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No.456に関するツリー

   新生退魔スレ - アズミ - 2011/07/23(Sat) 23:22:19 [No.456]
用語集その1 - アズミ - 2011/07/23(Sat) 23:43:43 [No.457]
とりあえず。 - アズミ - 2011/07/24(Sun) 00:46:56 [No.458]
[削除] - - 2011/07/25(Mon) 01:07:23 [No.459]
管理人さん - りん - 2011/07/25(Mon) 01:43:29 [No.460]
まじょりん - 桐瀬 - 2011/07/25(Mon) 02:16:21 [No.461]
閑古鳥の九十九堂 - ジョニー - 2011/07/25(Mon) 22:51:11 [No.463]
川西家の人々 - ありくい - 2011/07/25(Mon) 23:08:06 [No.464]
八百比丘尼 - アズミ - 2011/07/25(Mon) 23:47:17 [No.465]
内在妖力と妖術のガイドライン - アズミ - 2011/07/26(Tue) 19:28:11 [No.466]
妖怪の退魔 - アズミ - 2011/07/27(Wed) 23:32:36 [No.469]
も一つ退魔師 - アズミ - 2011/07/28(Thu) 23:06:55 [No.475]
八神家の家庭の事情 - もけけ - 2011/07/29(Fri) 01:29:47 [No.478]
山犬憑き - アズミ - 2011/08/02(Tue) 23:51:59 [No.484]
転生者 - りん - 2011/08/06(Sat) 23:23:05 [No.491]
今更ながら - ジョニー - 2013/01/27(Sun) 17:45:37 [No.503]



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新生退魔スレ (親記事) - アズミ

――1945年
 太平洋戦争終結。

――1946年
 ラバウル島から復員したとある兵隊(仮にSとする)が、
 妖怪の存在を世間に公表する。

――1947年
 鞍馬天狗、祢々子河童、隠神刑部狸、玉藻前、ぬらりひょんら、
 帝国ホテルにて時の吉田茂首相と会談。
 元兵隊Sも同席。世に言う『武良会談』。

 日本国政府は妖怪の存在を公式に認知。
 原則として相互不干渉の取り決めがなされる。


――1965年
 妖怪社会において人間との共存の気風が高まる。
 若手烏天狗により鞍馬山が占拠され、
 鞍馬天狗を人質とし人間社会への進出を提言。
 河童、化け狸、妖狐の連合軍がこれを鎮圧したが、
 妖怪社会には依然として火種が残る。

――1970年
 とある自衛官が陸上自衛隊東部方面総監部総監室を占拠。
 自身が妖怪と人間の混血であることを告白し、
 妖怪との共存を提言。
 当時漫画家となっていたSが説得にあたるが、
 自衛官は割腹自殺を遂げる。

――1985年
 帝国ホテルにて『第二次武良会談』。
 従来の相互不干渉路線を継承しつつも
 地域限定での妖怪との共存を認める方向で大筋合意。

――1988年
 妖怪法成立。
 日本国の憲法、及び法律、条例を遵守する限りにおいて
 政府は妖怪権を認めることに。
 他方、妖怪が犯罪を犯した場合には人間側の司法組織が
 これを裁くこととなる。

 第十機動隊(通称妖怪機動隊)が設立。
 また、退魔師が国家資格となる。

 妖怪特区構想が立ち上げられる。

――1996年
 妖怪特区設置。恐山、高千穂など全国に13カ所。



そして、1999年……



※というわけでまたまたまたしても懲りずに退魔スレです。
 世界観は一新する方向で。


[No.456] 2011/07/23(Sat) 23:22:19
用語集その1 (No.456への返信 / 1階層) - アズミ

・妖怪
人ならざる隣人たち。
この世界においては政府に公式に認知されている。
人間社会に順応する者は法律の遵守が義務付けられる。

・妖怪法
妖怪に関する扱いを包括的に規定した日本の法律。
概ね人間と妖怪の同権を保証する内容……とされるが、実際には妖怪が人間社会において暮らす場合、後見人を要することが多い。

・妖怪権
概ね人権に準ずるが、お化けにゃ学校はない。

・妖怪特区
恐山、高千穂など全国13か所に設立された妖怪との共存共栄を推進する特別地域。
この地域に限り、人間と妖怪の婚姻も認められる。

・妖術
物理法則を超越し森羅万象に介入する技術。
妖怪からもたらされたが、内在妖力(霊力)が十分であれば人間にも使用可能。
本質的には魔術や法術と同じ。

・退魔師
妖怪を退治することを生業とするもの。拝み屋。
それこそ有史以前から存在したが、1988年から国家資格化した。
また、現在は犯罪者でない限り、妖怪を勝手に退治することは殺人に準じる重犯罪である。

・第十機動隊
警視庁警備部に設置された十番目の機動隊。
妖怪による重犯罪に対処する武闘派集団。

・赤血軍
妖怪の人間社会からの排除を目指すオカルトテロ集団。
構成員は妖怪法の施行以降の社会情勢に順応できなかった旧来の退魔師が多い。


[No.457] 2011/07/23(Sat) 23:43:43
とりあえず。 (No.457への返信 / 2階層) - アズミ

 毎年のように観測史上最高気温を記録する日本の夏は、今年も絶好調らしかった。

「あぢ〜……」

 うだるような暑さを少しでも軽減すべ雨戸を開け放つと、庭の池で人魚が仰向けに浮いていた。さながら夏の暑さに負けた金魚のように。ぷかぁっと。
 俺はずり落ちた眼鏡を上げ、剥き出しのおへそを暫し見てから、絞り出すように問うた。

「……生きてる?」

「死んでる……」

 古今東西、そう応えた死体なぞありはしない。
 放って置くことに決めて網戸だけ締めると、相変わらず逆さに浮いたままの人魚に留守番を命じた。

「どこか、出掛けるの?」

「川西さんちの雪夢ちゃんが腹痛で病院行くってんで、送りに」

「腹痛?」

「アイス食べ過ぎて」

「……雪女が?」

「……雪女が」

 暫し、沈黙。
 蝉が遠くで鳴いている。この湖底市は人口30万のそこそこ大きな都市だが、妖怪特区である都合上、自然に多く恵まれている。……自然の中でしか生きられない妖怪は、存外に多い。
 人魚はすいー、と泳いでこちらに寄ってきた。

