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No.213に関するツリー

   特撮ヒーロー本編スレ再録 - ありくい - 2011/05/01(Sun) 21:06:56 [No.213]
Epic.1 護星天使、再臨 - 咲凪 - 2011/05/01(Sun) 21:07:56 [No.214]
蠢く闇1 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:10:03 [No.216]
彷徨うもの達 - ありくい - 2011/05/01(Sun) 21:11:07 [No.217]
蠢く闇2 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:12:33 [No.218]
蜘蛛と巨大化と初顔合わせ - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:13:58 [No.219]
蜘蛛と巨大化と初顔合わせ - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:14:35 [No.220]
蠢く闇3 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:15:53 [No.221]
彷徨うもの達2 - ありくい - 2011/05/01(Sun) 21:16:53 [No.222]
未来を切り開く者0 - ライン - 2011/05/01(Sun) 21:17:49 [No.223]
蜘蛛と巨大化と初顔合わせ - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:23:54 [No.224]
未来を切り開く者1 - ライン - 2011/05/01(Sun) 21:24:37 [No.225]
未来を切り開く者2 - ライン - 2011/05/01(Sun) 21:25:33 [No.226]
崩壊世界1 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:37:12 [No.227]
崩壊世界2 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:38:41 [No.228]
光の巨人1 - アズミ - 2011/05/01(Sun) 21:39:28 [No.229]
蛹と闇と草食系 - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:40:14 [No.230]
蛹と闇と草食系 - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:40:47 [No.231]
蛹と闇と草食系 - 新野 - 2011/05/01(Sun) 21:41:16 [No.232]
彷徨うもの達3 - ありくい - 2011/05/01(Sun) 21:54:11 [No.233]



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特撮ヒーロー本編スレ再録 (親記事) - ありくい

 ZECTのイリーガルなんていう副業をしていると、必然的に波乱の多い生活になる。もっとも、クエイク・ワン以降は多かれ少なかれ、平和維持にかかわる人間は激増したので俺だけに限った話ではないけれど。
 何が言いたいのかというと、この日を始まりとした一連の事件。これも間違いなく俺の人生における、大きな分岐点になったということだ。
 もっともこの時の俺は、そんな事は露ほども考えていなかったが。





●城南学園近辺●


 その日も大空尽介は、城南学園に向かい愛車を走らせていた。研究室で合同開発しているシステムのモニターに選ばれて以来、大学生とエージェントの二束のわらじの生活が、更に慌しくなった。
 しかし、それももう少しの辛抱。今日の起動テストが成功すれば、後は数回の微調整で完成する予定である。

 「上手くいけばいいけどな……ん?」

 鬱蒼と木々が茂り、くねくねと曲がりくねる道の先、誰かが横たわっている。
 バイクを止めて近づくと、髪の長い少女である。年齢は10代半ばから後半といったところか。着ているワンピースはぼろぼろで、恐らくは軽装のまま山中を駆け回ったと思われる。ざっと調べたが、脈拍も呼吸も安定している。疲労か何かで気絶しただけで、命に別状はなさそうだ。
 辺りを見回してみたが、少女の荷物らしきものは確認できなかった。

 「遭難者か……? こっからだと、山を降りるよりも一旦学園に運んだほうが早そうだな」

 少女を担ぎ上げようとしたところで何者かの気配を感じる。何処から湧いて出たのか(そう、まさに湧いて出た、という表現がぴったりなほどの唐突さだ)、大勢の人影が尽介と少女を取り囲む。
 およそ人間とはかけ離れた異形の軍団。嫌悪感を覚える唸り声を上げてじわじわと迫ってくる。

 「ワーム! それに幽魔獣やマクーの獣聖人……他にもぞろぞろと。とうとう仲良く同盟でもくんだのか!?」

 距離をとろうと後ずさるものの、すぐに林にぶつかってしまう。怪人達は尽介の言葉に答えることも無くどんどん包囲を狭める。――少女を担いだままではとても逃げ切れはしないだろう。

 選択肢1.少女を見捨てて逃げる
 選択肢2.SPIRITSに助けを求める

 「1は論外。2は到着を待ってる間にゆっくり殺される。となると……」

 少女をバイクの陰に置くと、怪人達を威嚇するように立ちふさがる。
 すると、何処からか蝶の形をしたロボットのようなものがひらひらと飛んできて尽介の手に収まった。
 手馴れた動作でそれをベルトのバックルに装着する。

 「選択肢3.自力で何とかする ――変身!」

 ――Henshin

 ベルトを中心に装甲が構築され尽介の全身を覆う。やがて現れたのは蛹の様な重厚の鎧。
 その大きな複眼が発光すると、弾かれた様に怪人との距離を詰める。

 「とはいえ、ちょっと敵が多すぎるかな。――はぁ!!」

 重い一撃に数体が吹き飛ばされるが、未だその数は多い。





●???●


 「……やっと『あれ』が見つかったか」

 何処とも知れぬ闇の中。重苦しい声が響く。
 すると、別の場所からまた声。

 「は。尖兵達に追わせております。……しかし、奴らに任せて大丈夫でしょうか? いつ裏切るやも」

 「構わん、手は打ってある。それにどうせあれらに扱える代物ではない」

 「は、差し出がましい真似を。引き続き捜索を続けさせます」

 そういうと、一人の気配が消える。
 残されたもう一人の声の主は、『あれ』と呼んだものにに思いを馳せる。

 「10年待った……。『あれ』が手に入れば、彼岸を達成できる。く、くくく……待っていろよ、地球人共! くくく、はーっはっはっは!!」

 その笑い声はどこまでも木霊し、やがて闇に消えた。


[No.213] 2011/05/01(Sun) 21:06:56
Epic.1 護星天使、再臨 (No.213への返信 / 1階層) - 咲凪

 尽助の纏うライダーシステムは対ワーム用に開発された戦闘用スーツである。
 その戦闘力は幼虫期のワームを数体相手にしても引けを取らず、また当初より集団戦を想定していたそのシステムの防御力は特筆するものがある、ワームの攻撃は勿論、幽魔獣や獣聖人等の攻撃さえおいそれと通用するものではない。

「とはいえ、なぁ!」

 目前に迫るワームの顔面を殴り飛ばし、尽助は“下がった”。敵の勢いを恐れた訳ではない、敵勢力の目的はあくまで少女であり――――尽助の打倒では無いのだから。

「さすがに、キツいんじゃねぇか、これは」

 あえて言えば、尽助ならば、仮面ライダーアゲハの能力をフルに利用するならば、この危機的状況を打開する事も可能なのだろう。
 だが、敵の目的が気を失って横たわっている少女にある以上、必然的にそちらに向かう敵の手を尽助は一人でフォローをしなければならない。
 一人を引き離して、蹴り飛ばすものの、追い討ちをかける暇もなく新しい敵が少女に向かっていく、キリが無い。

「くそ……」

 多勢に無勢を絵に描いたような状況、そこに――――。

「ゴセイブラスター!」
「……なんだ!?」

 そこに赤い戦士が現れるまでは。

 出現と共に赤い戦士が手にした銃型の武器から放った光線がワームの一体を打ち倒す。
 赤い戦士はまずワームや幽魔獣の群を見渡し、次にちらり、と倒れる少女を見て、そして尽助を見ると――――。

「蝶々のロボット!、女の子を助けるんだろ!?」
「ロボットじゃねぇ!、仮面ライダーだ!、っつか、誰だお前?」

 どうやら赤い戦士には強化スーツの装甲がロボットに思えたらしい、それを否定しつつ、問いかける尽助の言葉に、「あ、そうだ」と思い出したように呟く声は、若い青年の声であった。

「俺はゴセイファイヤー!、事情は判らないけど、力を貸すよ!」
「ゴセイファイヤー……聞いた事の無い名前だが――」

 尽助は後ろから忍びよる幽魔獣を裏拳で殴り、すぐさま振り向いてもう一度、今度は正面から幽魔獣を殴り飛ばす。そして背で赤い戦士、ゴセイファイヤーに答えた。

「見ての通りだ、手を貸してくれ」

 その言葉にゴセイファイヤーは「あぁ!」と気持ちの良い返事を返すと、彼の死角をフォローする為に尽助に駆け寄った。


[No.214] 2011/05/01(Sun) 21:07:56
蠢く闇1 (No.214への返信 / 2階層) - アズミ

「……不謹慎だって解ってはいるけど。パトロールって退屈ね」

 助手席で欠伸をかみ殺すGIAS新米隊員、アニーに、先輩たるミサキ隊員は苦笑した。

「それは君が集中し過ぎているからだよ、アニー隊員。
 目的を持った捜査と違って、パトロールは徒労に終わることも多い。薄く途切れない注意力が必要なんだ」

「なるほどね」

 根は真面目なアニーは、如何にも、と言った顔で頷く。
 つい先日の事件を機にGIASに入隊した彼女は、以前はジャーナリストだったらしい。起きた事件を追って駆けずり回る彼女には、起こるかも知れない事件に絶えず備えるパトロールという行為は、殊更に退屈に感じられただろう。

「それに、ここからは少し気を張った方がいいな。そろそろZECTの近くだ」

「ゼクト?」

「ワームと呼ばれる地球外生命体に専門で対処する組織だ。
 GIASとも今度技術協力が……」

 と、説明しようとしたその時。
 ミサキ隊員らの乗るギアスドライブ(GIASの制式採用装甲車)の前方で、閃光が走った。
 異常事態と見るや、我らがGIASの隊員たちの行動は迅速だった。

「ミサキくん!」

「アニー隊員は本部に連絡を!僕が先行して偵察する!」

「Rog!」

 腰のサイドブラスターを抜いて走り出すミサキ隊員に、アニー隊員は了解を送り車内の通信機を手に取った。





 突如、中空を裂いた光が不意打ちで残る3体のワームを撃ち抜いた。
 体長60mを超える巨大怪獣にも有効打を与える高出力レーザーである。さしものワームも消し炭になって転がる。

「新手か!?」

 ゴセイファイヤーが振り向くと、そこにはやたらに目立つヘルメットと制服を着た青年が、携行銃を構えていた。
 その三射で明らかなる敵対勢力は撃滅されたものの、青年は油断なく構えを解かずに、しかし口調だけは極力紳士的に彼らに問うた。

「僕はGIASのミサキ隊員だ、加勢に来た!
 そちらのスーツはZECTのマスクドライダーシステムだったと記憶しているが、君たちはZECTの職員か?」


[No.216] 2011/05/01(Sun) 21:10:03
彷徨うもの達 (No.216への返信 / 3階層) - ありくい



 ガァン!

