コテパト。いち。 - アズミ - 2017/12/04(Mon) 10:31:42 [No.651] |
└ コテパト。に。 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 15:43:44 [No.652] |
└ いつもの池水通洋 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 16:02:14 [No.653] |
└ コテパト。さん。 - アズミ - 2017/12/25(Mon) 21:10:43 [No.654] |
└ コテパト。よん。 - アズミ - 2017/12/26(Tue) 00:05:31 [No.655] |
└ コテパト。ご。 - アズミ - 2017/12/26(Tue) 23:31:12 [No.656] |
└ コテパト。ろく。 - アズミ - 2017/12/28(Thu) 23:08:52 [No.657] |
└ コテパト。なな。 - アズミ - 2017/12/30(Sat) 00:02:36 [No.658] |
└ コテパト。はち。 - アズミ - 2018/01/02(Tue) 14:34:11 [No.659] |
└ コテパト。きゅう。 - アズミ - 2018/01/02(Tue) 22:14:29 [No.660] |
電話の向こうの光矢以外は敬治一人きりの事務室に、ぱちん、と音がする。 『つーわけで、こっちで解ったのはここまでだ。後はデカのほうに当たるしかねえな』 「ふむ……、いつつ」 思案しながら切ったせいで、深爪気味になった。 渋面を作って爪切りを放り出し、肩に挟んだ受話器を持ち直す。 「あー……あいわかった、情報共有感謝する」 何か気になる事件がある度、情報共有を行うのが光矢と敬治の通例であった。 明確に捜査情報の漏洩にあたるのだが、特車隊の隊長にも黙認は取り付けている。初動で遅れる特車隊は現場の詳しい状況を把握しにくいし、一方で捜査の俎上に上がってしまえば警備会社からは手も足も出ない。 これは事件の全貌を掴む上で必要に迫られての、官民一体の自主的な協力体制であった。 『あぁ、デカと言えばもう一つ。本庁の捜査一課からお客さんが来てる』 「なに?」 『さらに妙なのは、どういうわけだかウチのデカどもがそれを邪険にしてねえってことさ。タイミング的に今回の件がクサい……と俺は思うんだがな』 本庁の人員が出張ってくるということは東京で起きた事件と関連があるということだろうが、警察は基本的に縦割りの組織で、管轄を飛び越えての活動は普通しないし、忌避される。 所轄がそれに協力的というのは、余程にその事件が大規模か、あるいは所轄の手に負えない特殊性を持つかのどちらかだ。 クサい。 警察組織内にいた敬治であるからこそ、看過できるラインを超えるキナ臭さであった。 これまでは多少妙なところはあるものの、単なるレイバー窃盗事件だったのだが。 「担当の刑事の名前はわかるか?」 敬治は以前一時期、捜査一課に籍を置いていた時期がある。 伝手がないでもないし、担当者がわかれば今回の件に関連する事案も辿ることができる。 『松井……なんつったかな、松井……』 「孝弘」 『そう、それだ。松井孝弘。知り合いか?』 「昔、世話になったことがある。……そっちから当たってみるか」 『んじゃ、そろそろ切るぜ。ソフィアちゃんあたりに知れると捜査情報の漏洩がどうのって煩いからな』 「あぁ、このお返しはいずれ、精神的にな」 受話器を置く。 見計らったかのようにスーが茶の乗った盆を片手に給湯室から戻ってきた。 「お電話終わりましたか?」 「終わるの待ってから出てきただろう、白々しい。喉渇いたから茶くれ」 「ご自分でどうぞ♪」 いつも通り、盆の上には湯飲みが1つだけ。 「……あぁ、わかってたよ言ってみただけだ」 嘆息して腰を上げる。 事務員のフィス・ミリエラが非番なので、ポットは空のまま。舌打ちしてコンロに薬缶を乗せた。 「散らかったオフィスで茶をしばく中年2人。侘しい年越しですなぁ」 「こんな職種だ。出せるときに休みは出しとかないとならんだろう。侘しい年越しなのは同意だが」 工事現場の交通整理など一部を除けば警備会社は年中無休であるが、レイバー警備はその中にあっては若干特殊な扱いとなる。 というのも、商売道具であるレイバーがそれほど長時間稼働できないためである。ただ突っ立っているだけでもアクチュエーターは磨耗するし、バッテリーも消耗する。レイバーとの格闘戦など演じようものならメンテナンスを必ず挟む。 一朝事あらば、とかく危険な職場である。人も機械も休息は極力取らせなければならない。 バビロン・プロジェクトの護岸工事も年末は当然ストップするので、先のレイバー盗難のような突発的な事態でなければ出動はかからない。 年末年始ぐらいは、ということで出社は敬治とスーのみとし、他の社員は休みか、最悪でも自宅待機としたのは敬治の配慮であった。 「正月くらい家に帰らなくてもよろしいので? せめて連絡の一つも寄越さないと細君がお冠でしょう」 「こういう仕事だ、嫁も子供もわかってるよ」 正直、三行半を突きつけられてもしょうがないと半ば覚悟はしているのだが、どうにか連れ添って十余年。今のところ愛想を尽かされた様子はない。 「…………」 「なんだよ」 「あぁ、そういえば既婚者でしたねケイジさん。今ナチュラルにパティさんのこと聞いてました」 「……そっちはさっき電話入れた。紅白見てるとさ」 「そっちは連絡入れてるので?」 「わかってくれないからな」 実のところ2時間ごとの連絡義務を課されているので、年明け直前にもう一度連絡を入れなければならない。 新婚時代の嫁ですら此処まで束縛はしてこなかったと思うのだが。 「お熱いですなぁこのロリコン」 「会話をしろ」 「今頃一真さんはフィスさんとキャッキャウフフでしょうし康一さんもコレが出来たようですしロリコンケイジさんはロリコンゆえにロリとロリロリですし嫌ですねぇ、独り身はいよいよ私だけですか」 「だから会話をしろ。…………あ?」 思わず間抜けな声を出す。 ぴー、と笛を吹いた薬缶を、しばらく眺めた。 「マジで?」 「嫌ですなぁ、私が既婚者に見えます?」 「そこじゃねえ、その前」 「一真さんがフィスさんと年越しデート」 「そこでもねえ。っていうかまだその段階なのかよあの2人」 もう付き合って2年ほどになるはずなのだがどんだけ初々しいのだ。中学生か。いや今時中学生でもたまに行くところまで行ってしまう。小学生か。 「康一に?女?」 「出来たようですよぉ、どうやらホントに。最近、勤務明けはすぐ帰りますしあれは同棲までいってるんじゃないですかねぇ」 「ほーぉ」 安い茶葉の入った急須から愛用の湯飲みに茶を注ぎ、入れすぎてその場でひと啜り。 いつまで経っても利かん坊のあの糞餓鬼に。女。 「奇特なヤツもいたもんだ」 [No.660] 2018/01/02(Tue) 22:14:29 |