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No.579に関するツリー

   こてふぁて/えくすとら - アズミ - 2014/01/16(Thu) 14:49:33 [No.579]
世界観(Fate/EXTRAより) - アズミ - 2014/01/16(Thu) 15:33:09 [No.580]
キャスタールート予選1(マスター) - アズミ - 2014/01/16(Thu) 16:03:51 [No.581]
キャスタールート予選2(サーヴァント) - アズミ - 2014/01/16(Thu) 17:41:09 [No.582]
キャスタールート一回戦1(マスター) - アズミ - 2014/01/17(Fri) 17:19:24 [No.583]
キャスタールート一回戦2(マイルーム) - アズミ - 2014/01/17(Fri) 18:08:34 [No.584]
セイバールート一回戦3(サーヴァント) - アズミ - 2014/01/17(Fri) 23:07:26 [No.585]
セイバールート一回戦終了 - アズミ - 2014/01/18(Sat) 00:44:05 [No.586]



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こてふぁて/えくすとら (親記事) - アズミ

適当にあらすじとステータスだけ。

[No.579] 2014/01/16(Thu) 14:49:33
世界観(Fate/EXTRAより) (No.579への返信 / 1階層) - アズミ

●WORLD●
 2032年、とある歪んだ歴史を辿った地球。
 人類は緩やかに滅びに向かっていた。

 1970年に起きた「ある儀式」が引き金となり、大崩壊が起きた。
 ポールシフトと、それによる二次災害。
 バイオハザード、自然災害、資源枯渇。戦争、紛争、テロ。
 切り詰められた惑星の寿命は、急速に食い潰されていった。

 そして幾つもの大国が滅んだ後の時代。
 世界の半分は西欧財閥の支配、管理下に落ちた。
 彼らは技術を管理し、繁栄を抑制することで限られた資源を節制、人類を延命させることに腐心する。

 イスラム圏や西欧財閥によって解体させられた旧勢力はレジスタンスを組織しこれに抵抗。
 が、物量の差は如何ともしがたく、西欧財閥の管理は完全なものになろうとしている。

 そんな世界に、人類未到達の月から一石が投じられた。


『ムーンセル・オートマトン』。


 人類以外の何者かが作り出したオーパーツ。
 全長三千キロメートルに及ぶフォトニック純結晶体で構成される超巨大な演算装置。
 その演算能力は人智の決して及ぶことのない完全な未来測定を可能とし――……

 事実上、“あらゆる願いを叶える”。

 ゆえに、『聖杯』。
 かつて魔術師たちが奪い合った、万能の願望器の名を取り、それは聖杯と呼ばれた。

 そして、かつての魔術師たちと同様に……人類は、それを奪い合う。
 宇宙開発が行われなかったその地球において、ムーンセルへの接触は電脳空間を介し魂ごと没入出来るハッカー……現代の魔術師たちのみ。
 西欧財閥、レジスタンス、そしてそれ以外の数多の霊子ハッカーは月の海にアクセスし、ただ一つの聖杯を求めて殺し合いに身を投じる。

 ――……『聖杯戦争』の開幕である。


[No.580] 2014/01/16(Thu) 15:33:09
キャスタールート予選1(マスター) (No.580への返信 / 2階層) - アズミ

<Introduction>

 つまり、最初から人類に選択肢なんかありはしなかった。

 世界に用意された糧は、大多数の人間を満たすにはあまりにも足らなくて。
 ヒトは欲望の果てではなく、飢餓の足掻きゆえにこそ繁栄を求めた。

――死にたくない。

 足元の亡骸が呻いた。

――死にたくない。

 誰だって、死にたくないんだ。

――死にたくない。

 だけど、選択肢などどこにもなくて。

――死にたくない。

 結局、誰も彼もが死んでいく。

 世界は有限だった。
 飢えは必然だった。
 海は枯れ果てて、地軸は捻じ曲がり、幾つもの国が滅びて。
 ようやく、人類は(節制/諦め)を知る。

 このままこの惑星(ほし)と一緒に、ゆっくり死んでいこうと。
 それが、ヒトに許された最後の利巧さだった。
 仕方のないことだった。

 だって、最初から人類に――
 選択肢なんか、ありはしなかったのだから。

<Introductuin/End>


●STORY●
 2032年の世界において、既に日本という国家は形骸化していた。
 武力による滅亡こそなかったものの、その行政は解体。
 大半の国民は西欧に移住し、西欧財閥の庇護下に入った。

 それでもなお、その管理に抗いこの島国にしがみつく抵抗勢力(レジスタンス)。
 志摩康一は、そんな中の一部で育った。
 親に金で売り渡され、西欧財閥の首を掻く刃として育てられた。