 薄暗い密室に重苦しい金属音が反響し、最後のターゲットが正確に撃ち抜かれる。銃口から煙を上げる銃をホルスターにしまうとターゲットを撃ち抜いた人物は出口を振り向く。青と黒を基調とした身体、頭部には2本のアンテナと赤い大きな目の強化服。
 すると、部屋に照明が灯り女性の声がする。

 「お疲れ様、大空君。以上をもって最終テストは終了よ」

 カシュ、と音がして後頭部の装甲が収納されると、大空尽介はヘルメットを取り、外気に顔を晒した。

 「ふいー、やっと終った」









 「貴方のおかげでいいデータが取れたわ。ありがとう」

 部屋から出た尽介を迎えたのは、警察の制服に身を包んだ女性であった。
 彼女から手渡されたスポーツドリンクを口に含みつつ呟く。

 「どういたしまして。G3−Xか……実用化されれば頼もしい限りだな。怪人共に通用すれば」

 「引っかかる言い方ね?」

 「あいや、澄子さんの力を疑ってるわけじゃ無くってね?」

 澄子と呼ばれた女性――警視庁未確認生命体対策班実働部隊G3運用チームの長、小沢澄子は冷ややかに尽介を見やると

 「G3−Xは特殊な技能を必要としない、広く使われることを前提としたシステムよ。その為にはどうしてもパワーは犠牲になるの。その分汎用性が高く、十分な数が配備されれば今まで難しかった、敵勢力に対する戦力の組織的な運用が可能になるわ。貴方達が使うような力とは根本が違うの」

 怒涛のように言葉を繰り出す小沢に、参りましたとばかりに両手を上げる尽介。

 「降参、俺が悪かったです。それじゃあ早く実用化していっぱい配備して、俺らを楽にしてよ。……そういや確かに、アゲハには俺しか変身できないように設定されてるんだよな。兄貴もなんでそんなことしたんだか」

 ヒーローズの多くはその力を発揮するために、常人には無い特殊な技能や能力が必要なことも多い。それは尽介の場合も同じだ。
 マスクドライダーシステムの中枢・ゼクターは通常、その使い手を自分で選定する。しかし尽介が使うアゲハゼクターはそれ以外にも、尽介以外には使えないようにプログラムされている。
 それのせいで半強制的にZECTの一員として働く羽目になっているのだが、それはまた別の話だ。

 「まぁ当然、使いやすさを優先しすぎて敵に対抗する力がありませんでした、じゃ話にならないからね。貴方を含む数人のテストケースでバランスを測っていたって訳」

 「俺なんかで参考になればいいけどね」

 「ZECTのマスクドライダー様が何言ってるの。此処に来る前も一暴れしてきたそうじゃない」

 「ん、ああ……まぁね」

 尽介は苦々しい顔になり、曖昧に頷く。
 それは今から数時間前のことだ。







 「GIASの隊員さんか、助かったよ。俺は大空尽介。お察しの通りZECTの一人さ。イリーガルだけどね」

 最後の怪人が倒れ、周囲の安全を確認すると尽介はバックルからゼクターを引き抜いた。
 変身をとくと、ジャケットからZECTの未分証明証をミサキに見せる。

 「俺は護星天使の一人、ゴセイファイヤー。ハルトと呼んでくれ」

 ゴセイファイヤー――ハルトも変身を解く。

 「大空尽介とハルトか、了解した。しかし、見たところ大量のワーム達に襲われていたようだが、こんなところで一体何があったんだい?」

 「いや、俺にも良く分からないんだけどさ……」

 学園に向かう途中起きた事を説明する。行き倒れた少女、突如現れた怪人達、ゴセイファイヤーとミサキの助力。

 「なるほど、複数の勢力が手を組んだ可能性が……。それが本当だとしたら、戦いは今まで以上に苛酷なものになる」

 「でも、なんでワーム達はこの子を狙ったんだろう? 見たところ普通の女の子みたいだけど……」

 「さてね。見たところ荷物もないみたいだし、この子が起きたら直接聞くしかなさそうだ。とりあえずミサキさん、この子を学園まで運んでくれるかい?」

 了解した。とミサキが少女を背負った時である。



 「――やれやれ、どうやら出遅れたようだな」

 森の中から人影が現れる。長身の、眼鏡をかけた男だ。

 『誰だっ!!』

 ミサキとハルトが弾かれたように振り向き身構える。
 しかし、不敵な笑みを浮かべる男が見ているのは、二人ではなかった。

 「お前がそいつを保護しているとはな……尽介」

 男が言い終えるが早いか、尽介が吼える。

 「手前……どの面下げて現れやがった!!」

 その怒号に答えるかのように、尽介の手中にアゲハゼクターが飛んでくる。しかし、長身の男はおどける様にひらひらと両手を挙げ、降参のポーズを取った。

 「落ち着け。今お前達と戦う気は無い。ヒーローズ3人を1人で相手になんぞしたくないからな」

 からかうような口調で、男は背を向けて歩き始める。

 「ああ、その女は大事にすることだ。世界を滅ぼしたくなかったら、な」

 「……どういうことだ!?」

 「じきに分かる。もっとも、その時はその娘は俺が貰い受けるがな。それまで精々護ってやることだ」

 尽介達を振り返ることも無く、男は森に消えていく。やがてその気配が完全に消えると、重苦しい空気が残った。

 「あの野郎、勝手なことを……!」

 毒づく尽介に、ハルトが問いかける。

 「尽介、今のは一体誰なんだ? 知り合いみたいだけど……」

 しばしの沈黙の後、吐き捨てるように尽介は呟く。

 「……奴は大空一也。俺の死んだ兄貴さ」







 先ほどの出来事を思い返していた尽介の意識を、電話のコール音が引き戻した。自分の携帯端末を見ると、先ほど交換したばかりの新しい番号からの着信である。

 「ハルト? 何かあったのか? え、意識が戻った? ああ、分かった。すぐ行く」

 通信を切ると、尽介は小沢に頭を下げる。

 「澄子さんごめん、ちょっと用事できちゃったんで俺はこれで!」

 「まったく、忙しないわね。今後の詳しいことは後日連絡するわ。お疲れ様……って、聞いてないわね」

 既に尽介が走り去ったドアを見ながら、やれやれと肩をすくめる。




 「記憶喪失!?」

 少女を運び入れた医務室の前の廊下に素っ頓狂な声が響く。ハルトから聞かされた説明に、尽介が上げた声だ。

 「とは言っても、今回の件が原因な訳ではないようだ。何故なら、彼女の記憶が途絶えているのは10年前かららしい」

 「クエイク・ワンの時に記憶を失ったそうだ。それ以来、今回だけじゃなくてずっと怪人達から逃げる生活を送っていたらしいんだ……。自分が誰なのかも、名前すらも思い出せないまま」

 「そんな……。そんな状態で、10年も逃げ回ってたってのか? 何でそんな目に遭わなきゃいけないっていうんだ……」

 尽介はミサキとハルトの説明に愕然とする。
 記憶を失い、怪物達に狙われ10年間の逃亡生活。それがどれだけ過酷なものか、とても想像することは出来なかった。

 「SPIRITSに彼女の保護と、身元の調査を頼もう。クエイク・ワン以降戸籍等のデータも怪しいが、何か分かるかもしれない」

 慰めるようにミサキが肩を叩く。その言葉に頷くと、医務室の扉を見る。その中には付き添いのアニー隊員と、名前も分からぬ少女がいる。
 意識を取り戻した彼女は、一体何を思っているのだろう。


[No.217] 2011/05/01(Sun) 21:11:07
蠢く闇2 (No.217への返信 / 4階層) - アズミ


 時間は、僅かに遡る。



 医者や看護婦が消えたのを見計らって、ミサキ隊員は保護した少女の病室へ入った。
 ベッドの上に横たわる少女は、一見して怪我の類はなく、呼吸も安定して見える。担当医の報告によれば身体検査に不審な点は見当たらなかったとのことだが……。

「むん……!」

 ミサキ隊員が意識を集中すると、その視界に映る少女の身体の内部がCTスキャンにかけたように透視される。
 ウルトラマントゥモローたる彼は地球人類にはない様々な超感覚を備えているが、ミサキ隊員の姿のままであってもそれらの一部を使うことができるのだ。

(地球人類の身体に一見そっくりだが……血液成分や脳構造に僅かな差異がある……?)

 緊急搬送であったがゆえに、運び込まれたこの病院の検査機器はGIASやSPIRITSの専門医療施設に比べれば劣る。そのため精密検査でも露見しなかったのだろう。

(宇宙人……いや、それにしては地球人に近すぎる。強いて言えば擬態したワームのようなズレだが……)

 先刻、この少女を襲った連中は混沌とした顔ぶれではあったものの、GIASによって人類の敵性存在として判断された勢力ばかりだった。
 そして、最後に警告に現れたあの男……尽介は『死んだ兄』と形容したが、あれはミサキ隊員が透視した情報によればまず間違いなく、あれもまた擬態した――……

 その時、胸のGIASメテオのランプが緑に点滅した。GIAS本部からの通信である。
 ミサキ隊員は人目を確認して病室を辞し、廊下で通信を開いた。

『こちら本部、ミサキ隊員応答せよ』

 中年男性の、少し外国訛りを残した日本語。GIAS日本支部実行部隊のゴールドウィル隊長であろう。オペレーターを兼任するアニー隊員が出動しているときには、彼自身がこうして直接指令を下すことも多い。

「こちらミサキ、どうしました、隊長?」

『君の報告した少女だが、SPIRITSが受け入れを承諾した。敵性組織に狙われているとのことなので、護衛1個小隊と共に搬送車がじきにそちらに着く。
 彼らに護衛を引き継いだら、一度アニー隊員と共に本部へ帰還したまえ』

「了解」

 メテオのランプを押すと、通信が切れる。
 ハルトに連れられた尽介がやってきたのは、それから10分後のことだった。





 病院食というものは消化器系の弱った老人から厳しい摂食制限を課された患者まで、ある程度対応しなければならないため非常に味付けが薄く、有体に云うと不味い。

「……おかわり!お願いします!」

 しかし、面会謝絶の解かれた少女は尽介らの目の前でトレイの上の病院食をあっという間に平らげ、そんなことまで言って見せた。

「病院食でおかわりはできないわよ……」

 呆れた様子で言うアニーに、少女はあからさまにしょげて、渋々
「ごちそうさま」と言って手を合わせた。

「げ……元気そうだな」

 その過酷な反省と繊細な外見から、てっきり物静かな性格かと思っていた尽介は肩透かしを食らった様子だった。

「いやー、どうもおかげさまで。助けてもらっちゃったみたいで、どうもでした」

 少女は頭を掻いて、てへへと笑う。

「で、話を元に戻すが……空奈(あきな)くん?」

「はい、はい」

 トレイが片付けられるのを待って切り出したミサキ隊員に、少女は随分軽い様子で応じる。
 ミサキはやはりどこか頭でも打ったのではなかろうかと少し心配になりながら、質問を続けた。

「君は彼ら……ワームやマクーに狙われる理由に、心当たりは無いんだね?」

「はい。かれこれ10年も逃げ回ってますけど、正直どうしてなのかはちょっと。
 捕まれば解るのかもしれませんけど、それはヤですし」

「そりゃあ、そうだろうなぁ」

 ハルトはやはり呆れ顔で頷いた。

「とまれかくまれ、じきにSPIRITSが君を保護しにやってくる。それまでは我々が君を護衛するから、安心してほしい」

「はい!お世話になりまーす」

 その底抜けに明るい様子に、やはりミサキ隊員はどこか歪な違和感を感じずにはいられなかった。




 同じ頃。


 そこは、惨憺たる有様だった。
 SPIRITSの誇るC-11装甲輸送車が横転して大破し、飛び出して応戦しようとした兵士たちは一人残らず粘性の白い糸のような塊に絡め取られ、身動き一つ出来なくなっている。
 全ては一瞬の出来事だった。
 彼らを無力化した張本人である怪人が、戦闘員を侍らせながら哄笑する。

「グオーッ、グオッ、グオーッ……口ほどにもない奴らめ」

 しかし、抵抗すら出来ない状態でも、彼らはまだ一人として殺されてはいない。
 怪人もまた、戦闘員たちに彼らのとどめを命じはしなかった。

「そのツラは見たことがあるぜ……ショッカーの蜘蛛男」

 まだ、眼前に。怪人の凶行を止めようとする者がいたから。

「グオーッ、グオーッ……貴様……何者だ?」

 SPIRITSの隊員ではない。何処にでもいそうな、身体を鍛えた様子さえない普通の青年だ。
 ……否。『ただの』青年であろうはずがない。彼ら改造人間の前に立ち塞がり、怯える様子一つ見せないのだ。
 『ただの』人間であるはずがない。『あの男たちでも無ければ』、そんな蛮勇に及ぶはずがない。

「『仮面ライダー』……」

 蜘蛛男の発した言葉に、青年が反応した。
 蜘蛛男はその反応に我が意を得たか、忌々しげにその牙をガチガチと鳴らす。

「やはり!貴様、仮面ライダーか!」

 それには不敵に笑って応じ、青年は小サイズのスキャナのような機械を掲げた。

「おうよ、名前は覚えなくていいぜ」

 それを腰に当てると、一瞬にしてベルトと化して装着される。

「俺はお前らをぶっ潰す……通りすがりの仮面ライダーだ!」

 脇の排出部から引き抜いたカードを掲げ、叫んだ。

「変身!」


――KAMEN RIDE
「DELAYED」!


