - 2018/01/02(Tue) 22:14:29 [No.660]


コテパト。さん。 (No.653 への返信) - アズミ

 コックピットに潜り込んで早々、康一は早すぎる朝食を済ませてきたことを後悔した。
 警備用レイバーの搭乗員は現着次第速やかに行動に移らなければならないため、キャリアで輸送する前に乗車する。当然機体が車上に寝ているのだから搭乗員も仰向けに寝そべる形で座ることになるわけだが、これが殊に胃に悪く、康一は出動前は出来るだけ食事を抜いておくよう心がけていた。
 が、まぁ今回のような緊急出動では詮無いことだ。
 胃を寝かせるように息を吐いて、コックピットのコンパネに起動用ディスケット挿入する。
 低い起動音と共にディスプレイが「Welcome to L.O.S.2000」のメッセージを表示し終えたあたりで、ヘッドギアが無線と接続したぶつ、という音を寄越した。

『こちら1号車キャリア、あと5分ほどで現着だ』
「こちら1号車、起動完了いつでもどうぞ。……向こうはどんな塩梅だ? ケイジさん」
『社長、だ』

 (株)十神特車警備は特科車両1号警備……いわゆるレイバー警備を専門に行う警備会社である。
 警備会社の労働環境というのは押し並べて良くは無く、おまけにレイバー警備などという新興分野の、さらには業界でも最零細といってよい十神特車警備の台所事情は一言でいって悪い。
 どれぐらい悪いかといえば、高橋敬治代表取締役社長が1号車キャリアの運転手、指揮の3役を兼任しなければ回らないレベルである。

『勤務中は社長、だ。一号車』

 この職種にはありがちなことだが、敬治は元神奈川県警の警部補であり、人員も彼が警官時代の伝手で集めた人材を中心としている。
 康一もまた例外ではなく、かつては生活安全課時代の彼にさんざ迷惑をかけた悪たれ小僧であり、同時に富士のレイバー隊員養成学校(通称レイバーの穴)でしごかれた警官の卵であった。
 敬治とはかれこれ10年来の付き合いがあり、どうにも気安さが抜けない。
 公私混同を咎められた康一は、さりとて大人しく従うのも癪だったので改めて事務的に問う。

「こちら1号車、キャリア現場の情報を求む」
『……緊急警報は17管区のレイバー管理システムからだ、03
59に同管区の作業用レイバー駐機場に不正起動を3つ確認。2号車が先行してるが続報はなし』
「またぞろ、レイバー盗難かね」
『たぶんな』

 前世紀まではレイバー犯罪といえば酔っ払いのケンカやバビロンプロジェクトに反対する環境テロというのがお定まりであったが、近頃圧倒的に多いのは作業用レイバーの盗難だ。
 特に北京オリンピックを控えた中国で増大したレイバー需要を見込んだチャイニーズ・マフィアの組織的な犯罪と目され、警察は検挙に血道を挙げているが抜本的な解決は遠い。
 なにせ実行犯のほとんどは現場で働く外国人労働者である。要するに小遣い稼ぎが目的の“蜥蜴の尻尾”であり、いくら検挙しても主犯まで捜査の手が伸びることは稀だ。一方で外国人労働者自体は増える一方なので予防も難しい。

「県警は?」
『通報は入れたが、増援は期待するな。忙しそうだからな』
「いつも通り、俺たちで何とかしろってことな」

 警察は養成に時間のかかるレイバー搭乗員の増員に乗り気でなく、こうしたイタチごっこに逐一投入したのでは既存の特車隊だけでは到底手が足りない。であるからして、レイバー盗難への対応は“パトレイバーの下請け”たる康一らレイバー警備にお鉢が回ってくるのがほとんどであった。 
 コックピットが揺れた。キャリアが停車したらしい。

『現着だ、1号車上げるぞ』
「了ー解、待ちわびたぜ」

 低く重い駆動音と共に、シートが垂直立ち上がっていく。胃に悪い時間はお仕舞いらしい。
 ……最も、これから待ち受けているレイバーの格闘戦とて十二分に胃に悪いのだが。



 未明の工事現場に、濃紺のレイバーが屹立する。
 SR-70 サターン。トヨハタオートがOEM生産しているが、実質的にはシャフト・エンタープライズ・ジャパン製の警備用レイバーである。
 発売から4年経つモデルだが、ここ数年は市場でもハイエンドなレイバーの開発は足踏みが続いており、警備用レイバーとしては一線級の性能を維持している、とは整備主任の言である。
 が、要するに文句なしの新型を配備するほどの余裕が十神の懐事情には無いということに他ならない。実際のところ、十神は3台のレイバーを運用しているが全車をサターンで統一することすら出来ていないのが実状だ。

 機体前面に折り畳まれていた(完働状態のレイバーを寝かせると2車線専有してしまうためだ)両腕を、胴体両脇にポジションを戻す。
 馴らしで両腕をぐるぐると動かすと、チュィィィン、という甲高いアクチュエーターの駆動音が辺りに響いた。音から判断するに、整備状態は良好。

「いつでもいいぜ、ケイジさん」
『駐機場は正面50mだ、2号車は……あー……待て、今確認を』

 入れるより先に、自動車が正面衝突したような破壊音が耳朶を打った。
 方向は正面。別件を疑う余地はない。

「……もう始まってるらしいな、1号車突入する!」

 ペダルを踏み込むと、サターンが夜闇に向けて大きく一歩を踏み出した。


[No.654] 2017/12/25(Mon) 21:10:43

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