サイバーパンクスレ本編再録 - 桐瀬 - 2011/04/30(Sat) 22:37:17 [No.79] |
└ ストレンジ・モーニング・デイ - 咲凪 - 2011/04/30(Sat) 22:37:53 [No.80] |
└ 終焉の位階計画 - ジョニー - 2011/04/30(Sat) 22:38:27 [No.81] |
└ Return failed 1 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:39:17 [No.82] |
└ マッド・アヘッド・ブラッド - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:40:03 [No.83] |
└ Return failed 2 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:40:38 [No.84] |
└ キス・デス・ケース - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:41:08 [No.85] |
└ とある電脳の魔術少女の日誌 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 22:41:52 [No.86] |
└ フェイス・フェイス・フェイス - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:42:24 [No.87] |
└ Return failed 3 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:42:58 [No.88] |
└ 長耳の懇願 - ロングイヤー - 2011/04/30(Sat) 22:43:51 [No.89] |
└ ドクター・ザ・ライアー - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:44:37 [No.90] |
└ 霧積さんちの魔術少女 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 22:45:17 [No.91] |
└ 微睡みを壊すもの - 上山小雪 - 2011/04/30(Sat) 22:46:19 [No.92] |
└ セレクト・ルート・サイド - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:46:47 [No.93] |
└ 魔術少女の一存 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 22:48:14 [No.94] |
└ Return failed 4 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:48:51 [No.95] |
└ 長耳の危機 - ロングイヤー - 2011/04/30(Sat) 22:49:46 [No.96] |
└ その覚悟は - キュアスノー - 2011/04/30(Sat) 22:50:31 [No.97] |
└ パラサイト・ナノブレイカー - ドク - 2011/04/30(Sat) 22:51:42 [No.98] |
└ グッバイ・ロング・イヤー - 咲凪 - 2011/04/30(Sat) 22:52:16 [No.99] |
「ね、ねぇ」 マイコは、両手で裸同然の身体を抱え込みながら言った。 「贅沢は言わないけど、せめて何か服、くれない……?」 視線には未だに不信の色が濃い。次の瞬間にも俺が自分を劣情のはけ口にするかと怯えている様子だ。 無理もないし、それほど外れた想像でもないので訂正はしないが。 とりあえず、俺はベッドのシーツを適当に放った。数日仕事で留守にしていたので、シャツの類は全て洗濯機に突っ込んだままだ。アーマージャケットの類よりは軽くて柔らかいシーツのほうがいくらか気が利いているだろう。 そう思ったのだが、マイコは酷く不満な様子だった。 ……まぁ、無理もない。彼女の身の上話を信じるなら、生まれ育ったのは21世紀の日本。よほどの貧乏人でなければ衣食住に困ることはない頃だ。 『しかし、コールドスリープで眠らされた病気持ちか……』 似たような話はよく聞くが、生きて解凍された例ははじめて見た。大概その手のヤツは装置の不備で眠ったまま腐り死んだり、ギャングにバラされて肉屋に売られるのがオチだからだ。 そういうことを説明してやると、マイコは震え上がった様子だった。まぁ、俺が助けなければ同じ末路だったのだから当然だが。 「で、わ、私をいったい、どうするの?」 本題に切り込んできた。 韜晦してもしょうがないので、俺は素直に返すことにする。 『それを困っている。いいか、まず言っておくが』 ゆっくりと、咀嚼してやるように丁寧に伝えた。 『俺は慈善家でもなければ、慈善事業なんぞこの上海では笑えないだけジョークより価値がない、ということだ』 俺がマイコを救う過程で払った支出は、9mm弾7発と1戦闘分の労力。あわせてざっと620新円(21世紀の日本円で言うと概ね62000円)程度が相場か。 ギャングの死体から剥ぎ取った他のものは査定不能なレベルだったので、俺としてはどうにか唯一の戦利品とも言えるマイコから620新円分のプラスを得なければならない。 最初はマイコを保護して親元まで連れて行き、謝礼をせしめる予定だった。あるいは渋るようなら身代金を。だが、このプランはマイコの両親どころか親類縁者が遠の昔に死亡していることでネガティヴとなった。 バラして臓器業者に売り払うのはさすがに気分を害するからナシとして、娼館に売り払おうかと思っていたが、病気(何の病気かは知らないが)持ちとなるとまず買い手がつかない。 そんなことを説明してやると、マイコの顔はみるみる青くなった。 「さ、さっきのならず者と一緒じゃない!何が『お前を襲った連中とは違う』よ!」 『違う』 失敬なヤツだ。 『俺は、他人の持ち物を不当に暴力で奪う真似はしない。ビズは常に等価交換であって然るべきだというのが、俺の信条だ』 逆に言えば、対価なしに人に施しは絶対にしないのが俺の信義だ。 気まぐれな慈善は、"俺が救わなかったものに対しての"不義理になる。 『然るに、マイコ。俺はお前が犯され殺され解体され売り飛ばされるのを阻止した。押し売りの取引なのは認めるが、謝礼はするべきだと思うし、俺はなんとしてもせしめる気でいる』 マイコは押し黙った。 決して納得はしていないが、反論する余地……あるいは、度胸……はない。そんなところか。 「……お金なんか、無いわ」 『そうだろうな』 「お金に換えられるものもない」 『あぁ、弱った』 「じゃあ、どうするのよ」 『そうだな』 俺はマイコをまじまじと見ると、顎をくいと上げて、視線を合わせる。 まぁ、顔立ちは端整なほうだろう。磨けばさぞ光るとは思う。 『ただ、年がな……』 「は?」 『俺の相手をしてもらうぐらいしかないかと思ったが、少しばかり小便臭すぎる。 肉付きももう少しあるほうが好みだ』 マイコは吼えた。 がぁっ!という勢いで。字にしづらい鳴き声で。手を振り回しながら。 「なんでそんなくそみそ言われた上にアンタなんかにだ、だ、だ、抱かれなきゃいけないのよーっ!?」 罵詈雑言をまくしたてるマイコを適当にあしらいながら、俺はどうにか一つだけ建設的な案を講じていた。 ……ひとまず、闇医者に診せてマイコの病名を確かめるか。結果として診療代分の価値が捻出できるかが怪しいところだが。 [No.88] 2011/04/30(Sat) 22:42:58 |