「……車の中は冷房効いてる?」

「そりゃ、まぁね」

「……私も行く」

 人魚は一念発起したかのように上体を水から揚げ、……そのままべしゃり、とその場に倒れた。

「……暑い。起こして」

「……ついてくる気なら観念して服着て足生やして車乗りな。自力で」

「……うぅー」

「唸ってもダメ」

 冷たく言い放つと、俺は窓を閉めて日が燦々と照る夏の青空を見上げた。

 ……今日も湖底市は日本晴れだった。


------------------------------------------------------------


「長さとか、形で命の尊さが変わるもんか!」

「独りぼっちは、寂しいもんな。
 理由なんてそれで十分さ」

名前:安曇厚志
種族:人間
性別:男
年齢:27
職業:作家
内在妖力:B-
習得妖術:
・『不老不死』
常時発動。
正確には呪い。人魚の肉を食べたことによる。
致死ダメージからも再生し、老衰する年齢に至ると自動的に幼年まで年齢が巻き戻る。
・『潮の鎖』
任意発動。
水を鞭のように操る多目的妖術。護身用にも耐える。
・『川流れ』
任意発動。
一定時間水中呼吸を可能にする。
解説:
妖怪特区である湖底市の湖底ニュータウンに住む作家。
人当たりがよく近所づきあいは良好。だが故郷や家族について問われると表情に影を落とす。
人魚の雫と共に暮らしているが、特に結婚などをしているわけではない。
実は雫の肉を食って不老不死になっており、そのことで両親と不仲になっている。
愛車は日産のマーチだが、雫を運ぶために巨大な水槽を乗せた軽トラックも持っている。


「……私は、後悔なんかしない」

「後悔する資格なんか、ない」

名前:雫
種族:人魚
性別:女
年齢:外見15
職業:無し
内在妖力:A+
習得妖術:
・『呪い歌』
任意発動。
船を沈没させる人魚の呪歌。
効果範囲内の人間を魅了し、支配下に置く。使用は違法。
・『人間変身』
任意発動。
一定時間、人間に化ける。
雫のこれは精度が低く、足が生えるだけで両側頭部のヒレは隠蔽出来ない。
・『癒し』
任意発動。
対象の外傷を癒す。自分の体液を接触させる必要がある。
解説:
安曇と共に暮らす人魚。
口数が少なく何を考えているか解りづらいが、他者に対する警戒心はやや強い。
如何なる経緯によってか、自ら望んで安曇に肉を譲り渡し、食べさせ不老不死にした。二人の関係は当人たちにしかわからないが、お互い大事には思っている、らしい。


[No.458] 2011/07/24(Sun) 00:46:56
[削除] (No.458への返信 / 3階層) -

この記事は投稿者により削除されました

[No.459] 2011/07/25(Mon) 01:07:23
管理人さん (No.459への返信 / 4階層) - りん

「スクープですよ、スクープっ!」

 梅雨も通り過ぎて、なお暑さを増すとある休日。
 クーラーを使うには勿体ないので、扇風機でとってた涼を吹き飛ばすような声がアパートの縁側に響く。

「何よぉ、騒々しい……」

「今度の新聞のネタです!
 雪女がアイスの食べ過ぎて腹痛になる。
 こんな新聞に書きやすいネタは久しぶりなのです!」

「あー……川西さん家の雪夢ちゃんのことね。
 不思議よねぇ、雪女がアイスで腹痛って」

 アイスの食べすぎとか、今の季節からどれだけ食べてるのやら……

「今度の新聞が楽しみなのです!」

 お古の万年筆を力強く握って、目を輝かせている文絵を横目に穂乃香は、

『鴉天狗なんだし、風でこの暑さを何とかしてくれないかなー』

 そんなことをのんびり考えていた。

------------------------------------------------

「今年の夏も暑そうねぇ……」

「一日三食昼寝つき。それでお家賃はこんな感じだけど……どぉ?」

名前:柳木 穂乃香(やなぎ ほのか)
種族:妖狐
性別:女性
年齢:外見28(実年齢93)
職業:アパートの大家さん
内在妖力:C+
習得妖術:
・『人間変身』
妖術、任意発動。
人間の姿に変身する。

・『狐火』
妖術、任意発動。
青白い火の玉を発生させる。
攻撃にも使用できるが、主な使い道は指先に小さく発生させてタバコの火をつけること。
大規模に発生させると、もちろんながら違法となる。

・『幻術』
妖術、任意発動。
相手に幻を見せる。
物に被せたり、空間に映し出したりと応用範囲は広め。
ただし、幻で騙すには強制力がないため、もっぱら映像の代わりとして使うことが多い。

解説:
湖底市の駅から西に10分ほどの古アパート、西三荘の大家さん。
野生の狐が妖力を持ち、人間に変身できるようになった妖狐で、
このアパートの元の持主に拾われて養子になり、その人が亡くなった後にこのアパートを受け継いだ。
遺産も入っており、食うに困る状態ではないためそのままアパートの大家として生計を立てている。
必然的に共存する妖怪たちが入ることが多いが、時にはただの人が住むこともある。
当人の妖力は大して強くなく、あまり研いている節もない。
主な交通手段は自転車。

・西三荘
元々は人間の柳木 清明(やなぎ きよあき)が営んでいたアパートで、死ぬ前に穂乃香に譲渡されている。
土地を含めると、裏山や貯水用の溜め池などもあるためそれなりの広さがあるが、何があるのかは穂乃香自身、全然把握してない。
家主の穂乃香の部屋を入れて1階に2部屋、2階に4部屋の合計6部屋と、共有の食堂、お風呂がある。
ご飯や掃除は座敷わらしの咲ちゃんが行っており、外への買い物は大家の穂乃香が行くことが多い。


「スクープです! スクープです!」

「お手伝いしましょうか?」

名前:八尾坂 文絵(やおざか ふみえ)
種族:鴉天狗と人間のハーフ
性別:女
年齢:16
職業:高校生
内在妖力:B-
習得妖術:
・『妖怪化』
妖術、任意発動。
鴉天狗の姿になる。
後述の妖術は基本的に、この姿にならないとほとんど使用できない。
実際は人間変身が正解で、人間変身をしていると他の妖術が使えないだけである。

・『風術』
妖術、任意発動。
風を発生させる。
ある程度集めて物を吹き飛ばしたり、強風を吹かせたり、風の壁を作ったりと使用の幅は広い。
集束させれば竜巻や真空波さえも発生させられるが、文絵の場合はそんなことをすれば一発で力尽きる。
大規模に使用すれば違法だが、扇風機代わりに使われる分には黙認されているのが実情。

唯一人間の姿のままでも使えるが、その場合はそよ風ぐらいしか発生させられない。

・『飛行』
生来能力、任意発動。
背中の翼を使って飛行する。
最大で時速10kmほどは出るが、あまり高く飛べない。

・『飛行術』
妖術、任意発動。
背中の翼を使っての飛行を、風を使って加速させ、最大高度を増加させる。
基本的に高高度の飛行は航空の妨げになるために違法となる。
地上近くで使う場合は、速度違反にならない程度なら黙認されている節はあるがあまり良い顔はされない。

・『千里眼』
妖術、任意発動。
猛禽類のような視覚を得られる。
倍率はある程度の調整が可能で、文絵の場合は1km先の人物の特定ぐらいならできる。

解説:
高尾山の鴉天狗と人間の女性の間にできたハーフの子。
妖怪であることに特に嫌悪感はないが、感覚が人間ベースなためか鴉天狗としての姿には少々嫌悪感がある(くちばしとかかぎ爪が嫌い)。
ただし、便利なのは分かっているのでたびたび変身していたりする。
密かな目標は妖怪の姿にならなくても妖術が使えるようになることだとか。
近くの高校に通っていて、そこでは新聞部に所属。そのため、備品の一眼レフを持ち歩いてる姿が見られる。
近くの妖怪特区がここだったため、高校にほど近いに西三荘で一人暮らし中。