[No.218] 2011/05/01(Sun) 21:12:33
蜘蛛と巨大化と初顔合わせ (No.218への返信 / 5階層) - 新野

「伊田須和男、現ショッカー所属、蜘蛛男・・・強化人間、ね」

蜘蛛男たちの戦いを横から見つめるシルクハットの男
その手にはショッカーのマークのついたバインダーが握られている

それは改造記録だろうか、蜘蛛男の過去が細かく書いてある
幼い頃に虫を殺した時に快感を覚え、20歳には快楽殺人者の仲間入り。
凶暴な性格はあるもののその身体能力を目にかけられショッカーに捕獲、改造されたとある

「いいね、うん、すごくいい。この男の欲望は純粋で原始的だ」

バインダーに挟んであるメダルを手にとりながら男は微笑を浮かべる

「きっと沢山稼がせてくれる」


「ディレイド・・・・グオーッ!やってしまえ!」

「イーーーッ!」

蜘蛛男が咆哮にも似た声で戦闘員に指示をだす
一糸乱れぬ動きでディレイドを包囲し突撃してくる戦闘員達

「仮面ライダー、いつでもお前たちは俺たちの邪魔をする!だが今日でそれも最後だ!」

「その仮面ライダーに何度も何度も潰されているのは何処の誰だったかな?」

一人目の戦闘員を蹴り飛ばしながらライドタブラーを展開しその刃を撫でるディレイド
次から次にかかってくる戦闘員を片端から切り伏せていっている

「ほざけ!グオーーー!!」

怒りの声とともにディレイドに発射される白い塊
装甲車や隊員を絡めとった粘着性の糸だ

「くっ、厄介な攻撃を・・・ん?」

短剣を振るい塊を切り落としながら悪態をつくディレイド
するとドライバーの排出部からカードが一枚、飛び出して手に収まる

「コイツを使えって事か・・・わかった!」

カードをバックルに装填すると機械音声が鳴り響く

「ATTACK RIDE  BLAST!!!」

「何っ、銃だと・・グオーーーッ」

ライドタブラーをすばやく銃に変形させ塊を打ち落とし蜘蛛男にも銃撃を浴びせていく

「グオッ・・・まだだ、この程度で俺は潰されは」

『FINAL ATTACK RIDE・・・』

「ああ、そうだろうな・・・だがこれで終わりだ」

『DYL・DYL・DYLAYED!!!』

「何度もほ・・ざ・・く・・あ・・・?」

蜘蛛男を含むすべてがモノクロに変わる
それはまるで昔映写機でながされていた無声映画のようだ
動きが鈍くなった蜘蛛男の前にカードが展開される。そのカードめがけてライドタブラーの引き金をひく・・・!

「グオオオオオオオオ!!!!」

すさまじいエネルギーが蜘蛛男を包むと同時に世界は色を取り戻した

/


[No.219] 2011/05/01(Sun) 21:13:58
蜘蛛と巨大化と初顔合わせ (No.219への返信 / 6階層) - 新野

「グオーッ・・・かめん・・らいだー・・・」

「意外とタフだな。あれを食らって生きているなんて」

エネルギーの通った後に倒れこんでいる蜘蛛男
意識はまだあるようだが、外からみただけで分かるほど体はボロボロになっていた

「いやはや、もう少し楽しませてくれるとおもいましたが」

「グオッ・・だ・・れだ・・」

大げさに首を振りながら出てきたシルクハットの男、そのまま蜘蛛男の横に立ちぼろぼろの怪人を見下ろす

「みていたのは分かってる。お前もショッカーの一員か?・・・いや、違うな。見覚えがある」

「ご名答です、ショッカーさんとは・・・そうですね、業務提携中、といった所です」

「その業務提携者が何の用だ?戦うというのなら・・」

剣をかまえるディレイド

「いえいえ、私が戦うなんてとんでもない、まだ『枚数』が整っておりませんので」

手をひらひらとさせながら笑う男

「私が用があるのはそこの蜘蛛男さん・・いえ、伊田さんの欲望ですよ」

平然とした様子で倒れている蜘蛛男の後頭部を掴み持ち上げる
片手には銀色のメダルが握られていた

「グオッ!一体何を・・・」

「強化人間でヤミーは生み出せるか、という実験ですよ」

「ヤミー・・・まさか!貴様はグリー・・・」

『その欲望、開放しなさい』

セルメダルを入れられた蜘蛛男の身体から白い怪物・・ヤミーが生まれる

「グオッ、グ・・・助け」

その怪物は振り向くと蜘蛛男をつかみ一口で飲み込んでしまう

あっけにとられていたディレイドの前で更なる変化はすぐに起こった

その白いヤミーの腹が割れ・・・
まるで蛹から成虫が孵る時のように巨大な蜘蛛の怪物が生まれたのだ

「ふふ・・・随分と巨大なヤミーが生まれましたね。やはり沢山稼がせてくれそうです。では、私はこれで」

その様子を満足そうに見つめ去ろうとする男

ふと、思い出したようにこう付け足す

「そうそう、彼の欲は改造で少々贅肉がついてしまっているようですね 『仮面ライダー』への恨みという贅肉が」

シルクハットの男が消えたと同時に怪物が大声を張り上げる

「モットツブシタイ、モットキモチヨクサセロオオオ!!!


[No.220] 2011/05/01(Sun) 21:14:35
蠢く闇3 (No.220への返信 / 7階層) - アズミ

 眼前に立ち塞がる蜘蛛ヤミー……いや、蜘蛛男ヤミーと言うべきか……に相対し、ディレイドは油断なく構えた。

「改造人間をベースにヤミーだと……聞いたこともないぞ、そんなこと」

 いや、『聞いたこともない』のではない。複数の世界の超常を複合させる、そんなことは『やってはいけない』のだ。
 接着剤で粉々の破片を固定したように辛うじて安定した融合した次元……それが、再びバラバラになりかねない。そんな禁忌だ。
 止めなければならない。

「とはいえ、まずは目の前の敵か!」

 蜘蛛男ヤミーが振り下ろす、刃のように鋭い前脚の連撃を辛うじてライドタブラーで打ち弾く。
 ディレイドブラストはどうにか怯ませることは可能だが、有効打には至らないらしい。……やはり、接近戦しかないか。

「しかしFARは使いきっちまったしな……っと」

 あにはからんや。新たなライダーカードが排出され始めた。

「……いいヤツ、来いよ!」

 カードを引き抜く。
 絵柄は――――。

「ああいうデカブツとはやりあったって言ってたっけな……頼むぜ、麻生先輩!」

 仮面ライダーZO!

「変身!」


――KAMEN RIDE...ZO!


 ディレイドライバーから展開された光の板がディレイドの全身を包むや否や、その姿が全く異なる……濃緑に彩られた仮面ライダーに変貌する。

「よぉっし……!」

 迫る、ディレイドを串刺しにせんとする前脚をチョップで叩き落とし、懐に飛び込む。この手の相手は強大過ぎる脚のおかげでリーチの内側は留守になりがちだが、蜘蛛男ヤミーも例外ではなかった。

「でぇぇぇぇりゃあああっ!」

 続けて腹に向けてパンチを連打。見計らったように排出されたライダーカードを引き抜き、一際強力な一撃で怯ませたところを装填。


――ATTACK RIDE...ZO!
「RIDER PUNCH」


「ライダァァァ……パンチッ!」

 炸裂した輝く右拳が、ヤミーの左肩を粉砕した。
 じゃらじゃらと飛沫のように流れ落ちるメダルを、本能ゆえにか抑えようともがいた。

「と……どめぇっ!」

 押し挟むような両腕をすり抜けて蹴り上がり、ディレイドはヤミーの上まで飛び上がった。
 口顎部のブレイクトゥーサーが展開し、後頭部から余剰した気を放出。
 排出されたカードは、図ったようなFAR。


――FINAL ATTACK RIDE...
Ze Ze Ze Z O!


「ライダー……キィック!!」


 一条の光矢と化したディレイドが、厚さ60mmの特殊合金板を粉砕する威力で以ってヤミーの胸を貫いた。
 その25mに達する巨体がメダルの滝と化して崩壊し、あとにはその人工筋と骨格が露出した無残な姿の蜘蛛男……いや、伊田須和男だけが残る。
 変身を解き、ディレイド……写楽映は伊田を締めあげた。

「おい、しゃっきり起きろ!なんでSPIRITSを襲った!……あのシルクハットは何者だ、おい!」

 問うては見るものの、反応は薄い。ディレイションブラストとライダーキックの影響ばかりとも思えなかった。
 明らかに内的な要因で衰弱死しつつある。

「くが……さき……病院……」

「久我崎病院?」

 問い返した傍から、掴みあげた襟までが分解され、粘液同然になって崩れて落ちた。

「……結合……点……」

 最後に言い残せたのは、それだけ。
 伊田の身体は見る見るうちに溶解し、白い泡のようなものになり果てる。その残骸さえ、すぐに気化し――結局、伊田がこの世に存在した証は、何一つ残らなかった。
 改造人間の末路とはそもこういうものだ。

「久我崎病院……」

 未だ呻くだけのSPIRITS隊員たちを見る。

「こいつらの目標も、そこだったのか」

 写楽は腰から外したディレイドライバーを握りしめる。

「『結合点』……」


[No.221] 2011/05/01(Sun) 21:15:53
彷徨うもの達2 (No.221への返信 / 8階層) - ありくい

 自分を保護しに来てくれる筈のSPIRITSに何かトラブルがあったらしく、予定時刻を過ぎても病室に来客は無かった。
 ミサキもハルトも見回りに行くといって出て行ったし、尽介も少し前に用事があるといって席を外している。

 残ったのは、何の娯楽も無い病室と、その部屋の中で大人しくしているように言われた自分。
 はっきり言って、空奈は暇だった。

 「SPIRITSっていうのは、ご飯おいしいのかしら……」

 益体も無いことを呟きつつ、窓の外をぼんやりと見つめる。
 覚えている限り最古の記憶は、10年前、砂浜で倒れていた時だ。ずぶ濡れの格好で、当ても無く歩き続けた。初めは人を頼ったし、震災直後で互いが助け合う風潮で皆優しかった。しかし、そこに現れる数多の怪人達がつかの間の安らぎを壊していった。
 何故か彼らは自分を狙い、その過程で自分が頼った人たちを傷つけた。その内に怪人に狙われる少女の噂は広まっていったし、自分のせいで誰かを巻き込みたくなかった為に極力他人との接触は避けるようになった。それからは思い出したくも無い最低以下の日々。餓死しかけたことも1度や2度では無いし、もっと恐ろしいことも味わった。
 それから10年。やっと頼れる人たちに出会えた。やっと心から安心できた。……やっと、嬉しいと思えた。


 「やだ、私なんで泣いちゃってるんだろう……」

 気づけば、ぽたぽたと零れ落ちた涙がシーツを濡らしている。慌てて拭うが、次から次へと溢れて止まらない。
 気づけば顔を両手で覆ってわんわん泣いている。それは、10年間堪えていた涙だった。


 「空奈さん、検診の時間ですよ」

 どのくらいたったか、ノックの音と共に看護師が入ってくる。泣き顔を見せるのがみっともなくて空奈は看護師を目を合わせないように窓の外を向いた。

 「ずぅっと怪人から逃げてきたんですってね。長い間大変だったでしょう」

 看護士は機材の準備をしながら空奈に話しかける。
 照れ隠しに頭をかく空奈。

 「いやー、やっと一安心できそうかなーなんて」

 「――そう。私も一安心だよ」

 一転、冷たく響く看護師の声。不審さを感じて振り返った空奈が見たものは、冷たく怪しげな笑みを浮かべた看護士と――その手に握られた拳銃

 「ひ――!?」

 「おっと、大人しく私と一緒に来てもらおうか。怪我をしたくなければ、な」

 ずい、と一歩ずつ近づく看護士に、空奈は自分の運命を呪って恐怖に目をつぶるしか無かった。

 「……はあっ!」

 「何!?」

 完全に優位を確信した看護士の腕を掴み、銃を叩き落す。空奈が目を開くと、見知ったばかりの青年が立っていた。

 「おのれ、何者だ!」

 「大空さん!」

 大空尽介は看護士の腕を捻り上げたまま、不敵に笑ってみせる。

 「悪い悪い、ちょっと職場の先輩に助っ人頼んでたら遅くなっちゃった。しかし、最近の検診ってのは随分物騒な道具でするんだな」

 油断無くにらみつけると、看護士は怒りに身体を震わせて低い声を漏らす。

 「地球人め……何処までも邪魔をしてくれる。『結合点』を寄越せええええええ!!」

 人間離れした力で尽介の手を振りほどくと、看護士の輪郭がぐにゃりと歪む。やがて現れたのは白黒の幾何学的な縞模様で全身を覆われている怪人。
 吹き飛ばされた衝撃で空奈のベッドの前まで下がる尽介。その手にはいつの間にかゼクターが握られている。