 彼には何もなかった。
 愛を知らなかった。誰もそれを与えてはくれなかったから。
 自由を知らなかった。誰もそれを与えてはくれなかったから。
 夢を知らなかった。――どうあれ、彼の命運はこれから尽きるから。

――聖杯戦争。
 
 この先20年で完全に蹂躙されると予測される、レジスタンスの未来。
 西欧財閥の管理下で細々と延命していくはずの、惑星の、そして人類の未来。
 その双方を救いうる、最後の鬼札。

 生きて帰れるのは、最後まで勝ち抜いたただ一人。
 康一は身一つでその絶望的な戦場へ赴く。
 援護はなかった。味方もいなかった。

 彼には、何もなかった。
 だからこそ、逃げるという選択肢もなかったのだ。

 言われるがままでも、何かが為せるなら……
 この命に、生まれた意味はあるはずだから――


●STATUS●

【HN】コウイチ
【名前】志摩康一
【契約サーヴァント】キャスター
【所属】レジスタンス
【出身】日本
【経歴】
レジスタンスの元時計塔に属する派閥が育て上げた霊子ハッカー。
金で両親から売却され、西欧財閥に対する戦力として育て上げられれ、然したる援護もなく半ば捨て駒同然の扱いで聖杯戦争へ参加。
レジスタンスにはいい感情を持っていないが、一方で誰かの役に立つ以外に自身の存在理由を示すことも出来ず否応なく聖杯を目指す羽目になる。

親の顔さえ知らず、親代わりさえいなかったため愛に飢えながらも無償の愛の存在自体を信じられさえしない。
そのため本質的に自我が希薄で、誰かの役に立つために命さえ投げ打つ危うさがある。

【CodeCast】
goldeye_analyze(b)
……相手にかかった有利なスキル効果を全て除去。
  修得型コードキャスト。生来備わった超能力、看死の魔眼(黄金ランク)。

hack(16)
……敵にダメージ+対SKILLスタン 消費20
  礼装型コードキャスト。キャスターの製作した守り刀。


[No.581] 2014/01/16(Thu) 16:03:51
キャスタールート予選2(サーヴァント) (No.581への返信 / 3階層) - アズミ

●STORY●

 ムーンセル内に構築された霊子虚構世界――
 SERiAl PHantasm(シリアルファンタズム)、略称SE.RA.PH.(セラフ)。

 聖杯戦争の予選はそのセラフに構築された月海原学園における、架空の学園生活であった。
 高校生として仮初の友人たちと共に一時の平穏に浸るコウイチ。

 しかし、予選の終了を待たずして聖杯戦争の洗礼は彼らに襲い掛かる。
 放課後の中庭で、生徒たちに襲い掛かる謎の乱入者。
 偽装プログラムで姿さえ判別がつかないそれは、思わず助けに入ったコウイチを圧倒する。
 クラスメートを庇って凶刃に貫かれるコウイチ。

 その今際の叫びに応じ、女は姿を現した。
 最弱のサーヴァント、“キャスター”。

 それが、彼の出会った“運命”の名だった。


●EVENT●

 作り物(アバター)の身体から、血飛沫は上がらない。
 ただ全身を包む底無しの脱力感と、足を確と掴む冷気に、思わず膝をついた。

――か、は。

 情報(データ)の肺腑から、血は溢れ出ない。
 ただ苦痛だけが気の抜けたような言葉として漏れて、その場に倒れ伏した。

 床に縫い止める重力に、己の命の質量を感じる。その軽さに、思わず失笑した。
 まるで空っぽの器。まるで白紙の日記。
 売り渡された過去。愛されない現在。閉塞した未来。
 こんな人間、存在しないのとどれだけの違いがあるというのか。

 痛みが囁く。

――もういいじゃないか。

 苦しみが命じる。

――目を閉じてしまえ。

 絶望が諭す。

――すぐに終わる。

 空の器を叩き割るように。白紙の日記を破り捨てるように。
 こんな命は、終えてしまっても――


 ダメだ。

 消えたくない。

 何もないわけじゃない。
 焼け付くような渇望がある。愛されなかった飢餓がある。
 救われたいんだ。
 救われるに値する自分になるために、今は、立ち上がらなければならないんだ。
 空の器に染み付いた、煤のような不要物だったとしても、それが自分に叫んでいる。
 苦痛を、痛みを、絶望を退けて。

――立て。

 拳を握る。

――痛いままでいい。

 指が食い込むほどに、強く。

――だってこの手は。

 そうだ、この手は。

 まだ一度も、自分の意志で戦ってすらいないのだから――――!