[No.460] 2011/07/25(Mon) 01:43:29
まじょりん (No.460への返信 / 5階層) - 桐瀬

「お前なんか『魔女』で十分だ!」

流産をした女性の夫が言った。

「あなたの薬が効かなかったからよ!」

大きな怪我で亡くなった子供の母が言った。

「やはり流行り病ではどうにもならんか……」

長年連れ添った妻を亡くした夫が言った。
あまりにも不憫だったので、こっそり治してあげた。

「私達魔女の仕事は、生死の垣根の番人。
勝手な判断でそれを低くするような事をしてはいけない」

こっぴどく叱られた後で死にそうな目にあった。

逆恨みをされるのは構わなかった。
その内に慣れたし、仕方がないとも思っていたから。
それに新しい命が生まれた時は嬉しいし、誰かが助かった時は心が暖まるようだった。

それでも、命が失われる光景を、事前にその結末が訪れる事を知りながらも、何度も何度も何度も繰り返し見ることに耐えられなくなっていった。

そして、いつしかあたしは……


――逃げた。

-----------------------------------------------------------

「あたしはゼンゼン怪しい魔女じゃないですよ?」

「人間は越えちゃいけない垣根ってのがあるんだよ。」

名前:ネー・ミステリエ・ヘクセ・ミレニー
種族:魔女
性別:女
年齢:外見24
職業:占い師
内在妖力:A+
習得妖術:
・『不老不死』
常時発動。
自身の能力を次代の魔女に継承するまで持続する
継承した瞬間に跡形もなく消え去る
・『病理』
任意発動。
自在に疫病を引き起こしたり鎮めたり出来る。
いかなる場合であれ使用は違法。
・『垣根の目』
任意発動。
対象物が生きるか死ぬかを見分ける。
・『召喚』
任意発動
使役している使い魔を呼ぶ。
黒猫、カラス、黒犬、首なし等等
いわゆるバーゲスト。

解説:
湖底市の駅前で当らない占いを営んでいる占い師。
欧州出身の魔女。魔女はあくまでも魔女という種族で、魔法使い(ソーサラー)とはまた異なる。
日本に来た理由は本人曰く『逃げてきた』だがそれ以上は深く語ろうとはしない
普段は飄々とした言動で占いも含めてよく判らない事を喋くっているが、街にはそれなりに馴染んでいる。
基本的に人付き合いは良いものの、病院を初めとした人の生死が関わる場所に近付く事だけは嫌う。


[No.461] 2011/07/25(Mon) 02:16:21
閑古鳥の九十九堂 (No.461への返信 / 6階層) - ジョニー

・九十九家
赤血軍の母体になったともいえる日本古来からの退魔師組織に属して霊具の製造・供給販売を担ってきた一族。
武良会談以降混乱が続いた退魔師組織から距離を取っていた九十九家は妖怪法施行と共に一部の分家を除き組織から素早く脱退。
いち早く国家資格取得と第十機動隊への霊具供給販売に走った。その為、現在の国家資格持ち退魔師と第十機動隊への霊具販売シェアの多くを九十九製が占めている。
赤血軍などのオカルトテロリスト対策の対退魔師用の妖怪向け霊具(妖怪用はあくまで護身の域を出ない物)を含む、対退魔師装備なども現在では一部で取り扱っている。
旧来の退魔師組織には裏切り者扱いをされ、妖怪からもかつて散々九十九の霊具の犠牲者を出した事から恨まれることがあり人間・妖怪双方の一部から嫌われている。
また双方から嫌われて時には報復攻撃を受けることもあった為、かつては霊具製造売買専門で戦闘は専門外であった九十九家であるが近年では戦闘訓練必須になっている。





「いらっしゃい、九十九堂へようこそ」

「くぉぉら! あんたら、私の店で暴れんじゃないわよ!?」

名前:九十九柳(つくも・やなぎ)
種族:人間
性別:女性
年齢:21
職業:自営業/退魔師
内在霊力:A−
習得技能:
・『霊具作成』
任意発動。
主に退魔師が使用する各種霊具を作れる。
もちろん製作できる種類や能力に上限(治癒符は作れるがポーションなど霊薬は作れないなど)はある。
作れる道具の力の上限は本人の技量や素材によって上下するが概ね内在霊力に依存する。

習得妖術:
・『付喪神使役』
任意発動。
物品を一時的に付喪神にして式神として使役できる。
霊力や妖力などが籠った品は付喪神にはできない。

・『道具使い』
任意発動。
九十九堂の地下や九十九本家にある転移陣が刻まれた蔵から自分の霊力が籠められた任意の自作霊具を3秒で召喚できる。
ただし転移陣が刻まれているのは蔵であるので送還は不可能。同じ品を再度召喚するには蔵に戻さなければならない。

解説:
湖底市にある霊具専門店、九十九堂の店主。
九十九本家に産まれながらもお家騒動で分家の一つである久崎に養子に出されるが、その才と優秀さを示したことで九十九本家に戻されて九十九当主の継承権4位となる。
普通の退魔師ならば赤字どころか下手すれば破産しかねない霊具の大盤振る舞いによる物量戦を得意とするが、個々の霊具の扱いも九十九家では上位に位置して、その戦闘能力は九十九では五指に入る。
現在は湖底市で霊具売買の仕事について実地修行中、品物の質はいいが値段が値段なので大抵は閑古鳥が鳴いている状況。










「ドラゴンが、最強だという証拠を見せてあげるよぉ!」

「う〜ぁ〜、ひ〜ま〜…暇暇暇暇暇暇暇、暇だぁぁぁああぁぁ!」

名前:ミラルディア
種族:ドラゴン
性別:女性
年齢:外見8
職業:居候
内在妖力:C−(生得能力を妖術換算すると柳による封印時でもA相当)
習得妖術:
・『人間変身』
任意発動。
人間の姿を取る事ができる。
この状態でもドラゴンとしての力を振るうことは出来るが柳の封印具の影響で鬼よりも幾らか劣る程度の力しか振るうことができない。

生得能力:
・『ドラゴン化』
任意発動。
ぶっちゃけ本来の姿に戻るだけだが現在は柳の封印具によって厳しく制限されている。

・『竜の爪』
任意発動。
人間の姿でも、その手を振るえば指の軌道上に本来のドラゴン時の巨大な爪痕を走らせる。
本来はドラゴンの爪で切り裂けるものは問答無用で切り裂くことができるのだが、柳の封印具によって威力が制限されている。