 「俺が何者かって聞いたな。俺は大空を往き尽くを助ける男さ。変身!」

 ――Henshin

 「その姿……三面怪人ダダだったかな。この子の事を『結合点』とか言ったか? どうやら、詳しく話を聞かせてもらわなきゃいけないみたいだ!」

 白黒の怪人・ダダに詰め寄り、もつれ合うアゲハ。その隙に空奈はベッドを転がり出て出口へ駆け出す。病室のドアの所で振り返ると、アゲハがダダを羽交い絞めにして押さえつけているところだった。

 「空奈ちゃん、ハルトさんとミサキさんの所に逃げるんだ! でぃやああああああ!!」

 渾身の力を込め、ダダの身体を持ち上げ、自分ごと窓ガラスを突き破ってその身を躍らせる。

 「大空さん!?」

 「尽介でいいよ!」

 びし、と空奈を指差したまま、アゲハはダダを捕まえたまま3階建ての病室から姿を消した。つかの間の静寂が空奈を包む。がすぐに自分でそれを破る。

 「――もう! 何考えてんのよ格好つけ!」

 護ってくれるなら最後まで責任とりなさいよ。呟いて空奈は病室を後にした。


[No.222] 2011/05/01(Sun) 21:16:53
未来を切り開く者0 (No.222への返信 / 9階層) - ライン

SPIRIS装甲車 襲撃エリア

写楽がSPIRIS隊員達を介抱している所に、車が三台、黒い装甲トレーラー数台に救急車五台が止まった。

「ん・・・あれはZECTか!?」

車から、黒色フルフェイス、青線の入った黒い装甲服の男が写楽の前に現れた。背後の装甲トレーラーから同じボティーアーマーを纏った兵士達が現れる。

ある者は最初の男の両脇に付き、写楽に銃を構える。

それを見た最初の装甲服の男は手で制して兵士達の銃をおろさせた。フルフェイスヘルメットを脱ぐと自己紹介をした。短髪の青年だった。
「俺は刀伊達・一輝(とだて・いっき)だ。特殊部隊の隊長をしている。君の名は?」

「写楽・映(しゃらく・はえる)」
黒いボティーアーマーの男達は、蟻を思わせるフルフェイスに黒い装甲服、腕のエンブレムには『ZECT』と書かれていた。

写楽の思ったとおり、彼らはZECT、ゼクトルーパーと呼ばれる装甲服兵士達だ。

刀伊達の纏う装甲服は、太い青線が入ったゼクトルーパー隊長仕様なのだろう。一般兵ゼクトルーパー装甲服には、細い青線が二つ入っている。

「写楽、宜しく頼む。 SPIRIT隊員を介抱してくれたのか。ありがとう! 私達と一緒に来ないか? 実は久我崎病院に向かう所だ。」
背後では、副官らしい装甲服の男が兵士達に指示を出して、ZECT兵士達と救急隊員達が、SPIRIS隊員を救助活動していた。

「久我崎病院・・・俺も連れてってくれ。」刀伊達と周りのゼクトルーパー兵士達を見つめながら言った。

一人のゼクトルーパーが報告に現れる。

「隊長! SPIRIS隊員、全員無事です! すぐに軍属病院へ搬送します!」
「そうか、全員無事か!それは何よりだ! 写楽、君のおかげだ!」
刀伊達は本当に嬉しそうに笑顔を向ける。

「たまたま通りかかっただけさ!」少し恥かしくなった。普通にしただけだ。
同時に刀伊達という男は面白いと思った。

久我崎病院に行く手立てもすぐに揃った。
(結合点・・・待っていろよ・・・)写楽は心の中で呟く。

「私と写楽は、私の部隊と共に久我崎病院に向かう! 水鏡の部隊はSPIRIS隊員の病院搬送を頼む! では出発!」

刀伊達は、救援活動が終えたと同時にゼクトルーパー達を整列させ、指示を出した。

その数分後、刀伊達と写楽は、ゼクトルーパー部隊と共に久我崎病院に向かった。



久我崎病院

アゲハはダダを捕まえたまま飛び上がり、ダダを地上に放り投げる。
放り投げられ、駐車場に落ちるダダ。

「仮面ライダーが護衛にいるとは、こうなったら、ワーム共!出てこい!」
宇宙人ダダが叫ぶと、どこからと無くワームの大群が現れた。

ワーム、宇宙からやってきた昆虫人類エイリアン。人類に敵対する存在。
ワーム、緑色の昆虫怪人の姿を持つサナギ体にしてワームの一般兵士である。
ワーム、ワームは人に擬態する。進化する事で、強力な力を持つ成体となる。

「ワーム! いつの間に!? 」仮面ライダーアゲハが身構える。
ダダを守る様にワームが現れ、アゲハを包囲する。

ダダの超能力をカイした叫びにより、病院内にワームの大群が現れる。



病院内

「――もう! 何考えているのよ!格好つけ! 」
護ってくれるなら最後まで責任を取りなさいよ。と呟いて
空奈は病院内を駆け抜ける。

「きゃあ!?」空奈の前にワームが三体現れる

「ゴセイカリバー!」
真紅の戦士ゴセイファイヤーが現れ、ゴセイカリバーでワームを斬り倒す。

「その声はハルトさん! ハルトさんなのね!?」ワームから自分を助けてくれた真紅の戦士の姿を見つめ、聞きなれた声を聞いて安堵する空奈。

「ハルトだよ。 今の姿はゴセイファイヤーだけどね。空奈ちゃん、ここから出よう」

コゼイファイヤーの後方から光線が走り、空奈の後方、新たに現れたワーム数体を撃ち抜いた。

「ゴセイファイヤー! 無事か!?」
レーザー銃サイドブラスターをワームに撃ちながら、ミサキ隊員が声をかける。ミサキ隊員とアニー隊員がコゼイファイヤーの後方から援護射撃していた。

「ミサキさん!? アニーさん!? 」

ハルト、ミサキ、アニーの三人に再び会えた。嬉しい。
涙目でゴセイファイヤー、ミサキ、アニーを見つめる空奈。

「駐車場に向かおう! GIASドライブ(正式装甲車)でここを出る!」
ミサキは次から次へと現れるワームを撃ちながら叫ぶ。

ゴセイファイヤー(ハルト)、ミサキ隊員、アニー隊員、空奈の四人は、GIASドライブが置いてある駐車場へと向かう。


[No.223] 2011/05/01(Sun) 21:17:49
蜘蛛と巨大化と初顔合わせ (No.223への返信 / 10階層) - 新野

「仮面ライダー君はいきましたか、ふふふ・・・」

あわてて移動していくSPIRIS達にZECT隊員達の車を影から見送りながら灰色のカーテンとともに現れたシルクハットの男は微笑む

「これだけのメダルをほおって行ってしまうなんて、彼らは物の価値をわかっていない」

蜘蛛男ヤミーから生まれたメダルを拾い上げながらつぶやく

男は「逃げていなかった」のだ

ただ、身を隠し蜘蛛男ヤミーとティレイドの戦いを観察していた

「さて、後は枚数を数えて・・・」

メダルを拾おうとする男
だが、そのメダルが急に空に浮かび飛んでいく
飛ぶ先にはふさふさとした毛をもった・・・例えるなら中世の闘士のような怪人が大口を開けてメダルを吸い込んでいる

「派っ手に儲けてるじゃねえか!モーホウ!」

腹をパンとたたきながら怪人が大声を上げる。その後ろにはオレンジのカーテンがおりる

怪人の言葉に答えるようにシルクハットの男・・モーホウは怪人へと姿をかた

「ゴヨウですか。封印がとけても相変わらず横取りする癖があるようですね・・・いつか本当に消しますよ?」

不気味な落ち武者のような怪人となった男、モーホウがゴヨウと呼ばれた怪人を指差す。その指先には青い炎がともっていた

「細かい事は気っにすんな!今回はたっぷり儲けたんだっろ!」

悪びれもせずゲラゲラと大笑いしながら腹を叩くゴヨウ

「まったく・・・枚数だけは後で教えてくださいね、実験結果をまとめねば」

「おうよ、覚えてたっらな!」

その様子に頭をふるモーホウ
多分、あいつは今飲み込んだメダルの枚数も覚えていないだろう

「昔から貴方はどうして繊細なものの考えかたが・・・」

「メダル、音、大きかった。皆来ないほう、おかしい」

さらに文句を言おうとしたモーホウの言葉に言葉をかぶせるもう一人の影
巨大な牙、爪を体中にはやしたような怪人がハンバーガーを片手に
現れる。その周りにも他の怪人と同じく赤いカーテンが下りている

「お、トックカック、おっ前もきたか!腹へったのか!」

「トックカック、メダル、いらない。ハンバーガー、美味しいから」

身体に似合わない小さなハンバーガーを大きな口でちまちまと食べる怪人

「あいっかわらず気に入った味しかくわねえな、おっ前は!」

様子をみてさらに大きく笑うゴヨウ
その横ではモーホウがさっさと抗議をあきらめ残りのメダルを集めていた

「久々に3人そろったんだ。今何やってんのか皆で話すか!」

「いいえ、このままでは4人とお邪魔蟲になりそうです」

モーホウの声にゴヨウとトックカックが顔をあげるとこちらに向かって青年と女性がバイクにのり走ってくるのがみえた

「キュウティー、だ」

「もう一人っは!・・・肉がたっりねえな!欲も体も!」

「あれはオーズですよ。私もこの前メダルを奪われました」

オーズという言葉にぴくりと反応するゴヨウとトックカック

「恐らく、ヤミーのメダルをかぎつけたんでしょう」

「どうすっる、戦うか!」

身構えるゴヨウ、のんびりハンバーガーをむさぼるトックカック

「いえ・・・大丈夫ですよ。実はもう一人、私のヤミーを潜伏させているところがあるんです」

蜘蛛男ヤミーのセルメダルを回収しおえたモーホウの身体が人間体へと戻る

それに合わせるようにゴヨウの体は筋骨隆々な男性に
トックカックの体は身細な少年へと変わる

「ここでメダルを見つけられなければ彼らはそこに向かうでしょう」

「相変わらずぬっけめねえな、お前は!ま!俺も腹いっぱいで動きたくないし、ここはひくか!」

「トックカック、ハンバーガーなくなった、探してくる」

「では解散、ということで」

パンと手をたたくモーホウ
カーテンが3人の怪人をまき込み・・・消えた


[No.224] 2011/05/01(Sun) 21:23:54
未来を切り開く者1 (No.224への返信 / 11階層) - ライン

病院駐車場

「仮面ライダー、俺が一人で来たと思ったか? ワームの部隊も一緒だ。」
先程まで尻餅ついていた白黒模様の怪人ダダ、勝ち誇った口調で言う。

「ワームの部隊だと!? お前、ワームと同盟結んだのか!?」

「そういうことになるなぁ ワーム護衛隊! 俺を護れ!」
ダダの合図と共に、ダダ前方に、三体のサナギ体ワームが現れた。
そして三体のワームは、体色が変化と同時に、サナギ体の体が溶け出し、変化していく。

一瞬にして、サナギ体から力を持つ成体へと進化した。
大柄なサナギ体とは違うスマートな人型ワームになっていた。

蜘蛛と思わせる頭部、蜘蛛の足を背中に生やし、銃と盾が一体化したガントレットを付けた怪人三体現れた。白と黒模様、青に赤模様、赤に青模様の三体。
アラクネアワーム。

さらにダダの左右に付いたワーム二体も成体に進化した。
右手に鉄球を持った緑色のワーム、ランピリスワーム、蛍の特徴を持つ怪人。
進化と同時に、仮面ライダーアゲハに対して、右手の鉄球状から黄色のプラズマ弾を放つ。 

「射撃型ワームか!? だがな? そんなの怖くないぜ! クロックアップ!」

『CLOCK UP!』

クロックアップ、タキオン粒子を使う事により、時間流を自在行動と出来るシステムである。 ワーム、仮面ライダーが持つ時間流高速移動。クロックアップを発動したライダー、ワームには、自分達以外の時間と空間は停止状態に等しい。