「――……痛切なる渇望の声、彼岸にまで確かに響き渡りました」

 包み込むような、優しい声が降りた。
 顔を上げる。痛みは全身の疲労感と引き換えに、嘘のように消えていた。
 眼前の襲撃者が、僅かに身を退く。
 相変わらずデタラメのテクスチャに隠され表情は伺えないが……意図はわかる。
 警戒しているのだ。

「此岸で足掻くその魂、菩薩でさえも見放すというならば……宜しい。
 己が心の御仏に従い、私があなたを救いましょう」

 目の前に突如現れた、この女に。
 僧衣の上に大鎧を纏った、奇装の尼僧。
 そして、衣装異常に尋常ならざる……“気配”とでも言うのか。そうとしか認識できない圧倒的密度、圧倒的情報量の存在規模。
 間違いない。これが英霊。これが、サーヴァント……!

「問いは不要。故に、此方から名乗りましょう」

 サーヴァントは手を差し伸べ、優しく微笑んだ。 

「――――私が、あなたのサーヴァントです」


●STATUS●

【CLASS】キャスター
【マスター】志摩康一
【真名】北条政子
【宝具】『尼将軍最期詞(あましょうぐんさいごのことば)』
【キーワード】『放光般若波羅蜜経』『夢買』
【ステータス】筋力D 耐久E 敏捷C 魔力A 幸運B
【スキル】陣地作成:C 占術:A カリスマ:B

【KEYWORD】
・『尼将軍最期詞(あましょうぐんさいごのことば)』
1221年、皇権の回復を望む後鳥羽上皇と鎌倉幕府の対立から承久の乱が勃発した。
朝廷への畏れから御家人たちは大いに動揺したが、当時幕府の実権を握っていた北条政子は「最期の詞」として御家人たちに亡き鎌倉殿の恩と偉業を説き、これを収めた。
結果、最終的に19万もの大軍に膨れ上がった幕府方は京方に勝利。上皇は隠岐島へ流された。

キャスターの宝具はこの逸話を再現した固有結界である。
鎌倉を模した結界内に敵を取り込み、E-ランク相当の単独行動スキルを保有する無数の英霊たる鎌倉武士団を現界させる。
彼らはその特異な精神性ゆえに死をも恐れず、その気になれば総勢を以って壊れた幻想を敢行することも可能。
また「御恩と奉公」という独特の契約に縛られるため、展開時には全く魔力コストを消費しない代わりに結界が何らかの要因で無効化されても展開終了時に強制的にコストを支払わされる。

・放光般若波羅蜜経
キャスターが使用する、霊を空に帰す概念武装。
般若経は一般に空を説く経典とされるが、多分に密教へ続く呪術的な側面を含む。

・夢買
占術に含まれる魔術の一つ。
吉凶の兆しを何らかの形で取引することで結果の起きる地点を操作する、疑似的な未来測定。
キャスターは妹が見た吉夢を鏡で買い取り、後の栄華を手に入れた。

【SKILL】
・陣地作成:C
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
小規模な”工房”の形成が可能。

・占術:A
中国から伝わり、日本においても発展した東アジア圏独自の魔術体系。
夢の内容で吉凶を占い、怪異や災厄を祓う。

・カリスマ:B
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一国の王としてはBランクで十分と言える。

【SETTINGS】
・人物背景
伊豆国の豪族、北条時政の長女。鎌倉幕府初代将軍源頼朝の正室。
幕府の宗教体制の中心的存在であり、多くの寺院の創建に関わっている。
平氏の絶頂期に伊豆に流された頼朝の妻となり、三代将軍実朝で源氏将軍が断絶すると将軍代行として実権を握った。
1221年、皇権の回復を望む後鳥羽上皇と幕府の対立から承久の乱が起きると政子は朝敵となることに動揺した御家人たちに激を飛ばし、これを纏め上げて勝利した。

・子殺しの悪女
息子である二代将軍頼家は旧臣との折り合いが悪く政子の命で出家、後暗殺。同じく三代将軍実朝はその実権を確立するため政子が出家させた頼家の子により暗殺。
形としては子や孫を殺し実権を奪ったとも見える彼女を悪女とする論は少なくない。
しかし、彼女は冷徹な政治家であると同時に、情の深い母親でもあった。政敵として息子や孫を排除しつつもその命を奪わず、あくまで仏門に入れることに留めた。
ただ、その全てが裏目に出た。運命は尼将軍を英霊の座に列したが、一人の母の幸福を永久に奪い去ったのだ。
政子は実朝の死をこう嘆き、述懐している。
「子供たちの中でただ一人残った大臣殿を失いこれでもう終わりだと思いました。尼一人が憂いの多いこの世に生きねばならないのか。淵瀬に身を投げようとさえ思い立ちました」。
……それでも、彼女は生きて亡き夫が残した幕府を守り続けた。
嘉禄元年、死去。享年69。墓所は息子、実朝の胴墓の隣にある。


