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No.90へ返信

all サイバーパンクスレ本編再録 - 桐瀬 - 2011/04/30(Sat) 22:37:17 [No.79]
ストレンジ・モーニング・デイ - 咲凪 - 2011/04/30(Sat) 22:37:53 [No.80]
終焉の位階計画 - ジョニー - 2011/04/30(Sat) 22:38:27 [No.81]
Return failed 1 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:39:17 [No.82]
マッド・アヘッド・ブラッド - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:40:03 [No.83]
Return failed 2 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:40:38 [No.84]
キス・デス・ケース - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:41:08 [No.85]
とある電脳の魔術少女の日誌 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 22:41:52 [No.86]
フェイス・フェイス・フェイス - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:42:24 [No.87]
Return failed 3 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:42:58 [No.88]
長耳の懇願 - ロングイヤー - 2011/04/30(Sat) 22:43:51 [No.89]
ドクター・ザ・ライアー - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:44:37 [No.90]
霧積さんちの魔術少女 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 22:45:17 [No.91]
微睡みを壊すもの - 上山小雪 - 2011/04/30(Sat) 22:46:19 [No.92]
セレクト・ルート・サイド - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:46:47 [No.93]
魔術少女の一存 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 22:48:14 [No.94]
Return failed 4 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:48:51 [No.95]
長耳の危機 - ロングイヤー - 2011/04/30(Sat) 22:49:46 [No.96]
その覚悟は - キュアスノー - 2011/04/30(Sat) 22:50:31 [No.97]
パラサイト・ナノブレイカー - ドク - 2011/04/30(Sat) 22:51:42 [No.98]
グッバイ・ロング・イヤー - 咲凪 - 2011/04/30(Sat) 22:52:16 [No.99]


ドクター・ザ・ライアー (No.89 への返信) - 雉鳴・舞子

「よぉ深選じゃないか……ん?」

 深選に連れられて来た“闇医者”というのは、外見からはとても医者には見えないアロハシャツを着た、髪をボサボサにした中年男性だった。
 ブシドー租界、とかいうこの街の外れ(と、深選は言っている、土地感が無いので私には判らない)にあるギリギリ診療所に見えなくも無い建物に彼は住んでいた。
 ……建物の前に、有名なフライドチキンのお店の人形が飾ってあったけど、少なくともフライドチキンを売っているようには見えない。

「深選、お前いつかやるとは思ってたが、やっぱりロリコンだったんだな」
『ちがう』
「なんだ違うのか」

 ロリコン……つまり私は彼から見ればそれだけ幼く見える、という事らしい。
 癪に障る話ではあるが、これまでの経緯で正直心身共に疲れ果てていた私には、そこに突っかかる気力は無い。
 理解出来ない訳では無いが、自分の過ごしていた世界が遠い過去だなんて、そう易々と受け入れられる事では無い。
 これだけのリアルの中にあって、「ドッキリじゃないの?」と我ながら甘すぎる考えが頭を過ぎったくらいには、信じたくない事実だった。

「……ナァルホド、それでこの病気のシンデレラを診てくれってぇ事か」
『あぁ、高くなるか?』
「いやぁ、見ただけじゃ何とも、お触りは?」

 深選は少し考えて。

『勝手にすると良い』
「勝手にするな!?」

 そのやり取りを見てケタケタと笑っていた闇医者の男が、くい、と立てた親指で彼の後ろにあった機械を指し。

「まぁ俺はロリコンじゃないから安心してよ、こっちの機械で検査するから」
「あ、はい……」

 その機械はCTスキャンの装置のようであったが、私が暮していた時間軸の病院で見たようなモノと比べると格段にコンパクトに思えた。
 しかし医療器具の登場はいよいよこの男が本当に医者なのだという説得力を感じる、素直に私は機械のベッド部に横になった。

「そんじゃそのまま動かないでねー、ウチの機械そんなに精度高く無いから」
『……ブシドー租界の闇医者でこれだけの設備をもってるのはアンタくらいだがな』
「惚れんなよ?」
『惚れるか』

 深選と闇医者の個人的なやりとりは“日本語では無い”ので私には何を言っているのか判らない。
 そうこうしている間に、仰向けに横になっていた私の上を天井側に備え付けられた機械から放たれた緑色の光が通過していく。
 ピー、というお決まりのような音を二度程立てた後、ガクン、と天井側の機械が下りてきて、まるで箱に蓋をするように私が横になる下のベッドと合体した。
 ……暗闇では無かったし、完全な密封状態では無いが、それにしてもロッカーに閉じ込められたようで少し気分が悪い、冷凍睡眠装置に入る前も、こんな気分だったのかもしれない。



 ガシュ、と音を立てて(外側から見れば箱のような形になっていたのだろう)機械から解放された私は、闇医者の「起きていいよ」の声を聞いて起き上がった。
 これだけで検査は終了したらしい、血を抜かれたりするのかと思っていただけに、少し拍子抜けだったが、こんな所の得体の知れない注射を刺されなかった事にはホッと胸を撫で下ろした。

『で、どうなんだ、実際の所』
「ガンの一種だね、だいぶ特殊なタイプだけど、大丈夫、治る治る」
「え……っ!」

 驚きだった、私の病気は原因不明のモノだとばっかり思っていたのに、ガンの一種!?。

「だって、ガンの症状なんて……」
「言ったろ、特殊なんだよねー。 便宜上ガンに分類してるだけで、もっと違う奴なんだなぁこれが」

 それだけ言うと、闇医者は深選に「治しとく?」と尋ねた。
 深選はというと、少し考える仕草を見せた後……。

『それだけか?』

 と尋ねた。

「エグいねぇ深選、いや……聞かれなきゃ黙ってようと思ってたんだが」
「な、何……?」
『聞かせてもらえるな』
「あぁ、結論から言うとこの子の病気は治る、けどまぁこの子の中身はそれだけじゃあないんだなぁ、これが」

 何を言っているのだろう、それを語る口調は妙に楽しげだった。

「この子の中には一種の寄生生物が居る、何処でこんなの貰って来たんだか、例の病気のガン細胞を隠れ蓑にしてたんだねぇ」
『寄生生物?』
「あぁ、か〜なりレア物だよ、得したねぇ深選。通称“ナノブレイカー”、本来は共生する生物なんだが、その際に寄生先の体細胞を自分が過ごし易いように作り変える、これが転じて、ナノマシンには致命的な毒になるんだなぁ、これが」
『ナノマシンをガン細胞化する事で無力化する……?』
「YES!、なぁ深選、治療の金は要らんから、この子を俺にくれんか?」

 深選と闇医者の話は、やはり日本語では無いので判らなかったが、それでも何か不穏な話をしているという事だけは……理解できた。


[No.90] 2011/04/30(Sat) 22:44:37

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