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No.85へ返信

all サイバーパンクスレ本編再録 - 桐瀬 - 2011/04/30(Sat) 22:37:17 [No.79]
ストレンジ・モーニング・デイ - 咲凪 - 2011/04/30(Sat) 22:37:53 [No.80]
終焉の位階計画 - ジョニー - 2011/04/30(Sat) 22:38:27 [No.81]
Return failed 1 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:39:17 [No.82]
マッド・アヘッド・ブラッド - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:40:03 [No.83]
Return failed 2 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:40:38 [No.84]
キス・デス・ケース - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:41:08 [No.85]
とある電脳の魔術少女の日誌 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 22:41:52 [No.86]
フェイス・フェイス・フェイス - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:42:24 [No.87]
Return failed 3 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:42:58 [No.88]
長耳の懇願 - ロングイヤー - 2011/04/30(Sat) 22:43:51 [No.89]
ドクター・ザ・ライアー - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:44:37 [No.90]
霧積さんちの魔術少女 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 22:45:17 [No.91]
微睡みを壊すもの - 上山小雪 - 2011/04/30(Sat) 22:46:19 [No.92]
セレクト・ルート・サイド - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:46:47 [No.93]
魔術少女の一存 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 22:48:14 [No.94]
Return failed 4 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:48:51 [No.95]
長耳の危機 - ロングイヤー - 2011/04/30(Sat) 22:49:46 [No.96]
その覚悟は - キュアスノー - 2011/04/30(Sat) 22:50:31 [No.97]
パラサイト・ナノブレイカー - ドク - 2011/04/30(Sat) 22:51:42 [No.98]
グッバイ・ロング・イヤー - 咲凪 - 2011/04/30(Sat) 22:52:16 [No.99]


キス・デス・ケース (No.84 への返信) - 雉鳴・舞子

 答えない、というのも正しいが、答えられない、というのがより正しい。
 私は決して記憶喪失では無い、自分が雉鳴舞子である事を思いだせるし、自分の親の顔を思い出す事が出来る、自分が冷凍睡眠をしていた事も、思い出してきた所だ。

 ただ、思い出せない事もある、ペットを飼っていたように思うのだけど、何を飼っていたのか、本当に飼っていたのかを思い出せない。
 もしかしたら、誰か知り合いが飼っていたペットを、自分が飼っていたと錯覚しているのかもしれない、記憶が混乱しているのだ。
 おそらくこれは冷凍催眠後の影響で、時間を掛ければ記憶がスムーズに回復するのか……それはわからない。

 ただ一つ思い出したのは、私が病に侵されていた事。

 私が冷凍睡眠していた理由であり、私を長年苦しめてきたモノ。
 これが今、私の体の中でどうなっているのか……これも判らない、先ほどの呼吸困難は私の病気の症状では無いし、それにキ……。

「ああああ……」
「どうしたんだ、古いコンピュータゲームの主人公の名前を適当に付けるような声を出して」
「アンタを呪ってたのよ……」
「そうか」

 キス。
 いや、違う、あれは人工呼吸だったのだ、断じて、断じてキスでは無い、認めない、許さない。
 ……閑話休題。
 あの後、呼吸が落ち着いたのは確かだ。
 この怪しくて怪しくて溜まらない男、深選を多少なり信じる……いや、状況に流されているだけで、信じてはいないのだけど、それでも騒いで抵抗する事を止めたのはそれが理由だ。

『ようこそ、我が家へ』

 担ぎ上げられたまま、どうする事も出来ずに居ると、深選の方から声を掛けられた。
 だから、彼の視線がある方に目を向けた、目の前には幾層にも重なる積層式……とでも言うのだろうか、論理的のような、不可思議のような、やたらと高く高く伸びた街が広がっていた。

「……何、コレ」
『日系人……日本語を話していたからジャパニーズに違いないと思っていたんだが、ブシドー租界は初めてか?』
「武士道?、何それ、何なのよもう……」

 見知らぬ街は、驚きと共に、本当に自分が見知らぬ地に居るのだという事を思い知らせてくれた。
 目尻に涙が浮かびそうになる、心も折れそうだ、いや、本当ならもうとっくに折れてる所なのだが、不幸中の幸いで、体が本調子でないのに合わせて心も本調子でないらしい、適度に麻痺して、何とか折れないで居てくれている。

「何処に行くの……」
『俺のアパートメントだ、とりあえずはな』
「…………」
『そう警戒するな、何もとって喰う訳じゃない』
「だって……!」
『お前を襲った連中とは違う』

 自分の体がそれだけでビクッと怯えた事に、私自身が驚いた。
 あぁ、そうだ、私は襲われたんだ、勿論動物……犬や熊なんかでは無く、人間に。
 人間に襲われたというのに、まるで犬か熊に襲われるようだった……それしか覚えてない、かろうじて纏っていると言える服は酷い有様だが、それでも深選が乱入して来てくれたおかげで、無事助かったと言える。

 ……あれ?、なんか忘れてる。

「あー!」
『大声を出すな、また呼吸が……』
「服!、やだ!?、ちょっと、このまま連れ歩かないでよ!、私殆ど裸じゃない!?」
『大声を出すな』
「だって!」
『お前が大声を出せば、また面倒事が起きて、お前の身は危うくなる』
「……!」

 さすがに、黙る。
 もう二度とあんな思いはごめんだ。
 私が黙った事に満足したのか、深選は何も言わずに足を……彼のアパートにだろう、進めていった。


[No.85] 2011/04/30(Sat) 22:41:08

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