[No.582] 2014/01/16(Thu) 17:41:09
キャスタールート一回戦1(マスター) (No.582への返信 / 4階層) - アズミ

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 1. Log in/inside of a cradle

 身に覚えない罪科を帯びて、幼子は川岸に辿り着く。
 積み上げる石は業か、縁か。
 いずれにせよ、その先が無為であることに変わりはない。

 だが、なればこそ。
 幼子よ、積み上げることを厭うてはならない。
 生命とはすなわち、無為の意味を知る旅なのだから。

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●STORY●

 そして、一回戦の幕が上がった。 
 2階掲示板にて発表された、対戦表にコウイチと並ぶ名は、「高橋敬治」。

 知った名だった。
 コウイチと同じくレジスタンスに属する霊子ハッカー。
 元警官であり、西欧財閥の実質的な日本吸収に異を唱えレジスタンスに身を投じた男。

 レジスタンス同士で一回戦から無為に潰しあうことになる。
 ケイジは、コウイチに令呪の破棄を勧告する。
 無論それはそのまま彼の死を意味するが、それでもなおケイジは言を翻さない。

 戦うことは、時として座して待つ死より苦痛を伴う。

 傲慢ではない。
 争いの中で生きてきたからこその、重い響きがそこにあった。

 それでも、コウイチは令呪を捨て去りはしなかった。
 キャスターを呼ぶときに、選んだのだ。生きることを。
 この命を始めると、決めたのだから。

 聖杯戦争の期間は一回戦につき7日。
 真っ向勝負で雌雄を決する7日目の決戦までに、6日間の猶予期間(モラトリアム)が与えられる。
 とはいえ、その期間も無為に過ごすことは出来ない。
 アリーナに配置された2つの決戦場への暗号鍵(トリガーコード)を入手する必要がある。

 コウイチはキャスターを伴い、アリーナへと歩を進めたのだが……?


●EVENT●

 アリーナの最奥、暗号鍵の配置された小部屋の前に、待ち受ける人影があった。
 誰何の必要はない。ここで自分を待ち受ける人間は、一人しかいない。

 一回戦の相手、ケイジ。

 それだけではない、巌の如き偉丈夫の傍らには、マスターに負けず劣らず隆々とした体格の中年男が佇んでいる。
 時代がかった軍帽に、携えたライフルは……スプリングフィールド銃。
 装いからして、西部開拓時代の英霊か?

「成る程……待ち伏せ、というわけですか。マスター、私の後へ」

 キャスターが庇うように前に立つ。

「おとなしく令呪を捨てることを期待したわけじゃない。
 が、お前に戦う意思があることはちょっとばかり意外だな。
 お前は、あの老人たちを嫌っていると思ってたよ」

 老人たち。コウイチを育てた、レジスタンスの上層部。
 西欧財閥によりその座を奪われた、古き魔術師(メイガス)たち。
 無論、コウイチは彼らを好いてはいない。
 彼らはコウイチを育てはしたが、そこには道具の手入れ以上の意味も意思も存在しなかった。
 ゆえにこそ、こうして惜しげもなく使い捨てる。
 なぜ、おとなしく“使い捨てられてやる”のかと、ケイジは問うている。

「そいつは今大事なことかい、大将?」

 ライダーが割って入る。

「これから殺す相手の事情なんぞ、知ってもどうしようもあるまいよ。
 鉄火場で重要なのは唯一つだ。この小僧は――」

 銃口がこちらに向けられる。

「――闘る気だぜ。俺たちの敵だ。それだけわかってりゃ、俺らの仕事は一つだろうが、ええ?」

 臆する必要はない。
 たとえ次の瞬間弾丸が発射されようと、キャスターは防ぎ切ってくれる。
 そう、彼女の背中が言っている。
 臆する必要はない。
 瞬き一つせず、顎を開いた殺意を見返した。

 ――ハ、とライダーが嗤う。

「おまけに肝が据わってやがる。小癪な餓鬼め」

 それを阻むようにキャスターが経典を展開する。

「一度だけ警告します。退きなさいライダー」

「NOと言ったら?」

「無論――“退かすまで”です」

 経典の文字が中空にホログラフの如く浮き、輝いた。
 般若波羅蜜経。空を説く仏教典――無論、ただの経典であるわけがない。
 概念武装(ロジックカンサー)。
 魔術のような自然への干渉ではなく、意味や概念への干渉を発生させる攻性プログラム。
 これがキャスターの武器か。
 猶予期間中の戦闘行為は聖杯戦争のルールに反するが、安全地帯である学園内と異なりエネミーとの戦闘を前提とするアリーナ内ではシステムの介入に若干のラグがある。
 ……概算で3ターン、と言ったところか。キャスターはその間に決着をつけるつもりだ。