・『ドラゴンブレス』
任意発動。
人間の姿でも炎の息を吐けるが、その火力は柳の封印具によって厳しく制限されている。

解説:
湖底市にある九十九堂に居ついている居候。
西洋竜であるドラゴンで、特定の種族名のあるドラゴンではなく様々な竜の血が入り混じった雑種竜だがそれでも最強と呼ぶに相応しい種族であるドラゴンには違いなく、その力は下手な上級妖怪を上回る。
なんでも妖怪の存在が政府に公認された国があると聞きつけて、子作り子作りと煩い部族から逃げ出してきた部族最年少で最後の雌竜。
運よく日本に辿りついたもののこれからどうするか考えて(途方に暮れて)いた時に柳に拾われ、自然に剥がれ落ちた鱗などを差し出す代わりに生活の面倒を見てもらっている。
柳の教育によってマシになったものの短気な性格で、その能力と相まって非常に危険でもあるが単純なので余程怒らせない限りは宥めすかせるのもそれなりに楽。
実年齢は400歳を超えているが、竜としては人間の姿を取った時の年齢に等しく精神年齢も同じく。
勾玉をあしらったチョーカーにブレスレットなどを付けていて、これらは柳がひいこら言って用意したミラルディアの力を抑える封印具である。
尚、愛称はミラ。










「柳さぁぁん、このままで本当にボクのバイト代出せるの? って、目をそらさないでよぉぉぉ!?」

「うひゃぁぁ!ミラちゃん、それはダメぇぇぇっ、ボク達死んじゃうからぁぁぁ!?」

名前:伊達原美那子(だてはら・みなこ)
種族:化け鼬
性別:女性
年齢:外見17
職業:アルバイター
内在妖力:B−
習得妖術:
・『人間変身』
任意発動。
人間の姿に変身する。

・『鼬火』
任意発動。
火柱から鬼火まで炎をかなり自在に操る。

・『鎌鼬』
任意発動。
鋭い風の刃を発生させる。

・『幻術/化ける』
任意発動。
自分自身が化けたり、何もないところに大入道を映したりと狸や狐に負けないぐらい割と多才。

解説:
湖底市にある九十九堂で住み込みで働いているアルバイト店員。
主にミラの子守役としての役割が大きいが、なにせ相手が相手なので子守も命がけである。
学校に通ってるわけでもないのに何故か近所の高校の女子制服を好んで着ている。
100年以上の時を経たかなり強い化け鼬なのだが、それを感じさせない苦労性なボクっ娘。


[No.463] 2011/07/25(Mon) 22:51:11
川西家の人々 (No.463への返信 / 7階層) - ありくい


「妖怪が怖いかって? 目の前に鉄砲持った人間が居たら、そっちの方が怖えな」

「っだああああ!! だからお前ら、俺を巻き込むんじゃねえっての!?」

名前:川西・光矢
種族:人間
性別:男
年齢:17歳
職業:学生
内在妖力:C-
習得妖術:
無し

解説:
湖底市に住む高校生。天邪鬼な性格ではあるが基本的に平凡で変哲の無い少年。
しかし、度し難いほどの巻き込まれ体質で、特に妖怪がらみのトラブルには毎日のように出くわす。そのため妖怪やその筋の人間との付き合いが広い。
家庭の都合で一軒家に一人暮らしをしているが、上記の理由で訳ありの妖怪が間借りすることもしばしば。
川西・雪夢の後見人でもある。



「幸ちゃんのとこに遊び行って来るね。私のアイス食べたら凍らせるから!」

「牛乳飲みすぎてぽんぽん痛い……」

名前:川西・雪夢
種族:雪女
性別:女
年齢:12歳
職業:生徒
内在妖力:A
習得妖術:
・『温度操作:冷』
任意発動。
自身、もしくは周囲の温度を下げる。部屋を涼しくするレベルから周囲の水分を凍結する程度まで調整可能。

・『天候操作:雪』
任意発動。
周囲の天候を操作し、雪を降らせる。その気になれば『街中で遭難させられる』レベルの吹雪を起こすことが出来る。

・『凍結:魂』
任意発動。
読んで字の如く対象の心魂を凍結せしめる。
魂を凍らされた者は、ある者は廃人となり、ある者は言われるがままの傀儡と化す。
雪夢はこれを「心を雪で白く塗りつぶす」と言い、決して使おうとはしない。

解説:
川西家に居候している雪女の少女。
快活ではきはきとした性格だが、川西家に来る前は口数が少なく大人しい子だったらしい。
好奇心が強く活発だが冷気が苦手という雪女らしからぬ体質で、しょっちゅう腹を壊したり体調を崩している。


[No.464] 2011/07/25(Mon) 23:08:06
八百比丘尼 (No.464への返信 / 8階層) - アズミ

「よくお聞き、坊や」

 八百比丘尼は声だけは優しく、言い聞かせるように俺に行った。

「命は、限りあるからこそ尊いんだ。終わりのない命なんて、誰も大切にしやしない。
 そいつら、命に限りの無いバケモノは、人の命の価値を貶める甘い毒なんだ」

 血に濡れた刃が空を切る。倒れた雫に向けられた切っ先に、心臓が跳ねあがるような思いをしながらも、俺は彼女を庇って立ちふさがった。
 凶器を向けられる威圧感と、未熟な精神。当時14歳の俺は竦み上がったが、どうにか一つだけ反論することができた。

「姉ちゃんだって……死なないじゃないか」

 か細く弱々しい、なけなしの抗議。
 だが、八百比丘尼はそれを一笑に伏すことなく、真正面から受け止めた。

「そうさ、私もバケモノだ」

 短いけれど、悲痛な言葉だった。

「私も、バケモノだ。
 存在自体が人を貶める、罪深いバケモノなんだよ。坊や」

 自嘲なんかじゃない。この人は、本当に自分のことをバケモノだと思っている。バケモノである自分を、諦めきっている。
 彼女が吐き捨てるように漏らしたその悲しい言葉に、俺は心身を縛る全ての拘束を振り払った。

「――違う!」

 恐怖は感じなかった。その代わりに、火傷しそうなほど熱い焦燥が胸を焦がしていた。

「違わないさ」

「違う――違うッ!! 姉ちゃんはバケモノなんかじゃない!
 姉ちゃんは――姉ちゃんも雫も、寂しくて自棄になってるだけだ!
 寂しくて、悲しいから……自分を受け入れてくれない世界を、自分から拒んでるだけだ!」

 捲し立てるように叫んで、比丘尼に近づいた。
 切っ先が鼻を掠めるような距離だが、恐怖は微塵も感じない。……わかっていたからだ。『姉ちゃん』が、俺を傷つけるはずがないと。

