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取調べというと刑事のイメージが強いだろうが、無論のこと交通事故ならば初動が交通課が行うし、レイバー犯罪ならば特車隊が行う。 26日の早朝、17管区において発生したレイバー窃盗事件の容疑者3名は十神の一行に取り押さえられた後、到着した県警特車隊により逮捕。速やかに連行された。 うち、擱座したタイラント2000から救出、確保された2名はお定まりの金に釣られた外国人労働者であった。供述から金の流れを辿っているが、恐らく教唆犯までは辿りつけまい。蜥蜴の尻尾は当然の如く切られる。 問題は、最後の一人。 ヘラクレス21の搭乗員であった、少年である。 「ねー、俺腹減っちゃったよ。カツ丼出ないの? カツ丼」 今時珍しいほどステレオタイプな取調べ観でそんなことをのたまうこの少年は、どうやら単独犯であるようだった。 他の2人は同一の手法で金が振り込まれ、示し合わせてレイバーを不正起動したわけだが、2人ともこの少年に関しては全く知らないという。 状況的にもタイラント2機は計画性を以って逃走を図り警備用レイバーとの遭遇後も連携を取ることができたが、この少年に関してはいち早く遭遇した上、他の2名との合流を企図した様子がない。 取調べは慎重に行わなければならなかった。無論カツ丼などもってのほかだ。 相対する県警特車隊の2号機バックス、ソフィア・アグネート巡査部長はつれない態度で切って捨てる。 「古いドラマの見過ぎだな。調書の公平性を保つため、警察が被疑者に物品の授受を行うことはない」 実際には武器になるものを与えない、という意図もある。丼程度の重量と硬度があれば、十分に凶器にはなり得るのだ。 「ちぇー」 口を尖らせる少年は、10台半ば相応の幼い態度を崩さない。およそ万引き程度の軽犯罪もやらかすタイプには見えず、とてもレイバー窃盗犯には見えなかった。 だが、現行犯である以上その事実は覆しようがない。 むしろ、およそ犯罪と結びつかないパーソナリティを警戒すべき事項とソフィアは認識していた。 「氏名を述べなさい」 「シオン」 「……氏名、と言ったのだが」 「そんなこと言われても、苗字なんて無いしさ」 「無い?」 「いや、決めてはあるのかな? でもパスポートとかまだもらってなかったし、たぶん戸籍ー……とか? もないしなぁ。とりあえずシオンって呼ばれてたんだけど」 突飛な告白だったが、そこはモスクワ市警からレイバー犯罪の最新事情を学ぶため研修で回されてきた才媛である。ソフィアは暫しの逡巡で一つの可能性に行き当たった。 「……貴様、密入国者か」 「あぁ、そうそう。そういう感じ」 少年……シオンは事も無げに肯定する。 「人を探さなきゃなんなくてさ。逃げてきたんだよね、船から」 件の現場は(護岸工事用のレイバー駐機場なのだから当然だが)港に近い。 「どの船だ、名前は」 「わかんないよそんなの」 ソフィアは思わず舌打ちするが、シオンは気にした様子もなく続ける。 「レイバーがあればなんとでもなるって思ったんだけどなー……全然操縦方法違うんだもんさ」 「……?」 眉をひそめる。 レイバーは現在の主要なメーカー各社協力の下開発された「レイバー90」を元にしているため、操縦法はどのメーカーの商品でもだいたい同じだ。 そこを詰めて質問する前に、背後のドアが開いた。 「へいへい、ソフィアちゃんそこまでだ」 「コウヤ」 ソフィアの相方……2号機オフェンスの川西光矢巡査である。 およそ彼女の国の基準からすると官憲らしさから大きく外れた軽薄な男であるが、レイバー搭乗員としての腕だけは彼女も信頼している。 「選手交代だってよ」 くい、と背後を顎で示す。そこには背広の男が2人。 「捜査一課か」 特車隊はあくまで警備業務を行う部署であり、本格的な事件捜査は刑事の領分だ。 ソフィアも下手にごねる事はせず、大人しく刑事たちに席を譲った。 が、最後に。 「……人を探していると言ったな、シオン」 「うん」 察しは良いほうらしい。唐突な質問にもシオンは戸惑うことなく応えた。 「アンドレイとアリアっていうんだ。見つけたら教えてよ、お姉さん」 [No.658] 2017/12/30(Sat) 00:02:36 |