「言うねぇ、別嬪さん。そういうガツガツした具合は、俺と気が合いそうだぜ。
 で、どうする大将」

 問いながらも、答えを待たずケイジのサーヴァントもまた前に進み出る。
 ケイジは、命じた。

「殺れ、ライダー」

「アイ・アイ・サー!」

 ムーンセルの戦闘停止勧告を合図に、キャスターとライダーがアリーナで激突する。



●STATUS●

【HN】ケイジ
【名前】高橋敬治
【契約サーヴァント】ライダー
【所属】レジスタンス
【出身】日本
【経歴】
日本人。レジスタンスに属する名うての霊子ハッカー。
元は警官であり、西欧財閥の実質的な日本吸収に異を唱え、抵抗活動に身を投じた。
寄るべき国家を失ってもなお日本の法曹としての自覚と誇りを以って西欧財閥の管理社会に敵対する。
しかし本人は否定するものの、ライダーに言わせれば法も故郷も彼にとっては建前でしかなく、内には暴力を寄る辺とする獣性と攻撃性が潜在しており、既に「抗うことそれ自体」が目的と化しているという。

【CodeCast】
bind_kurikara(32)
……アタックスタン(1手)。
  修得型コードキャスト。不動明王呪。

gain_str(16)
……サーヴァントの筋力を強化。
  礼装型コードキャスト。


[No.583] 2014/01/17(Fri) 17:19:24
キャスタールート一回戦2(マイルーム) (No.583への返信 / 5階層) - アズミ

●STORY●

 ライダーとケイジの妨害は遭ったものの、手際よく暗号鍵を集め、決戦に備えるコウイチ。
 マイルームに戻り、改めてキャスターと共にライダーとの決戦に備えることにする。
 が、懸念が一つあった。
 コウイチは未だ、キャスターの真名を知らない。もちろん、その宝具もだ。
 真名は戦術の指針となり、宝具はそのまま切り札に等しい。
 決戦の前に出来れば熟知しておきたい情報なのだが……。

●EVENT●

「初陣、お疲れ様でした。御館様」

 机の上に敷いた畳の上にちょこんと座ったキャスターが、そう言ってこちらの労をねぎらう。
 と、同時に身体にどっと疲労感を感じた。
 ムーンセルが用意した敵性プログラム(エネミー)との戦闘は予選やアリーナでも経験したが、サーヴァントとの戦いから受けるプレッシャーはその比ではない。
 単純に戦力の増大もあるし、曲がりなりにも一定のルーチンにそって動くエネミーと違って生きている人間の行動はどうしても読みきれない部分がある。
 おまけに――――正しく死に物狂いだ。
 命がかかる、というのは戦いにおいてそれだけで一定の密度と質量を持つ。これはマスターとマスターの殺し合いなのだ。

「此度の采配、まずは御美事。五分の条件であれば我々があの主従に遅れを取ることはありますまい。
 ――……ですから。少し、肩の力を抜きましょう。
 四六時中気を張っていては、いざという時に十全な戦働きは望めません」

 こちらの内心を察したように、キャスターが柔らかく言い聞かせる。
 成る程、言うことは尤もだ。マスターとして少し頼りないところを見せてしまったかもしれない。
 そう言って謝意を示すと、キャスターはくすくすと笑った。

「初陣の若武者には間々あることです。浮かれ、増長するよりは幾分も好い傾向といえましょうや」

 増長など滅相もない。
 今回の緒戦、ライダーとて本気ではない小手調べに等しかったが……それでも、決して楽な戦いではなかった。
 否、“楽な戦いでない”程度で済んだことが望外の僥倖だ。
 彼女を侮るわけではないが、キャスターは俗に“最弱のサーヴァント”として知られる。
 その名の通り、現代の魔術師では及びもつかない魔術スキルの高さを誇る。固有スキルの陣地作成、道具作成にしろ然り。
 しかし、全7クラス中4クラスが備える“対魔力”スキル。そしてアリーナにおいての正面切っての決闘を強いられるムーンセルの聖杯戦争において、それらのアドバンテージは実質無効化される。
 ゆえに、最弱。
 重ねて言うが、キャスターを侮るわけではない。
 むしろ、彼女はその“最弱”でありながら、ライダーを見事に退けて見せた。
 戦闘中の身のこなしや装いからして、日本の武家に連なる英霊だと思うのだが……未だ、彼女はその真名を自分に明かしてはくれない。