「姉ちゃんも雫もちゃんと生きてる!俺なんかに、あんなに優しくしてくれたじゃないか!」

 刃は、今にも取り落とさんばかりに震えていた。俺は構うことなくその切っ先を掴み、振り払う。
 さしたる抵抗もなく、妖怪殺しの刀は渇いた音を立てて海岸に転がった。

「長さとか、形で命の尊さが変わるもんか!」

 胸に渦巻くすべてを吐きだすように俺は叫ぶ。浅く裂けた掌から少なくない血が滴り落ちた。

 そして、比丘尼は――。

------------------------------------------------------------


「変わらない時代なんてない。たぶん、そういうことさ」

「信じてみることにしたんだ。私の来た道以外にも、生き方はあるってね」

名前:八百若桜(やお・わかさ)
種族:人間
性別:女
年齢:少なくとも700歳以上
職業:喫茶店経営
内在妖力:S-
習得妖術:
・『不老不死』
常時発動。
正確には呪い。人魚の肉を食べたことによる。
致死ダメージからも再生し、老衰する年齢に至ると自動的に幼年まで年齢が巻き戻る。
・他多数
解説:
湖底市で喫茶店を営む女性。

正体は八百比丘尼。
室町時代ごろ、人魚の肉を食べて不老不死になった漁師の娘。
二度縁づくものの、伴侶の死後若返るという奇異な現象ゆえに人に疎まれ出家し、尼僧となって衆生を救う旅に出た。
しかし結局は世を儚み、岩窟に姿を消したと言われている。

実際にはその後、不老不死に群がる人間や、逆に自身をバケモノと蔑む人々に絶望し、自身の運命を歪めた妖怪をこの世から根絶やしにすべく退魔師に身を落としていた。
1986年に安曇・雫と出会い宗旨替え。
現在は湖底市で喫茶店を営みつつも、湖底市を守護すべく退魔師資格を保有している。

88年の国家資格化以来は活動していないため犯罪には問われていないが、過去多数の妖怪を血祭りに上げたことから公安に要注意人物としてマークされている。


[No.465] 2011/07/25(Mon) 23:47:17
内在妖力と妖術のガイドライン (No.465への返信 / 9階層) - アズミ

●内在妖力
・国が基準を定めている。

・ランクはS〜E、それぞれに+、−の判定。

・あくまで妖術の起動に関する指標であり、強さではない。
 その能力の大半を生態として備える妖怪は強力な個体でも内在妖力は低い。
 酒呑童子:B- 八岐大蛇:D-などが例。


S:伝説級。
 人間であれ、妖怪であれ歴史に名を刻むレベル。
 戦闘においては戦略級の妖術を使用可能。

A:強力な、あるいは広域対象(戦術レベル)の妖術を使う妖怪。
 人間の場合は一線級の退魔師。

B:軍用の攻撃妖術を起動できる値。
 退魔師、あるいは混血の類の平均。

C:妖術のみで人を殺傷しうる最低値。
 天狗や妖狐、化け狸(年齢100歳以内)の平均値。
 あるいは、素質のある未訓練の人間の平均。

D:物理エネルギー的に極めて乏しい妖術しか使えない(幻覚や照明など)。
 河童や鬼、器物妖怪(年齢100歳以内)の平均値。
 あるいは、未訓練の人間の平均。

E:素質がほとんどない。
 E+は市販されている日用品レベルの妖術ならどうにか起動できる。
 (安定した起動を見込むため妖力のバッテリーがついているため)
 E-はスターターとなる妖力さえ確保できないため、それらさえ起動不能。
 また、一部の妖怪は視認することさえできない。

※つまり、人間は訓練によって2ランク分の補正が見込める。
 ただしEランクや妖怪はその限りではない。


●妖術
・妖怪から一般社会に浸透したためこう呼ばれる。
 本質的には魔術や法術と呼ばれるものと同じ。

・人間が使う場合、呪文や道具など何らかの起動条件がある。
 道具があれば呪文はほとんど不要だし、
 逆に長い呪文を要せば道具は不要なことが多い。

・日用品レベル(照明や映像投影、着火など)のものは市販もされている。
 科学利器と効果的には似たようなものだが、
 エネルギーを人体から捻出できるため非常用器具などに人気。

・人間を殺傷しうるものは退魔師資格がない限り所持自体違法。
 当然、道具を起動条件にする場合に限るが、
 生得能力として持っていたとしても公安にマークされるという噂。

・攻撃性の高い妖術は相応の訓練が必要だが、
 日用品レベルならばずぶの素人でも即座に起動できる。
 ただし、内在妖力が起動条件を満たしている場合に限る。


[No.466] 2011/07/26(Tue) 19:28:11
妖怪の退魔 (No.466への返信 / 10階層) - アズミ

・ゲゲゲ同盟
妖怪による日本最大規模の退魔師集団。
人間社会における妖怪の地位向上を目指して鞍馬山・利根川水系河童連合・四国化け狸同盟・玉藻前一族・大江山一党らが合同で設立した。
スーパーバイザーとして妖怪を人間社会に知らしめた『S』がついている。奇異な名称はSの看板漫画のタイトルに拠る。
全員が国家資格を取得しており、当初は無償で妖怪犯罪の解決に当たっていたがダンピングが指摘されたため現在は規定の報酬を受け取り全て妖怪被害者救済基金に寄付という形を取っている。
ネット上、あるいは「調布市富士見町□五」に妖怪ポストが設置されており、広く依頼を受け付けている。
よくちびっこに幽霊族の少年の存在を質問されるが、その場合受付のおねーさんが優しく「今出動中です」と答えてくれる。



「喧嘩ってのは素手でやるもんだ。違うか?」

「一応聞いとくぜ……『まだやるかい』?」

名前:佐原河太郎
種族:河童
性別:男
年齢:89歳(外見10代後半)
職業:退魔師
内在妖力:C+
習得技術
・坂東流角力術
別名、利根川式河童相撲。
無重力、あるいは水中においてすら投げ技を可能とする人外の戦闘技術。
相撲、と呼ばれるが投・極・打を総合した柔術に近い構成である。

・『化物膏』
妖怪が持つ膏薬生成術の総称。
河童族に伝わる膏薬は河童が使えばもげた四肢が癒着するほどの効果を発揮する。

習得妖術:
・『河童の遡流れ』
任意発動。
淡水の流れを操る。その気になれば利根川を逆流させることさえ可能。ただし利根川以外の河川では効果が大幅に落ちる。

生得能力:
・『伸びる腕』
河童の腕の骨は左右繋がっており、片方を縮めるともう片方の腕を伸ばすことができる。

解説:
ゲゲゲ同盟に所属する退魔師。
元利根川水系河童連合下佐倉組若頭。組長である繁造親分の孫に当たる。
現在は湖底市の治安維持のため佐倉組から派遣されており、同市を根城にしている。
弱気を助け強気を挫き、女子供を大事にする古き良き任侠。戦闘は素手喧嘩に拘りがある。


[No.469] 2011/07/27(Wed) 23:32:36
も一つ退魔師 (No.469への返信 / 11階層) - アズミ

「いや、手酷くやられたねぇ」

 爆炎によって瓦礫の山と化した病院の一室に、声が響く。
 崩れた壁の破片を押しのけて一つ、また一つと起き上がる影。しかしその一つとして、無事に済んでいる者は居はしない。
 ある者は髪だけで這いずりだし、ある者は生首同然。ある者は千切れた片腕だけがのたくって現れ、比較的マシな者さえ片腕がもげている。やれやれと傾いたベッドに腰を下ろしたその者の隣に、異形の足だけが2つ、ずしんと地を踏めば、目玉が一つ、棚の上からころころと転がった。