仮面ライダーアゲハは、クロックアップシステムを起動させプラズマ射撃を回避しつつ、取り巻きワームを次々と粉砕していく。
「俺についてこれるか!? このパンチは痛いぜ!」

ランピリスワームの顎にパンチを喰らわせる。ランピリスワームが消滅する。

アラクネアワーム、白、青、赤の三体も、アゲハと同時にクロックアップによる高速移動を開始した。 

高速戦闘を展開する仮面ライダーアゲハと腕の銃を乱射する白、青、赤のアラクネアワーム。
「白、青、赤のワーム、邪魔するな!」尽介が激高する。
腕に付けられた銃で乱射を交えつつ、格闘戦を展開するアラクネアワームと高速移動格闘戦を展開していた。互角に戦っているとはいえ、いつかは体力の限界を迎える。

一方、ワームを指揮していたダダはというと・・・
「ここはアラクネアワームの三人に任せて・・・私は『結合体の少女』を確保する」

「そんな事させるかぁ! おれはお前達を許さない!」アゲハは、ダダに向おうとするが、アラクネアワームに阻まれる。

「シャアアアア〜〜〜〜〜」アラクネアワーム三体が咆哮する。

ダダにも運が向いてきたようだ。
仮面ライダーアゲハというイレギュラーはあったものの、アラクネアワーム三体が抑えている。 ダダは残ったワーム数体を率いて、捜索に移動した。



駐車場付近

GIASの携帯通信システム、GIASメテオから通信が入った。

ゴールドウィル隊長からの通信だ。

『SPIRIS隊がショッカーに襲撃を受け、こちらに向う事が出来なくなった。
謎の巨大生物出現という報告受け、カイ隊員達がメテオビートルで調査に出向いている。』

『ZECTのブルー部隊が君達の援軍に向っている。もう少し頑張ってくれ。』

「ZECTのブルー部隊? 分かりました。援軍が来るまで持たせます!」
通信を切るアニー隊員。

「空奈ちゃん、もう少しで援軍が来るそうよ。頑張ろう!」空奈に笑顔を向けるアニー。
「うん! 皆で頑張ろう!」

束の間の静寂を破る者達が現れる。
「見つけたぞ、少女よ・・・さあ、こちらに来い・・・」
ダダはワームを率いて、ゴセイファイヤー、ミサキ、アニー、空奈の前に現れ、ワームが包囲陣形を取る。 囲まれた!?

「私と一緒に来るのだ そうすれば、そいつらは見逃してやってもいい」
勝ち誇った様に、空奈達に言い寄るダダ。
「いや! 私は尽介、ハルト、ミサキ、アニーと一緒にいたいの! 未来は私自身で決める!」精一杯、今思う事を伝えた空奈。

その時! ワーム数体が倒れる。包囲の外から複数の銃撃。

蟻を思わせる黒いフルフェイス、青い線の入った黒い装甲服の兵士達がワームに対して銃撃していた。 その姿はZECTのゼクトルーパー!

統率された黒甲冑の兵士達、ゼクトルーパー、前方にはマシンガンブレード装備の兵士達による攻撃、後方には、新型ライフルによる狙撃でワームを狙い撃つ。ゼクトルーパーたちは連携して、ワームと戦っている。そして青線のゼクトルーパー達を率いて現れた、太い青線の入ったゼクトルーパーの男が、前に現れる。

「何者だ!? 」せっかく包囲して少女を捕獲できると思っていた所を邪魔されたタダ。

「そうだ! 未来は自分の意思で切り開く物! 」

ZECTのブルー部隊隊長、刀伊達・一輝が前に現れる。
青い線の入ったゼクトルーパー装甲服、銀色のメカニカル系大型ベルト。
ベルト真中には、青い線状のランプが付いている。
銀と青のメカニカルベルトは、一般ゼクトルーパーのベルトとは違う物だった。

ゼクトルーパーヘルメットを脱ぎ捨て、素顔となった装甲服の刀伊達。
右手を手に掲げる。

その光景に戦場が静まり、刀伊達とダ白黒宇宙人ダダに注目が集まる。

「あれは!? 刀伊達先輩!? 間に合ったのか! よし決めるぜ!」
「ライダーキック!」

『RIDER KICK!』
ベルトから発せられた機械音声と共に、仮面ライダーアゲハの右足にタキオン粒子波動が纏い、回し蹴りでライダーキックをアラクネアワーム・赤に叩き込む。

『ギュ!? ギュアアアアア!?』
アラクネアワーム・赤は断末魔の声を上げて爆発する。
アラクネアワームの白と青の二人は、再びクロックアップを発動してダダの方へと向った。

「お前達に少女の未来を壊す権利などない! こい!マンティスゼクター!」

刀伊達の叫びと共に、青緑色のメカカマキリ、マンティスゼクターが空からやってきて、刀伊達の右手に収まる。

「変・身!」刀伊達が叫ぶ!

『 HENSHIN! 』
銀色の大型のベルトにゼクターを合体させると、機械音声が響き、刀伊達の姿を変身させる。

青い線の入った銀色装甲のロボットを思わせる姿だった。左肩にはZECT、右肩には青文字でX1と書かれていた。

「キャストオフ」叫び声と同時に機械音声が響き、
『Cast Off』『CHANGE MANTIS!』
銀色の装甲が分離して、炸裂拡散弾の様に飛び散り、ワームを薙ぎ払う! 

それに合わせる様にゼクトルーパー、ミサキ、アニー達が銃撃する。コゼイファイヤーは天装術と剣戟でワームを薙ぎ払う。

次々と撃破されるワーム達、ワームも接近戦に持ち込もうと応戦する。

刀伊達の姿が銀色のロボットから、青緑色の戦士の姿に変化した。
青色に輝く二本のアンテナ、赤い瞳、青緑色に輝く鎧、ブレードが付いた青緑色のガントレットに黒と銀のスーツ。

カマキリを髣髴させる形状特徴を持った青緑色の戦士だった。
それと同時に、腕のブレードガントレットを展開して、ワームを切り裂いていく。


[No.225] 2011/05/01(Sun) 21:24:37
未来を切り開く者2 (No.225への返信 / 12階層) - ライン

青緑色の戦士、マンティスX1

「ブレードガンレット! 」
叫びと共に、ガントレットに折り畳まれていたブレードが展開した。
展開したそれは、二振りの日本刀の様な刀剣だった。
逆刃持ちの二刀流剣技ですれ違いにワームを切り裂く。

その姿はまさにマンティス(カマキリ)に見えた。

左右に展開して援護射撃していたゼクトルーパー部隊の何人かが、目に見えない疾風に次々と吹き飛ばされる。
疾風に吹き飛ばされ、倒れていくゼクトルーパー達。

「何だ!?」 「うぁわわわわ〜〜〜〜!?」 「ぐあ〜〜〜!」
吹き飛ばされたゼクトルーパーの叫びが響く。

やがてその疾風は宇宙人ダダの近くに降り立つと、正体を表した。

アラクネアワーム・白、アラクネアワーム・青の二人のアラクネアワームだ。
アラクネアワームが、ゼクトルーパー達をクロックアップによる高速移動攻撃でなぎ払ったのだった。 

アラクネアワーム・白は、仮面ライダーマンティスX1の前に立ち塞がり、咆哮する!

「ギャギャア〜〜〜〜〜!! ギャンディズ??? ギャアギ!?」

「お前は!? あの時の白いワーム、それに青いワームか!? 」
二刀の刀を構え、白と青の二人のアラクネアワーム見つめるX1。
アラクネアワーム・白は、仮面ライダーマンティスX1を睨みつける。

激戦の末、敵側は

白黒模様の宇宙人ダダ、鉄球の様なプラズマ砲を持つランピリスワーム、そして白と青の二人のアラクネアワームの四人だけとなった。

「蜘蛛型ワーム!あの時の決着を付けてやる!」両手の刀を構え直す仮面ライダーマンティスX1。「写楽・・・彼はどう動くかな?」  
因縁の敵、アラクネアワームの白と青の二人と対峙している。何故か写楽・映の事が思い浮かんだ。不思議な雰囲気を持つ男だ。 



この戦いから遡る事、数時間前、ZECT車両内

「どうして俺を連れて来た? 置いて行く事も出来たはずだ?」写楽・映。

「善意の協力者たる君を置いて行く理由が無いからだ。それに一般市民を危険なエリアに一人にする訳にはいかないからね。 君自身、怪我をしているかもしれないから、緊急保護するべきだと思ったからさ。」と話す刀伊達・一輝。

写楽は刀伊達を見る。
太い青線の入ったZECT戦闘ユニフォーム、スペクトラプレート製のボティーアーマー、アーム&レッグ一式という装備、そして・・・バックルには青い閃光ランプが付いた銀色メカニカルベルト。

このベルトは・・・おそらく仮面ライダーのベルトだ。

刀伊達という男は、ZECTの仮面ライダーということか。

ノートパソコンの画面に女性が映る。

『刀伊達さん、久我崎病院にはGIASのミサキ隊員、アニー隊員、保護された少女、少女の付き添いしているハルトと名乗る青年、そして尽介君の五名が生存者のようです。白黒模様の宇宙人が率いるワームの大群に囲まれ応戦中との事です。』

『ZECT本部からは、尽介君、ミサキ隊員、アニー隊員、ハルト青年と少女の保護が最優先に動く様命令が来ています。』

「白黒模様の宇宙人はワームではないのか?」モニターの女性に尋ねる一輝。
『ワームとは違う宇宙人のようです』女性情報仕官。
「どうやら目的地に着いたようだ。情報ありがとう。通信終了する。」
通信が終了したと同時にパソコンの電源を切る一輝。

「尽介、無事でいろよ 今行くからな!」と小声で呟く一輝。

「これを渡しておくよ。金属プレートは襟に付けるといい。通信機の機能を持っている。
キーはゼクトルーパーに聞けば分かる。」と一輝から金属プレートとキーを手渡された。

数分後、ZECT部隊は久我崎病院に入った。

病院入り口付近に着くと、装甲トレーラーからゼクトルーパー隊が、降りて来て隊列を組んでいた。標準装備のマシンガンブレード、新型ライフルと様々な武装をしている。

「SPIRIS隊に代わり、我々ゼクトルーパーブルー隊が、仲間と少女の救出戦に向う! 三部隊編成で行く。 第一部隊は外側を索敵と迎撃、第二部隊は病院内に突入して索敵と迎撃、第三部隊はここで待機、我々の車両の守備とバックアップを頼む」

ZECTの大部隊は、外側部隊、突入部隊、バックアップ部隊の三つの部隊分けて作戦行動を開始した。

「そうだ、君も防具は着た方がいいだろう? ここも激戦区になるから、生身よりはましのはずだからな。自由に動いてくれていい。バックアップ隊と一緒にいれば安全だ。 もしゼクトルーパーに用があるなら、刀伊達の名を出せばいい。後は宜しく頼む。」

そういい終えると、一輝は外側索敵部隊の後を追いかけていった。

「変わった奴だ・・・後はよろしく頼むか・・・」写楽。
 ここまで連れて来て、自由に動いてくれていい、後はよろしく頼む。

もしかすると俺の正体に気がついているのか? とにかくここは、一輝の言う様に防具を借りて、ゼクトルーパーになって、自由行動を取らせてもらう。

「借りるからな・・・結合点・・・・・」誰と無く呟く写楽。



現在

仮面ライダーマンティスX1とアラクネアワーム白と青の二人は、対峙して動かないでいた。 御互いタイミングを計っている状態だった。

アラクネアワーム・青が先に動き、クロックアップして腕の銃ウェブシューターを撃ってきた。それに会わせる様に、アラクネアワーム・白もクロックアップする。

「クロックアップ!」 『CLOOK UP!』
アラクネアワーム・青の乱射など気にせず、クロックアップによる時間流高機動戦に突入する。白色のアラクネアワームがマンティスX1に接近戦を仕掛ける。
マンティスX1とアラクネアワーム白色は、御互い打撃の応酬していた。
しかし、2対1では不利だ。何しろ変身は二回目だ。
剣術の経験、ゼクトルーパーとしての経験を使い、何とか戦っていた。

白色は格闘戦で、青はあらゆる方向からの射撃で、マンティスX1こと一輝の体力を削っていく。
ブレードの斬戟で白色の攻撃しようとすると、アラクネアワーム青色が射撃でブレードガントレット斬戟機動を逸らし、白色のパンチ打撃、ウェブシューター近接射撃の乱打攻撃をマンティスX1に与える。

白の格闘攻撃、青の援護射撃のコンビネーション攻撃に苦戦し入られていた。

「蜘蛛ワーム! お前達の好きな様にはさせないぜ!」
その声と共に、白色とコンビネーション攻撃していたアラクネアワーム青色に、仮面ライダーアゲハのパンチが炸裂する!