「……申し訳ありません。決して、御館様を軽んじているわけではないのですが」

 なんとか真名を聞いてみようとすると、キャスターはそう言って恐縮した。

「英霊の中には読心の心得があるものも少なくありません。御館様の抵抗値(セキュリティレベル)では突破される恐れがあります。
 私は真名が即座に命取りになる類の存在ではありませんが、念には念を入れるべきかと」

 英霊は往々にして弱点を持つ。アキレウスならば踵、ジークフリードならば肩甲骨の下、といったように。
 そうした英霊にとっては真名の隠蔽は文字通り生命線になりうるし、それらを極端な例としても真名が知られれば戦術の大半は割れてしまう。
 出来うる限り隠蔽すべき、というキャスターの意見は正しい。

「宝具も……今宵の戦闘を吟味した結果ですが……現状の御館様では聊か手に余ると判断いたしました」

 これは悪い報せだった。
 宝具はサーヴァントにとって切り札に等しい。
 今回の戦闘では秘匿の意味もあって使用は考えていなかったのだが、宝具を封じたままライダーとの決戦はぞっとしない。

「非常に消耗の激しい宝具なのです。御館様の魔力量(ようりょう)では、一度開帳すれば命は無いでしょう」

 ごくありふれた理由だ。自分のような凡庸なマスターであれば、尚更に。
 であればこそ、解決策も幾らかは思いつく。礼装や工房による拡張が正道ではあるが――……果たして、7日目までに間に合うだろうか……?

「ご安心を。仮令、宝具を秘匿したままでもライダーは討ち果たして見せましょう。
 それよりも、まずは決戦場に辿り着かなくては」

 そういうキャスターの言葉には確かな自信が感じられる。
 彼女の言うとおり、まずは明日からの暗号鍵の入手に集中しよう――……


[No.584] 2014/01/17(Fri) 18:08:34
セイバールート一回戦3(サーヴァント) (No.584への返信 / 6階層) - アズミ

●STORY●

 猶予期間5日目。

 予選で矛を交えた乱入者が、再び校内のマスターを襲撃。
 なぜか遅れるムーンセルの介入と無差別に毒をばら撒く宝具によってマスターたちは窮地に陥る。
 辛うじて神々の加護により毒を防いだセイバーが反撃を試みるものの、襲撃者の正体が掴めず劣勢を強いられた。
 それを見ていたケイジに、ライダーはこのまま今しばらく静観すれば一回戦の相手であるセイバーを含め、多くのマスターが労せず脱落すると言う。
 しかし、ケイジは令呪を以ってライダーに命じた。総力を持って襲撃者を退けよと。

 襲撃者は撃退され、ムーンセルの温情によりケイジの令呪は一画戻るものの、ライダーの情報がアスタらに露見してしまう。

――その危険性は認識していただろうに、なぜ。

 訝るアスタに、ケイジは自身が元少年課であり、子供が死ぬのは見過ごせなかったと零す。
 それがたとえ、見た目だけだとしても。子供が死ぬのは、見過ごせない。
 行政の崩壊と治安の悪化により、日本は僅かな老人たちが若年層を搾取する「枯死しつつある国」になりつつある。その日本を、今一度子供が無事に暮らせる場所に戻すのが己の目的なのだと。


 そして、決戦の日がやってくる。

●EVENT●

 アリーナへ向かうエレベーターの中。
 ただ一枚の、しかし強固な防壁に隔てられ、ライダーたちと対峙する。

「その様子だと、こっちの情報は全て割れてるらしいな」

 ジョージ・アームストロング・カスター。
 19世紀アメリカ、インディアン戦争で恐らくは随一の活躍をした義勇軍少将。
 実績や戦闘経験、知名度などを総合すれば、歳若いアメリカという国にあっては最も強力な英霊の一人と言っていいだろう。
 だが、ライダーは自身の真名が割れたというのに聊かも気にした様子はなかった。
 むしろ、心底愉快げに笑ってみせる。

「……何が可笑しい、ライダー」

 不機嫌そうに主が問うても、ライダーの笑みは収まらない。

「栄誉を讃えられて嬉しくないヤツがいるかい、マスター?
 戦争は名をあげてこそ、名を知らしめてこそ、だ。
 そのためなら、俺は殺すのも殺されるのも大歓迎なのさ」

 その言葉に、セイバーは露骨に機嫌を損ねた様子だった。

「軍神(アレス)に魅入られた類か……戦争狂め」

「ハッ、おたくは違うってのかいセイバー。好き好んでこんなお祭り騒ぎに出向いてきておいて?」

「戦とは“目的に邁進する行為”だ。
 そのための障害は誰あろうと、如何なる手段を使ってでも排する。それは良い
 だが、目的そのものを失い、戦うことそのものが目的化すれば――」

