コテパト。いち。 - アズミ - 2017/12/04(Mon) 10:31:42 [No.651] |
└ コテパト。に。 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 15:43:44 [No.652] |
└ いつもの池水通洋 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 16:02:14 [No.653] |
└ コテパト。さん。 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 21:10:43 [No.654] |
└ コテパト。よん。 - アズミ - 2017/12/26(Tue) 00:05:31 [No.655] |
└ コテパト。ご。 - アズミ - 2017/12/26(Tue) 23:31:12 [No.656] |
└ コテパト。ろく。 - アズミ - 2017/12/28(Thu) 23:08:52 [No.657] |
└ コテパト。なな。 - アズミ - 2017/12/30(Sat) 00:02:36 [No.658] |
└ コテパト。はち。 - アズミ - 2018/01/02(Tue) 14:34:11 [No.659] |
└ コテパト。きゅう。 - アズミ - 2018/01/02(Tue) 22:14:29 [No.660] |
冷蔵庫に残ったキノコ類、小エビ、カニカマを適当に放り込んだ溶き卵を雑にオムレツにして白飯に乗せ、白だし、みりんと片栗粉で作った餡をかければ天津飯の出来上がりである。 別に餡を省いてオムライスでもいいのだが、中華にすることで何となく“男の料理”という体裁を整えるのが志摩康一の美学であった。 「晩飯できたぞー」 ユニットバスに声をかける。 「今出るー」 シャワーを浴びて気を取り直したのか、中から返ったアリアの声はもう朝の調子であった。 安堵して適当な皿に盛り、ちゃぶ台に並べる。蛇口を捻る音からユニットバスの扉が開くまで、余りに間がなかった辺りで若干嫌な予感がした。 「ごはん、なに?……わっ!?」 「服を!着ろ!」 全裸で出てきたアリアの顔に脇に畳んでおいたバスタオルを叩きつける。 アリアはタオルでそのまま頭をわしわしと拭きながら(つまり身体さえ拭いていなかった)口を尖らせる。 「全部洗濯しちゃったんだもん」 「なんで全部洗濯するんだよ!」 「今までビジネスホテル住まいだったから暫く洗濯できてなくてさー。このへんコインランドリー少ないよね」 バビロン・プロジェクトの延長で人が増えにわかに需要は増大しているが、基本的には片田舎である。確かに根無し草にはまだまだ不便な地域であった。 「とにかくなんか着ろ!」 「いまさら気にしなくてもいいじゃん、さんざん見たんだし」 「憶えてないっつってんだろ!」 だいたいにしてセックスしたからと言って裸が恥ずかしくないというのは何か違うと思うのは童貞の浅はかさであろうか。 いやアリアの主張を認めれば童貞ではないのだが、覚えてないのだから心は間違いなく童貞なのだ。 「じゃあ」 そこまでは、からかうような笑みがあった。 が、そこで恥じらいが混じったらしく、視線が逸れる。 「えー、と」と言い澱み、首にかけたタオルをきゅ、と持って心なし胸を隠した。 「今日……えっち、する?」 言葉に詰まる。 志摩康一はまだ童貞なので。少なくとも心は童貞なので。 「きょ」 一も二もなく首を縦に振りたかったというのは、間違いなく本音なのだが。 「今日は……いい」 怖気づいてしまうのも、仕方のないことだったのだ。 心は童貞なので。 結局、アリアには康一の服を適当に着ていてもらうことになった。 ● アリアを疑うことはやめた。 やめたのだが、だからと言ってセックスどころか同衾するほどの踏ん切りもつかず。 結局、同僚を泊める時に使っているソファベッドを出して、アリアにはそこで寝てもらうことになった。 寝床に入ってどれくらいが経っただろう。 何だか眠れないことを自覚した直後なので、30分ほど後のような気もするし、0時を既に回っていたような気もする。 「……コーイチ、起きてるー?」 アリアが話しかけてきた。 軽く伺うが、背を向けたままで康一からは表情が見えない。 「起きてる」 「言い忘れてたけど、お金と鍵、戸棚に入れといたから」 「ん?……んー……」 朝渡した5万のことだと気づくのに、少しかかった。 「無用心じゃない?」 「何が」 「アタシが泥棒だったらさ、お金と鍵持って出かけてる間に逃げてたよ」 「泥棒じゃないんだろ?」 「…………まぁ、そうだけど。昨日あったばっかりなんだからさ、疑うのがフツー……じゃない?」 「疑わないことにしたんだよ。……騙されてたらその時はその時だって、もう決めたんだ」 「…………そう」 会話が途切れた。 実際のところ。疑うことはやめたのだが、彼女の話を全て鵜呑みにしたわけではなかった。 康一の個人情報ぐらい寝ている間に持ち物から調べようはあっただろうし、幾ら酔っていたからといって一夜を共にしておいて相手のことを全く憶えていないというのは聊か疑わしくはある。 だが、疑うことはやめたのだ。信じられなくても、信じることにした。 だから。 「……あのな、眠たければそのまま寝ちまっていいんだが」 今、朝の話の続きをすることにした。 寝たふりを決め込んでもいい、という逃げ場を用意した上で。 「俺、どうすればいい? その……なんつーか。責任の取り方、っつーか」 返事はない。 「何でもするからさ」 返事はない。 間が持たなくて、言葉を捜す。 「……でも、出来ればお前さえよければ」 「一緒に」 出しかけた言葉の続きを、アリアが継いだ。 思わず押し黙る。たっぷり3分は開けて、アリアが続けた。 「……一緒に、いてもいい?」 それは康一が言いかけた言葉とは微妙に違ったものだったが。 「暫くで、いいから。ここにいさせて」 康一が出しかけた結論よりもゆっくりで、心地の良い条件だった。 「……金と鍵さ、やっぱしばらく持ってろよ」 息を、吐く。 少し眠気がやってきた。懸念が一つ片付いて、気が抜けたのかもしれない。 「歳が空けたら、財布と合鍵を作りにいこう」 「……ん」 アリアの小さい返事を聞いて、康一は意識を眠りに委ねた。 [No.657] 2017/12/28(Thu) 23:08:52 |