アラクネアワーム青色はパンチを喰らい怯む。それと同時にライダー、ワーム四人によるクロックアップは解除される。

『CLOOK OVER』 仮面ライダーアゲハ & 仮面ライダーマンティスX1のベルトの機械音声が響く。

「刀伊達先輩!? 大丈夫ですか!?」仮面ライダーアゲハ。
「その声は、尽介か!? お前が助けてくれなかったら、やられていた。尽介、ありがとうな!」サムズアップする仮面ライダーマンティスX1。

同じくマンティスX1にサムズアップする仮面ライダーアゲハ。
二人は立ち上がり、白色と青色のアラクネアワーム二体と戦い始めた。

『PUT ON!』
マンティスX1はマスクドフォームに変身して白色ワームと肉弾戦を開始する。白色ワームの後方から射撃しながら、クロックアップ高速移動でマンティスX1・マスクドフォームに迫る。

「仮面ライダーアゲハ!」マンティスX1  
「行くぜ! マンティスX1!」

仮面ライダーアゲハは、マンティスX1の後方に隠れていた。マンティスX1マスクドフォームがキャストオフすると同時にアゲハが大空に飛び上がり、アラクネアワーム青色に目掛けて、ライダーキックを叩き込む!

マスクドアーマーにより形成された炸裂装甲弾により、ダメージと目晦ましの効果を白と青の二体のアラクネアワームに与え、怯ませ足止めする。

「ライダーキック!」 『RIDER KICK!』

「ライダーカッティング!」 『RIDER CUTTING!』

ブレード形状を前方に展開してトンファー状に変形させ、アラクネアワーム青色を斬る。

仮面ライダーアゲハのライダーキックが炸裂、仮面ライダーマンティスX1のブレードがアラクネアワーム青色を切り裂いた!

「グッ!? グギャアアアアア!!!!!」アラクネアワーム青色が大爆発する。

「やったぜ!」仮面ライダーアゲハこと尽介。
「やったな!」仮面ライダーマンティスX1こと一輝。

アラクネアワーム青色を倒した!

残る敵は、アラクネアワーム白色、ランピリスワーム、今回の作戦指揮官である白黒の宇宙人ダタの三人だけだった。



アラクネアワーム白色はこの世と思えない咆哮をあげる!

それと同時に白いスーツの男が現れる。

白いスーツの男は、妖怪系グリードモーホウの人間態。
白いスーツの男を見つめるアラクネアワーム白色。

ワームが攻撃してこない所から察するに、味方らしい。

『君の欲望、見せてもらいますよ』

アラクネアワームの後ろに瞬間移動して現れると、銀色のメダルを入れる。

『その欲望、 開放しなさい!』

その声と同時にアラクネアワームから、ヤミーが生まれる。

ヤミーは白い人型していた。アラクネアワームを一瞬にして喰らう。

ヤミーは、変化する。頭部は蜘蛛を思わせるフォルム、肩の大型化、背中に剣状蜘蛛の脚、
両手には、銃と盾が一体化したウェブシューターを持ち、銃は三連装砲に進化している。

三連装砲左右に蜘蛛の牙の様な突起が生えている。ウェブシューターは蜘蛛の頭部の様なフォルムに変化している。 

その姿はベースとなったアラクネアワームに似たフォルムだった。

『強い力を得て、仮面ライダーを破壊したいという欲望が見えましたよ』

『ワームにメダル入れるとこうなりますか。さて、私はこれにて失礼します。』

白スーツ姿の男モーホウは消えた。


[No.226] 2011/05/01(Sun) 21:25:33
崩壊世界1 (No.226への返信 / 13階層) - アズミ

 病院内は、災害の様相を呈していた。

「まったく……ちょっとはこっちのことも、考えて戦ってよね!」

 戦場、などという生易しいレベルではない。
 実際に戦場をジャーナリストとして駆けたこともあるアニー隊員は、その生涯でかつてない焦燥を覚えながらも決して空奈の手を離さぬまま、どうにかGIASドライブに辿りついた。
 見たところ走行能力は奪われていない。

「空奈さん、乗って!」

「きゃっ!」

 叫ぶように言って、返事を待たぬまま後部座席に放りこんだ。
 キーを差し込み、エンジン始動。後は同乗者を待つだけ。
 ミサキ隊員の姿を探して視線を巡らせると、ちょうど目の前からGIASドライブに向けて一匹のワームが飛びかかってきた。

「っ!?」

 身を竦めるアニー隊員だが、その凶刃が彼女に届くことはなかった。
 一条のレーザー光線が、ワームを跡形もなく蒸発させたからだ。

「ミサキくん!」

 表情を輝かせるアニーだが、ミサキは振りかえることなくサイドブラスターで他のワームを牽制し続ける。

「そのまま行け、アニー隊員!」

「!?」

 ZECTの強化兵士と、それでどうにか対抗できるワームが入り乱れた混戦である。
 生身のミサキ隊員が居残るのは、自殺行為に等しい。

「僕も後から追いつく!今は一刻も早く彼女をここから逃がすんだ!」

 彼女より遥かに経験の多い先輩隊員からの、断固たる言葉。
 アニーの逡巡は、一瞬だった。

「発進するわ!」

 ハンドルを握り、アクセルを踏み込む。

「でも、他のみんなが!」

「あなたがここを離れれば敵を引きつけられる!みんなが少しでも楽になるのよ!」

 それは要救助者に対しては有り得ない台詞であったが、事実である。そして、空奈を押し黙らせる程度には効果的であった。
 タイヤが駐車場の床を擦り、けたたましい咆哮をあげてGIASドライブが発進する。
 ミラーにワームがクロックアップ……ワームが行う超高速機動……の姿勢を取ったことでアニーは肝を冷やしたが、一瞬早くミサキ隊員の放ったサイドブラスターの熱戦が、駐車場の天井を薙ぎ払ってGIASドライブの出ていった出入り口を物理的に塞いだ。
 いかなる高速移動とて、道が塞がれては追跡は叶わない。

 ワームは腹いせとばかりに攻撃目標をミサキ隊員に変えようとするが……。


――3 2 1


「ライダーキック!」


――Rider Kick!!


「ガアアアッ!?」

 タキオン粒子を集中したアゲハの回し蹴りがワームの首を横殴りし、地面に叩きつけられ四散する。

「大丈夫か、ミサキさん」

 ミサキ隊員に振り向き、尽介……仮面ライダーアゲハが声をかける。

「あぁ、助か――」

 ミサキは礼を述べようとして……代わりに叫んだ。

「――後ろだ、大空くん!」

「何ッ!?」

 アゲハが気付いたその時には、ダダの手にした光線銃から放たれた熱戦が、二人のいる出入り口付近を薙ぎ払っていた。





「くっ……」

 ミサキ隊員の意識が途切れたのは、一瞬だった。
 崩れた瓦礫の中から身を起こし、周囲を見回す。
 うず高く積まれた瓦礫の壁の向こうで破壊音が響くあたり、まだ戦闘は続いている。しかし、ミサキ隊員の見回せる範囲に外界へ続く道はなく、完全に隔離された形になった。尽介の姿もない。

「どこかに生き埋めになっていないといいが……」

「安心したまえ。彼なら無事だよ、ウルトラマン」

 自身の呼ばれてはいけない名を口にした声に、振り向く。
 全身をゼブラさながらの縞模様に彩られた宇宙人が、そこにいた。

「ダダ」

「……君と二人きりで話がしたくてね。お膳立てさせてもらった」

 常ににやけたような表情で固定されているその顔から、真意を読み取ることはできない。
 が、一先ず敵意はないということなのか、ダダは光線銃の銃口を下した。ミサキ隊員もそれに習い、サイドブラスターを下す。ただし、トリガーに指はかけたまま。

「話とは?」

「単刀直入に言おう、ウルトラマン。結合点から手を引きたまえ」

「結合点?」

「君らが保護したあの少女だ」

「空奈くんを何故狙う?」

 答えは期待していなかったが、しかしダダは淀みなく答えて見せた。

「彼女は数多の平行世界を繋ぎ合わせる、結び目のようなもの」

「平行世界……?」

「そうとも」

 要領を得ない説明に眉をひそめるミサキ隊員に、ダダは鷹揚に頷いた。

「我々の宇宙はとっくに壊れていた。我々の宇宙だけではない、別次元に存在する数多の宇宙が、全て壊れ果ててしまった」

 予想外の話のスケールに、ミサキは息を呑む。
 宇宙が?壊れた?
 今、自分たちがこうして生きているこの宇宙が?

「この世界は、その欠片で作ったパッチワークなのだよ、ウルトラマン」

 ダダはそんな彼を嘲笑うように、両の手を広げそう言った。


[No.227] 2011/05/01(Sun) 21:37:12
崩壊世界2 (No.227への返信 / 14階層) - アズミ

 ダダの話は、およそ地球人の常識では信じえない内容だった。

 この世界はパッチワーク。

 数多存在した並行世界は、とある仮面ライダーを起点にした事件で全てが破壊されてしまった。
 しかし、平行世界とはガラスの器のように、壊れたらそのまま砕け散ってしまうような性質のものではない。

「喩えるならば、泡だ」

 泡が一つ割れても、そこから小さな気泡生まれ、水面に上がる中で寄り集まって一塊りになることがある。

「この世界はまさしくそれだ。
 人も、技術も、星も。全ての世界の要素が渾然となって融け込み、存在する世界」

「その結び目こそが、あの空奈くんだというのか」

「そうだ」

「彼女をどうするつもりだ」

 ミサキ隊員の問いに、ダダはまたぞろ悪企みでもしているのだろうと言われたように思ったのか……実際、ミサキ隊員にはその意図があったのだが……ダダは肩を竦めて見せた。

「我々とて、結合点を悪し様に利用するほど命知らずではない。
 彼女に何かあれば、この宇宙は今度こそ粉々に砕け散ってしまうかもしれないのだぞ?」

「何……?」

「我々は彼女を保護しようというのだよ、ウルトラマン。
 考えてもみたまえ。こんな話、地球人の技術レベルでは到底信用さえできまい。彼女自身は地球人となんら変わらない身体だ、酷く脆い。
 何かの間違いで死んでしまうかもしれないし、あの乱暴なSPIRITSに預けたら手荒なこともやりかねん」

「お前たちは違う、というのか」

「無論だ」

 ダダは胸を張った。

「我々の技術力ならば、彼女を永遠に傷一つつけることなく『保存』が可能だ。
 たとえば――そうだな、時間停滞カプセルに入れるのはどうだ。時間が流れなければ肉体の損傷はおろか、経年劣化さえ起こることはない。
 彼女は傷つくことも悩むこともないまま、永遠に我々の庇護下で生き続けるのだ」

「…………」

 『悪気』はないのだろう。彼らの感覚では。至極合理的で、安全な手段でもある。
 だが、ミサキ隊員は我知らずサイドブラスターのトリガーに力を込めた。

「君に、地球人に彼女を守り切ることが出来るとでも?」

 しかし、ダダの突き刺すような言葉が彼に銃口を下させる。
 出来るわけがない。地球人類の技術力では、一人の人間を完全に……それこそ、老いや病からすら……守ることは、不可能だ。
 そればかりか、残念ながら猜疑心の強い人間は彼女を悪し様に扱う可能性が高い。

 ダダの申し出を受けるのは、賢明と言えた。
 だが。

「……それは愚かな選択だぞ、ウルトラマン」

 低い声で釘を刺すダダの視線の先には。ミサキ隊員が懐から出した懐中電灯に似た装置があった。
 フォトネイター。ウルトラの光を封じた、彼の切り札。

「お前たちは宇宙の平和を護るのではなかったのか?」

「誰かを犠牲にして守る平和など――」

「……犠牲無くしては。
 何も守れんよ。たとえ君でもだ、ウルトラマン」

 ダダの言葉に応えず、ミサキはフォトネイターを掲げる。
 ダダはやれやれと首を振ると、その姿がその場から掻き消えた。

「交渉決裂だな」

 同時に。天を覆う瓦礫と天井が一片に吹き飛んだ。
 降り注ぐ瓦礫の中、ミサキ隊員は動じることなくフォトネイターを起動させる。

「――誰かを犠牲にして、平和を守ったウルトラマンなどいない」

 輝きが、満ちた。

「トゥモロォォォーッ!!」





 瓦礫を撒き上げて、病院の傍に2体の巨人が降り立った。

『……残念だよ、ウルトラマン!』

 一つは、ゼブラ模様の怪宇宙人、ダダ。
 そして今ひとつは――。

『誰一人の、未来も自由も奪わせはしない!
 その全てを守るのが、ウルトラの誓いだ!
 私は……!』

 宇宙の平和を守る、銀の巨人。
 M78星雲、光の国からやってきた青い眼の守護者。

『私は、ウルトラマントゥモローだ!』

 彼こそが、人類と絆を結んだウルトラマン!