 ――……それは最早ヒト足りえない。
 その結びにケイジが眉をひそめたのを、ライダーは見逃さなかった。

「だとさ、マスター?」

「俺はお前とは違う」

「そうかい? 本当に?」

「俺には、目的がある」

「それを果たすために、本当に戦争以外の道はなかったって?
 違うね。お前さんは選択したんだ、ケイジ。
 たとえ目的が救済でも、与えることより奪うことを手段に選んだ。
 俺の同類だよ。だから……」

 がこん、と大きく揺れてエレベーターが停止する。
 自動扉が開いて、アリーナへの入り口が悪魔の顎のようにこちらに向けて開かれた。

「辛気臭い顔してないで愉しめ、愉しめよ大将。
 それさえ出来りゃ……ま、俺たちにも聖杯を掴む目ぐらいはあるさ」



 決闘にはお誂え向きの荒野に、2組のマスターとサーヴァントが降り立つ。
 後は開始の合図を待つばかり。
 だが――この期に及んで、胸に引っかかる何かがあった。
 本当に戦うしかないのか、とまでは言うまい。
 だが、本当にこうなるしか、二人の人間に選択肢はなかったのか――?

「……子供が、泣いてる。流される血がある。荒れていく国がある。
 俺はそのためなら、誰とでも戦うし何でも犠牲にすると決めた」

 いずれは彼らとて西欧財閥は救うだろう。その程度の懐はある組織だ。
 それを早めるだって出来たはずだ。彼ほどの力を持つならば。
 ライダーの言う通り、奪うよりも与えることで救うことは出来ないのか?

 だが、ケイジは長い沈黙の後に、首を振った。

「奪った者に頭を垂れて? 踏み躙った者の手を握って?
 ――……巫山戯るなよ、西欧財閥」

 ケイジは、巌のような男だった。
 すなわち堅く、強く――そして、もう曲げようがない。
 過去が彫り込んだ溝を容易く埋められるなら、この世は最初からエデンの園だったに違いない。

「お前達が振り上げた、拳だろうに!」

●STATUS●

【CLASS】ライダー
【マスター】高橋敬治
【真名】ジョージ・アームストロング・カスター
【宝具】『第七騎兵隊・蹂躙疾走』
【キーワード】『赤いマフラー』『コマンチ』
【ステータス】筋力D 耐久C 敏捷B 魔力E 幸運A+
【スキル】対魔力:D 騎乗:B 軍略:B

【KEYWORD】
・第七騎兵隊・蹂躙疾走(セブンスキャバルリィ・カスターダッシュ)
ライダーが得意とした強行突撃。
一見して向こうみずに見えるが、事前の情報収集と熟慮を前提とした緻密な戦術である。
それが証拠に、彼は自身の豪運と合わせて南北戦争中一度として怪我を負わなかったという。

亡霊騎兵隊を召喚し、前方を蹂躙する対軍宝具。
召喚するのがあくまで自我のない亡霊であること、またその人数から精密な制御は出来ないが、破壊力は折り紙つきである。

・赤いマフラー
ライダーが落としていったマフラー。
軍装としては派手に過ぎる。

・コマンチ
カスター将軍の白い愛馬。
将軍が部下200余名の部下と共に玉砕したリトルビッグホーンの戦いからただ一頭生還した第七騎兵隊最後の生き残り。
その逸話から負った魔獣ランク並の神秘ゆえ、将軍と共に英霊の座に記録された。

【SKILL】
・対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

・騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
近世の英霊としては異例の高ランクである。

・軍略:B
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。
指揮官系のエクストラクラスでも通用する高さ。

【SETTINGS】
・人物背景
19世紀アメリカ、南北戦争からインディアン戦争にかけて活躍した軍人。最終階級は中佐。
士官学校での成績は良好とはいえなかったが、在学中に南北戦争が勃発。
ブランディ・ステーションの戦いやゲティスバーグの戦いで大きな戦功を上げ、23歳の若さで義勇軍少将となる。
続くインディアン戦争でも同戦史上、米陸軍初の勝利といわれるウォシタ川の戦いなどで戦果を残す。
が、1876年夏のリトルビッグホーンの戦いで1800人以上のインディアンの大軍に僅か200余名の部下と共に突撃し、玉砕。戦死した。