「ちょっと、信じらんない!無茶苦茶するわねぇ、今の退魔師って」

「まぁまぁ、こうして生き残ったんだし愚痴は後にしとこうぜ。
 ……あ、引っかかっちった。毛女郎ちゃんちょっと舌引っ張って、舌」

 『髪の毛』がぷりぷりと怒れば、『生首』が宥めすかす。

「しかし凶薙にしちゃ実際乱暴な遣り口だな」

「おまーさんが狙われたんじゃないかのう、バラっさん。
 連中、最近人間のゴタゴタで点取り合戦に焦ってるらしいぞい」

「足ぃー、洗ってくれぇー」

 片腕のもげた男が思案する横で、『足』の一本が座り込むように折れ曲がって床に倒れた。

「まぁ、各々がた無事で結構なことです。一人も死なずに済んだのはまことに僥倖至極」

 若干名……会話が成立していない者がいるものの、命の危険を感じさせるものは一人もいない。
 さもあらん。彼らは妖怪。人と共にあり、されど人にあらざる異形の隣人たち。人の畏怖を負う、闇の住人。

 人の世の裏に息づき幾星霜、文明の輝きにより妖怪の存在はいよいよ世界の表に照らし出されようとしていた。
 何者が望んだわけではない。それが、時代の流れだった。人は猿には戻れず、電燈の輝きを行燈に戻すこともまた出来ない。
 妖怪は抗った。彼らは人がいなければ生きていけないが、近づきすぎれば不必要に傷つけ合ってしまうことを知っていたから。
 人もまた抗った。万物の霊長の座から追い落とされるかもしれなかったから。

 今は戦乱の世だった。
 表の社会から辛うじて隠せてはいるものの、夜の帳の向こうで数多の人と妖怪の血が流れた。


「しかし、酷ぇ目に遭ったな実際。
 ……やっぱり人間の病院になんか、紛れ込むもんじゃないねぇ」

「しょうがなかろ。鞍馬山の療養所はもう満杯なんじゃからな」

 彼らも、またそうだった。退魔師に追われ、傷つき、数少ない心ある人間の友人の好意でこの病院に紛れ、傷を癒していた。
 最も、今またこうして手酷い手傷を負わされたわけであるが。

「そんな躍起にならんでも、好き好んで関わりやしねえってのに……」

 隻腕の男が、頬杖をついて天を見上げる。
 風通しの良くなった天井の真ん中で、満月が煌々と輝いていた。
 随分と長い間生きてきた。随分と長いこと逃げてきた。田舎の闇から追い立てられ、都会の陰に隠れ潜み、そこさえ追われて、今は逃げ惑っている。
 なんと狭量な生き物か。なんと臆病な生き物か。ほとほと愛想も尽きてきた。
 運よく生き延びたものの、仮にこの場の誰かが命を落としたとして、当の本人さえ後悔はすまい。
 いいかげん疲れた。もう、充分に生きた。
 もう、身体の一欠け、影の切れ端一つ残さず消尽してもいいのではないだろうか。
 もう、妖怪など。……この世に、いなくても……。

「ねぇ、ちょっと待って!」

 『髪の毛』が悲鳴じみた声をあげ、隻腕の男の思考は打ち切られた。
 視線を向けると、束ねた髪で焼け焦げた肉の塊を掲げている。

「人間よ、この子!」

「なんですと?」

 色めきだって妖怪たちが立ち上がり、集まって行く。唯一人、隻腕の男だけは視線を向けるだけだった。

「うわぁ、こりゃ……」

 『生首』が半分焦げた目を伏せた。『目玉』が心配そうに、肉塊の周りを転がっている。
 それは、赤子だった。人間の赤子。
 両手足が千切れ、左目が潰れ、口は血に塗れ、全身が焼け焦げていたが……胸が上下している。

 生きている!
 
「この病室に人間が紛れてたとは……」

「酷ぇことしやがる……同じ人間だろうが、クソッタレめ!」

 悪態を吐く『生首』をよそに、『髪の毛』が取り乱した様子で叫ぶ。

「ど、どど、どうするの!?この子、このままじゃ死んじゃうわよ!?」

 だが、周囲の妖怪の反応は煮え切らないものだった。

「どうするって、さぁ……」

「じきに人間が来る。任せるしかあるまいて」

「……どうせ、助からないだろうけどな」 

 諦めた様子の妖怪たちに、隻腕の男もまた頷いて吐き捨てる。
 『髪の毛』だけが、なおも言葉を捲し立てた。

「そんなのって無いじゃない!
 この子、まだ生まれたばっかりなのよ!?
 今まで散々生きてきた私たちと違って、まだこれからなのよ!?無事に生きても100年も生きられない生き物なのよ!?」

 男は呆れたように息を吐いた。
 『髪の毛』とはそれなりに長い仲だったが、まだまだ300年そこそこの年若い妖怪だ。
 どうにも、こう……甘いというか、諦めが足りないというか。厄介な性分だった。こんなではこの世はさぞ生き辛かろうに。

