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No.656へ返信

all コテパト。いち。 - アズミ - 2017/12/04(Mon) 10:31:42 [No.651]
コテパト。に。 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 15:43:44 [No.652]
いつもの池水通洋 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 16:02:14 [No.653]
コテパト。さん。 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 21:10:43 [No.654]
コテパト。よん。 - アズミ - 2017/12/26(Tue) 00:05:31 [No.655]
コテパト。ご。 - アズミ - 2017/12/26(Tue) 23:31:12 [No.656]
コテパト。ろく。 - アズミ - 2017/12/28(Thu) 23:08:52 [No.657]
コテパト。なな。 - アズミ - 2017/12/30(Sat) 00:02:36 [No.658]
コテパト。はち。 - アズミ - 2018/01/02(Tue) 14:34:11 [No.659]
コテパト。きゅう。 - アズミ - 2018/01/02(Tue) 22:14:29 [No.660]


コテパト。ご。 (No.655 への返信) - アズミ

 警備用レイバーが出動すれば、必ず何かが壊れる。
 壊れたならば直すのに当然金がかかり、当事者がそれを報告しなければ役所も会社も保険屋も金を出せない。
 なので、レイバー警備とはただ出動して暴れればいい職業ではなく、出動の後には必ずデスクワークが存在するのである。

「あ゛ー……終わった、終わった……」

 自機と確保したレイバーの破損状況、周辺の被害状況、出動状況を時間ごとに明記した業務報告、etc.
 康一が一通りの事務作業を終えた頃には、既に日が沈み始めていた。時計を見るとPM4:00ジャスト。結局半日労働である。
 しばしばする目を抑えていると、オフィスのドアが開いてぐったりとした一真が入ってきた。

「こっちも終わったー……いや、これから始まりなんだけど」

 自機の被害状況を纏めようにも、まず整備の検分に立ち会わなければならない。
 なので、一真のデスクワークはこれから始まりだった。
 まぁもともと今日は24時間勤務であるのだが、万事手の足りない十神では搭乗員とて検分の間ただ見ているだけというわけにはいかないし、破損状況によっては作業の間整備班や経理のお小言を聞き続けなければならないためこれが実に疲労感がある。
 押し合い圧し合いをやらかして膝のアクチュエーターをお釈迦にしたとあっては小言もさぞねちっこく長かったことだろう。

「レイバーの格闘戦は蝶のように舞い、蜂のように刺すを旨とすべし。っつわれてもなー」
「実際はそう上手くはいかんからな。まぁ、お疲れ」

 アウトレンジからの急所への一撃で無力化するというのは実際理想的で、整備班のお小言に頻出する決まり文句なのだが、視界の利かない夜間戦闘でそれをやってのけるのはもういっそ神業である。
 これから連中が丸一日はハンガーにカンヅメになると思えば所詮理想論と切り捨てるまではし難いが、まぁ……精進あるのみ、といったところか。

「んじゃ、こっちは片付いたしお先に失礼するわ」
「おやぁ? もうお帰りですか、康一さん」

 PCを片付けてデスクから立ち上がった康一に、茶の載ったお盆を片手に給湯室から顔を出して、スーが言う。
 なお事務仕事に精を出す若人に茶を入れてくれた……わけではない。自分で飲む分だけだ。いつものことである。

「報告書は提出したけど、なんか他にあるか?」
「いーえぇ、そういうわけじゃありませんが。いつもは仕事も無いのに無駄ーにオフィスに居座って青春を無為に消費しとる康一さんがこうもすぐお帰りになられるのは珍しいな、と思いまして?」
「ほっといてくれ。用事があるんだよ」
「ははぁ……さては」

 ず、と突き刺すように小指を突き出してくる。

「コレが出来ましたか」

 いつもの事ながら、この怪しげな中国人は妙に勘が鋭い。
 が、ここで動揺してはおちょくる隙を与えるだけだ。康一は努めてポーカーフェイスでこれを流した。

「……まぁな。んじゃ、お疲れ」

 大股開きでオフィスを出る。
 スーはしかし別段驚くでもなく、ほほうと一言漏らして茶を一啜り。
 視線を移すと。

「マジでか」

 こちらは目を点にした一真と、目があった。




 アパートに帰り着くと、部屋からもくもくと白煙が上がっていた。
 呆気に取られて立ち尽くしていると、ドアがどばん!と開いて中からのっしのっしと小柄な人影が出てくる。

「……よっす」
「よ、よっす」

 大家の娘だった。名をルーナ・セノ。若干12歳ながら、留守がちな母にかわりアパートの管理を代行している少女である。
 ルーナはけほ、けほ、と小さく咽た後、康一をじろりと見る。

「……次、彼女にフライパンを握らせたら出てってもらうから……」

 小さな声だが、明朗で鋭い宣告だった。
 今ひとつ状況が飲み込めないままこくこくと頷くと、再びルーナはのしのしと康一の横を通り抜けて管理人室に去っていく。
 ドアを開けると、換気扇が全力運転するキッチンの前で、大穴の開いたフライパンを片手に煤だらけのアリアが立っていた。

「な、なんじゃこりゃ!?」

 いや、何となく、朧気には分かる。たぶん、料理に失敗したのだ。
 そうとしか考えられないが、何をどう作ろうとしたらフライパンに大穴が開くのかがさっぱり解らない。

「コーイチ、ゴメン……夕食作ってあげようとしたんだけど……」

 アリアは大いに反省している様子だった。フライパンを片手に泣きそうな声をあげる。
 とりあえず康一は何を言っていいかわからず当惑し、

「何、作ろうとしたんだ」

 口を突いて出たのはそんな何とも間抜けな問いだった。

「パンケーキ……」
「夕食にパンケーキぃ?」

 腹持ちは、まぁいいかもしれないが。

「キキが作ってたから」
「ジブリかよ……」

 13歳の魔女見習いならともかく、21歳男性警備員の晩飯としては聊かファンシーに過ぎる。
 というかパンケーキを作ろうとして何でフライパンに穴が開くのか。そもそも失敗する時点でなかなかハードルが高いと思うのだ、パンケーキ。

「あー……とりあえず顔見せろ、顔」

 こうも反省していると責める気にもならず、ひとまずハンカチで顔の煤を拭いてやる。
 ついでにちーん、と鼻をかんできたのも、まぁ見逃すことにした。

「まず風呂入っちまえ、煤だらけだぞお前。その間に飯は用意するから」
「ん……ゴメン」

 アリアをユニットバスに追いやってから、康一は嘆息して雑巾を手に取った。


[No.656] 2017/12/26(Tue) 23:31:12

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