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all サイバーパンクスレ本編再録 - 桐瀬 - 2011/04/30(Sat) 22:37:17 [No.79]
ストレンジ・モーニング・デイ - 咲凪 - 2011/04/30(Sat) 22:37:53 [No.80]
終焉の位階計画 - ジョニー - 2011/04/30(Sat) 22:38:27 [No.81]
Return failed 1 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:39:17 [No.82]
マッド・アヘッド・ブラッド - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:40:03 [No.83]
Return failed 2 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:40:38 [No.84]
キス・デス・ケース - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:41:08 [No.85]
とある電脳の魔術少女の日誌 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 22:41:52 [No.86]
フェイス・フェイス・フェイス - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:42:24 [No.87]
Return failed 3 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:42:58 [No.88]
長耳の懇願 - ロングイヤー - 2011/04/30(Sat) 22:43:51 [No.89]
ドクター・ザ・ライアー - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:44:37 [No.90]
霧積さんちの魔術少女 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 22:45:17 [No.91]
微睡みを壊すもの - 上山小雪 - 2011/04/30(Sat) 22:46:19 [No.92]
セレクト・ルート・サイド - 雉鳴・舞子 - 2011/04/30(Sat) 22:46:47 [No.93]
魔術少女の一存 - イライザ・F・霧積 - 2011/04/30(Sat) 22:48:14 [No.94]
Return failed 4 - 深選 - 2011/04/30(Sat) 22:48:51 [No.95]
長耳の危機 - ロングイヤー - 2011/04/30(Sat) 22:49:46 [No.96]
その覚悟は - キュアスノー - 2011/04/30(Sat) 22:50:31 [No.97]
パラサイト・ナノブレイカー - ドク - 2011/04/30(Sat) 22:51:42 [No.98]
グッバイ・ロング・イヤー - 咲凪 - 2011/04/30(Sat) 22:52:16 [No.99]


長耳の危機 (No.95 への返信) - ロングイヤー

 ロングイヤーはヒィヒィと情けない声を上げながら路地から路地へと駆けていた。
 既に自分が何処を走っているのかもわからない。無論、確認すればすぐに判明するであろうがそんな時間があれば少しでも遠くへ逃げることを選択していた。

 あの3人とは襲撃があってからすぐに逸れた。
 あるいは自分が囮として見捨てられたのではと、ちらりと脳裏を過るが詮索する暇などありはしない。
 襲撃者はもちろんあの3人と比べても今のロングイヤーは足が遅い、少女型義体なんぞにするんじゃなかったと内心過去の自分を罵る。

「ヒクゥ!?」

 目の前の曲がり角から現れる、鋼鉄の人食い蜘蛛。ロングイヤーが内心惚れ惚れするような反応速度で残った左手で護身銃を抜いて相手に3発叩きこむ。
 が、甲高く空しい金属音を立てるだけで相手の装甲の僅かなへこみすら作ることは出来なかった。

 主に拠点防衛に用いられる軍用自立型機械兵器。
 目の前のキリングマシーンは多少型は古いが、戦闘用でもなんでもない少女型義体のロングイヤーを五十人殺してもお釣りがくるだろう。
 なによりもその殺人機械にマーキングされた、二つに割れた十字架が描かれた棺桶のマーク。
 つまるところカルト教団にしてテロ組織である「終焉の位階」のエンブレムが施されたその兵器、それを操る人物を情報屋であるロングイヤーは知っていた。

「ア、あぁああぁぁぁっ!!?」

 振り下ろされる死を呼ぶ鋼鉄の脚を無様に転がりながら避けて、すぐさま建物の陰に飛び込む。
 重苦しい音と共に吐き出された銃弾が壁が削り、流れ弾で近くにいた不運な浮浪者が断末魔を上げる間もなくミンチになった。
 その不運な男に0.1秒にも満たない時間で哀悼の意を示して、再び駆け出す。

「な、なんでぇだぁ!?」

 教団にこうも付け狙われるとはロングイヤーも想定外であった。
 既に計画を掴んだことがバレて、部屋を吹き飛ばれた最初の襲撃からかなり時間が経過している。
 普通は既に情報は流れておりロングイヤーを消したところで遅いと判断するだろう、事実ロングイヤーはベヘモスの巻き添えを恐れて高飛びを考えたのであって、こんな手段に出るとは思っていなかった。

 オマケに、ロングイヤーの知る限り教団でこの手の機械兵器を使うのは一人しかいない。
 悪趣味な企業人に面白半分で散々身体を弄られて飽きたからとスラムに捨てられ、そこを教祖グレーシスに拾われたという、教祖グレーシスの右腕にして狂信者!

「…………ぁ」

 路地の向こうに、襤褸切れのようなローブを羽織った、今のロングイヤーよりも尚小さい人影あった。
 ローブの向こうであっても尚、その肥大化した頭部がわかり、その人影が一歩ロングイヤーの方に踏み出せばその小柄なシルエットからは想像できない重い足音を響かせ、踏まれた鉄パイプはプレスに掛けられたかのように潰れて曲がる。

「……ぁ…あぁ………ああぁぁああぁぁぁぁあああああ!!!」

 ロングイヤーは、その人物を知っていた。
 直接目にしたことないし、ましてローブに隠れてその容貌を窺うことはできないが、それでもその特徴だけで判別は容易だった。


 一人の双子、キリングドール、教祖の右腕、終焉の位階狂信者、狂気の軍団………

「教祖様は、あなたを、神の御許、に、送ること、をお望みで、す。ねぇ、お兄様」
「えぇ、そして、ワタシタチが、私が、その役、を、受けたま、わり、ま、した。お姉様」

 そいつは壊れたテープのように途切れ途切れで、感情が見えない無機質な中世的な声で二度喋る。

 双子の脳を一つの身体に押し込めた狂気の産物。教団最高最悪のハッカーであり、最大50体もの殺人機械を操るという、そいつは確かこう呼ばれていたはず。

「…………デェリート」

 消えた双子、抹消された者、そして抹消する者。


[No.96] 2011/04/30(Sat) 22:49:46

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