「でもよォ、このザマじゃ助かっても……母親だってきっと死んじまったぜ?」

「……いや、ひとつだけ手があり申す」

「本当、手の目!?」

 それまで押し黙っていた『腕』に、髪の毛が飛びつく。
 余計なことを。隻腕の男は心中、唾を吐いた。

「我々が付き切りで『癒し』をかけ続ければ、命はどうにか取りとめられましょう。
 失くした身体は、ほれ」

 『腕』が一同を示す。
 ばらばらに砕け、しかしどっこい生きてる妖怪変化。図らずも、その部位はこの赤子が喪った全てを埋めうる。

「我々が肩代わりしてやりますれば。我々は暫く元に戻れますまいが、なに、人間の一生など長くて100年。
 そのぐらいどうということはありますまい」

 まったく、滅茶苦茶な提案であった。
 ……だが、一同はそれに乗った。

「面白ぇ!俺はこの自慢の舌をくれてやるぜ!」

 『生首』……垢嘗が頷き、器用に己の舌を引っこ抜いた。

「なら、おいらはこの目しかないよな」

 『目玉』……百目が自ら赤子の潰れた左の眼窩に収まる。

「では拙僧はこの残った左腕を」

 言いだしっぺの『腕』……手の目が赤子の左肩にぴたりと貼り付く。

「ならばワシらは足になろう。ちょうど一本ずつじゃ、なぁ足洗邸」

「足ぃ〜、洗ってくれぇ〜」

 2本の『足』……足洗邸と一本だたらが揃って赤子の腰についた。

「バラっさん、アンタはどうする?」

「フン、酔狂な連中だ」

 隻腕の男は、鼻を鳴らして傍らに落ちていた、己の右腕を投げて寄越した。

「くれてやる。どうせ綱の野郎に落とされた方の手だ、惜しくはない」

「決まりだな」

 右腕が独りでに這いずり、赤子の右肩に食らいつくように一体化する。


 そして。

「ねぇ、ボウヤ。死んじゃ駄目よ!……世の中、生きてりゃ丸儲けなんだから!
 私の大事な、この髪をあげるから。だから、ね……?」

 『髪の毛』……毛女郎が、赤子を護るようにその頭を覆う。



「一緒に――いきましょう……」


---------------------------------------------------------------------------


「この命だけは、投げ出すわけにはいかないんだ!」

「家族ならいるさ。みんなが、此処に居る……」

名前:志摩康一
種族:人間
性別:男
年齢:18歳
職業:退魔師
内在妖力:D+
生得能力:
・『七鬼躯体』
喪った五体を妖怪が一体化し、代替している。
それぞれの部位の能力は以下の通り。
頭髪:毛女郎  ……自在に髪の毛を操れる。
舌:赤嘗    ……舐めた対象を詳細に分析できる。
左眼:百目   ……射出し、百個まで分裂可能して飛行する。偵察向き。
左腕:手の目  ……掌についた目には透視を含む千里眼能力がある。
右腕:鬼    ……怪力
左足:足洗邸  ……巨大化する。質量も増大する。
右足:一本だたら……一蹴りで万里を駆ける。

解説:
赤子の時分にオカルトテロに巻き込まれ、母と身体の大半を喪った少年。
しかし居合わせた七体の妖怪が一体化し、身体部位の代替を果たすことで命を繋いだ。
バケモノ同然の彼を親類は忌み嫌い、放逐したが、彼は七体の妖怪と共に元気に生き延びている。
現在はゲゲゲ同盟に属する退魔師。
人間と妖怪の共生というやや夢見がちな理想を追うが、皮肉にも彼の身体が何よりもその理想を体現している。


[No.475] 2011/07/28(Thu) 23:06:55
八神家の家庭の事情 (No.475への返信 / 12階層) - もけけ

「まぁためんどくせぇ事が転がり来んで来やがったな……」
「だぁぁぁ!てめぇら文句言ってねぇで少しは手伝……ああやっぱ大人しくしてろさも当然のように皿を割るな猫の手差し出して来んな!?」

名前:八神武斗
種族:人間
性別:男
年齢:17
職業:学生/退魔師見習い
内在妖力:C
習得技術:
・八神一刀流
退魔の力をその流れに汲む、何処で発生したかも知れぬ剣術。
その本質は抜かずして事を収める事にあり、人、妖怪問わずに生かす為の剣である。
居合いに近い形を基本とし、抜かない事を信条としつつも、抜くような事態となれば対象を手早く無力化、ひいては殺傷し、事を収める為の技術が集約されている……とか。

解説:
湖底市に住む高校生にして、現在退魔師資格を取るべく勉強/訓練に励んでいる。
性格は極度のいじっぱり。他に人が居ない為、八神家の家事を一手に引き受けている。
唯一の肉親、八神・将矢が生粋の退魔師で家を空ける事が多いのもそれに拍車をかけている。
その父から怪しげな剣術も学んでいるとか。父親は退魔師ではあるが、調停役としての側面が強い為、そちら絡みの付き合いも浅くはない。居候のミコトもそういった付き合いからか、いつしか転がり込んで来た。


「さて、誰かさんが夕食の準備に手間取っている間に私は掃除でも……あら、箒が折れてしまいましたね」
「少々厄介ごとのようですね。……不本意ですが、こちらの方が手馴れてしまっているのです」

名前:柳・ミコト
種族:鋼魔
性別:女
年齢:18
職業:
内在妖力:B−
習得技術:
・格闘術
何処の出とも知れぬ格闘術。
技術そのものは人間のそれであるが、妖怪のぶっ飛んだ身体能力でそれを操るのでタチが悪いのである。

生得能力:
・『肉体鋼化:左腕』
任意発動。
自身の左腕を鋼のように硬質化させる。硬度は調整可能だが、特に退魔の力を宿していないそんじょそこらの刃物や、小火器程度の銃弾ならば軽く弾く硬度を持つ。

習得妖術:
・『肉体強化:限界突破』
任意発動。
身体能力を大幅に強化するが、8分ほどしか持たず、使用後は大きく疲労してしまう。

・『幻影打』
任意発動。
鋼化させた腕より離れた場所に打撃を放つ。

解説:
八神家の居候にして、武斗の父、八神・将矢を後家人に持つ妖怪。肉体の一部を鋼のように硬質化させる能力を持つ種族の出。彼女は未熟らしく左腕だけにおいてのみその能力を行使出来る。
物腰丁寧に話すが実際のところはどうだか、な性格の持ち主。武斗に対してはそれが特に顕著。
そして家事が下手。


「なーなー大将ー、今日の晩飯はまだかにゃー?」
「やけに死霊どもがざわついてやがるなー」

名前:キリマル
種族:化け猫
性別:オス
年齢:不明(化け猫としては若い方らしい)
職業:家猫
内在妖力:C−
生得能力:
・『人語』
人間の言葉を解する。主に日本語。

習得妖術:
・『死人手繰り』
任意発動。
死人を操る、という化け猫の伝承に準じた妖術だが、完全に操るとまではいかず、誘導する程度に留まっている。誘導可能なのは理性の薄いものに限られる。

解説:
八神武斗を後家人とし、八神家に転がり込んで来た(化け猫としては)若輩の化け猫。
性格はマイペースかつお調子者。半人前なのでまだ化ける事は出来ない。
名前の由来は、とある事件により八神家に”きり”もみ回転しつつ突っ込んで来た事から。
ピンからキリまで〜のキリが由来という説もあるとは武斗談。


[No.478] 2011/07/29(Fri) 01:29:47
山犬憑き (No.478への返信 / 13階層) - アズミ

「所詮、俺たちは殺し屋だ。命を踏みにじって生きてきた」

「相手になってやる。探偵の職務の範疇で、な」

名前:睦月十三夜
種族:人間
性別:男
年齢:30歳
職業:私立探偵
内在妖力:A+
妖術:
・『犬神憑き』
犬神を使役する呪詛。たとえ退魔師でも、平安の昔から使用は違法。

・『犬神繰り』
睦月が独自に編み出した妖術体系。
イヌに類する妖怪の肉体・霊質を共に強化する。

解説:
私立探偵。元退魔師。
犬神筋であり、同時に日本の呪詛師を統括する立場にあった家の末裔。
国家資格化により大方の(その手段に違法性を伴う)呪詛師は退魔師としての命脈を断たれることになり、睦月もまた退魔師の道から足を洗った。……もっとも、犬神筋を始めとして蠱術の全ては平安時代、既に朝廷に禁止令を出された流れがあり、その後の善かれ悪しかれ、さほど衝撃はなかったらしい。
現在は呪詛をイヌ型の妖怪の身体能力を強化する方向にアレンジし、それを生かして探偵業を営む。
かつての呪詛師のトップの凋落ぶりを嘆く者もいるが、彼自身はストイックに現実を受け止めている。やや皮肉屋。