[No.228] 2011/05/01(Sun) 21:38:41
光の巨人1 (No.228への返信 / 15階層) - アズミ


「キャストオフ」

――Cast off!!

 炸裂したヒヒイロノカネ装甲が、アゲハの上に積み重なった瓦礫を諸共に弾き飛ばした。

――Change Butterfly!!

「……くそっ、えらい目にあったぜ」

 毒づきながら、プットオンからの再キャストオフによってライダーフォームに戻ったアゲハが瓦礫の中から立ち上がる。
 しかしその眼前では、そんな彼を絶句させる光景が広がっていた。

「ダ・ダ……」

 ゼブラ模様の怪人が、縮尺の狂ったような巨大さで病院の傍に立ちあがり、彼を見下ろしていた。
 その身長、目算にして50m超。人間が見れば巨大さを認識する前に目が回る、そんな大きさだ。

「さすがにこれは反則だろ……!?」

 呪詛を吐きながらも、バタフライブレードを引き抜く。
 パワーは比べてみる気さえ起きないが、動きはお世辞にも速そうではない。クロックアップで撹乱すればあるいは……。

 と、その時。

「ダァァァァッ!!」

 もう一つの巨大な影が、ダダの横面を殴り飛ばした。





 一方、病院から退避する、アニー隊員と空奈を乗せたGIASドライブからも、その2体の巨人の姿は目の当たりに出来た。

「あ、あれ……!
 あれ、何なんですか!?銀色の巨人が……白黒の悪い奴、蹴っ飛ばして!」

 病院に残された一行を心配し気が気でなかった空奈も、その余りに荒唐無稽な光景に度肝を抜かれている。
 対して、アニー隊員は、心中を渦巻いていた不安と心配を全て吹き飛ばされたように、笑顔を輝かせた。

「トゥモロー……!」

「え……?」

「ウルトラマントゥモローが来てくれたんだわ!」

 粉塵を巻き上げ、上天の陽光を浴びて輝く、銀色の巨人。

 光の、巨人。

「あれが、ウルトラマン……!」





「デェアアッ!!」

 トゥモローの雄たけびと共に放たれた、手刀の打ち下ろしから膝蹴り、続けて回し蹴り。
 相次いで炸裂する1億トンの打撃力が、病院に隣接するダダを大きく吹き飛ばした。

「ダ・ダ……!」

 ダダの身体能力は、過去に地球に来襲した侵略宇宙人の中でも、むしろ飛び抜けて低い。
 だが、牙も爪も持たない人類がこの地上に万物の霊長として君臨するように、彼には高い知能と人間に酷似した5本の指がある。

「ダ・ダ……!」

 掌から沸き出でるように……得意の縮小装置で欺瞞していたのだ……現れた銃を構え、トリガ−を引く。
 放たれた怪光線は狙い違わずトゥモローの腹部に命中し、その巨体が大爆発と共に病院の反対側まで吹き飛んだ。

「グアアッ!?」

 ダダの超科学を持ってすら、尋常ならざる破壊力である。否、しかしトゥモローはこの威力を光の国の訓練で目の当たりにしたことがあった。

『特製のペダニウムランチャーだよ。模造品だが威力は充分だろう?』

 嘲るように言い、次射を行うべく銃口をトゥモローに向ける。

「デァッ!!」

 立て続けに走る閃光を、辛うじて側転で回避する。
 しかし、病院の前に立ったところで、トゥモローの動きが止まった。

――かわせば、病院の人々や、戦っているハルトたちの命は無い。

『ははは、どうするウルトラマン!』

 一歩間違えば自らの命は無いというギリギリの判断であったものの、逡巡は一瞬だった。
 両腕を斜め一文字に構え、エネルギーを集中する。そして大きく腰を捻り、胸の前で十字に構えた。
 ウルトラ戦士伝統の必殺技――スぺシウム光線の構えである。

『プリズミウム光線!!』

 交差した腕から発射された3方向に伸びる光線の一つが、ペダニウムランチャーの弾体と衝突し、空中で爆ぜた。

『なんだとっ!?』

 残る2条の光線は中空で偏向し、誘導されたようにダダに向けて殺到する。
 プリズミウム光線。正式名称を偏向スぺシウム光線と呼ばれる彼の得意技である。

「ダ・ダァッ……!?」

 今度は、ダダのほうが規格外の爆発に吹き飛ばされる方だった。
 空中に投げだされた白黒縞の巨体に向けて、トゥモローが腰だめに両手を構えた。

「ダッ! デヤアアッ!!」

 ウルトラスラッシュ……かつては八つ裂き光輪とも呼ばれた、輝く戦輪が自由の利かないダダの身体を容赦なく両断した。

「ダ・ダァァァァァッ!!?」

 上半身と下半身が泣き別れしたダダの身体が、大地に落着する間もなく粉々に四散した。


[No.229] 2011/05/01(Sun) 21:39:28
蛹と闇と草食系 (No.229への返信 / 16階層) - 新野

「ライダーァアア・・・ハカイハカイハカイハカイハカイ破壊!!」

巨大化したダダ、そしてウルトラマントゥモローの姿にあっけにとられていたアゲハ達の意識を戻したのはヤミーとなったワームの咆哮だった

「ちっ・・・そうだった!こっちもどうにかしないと」

ダダほどの大きさでないにしても巨大化したワーム
光の巨人の援護は病院の中にいる以上望めないだろう


注意深くブレードを構えていると何かを溜めるような動作をとる

「まさか・・・その図体でクロックアップを!?」

ヤミーの巨漢が消えた同時に悪い予感が的中したことを悟るアゲハ達

「ちっ・・クロックアップだ、アゲハ!」

「分かってます、こちらも!」

腰のベルトを叩きクロックアップを発動させながらZECTのライダー達は高速の世界へと脚をすすめた
そこには2匹のワームと巨大化したヤミーがいた・・・はずだった


[No.230] 2011/05/01(Sun) 21:40:14
蛹と闇と草食系 (No.230への返信 / 17階層) - 新野

〜数分前〜
「ヤミー、本当にこっちにいるんですか?。さっきいった場所から随分離れてますけれど・・」

入り口にバイクをつけた若い男女が病院を見上げている

「あら、私にだって間違いはあるわよ。それに・・」

『ライダァアア、コワスコワスコワスコワスコワスコワス!!』

「ほら、当たりじゃない」

メダルを投げながら女性がくすくすと微笑む

「そうみたいですね。んじゃ・・いってきます」

受け取ったメダルを三枚をドライバーに居れた青年がスキャナーを手にとりドライバーにかざす

『カウ!パンダ!!ゼブラ!!!カウン!カウンダ!カウンダブラ!!!』

ーーーー

それは怪奇の運命、というものなのかもしれない
パッチワークとなった世界であっても元いた世界同士の怪奇はひかれ、相対すべき相手の前に現れる

ワームがライダーシステムの前に現れたように

宇宙人が光の巨人に立ちはだかったように

ヤミーはオーズの前に現れる・・・

「なんて・・・詩じみたこと言ってる場合じゃないでしょうが!?」

「あら、私気に入ってるんだけどなあ」

ワームヤミーと相対したオーズはクロックアップしたワーム達にお手玉のように吹き飛ばされていた
そんな様子をのんびりした様子で見つめているキュウティー

「このままじゃ幾ら防御したって・・ごふっ、やられま・・がふっ!」

「困ったわねえ・・・」

メダルホルダーを開きながらゆっくり思案するキュウティー
その足元に吹き飛ばされたオーズが転がってきた

クロックオーバーしたワームたちがトドメをさそうとじりじりと近寄ってくる


「・・・そうねえ、このメダルなんてどうかしら」

ゆっくりした動作でメダルホルダーから1枚のメダルをオーズに投げる

「これは・・・なるほどね、相手に追いつけないならいっそ」

脚のゼブラメダルを取り外し新しい灰色のメダルを取り付けるオーズ

『カウ!パンダ!!ツチグモ!!!』

「動きを止めればいい!!」


[No.231] 2011/05/01(Sun) 21:40:47
蛹と闇と草食系 (No.231への返信 / 18階層) - 新野

ーーーーーーー
「どういうことだ・・これは」
「分かりません・・逃げたとか?」

クロックアップした二人の目の前にワームは居なかった
ただ、高速移動した後の土煙が地に落ちることなく空中で静止している

「・・・!先輩!アレ!」

注意深く外を警戒していたアゲハが何かに気づき指をさす

「あれは・・・どういうことだ?」

病院の庭でヤミーとワーム2匹が誰かに一方的に攻撃している

「助けに行きましょう!。もしかしたらヒーローズかも」

「ああ、すぐに・・・」

「近づかないほうが無難よ?」

助け舟を出そうとする二人の横にいつの間にか見覚えの無い女性がたっている

「お前・・・何故だ、見殺しにしろとでも!」

「キュウティーよ、よろしくね?」

「そんな事を聞いてるんじゃない!」

じれた様子で地団駄をふむアゲハ

それでもゆっくりとした動きのキュウティーが思案してから一言

「そうねえ・・・蜘蛛の糸に絡められた蝶に蟷螂なんて、冗談にもならないと思わない?」

ーーー

「さあ、3枚分、後悔させてやる!!」

クロックアップの体制をとるワームヤミー達を前に戦闘体制にはいるオーズ
オーラングサークルからエネルギーが脚に流れると同時に大地を蹴る
それを追うようにクロックアップをするヤミー
まさしく次元の違う動きをするクロックアップからは逃げられない
オーズの周りをかく乱するよう走り回るヤミーとワーム

「ライダー!!、らい・・・だぁあ?」

はずだったのだが、クロックオーバーもしていないはずのヤミーがバタバタと手足を動かしている
その目の前でオーズが宙に浮いている

いや、浮いているのではない
いつの間にか張り巡らされた糸のようなエネルギーの上に「立っている」のだ

「流石に、動けなかったら高速移動も意味が無いみたいだな!」

よくよくみるとヤミーとワーム達の身体にも糸のようなエネルギーが幾重にも絡み付いている
高速で動き回ったせいで細い糸に絡まってしまったのだ

「これで終わりだ!!」
『トリプル、スキャミングチャーージ!!」

メダジャリバーを引き抜き、セルメダルを三枚、スロットインするオーズ
スキャナーを通すとそこからチャージを済ませた音声が響き渡る

「はあああああああ・・・・でりゃああああ!!!」

横薙ぎ一閃
時空ごとヤミーとワームを切り裂く一撃が放たれた


[No.232] 2011/05/01(Sun) 21:41:16
彷徨うもの達3 (No.232への返信 / 19階層) - ありくい

 白黒の幾何学模様の怪人を、銀色の光の巨人が相手取る。ウルトラマントゥモローの神々しさとダダを圧倒する戦闘力に、に空奈とアニーはその顔に希望を取り戻す。

 しかし、まだ危機は潰えてはいない。突如車内に衝撃が加わり、コントロールを失ったGIASドライブが緊急停止する。
 数体のサナギワームが飛びつき、GIASドライブの動きを止めたのだ。

 「新手!? しつっこいわね……! 空奈ちゃん、ここからは走るわよ!」

 「は、はいっ!」

 アニーの判断は素早かった。空奈が返事する間も無く扉を蹴り破り、車内に侵入しようとするワームに容赦なく射撃を浴びせると、開いたスペースに向かって空奈の手を引いて飛び出す。
 しかし、逃げようとしたその先はワーム達に塞がれており、突破は難しい。

 「こうなったら、一旦病院に戻って……」

 「アニーさん、あれ!」

 空奈の声に振り向くと、病院に続く道から人影が現れる所だった。――先程追いかけてきたワーム!

