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No.659へ返信

all コテパト。いち。 - アズミ - 2017/12/04(Mon) 10:31:42 [No.651]
コテパト。に。 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 15:43:44 [No.652]
いつもの池水通洋 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 16:02:14 [No.653]
コテパト。さん。 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 21:10:43 [No.654]
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コテパト。ろく。 - アズミ - 2017/12/28(Thu) 23:08:52 [No.657]
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コテパト。はち。 - アズミ - 2018/01/02(Tue) 14:34:11 [No.659]
コテパト。きゅう。 - アズミ - 2018/01/02(Tue) 22:14:29 [No.660]


コテパト。はち。 (No.658 への返信) - アズミ

 上司一つで職場の居心地というのはがらりと変わる。
 太平洋沖に浮かぶ“べるもっと号”の、底冷えのする格納庫に入るたび伊豆内はそれを再認識せずにはいられない。

「テストパイロットは3人用意していただける、という話だったはずですが」
「すまんな、“パレット”のほうで少々アクシデントがあった」

 伊豆内の言葉に、現在の上司……ジー・ラマヌジャンはバツが悪そうに肩を竦めた。

「多少遅れるが補充は来る。今はアンドレイで我慢してくれ」
「スケジュールの遅れは」
「もちろん、許容する。まだ半信半疑なようだがね、イズウチ――」

 ラマヌジャンは視線をハンガーに向けた。
 機械の巨人が、バイザー奥から無機質な眼差しを2人に向けている。

「アジアマネージャーはおたくらの玩具を高く評価しているんだ。我々は“評価して欲しければ売り物になるものを持って来い”と言ってるんじゃあない、“商品にするから売れるようにしてくれ”と言っている」
「理解しているつもりです。だから、それまで待ってはいただけるし手段は融通してもらえる」
「その通りだ」

 互いに納得は得られたと見たか、ラマヌジャンは改めて巨人に視線を向ける。

「だいぶ外見が変わったな」
「グリフォンは知られすぎていますから、さすがにそのままというわけには。中身は基本的にそのままですよ」
「今度は黄色か」
「アジアマネージャーの希望ですよ、向こうじゃ縁起がいいとか」

 伊豆内は正直なところ、この軽薄な黄色が好きではなかった。
 きっと前のパイロットや――“彼”がここにいたならば、酷評した上で即刻変えさせたに違いない。そう、埒もつかないことを考える。

「一先ずはアンドレイだけでスケジュールを進めます」
「補充が来るまで派手な工程は控えてもらいたいが」
「もちろん、こちらだってたった一人のテストパイロットに危ない橋は渡らせたくありません。……が、もう一度だけ確認します」

 ラマヌジャンを見る。相手はこちらに視線を向けない。
 
「いずれ搭乗者制限を撤廃するぶんデチューンは避けられませんから、その分は汎動作の最適化で取り返します。で、あれば実地で動かして経験値を積むのは必要不可欠です。つまり――……」
「軍事用レイバーに穴掘りをさせても意味はない。火器の扱いならアジアには幾らでも鉄火場がある。だが殴り合いならば“ココ”が一番だ」
「……いいんですね?」
「もう一度言うぞ、イズウチ」

 ラマヌジャンはそこで初めて視線を合わせた。
 底冷えのする不敵な笑み。これだけは、かつての上司を想起させる。

「コイツを売れるようにしてくれ。手段は問わん、派手にやればいい」



 黄色いレイバーの首が後方にスライドして、中からアンドレイが身を乗り出してくる。
 アンドレイ・ドラグノフ。名前の通りロシア出身だが、黒髪黒瞳で注視しなければ日本の街並みに溶け込める外見だった。
 “そういうオーダーがしてある”。

「イズウチさん、A9の初期設定、終わりました」
「ASURAの感触はどうだ」
「あまり辛くないですね。思ったほどには」

 ぐりぐりとこめかみを揉んで言う。
 間脳電流を拾ってレイバーの挙動に反映する、現行のフォーマットとは全く異なる制御系である。レイバーという機械の制御系としては理想系であると伊豆内は未だ信仰しているが、一方でパイロットから見た扱いやすさという観点からすれば甚だ問題が多い。
 以前は一度起動するごとに副腎など内分泌系への影響を調査しなければならないほどデリケートな代物だったが、技術革新とシステムの緩和を行ったことで幾らかマシにはなっているはずだった。
 適正があるとはいえ、アンドレイへの影響が思ったより少ないのはまだ医療スタッフが合流していない現状、明るい情報と言える。

「実働は当分先だ。今はゆっくり休んでくれ」
「わかりました」

 素直に頷いてA9から降りるドラグノフに、伊豆内は何処か拍子抜けを感じて頭を搔く。

「どうしました?」
「……いや、君は素直でいいな、と思ってね」
「はぁ……?」

 腕時計を見る。あと数時間で年が明ける。
 2005年。あの日々から、もう6年が経とうとしている。

「……企画7課は遠くなりにけり、だな」


[No.659] 2018/01/02(Tue) 14:34:11

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