「……ご命令とあらば」

「水面の肉を追って落ちるなど、狗にも劣る愚かさで御座います」

名前:駆路(クロ)
種族:山犬
性別:女
年齢:不詳。外見13歳。
職業:私立探偵助手
内在妖力:D+
妖術:
・『憑依耐性』
常時発動。
山犬の憑いた人間は他の憑き物の被害に遭わないという。
自身と憑いた相手に完璧な憑依・呪詛耐性を与える。

・『山野駆け』
任意発動。
山野にある限り、無音神速で移動できる。

・『人間変身』
任意発動。
ほぼ恒久的に人間に化ける。

解説:
四国は宇和地方の山野で遭遇する山犬と呼ばれる妖怪の一。
決して悪さをせず、対価を与えれば山の道行を守るとされている。
とはいえ、人に従う妖怪ではないのだが、人間社会の機微に今ひとつ疎いことから社会に適応できず、妖怪法以降の世界を生きていくために睦月の支配下に下っている。
物静かだが意外に毒舌。


[No.484] 2011/08/02(Tue) 23:51:59
転生者 (No.484への返信 / 14階層) - りん

「…………ません。職員さん。すみません」

「あ、ごめんなさい。どうしましたか?」

 呼ばれるまで気付かなかったと言うことは、ちょっとボーっとしていたらしい。

「特殊建築関係の本はどこにありますか? 探しても見つからなくて」

「特殊建築に関する本でしたら、ここは余り置いてませんので大学の付属図書館の方を当たるとよいと思います」

「そうでしたか。ありがとうございました」

 青年はお礼を言うと、踵を返して去っていく。

「さて、今日中に新刊の仕分けをしてしまいますか‥‥」

-------------------------------------------------------------

「今回の生は、どうなりますやら……」

「その関連の本でしたら、あちらの棚にあります」

名前:遠野 彩香(とおの さやか)
種族:人間
性別:女
年齢:22
職業:元退魔師、司書
内在妖力:A+
習得妖術:
・『転生』
生来能力、常時発動。
死後も能力、記憶、外見を保持して赤子に生まれ変わることが出来る。
『不老不死』と違って再生能力はないため、致死ダメージを食らうとそのまま死ぬ。
転生にかかっている時間はおおよそ10年前後らしいが、自然死の場合だけは1年もあれば転生しているとか。
死んでいる間は意識がないので、死後の世界のことは知らないらしい。

・『霊視』
妖術、任意発動。
妖力、霊力などの目に見えざる力の残滓を見る力。
力の強さや種類を色の濃さや違いで判別できるが、妖力、霊力などと大雑把にしか判別できないため、個人の特定や複数人が同時に行使した場合の解析には向かない。

・『結界術』
妖術、任意発動。
印や道具を使用してさまざまな結界を張る。
主に使うのは、印だけで済む『簡易人払い』。

・その他、色々

解説:
平安時代以前から、延々と転生を続ける退魔師一族の女性で本名は八岐 葵(やまた あおい)。
現行の退魔師資格を所持していないため、元退魔師であるがそもそも当人は廃業しているつもりである。
陰陽道に通じているため、易経も行うことができる。
殺傷用の術も取得しているが、自衛以外で使うつもりはかけらもない。
ここ最近は、人生が面白く楽しいらしく学校等々かなり楽しんでいたようである。
現在は湖底市在住で、市立図書館の新任司書をしている。
明治以降、退魔師としての繋がりを絶っており、恐らくは葵が退魔師であったことを知っているのは、江戸以前から生きている妖怪など一部の者ぐらいかもしれない。
ただし、廃業しているとはいえ実力自体は高い方で、適切な道具さえあれば街ひとつを結界で包むぐらいのことはやってのけるとか。


[No.491] 2011/08/06(Sat) 23:23:05
今更ながら (No.491への返信 / 15階層) - ジョニー

「愚かな。このままだとこの国は滅びることになるというのに」

「妖怪や退魔は闇の存在のままでいい。光の下に出れば……光もろとも碌なことにならないから」

名前:三代律
種族:人間
性別:女
年齢:24歳
職業:退魔師(免許不所持)
内在妖力:A+〜S
妖術:
・『浄火』
生来能力、任意発動。
その身に流れる血液を魔を滅する神の焔へと変える三代家を三代家足らしめる能力。
その火力は流した血の量に応じて変化するが、微かに滲む程度の血であっても木端妖怪ならばダース単位で焼き払うことも可能とされる。

・『血炎刀』
任意発動。
掌を大きく傷つけ、そこから流れる血を焔に変えて炎の剣として凝縮したもの。
上級妖怪であろうと焼き裂くことが出来るが、出血量が激しく長時間の使用は命に係わる。

・『奥義・開錠〜開門』
任意発動。
その身に流れる神の宿る血を解放することで発動する奥義。
詳細は不明。

解説:
元凶薙の退魔十家に数えられた三代家の人間。
三代家は大和の神々にまつろわれた名を奪われた古き神の一柱に仕えていた一族を祖とする。仕えた神は大和の神々に討たれたが、自らに仕えた一族と交わりその血に溶け込む事で完全な消滅は逃れている。
様々な経緯を経て一族は三代、つまり御代(その血に柱を宿した憑代)を名乗り退魔十家として凶薙に加わった。現在では代を経すぎたこともあり、血に宿る神の意志は薄れているがその力はいまだ健在。
退魔十家の中でも、三代は単純火力では1〜2を争う攻撃力を保有している。

妖怪法設立以後、事実上崩壊した凶薙から赤血軍に属することになった。
赤血軍では元凶薙一派の良識派に位置している。妖怪排除よりも退魔世界への政界や経済界の影響排除を目指している。
特に「独占禁止法適用による龍脈や封印を代々管理していた一族のその土地から追い出しと、退魔免許持ちによる入札制での管理委託」や「人権保護及び未成年保護の為の未成年への退魔技術の習得訓練強要の禁止」といった条例制定への動きを大いに危険視している。
前者は免許持ちならば国外の人間や龍脈・封印の専門家でなくても入札可能といった事実や、後者の事実上の一族継承の禁止によって国内退魔師が衰退して大陸や西洋系にオカルトから国を支配されてしまうという真っ当な意見を持っている。事実、中華系やキリスト教系の術者の免許保有率が徐々に増え、それらの関係国の影響で政界・経済界がこれらの条例制定に動き出した事によって、元凶薙の退魔師は赤血軍の良識派に合流する動きが加速している。

律本人も良識派だが、対外的には危険なテロリストとして扱われている。
ゲゲゲ同盟のドを越した共存派の一人が封印されていた危険な妖怪を解放した結果、村一つが壊滅しかけてそこを律が退治したが逃げ延びた封印を解いた共存派の証言で、律が妖怪退治の為に封印を解き村を滅ぼすという蛮行を行ったと証言した為に危険人物として認識されている。


[No.503] 2013/01/27(Sun) 17:45:37
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