 「そんな……」

 挟み撃ち。その残酷な現実に心が折れそうになる。が、アニー隊員はすぐさま自分を叱咤する。ウルトラマンが勇敢に戦っている。自分の隣に護るべき対象がいる。
 自分ひとりが諦めてはいられない

 「私が突破口を開くわ! 空奈ちゃん、病院に戻って皆と合流するのよ!」

 サナギワーム達の足元に銃弾を見舞い威嚇すると、アニーは成体ワーム2匹に攻撃を集中させる。この隙を突けばあるいは――

 「……クロックアップ!?」

 しかし、成体ワームは銃撃の勢いに押される前にカタをつけようと判断したらしい。ぐっと腰溜めに構えると、次の瞬間その姿が掻き消えた。
 クロックアップ――体内に流れるタキオン粒子を操作し、時間流を自在に行動する超高速移動。一度発動してしまえば、同じくクロックアップする以外に対抗する術は無い。

 「――っ!」

 だが、次の瞬間起こった出来事に、アニーは更に驚愕する。ワームが消えた地点で一つ、空奈の目の前で一つ、更には後ろに居たサナギワームたちが一斉に爆発したのだ。


 ――Clock Over


 電子音声が響き渡ると、何も無かった筈の場所に人影が二つ出現する。一つは仮面ライダーアゲハ。してもう一つは、見たことも無い成体ワームの姿。
 鈍く光る緑色の身体のあちこちには、鋭く突き出た爪や牙。両肩には人間の頭蓋骨が浮かび上がっている。ワームはゆっくりとアゲハの方に向き直ると、淡く発光しはじめた。擬態の兆候だ。

 「尽介さん!」

 しかし、アゲハは空奈の言葉には反応せずワームを睨み付ける。ワームは見る見る姿を変え、空奈も見覚えのある人間の形を取った。
 背の高いその男は、にやりと不適に笑う。

 「手前……どういうつもりだ、一也!」




 ワームヤミーとそれを破ったオーズの事は気になったが、その場はとりあえずマンティスに任せて空奈達を追ったアゲハ。一度は彼女達やミサキ隊員を救ったものの、ダダの謀により、瓦礫に埋もれる羽目になる。なんとか脱出できたと思ったら、今度は巨大化したダダである。

 しかし、ウルトラマントゥモローが現れてからアゲハの決断は早かった。すなわち、ダダの相手は彼に任せ、自分は空奈達を追うと。
 少なくとも、自分が無理に立ち向かうよりはよっぽど現実的というものだろう。
 愛車・アゲハエクステンダーに跨ると、スロットルを回してアクセルを踏み込む。威勢の良いエンジン音を上げながら猛スピードで走り出す。

 そうしてアニー達の姿を見つけたときには、まさに成体ワームがクロックアップを発動しようとしているところであった。
 バイクから飛び降りるとすかさずベルトのスイッチを叩く。

 ――Clock Up

 電子音が鳴った瞬間、文字通り世界が止まる。サナギワームもアニー達も風に揺れる木々も、ぴたりとその動きを止め、奇妙な静寂がその場を支配する。
 この中で自在に動けるのは、体内のタキオン粒子を操作するアゲハと、そして成体ワーム2体だけである。

 「まったく……しつこいってんだよ、お前らぁ!」

 二刀に分解したバタフライブレードを構えながらワームに肉薄する。二体に同時に攻撃を仕掛け、空奈に近づけさせない目論見だったが、ワームの一体がもう一体を逃がすように前に出てアゲハの攻撃を受け止める。その隙にもう一体は空奈の方に走り出す。

 「くそっ、どけえ!」

 組み付いてくるワームを振り払い、剣の柄で腹部を殴りつける。耐え切れず怯んだ所を渾身の力で十字に斬りつけると、ワームは怨嗟の声を上げて爆発した。
 しかし、その間にもう一体は空奈の目前まで迫っていた。

 「やめ――!」

 ワームが空奈に触れようとした瞬間――横合いから抜き手がワームを貫いた。何が起きたか分からぬまま爆発するワーム。超加速したこの空間で動けるのはマスクドライダーか、もしくは、

 「……ワームがワームを、攻撃しただと?」

 「未熟だな、アゲハ。いや、尽介」

 爆風の中から、鈍く光る緑色のワームが姿を現す。体のあちこちから爪や節足のような器官が突き出たそれ――グリラスワームは、続けざまに残るサナギワームを打ち倒していく。
 呆然と立ち尽くすアゲハは、そのワームの姿と声に聞き覚えがあった。

 ――Clock Over

 クロックアップが解除され、世界に通常の時間が流れ始める。アニー達にとっては、ワームが消えた途端に爆発が起こったようにしか見えないだろう。戸惑う彼女達を他所に、アゲハは叫ぶ。

 「手前……どういうつもりだ、一也!」





 「やれやれ、せっかく忠告してやったのにもうこのザマか。どうしてお前はそう騒ぎばかり起こす」

 「お前に言われたくねえよ! わざわざ仲間を倒すなんて何を企んでる!?」

 空奈とアニーを庇う様に間に立つアゲハに、一也は不敵な態度を崩さない。おどける様に肩をすくめて見せる。

 「別に、俺には俺の都合があるだけだ。奴らにその娘を持っていかれては困るんでね。先程は譲ったが……どうやらお前にはその娘を護るのは荷が重いようだ。こちらに渡してもらおうか」

 「ふざけるな! 人を物みたく扱いやがって……。今日こそ決着をつけてやるよワーム野郎!」

 バタフライブレードを突きつけると、一也は少し不快そうに顔をしかめる。

 「その口の悪さは誰に似たんだか……。出来の悪い弟には少し灸をすえてやらないとな」

 一歩踏み出すと、何かがそれに応えるように一也の周りを浮遊する。一也はそれを手中に収め、ベルトに装着する。

 「それは――アゲハゼクター!?」

 「変身」

 ――Henshin

 電子音声と共に、ベルトを中心としてヒヒイロノカネ装甲が構築されていく。蝶の蛹にも似たその姿は、尽介にとって馴染みのそれに酷似していた。

 「キャストオフ」

 ――Cast off!! Change Graphium!!

 
更に装甲が炸裂し、中からは蛹から羽化したかのように蝶を模した姿が現れる。それは仮面ライダーアゲハとそっくりだったが、決定的に違う部分があった。

 「黒いアゲハ…だと……!」

 「仮面ライダーダークアゲハとでも名乗ろうか。俺がZECTの開発者だったことを忘れたのか? 設備と後ろ盾さえあればレプリカの作成はそう難しくはない。……さぁ、お前の未熟さを教えてやろう」

 黒いライダー……ダークアゲハは挑発的に指をくいくいと動かす。

 「抜かせよ!」

 アゲハは距離を詰め、一刀に戻したバタフライブレードで斬りかかると、ダークアゲハも同等のブレードで受け止め、鍔迫り合いになる。
 強引に振り払って次の斬撃に繋げようとするが、ダークアゲハが胸元に蹴りを放ちそれを許さない。アゲハが怯んでいる間にダークアゲハはバタフライブレードを二刀に分かつと、左右から斬り込む。

 右の一撃を剣で防ぎ、左の一撃を身を捻ってかわすが、鋭く続く右の二撃目を避けきれない。アゲハの体が袈裟懸けに火花を散らす。苦痛に呻くが何とか体制を立て直し、剣を大振りに薙いで間合いを取ろうとする。

 ダークアゲハは軽快に飛び退りながら片方の剣をくるりと逆手に持つと、着地と同時に投擲する。空を切って突き刺さろうとする剣を何とか弾くが、間髪入れずに放たれた蹴りで剣が飛ばされてしまう。
 ダークアゲハはここぞとばかりに残ったもう一方の剣で斬りかかる。危ういところでそれを避けると、アゲハは伸びきった腕を掴んで手首に手刀を打ち込む。カランと音を立てて剣が落ちる。これでお互いに素手となった。
 
 「ふ、思ったよりは粘るじゃないか」

 「言っただろ、今日こそ決着をつけてやるって!」

 反撃とばかりにアゲハが拳を振り上げるがダークアゲハは頭を下げて避けるとカウンターで正拳突きを見舞う。

 「が…は……っ」

 続けて左右の連打が綺麗に打ち込まれる。苦し紛れに腕を振るうが、それもあっさり避けられる。そして、それが致命的な隙となった。

 「だが、やはり未熟だよ」

 ダークアゲハの拳がアゲハの腹部に突き刺さる。体が浮き、くの字に曲がるほどの強力な一撃。アゲハの身体を右拳で支えたまま、ダークアゲハはベルトのゼクターの翅を押し込む。

 「ライダー……キック」

 ガシャリと翅が展開すると

 ――Rider Kick!

 ダークアゲハの脚にタキオン粒子が集中する。
 拳を離すとアゲハは支えを失い、ゆっくりと崩れ落ちると膝を突いた格好で一瞬止まる。。

 次の瞬間、垂直に蹴り上げられたダークアゲハの脚が正確にアゲハの首を捉え、その凄まじい破壊力がアゲハを天高く跳ね上げた。

 「がっ――うああああああああ!?」

 数瞬の後、どしゃ、という音と共にアゲハが地面と衝突する。余りの威力に変身が解け、中から満身創痍の尽介の体があらわになった。尽介はぐったりと横たわり、ぴくりとも動かない。
 
 「さて、一緒に来てもらおうか、結合点君?」

 「い、嫌……」

 その様子を一瞥もせず、空奈の方に身体を向けるダークアゲハ。その姿はまさに悪魔のように空奈には映った。

 「……この子を連れて行くのは、私を殺してからにして!」

 言葉も無く震える空奈の前に勇敢に立ったのは、アニー隊員だった。銃を構える手が震えそうになるのを強い意志で押さえ込む。
 しかし、それに構わずにダークアゲハは二人に近づく。――と

 「ぐっ……」

 急に、頭痛でも起きたかのように頭を抱えるダークアゲハ。苦しそうな声を漏らし、少しよろめくと頭を振り、

 「……次に会うまで、精々達者でいることだ」

 空奈に言い捨てると、一瞬にしてその姿が消えた。クロックアップ。しばらく経っても何も起きないところを見ると、ダークアゲハはこの場を立ち去ったらしい。
 空奈は立て続けに起こった一連の出来事に呆然としていたが、はっと我に返ると倒れた尽介に駆け寄った。

 「尽介さん!」

 「落ち着いて! ……大丈夫、怪我はしてるけどどうやら命に別状は無いみたい」

 「そ、そうですか……良かったぁ」

 アニーのその言葉に、安心してその場にへたり込む空奈。
 そこに、無機質な電子音が響き渡る。アニーの持つ通信機だ。アニーが回線を開くと、モニタには一人の男性の姿が映し出された。 通信はオープンチャンネルで、この周辺一体に呼びかけられている。

 年のころは30代程といったところか。男性は優しく微笑みながら口を開く。

 『久我崎病院及び、その周辺で戦闘中のヒーローズ諸君。戦闘が終了次第、それぞれ合流の後、SPIRITS本部へ移動してください。もちろん、結合点の少女・空奈君も一緒に』

 「わ、私ぃ!? 結合点って何!?」

 空奈が素っ頓狂な声を上げるが、単方向の通信の為その声は男性に届かない。男性は更にマイペースに続ける。

 「SPIRITSは貴方がたを受け入れる用意があります。情報を共有する意味でも悪い提案では無いと思いますよ。……ああ、申し送れました。私、SPIRITSを統括している佐久間ケンと申します」

 混沌を極める戦場の中で、佐久間はにこりと微笑んだ。


[No.233] 2011/05/01(Sun) 21:54:11
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