・『虐殺者』
彼は間違いなくアメリカ白人社会の英雄であるが、その評価は歴史によって乱高下する。
インディアン戦争で彼の名をあげたウォシタ川の戦いは、実際には和平的な(しかも白旗を掲げた)シャイアン族を一方的に虐殺したに過ぎなかった。インディアンにとって、彼は紛れもなく無慈悲な虐殺者であったのだ。
こうした認識は、1960年代後半のインディアン政治運動によって白人にも伝播し、彼らの自己批判の槍玉としてカスター将軍は過去の汚点の象徴として扱われるようになった。
現在以って、彼の評価は白人社会の在り様に合わせて一定することがない。
しかし、彼自身は決してインディアンを一方的に蔑んでいたわけではなかった。
インディアンを確固たる敵として認識はしていたが、彼にとってそれは異文化の衝突と人間の本質ゆえの結果でしかなかったのだ。
彼はいたって現実的な人間であり、同時に何処までも強欲だった。
己の名誉欲と出世欲に任せて殺しに明け暮れ、やがてその欲望に飲み込まれて自ら滅びを招いたその生涯に、しかし彼はそれなりに満足している。

彼の自伝にはこう記されている。
「我々白人は、長らく進んでインディアンを美しいロマンで包んでいた。しかし、一度それを剥ぎ取ってしまえば、彼らは「気高き赤い男たち」とは呼ばれなくなり、インディアンという人種は残虐そのものとみなされることとなる。けれども、同じような境遇に生まれ育てば、白人だって彼らと同じようになってしまうだろう。人間というものは沙漠の野獣同様に、残酷かつ獰猛になれるものなのだから。」


[No.585] 2014/01/17(Fri) 23:07:26
セイバールート一回戦終了 (No.585への返信 / 7階層) - アズミ

●EVENT●

 決戦場に再び仕切りが走り、防壁の向こうが朱に染まる。
 勝敗は決した。
 処理の怪物(ムーンセル)は己が内部に不要なデータの存在を許さない。敗者は速やかに解体され、電子の海へ消える。

「……勝てなかった、か」

 黒ずんだ泥のようなプログラムに覆われながら、ケイジはしかし死の苦痛と恐怖にさえ取り乱すことなく、その場に立ち続けた。

「お前は――憎くないのか?」

 ケイジは、問うた。
 そうだ。ライダーの言う通り、彼は奪い返すことを選んだ。戦いに身を投じた。
 救いをその手に求めながら、憎しみを手放すことも出来なかった。
 だが、それでいいはずだ。いいのだと、それが出来なかったからこそ思う。
 憎むべきを憎めないのは、ただの不自由ではないか。それが、人として正しいはずがない。
 だから、ケイジは問うた。

「お前は――憎く、ないのか。
 奪われても、壊されても。生きるためならば、生かすためならば、それは仕方ないと思えるのか?
 それとも、お前にとって――あの国は――」

 大事だ。
 取るに足らないものなんかじゃ、ない。
 生まれた場所、思い出。それを容易く棄てられるほど、かつての自分は幼くはなかった。
 だが、大人でもなかったのだ。憎しみを抱くだけの、余裕がなかった。
 この胸は悲しみで満杯で。この腕は救いを求め、救いを与えるので一杯で。
 だから、諦めたのだ。憎むことを。
 彼のような選択肢は、自分にはなかったのだと。

「だから、か」

 だから、彼よりほんの少しだけ真っ直ぐでいられた。
 こちらが正しかったわけではない。強かったわけではない。
 5日目の襲撃で静観すれば、自分は今日この場に立つことさえ出来なかった。
 “彼の方が自由であったから”“敗北を選択できた”。ただ、それだけ。

「だからさんざ言ったのによォ」

 呆れたようにぼやくライダーに、ケイジは自嘲気味に笑んだ。

「――悪かったな、ライダー。こんなマスターに付き合わせて」

 だが、その総身を死に染め上げられながらライダーは頭を振った。
 争いを選んだからこそ、この英霊は殺すことも、殺されることも受け入れていた。
 だから言ったのだ。愉しめと。
 争って、争って。果てにはどうせ惨めな死しかないのなら。それが人のサガであるなら。
 せめて、愉しめと。
 それがこの英霊がお堅いマスターに見せた、不器用な情誼だった。

「ハ、謝るなよ。俺は別にあれで良かった。
 言ったろ? 戦争は名をあげてこそ、名を知らしめてこそ、だ。
 漁夫の利なんかじゃあ、ハクがつかねえってもんさ」 

 あのマスターたちも見ただろう。カスター将軍の疾走を。第七騎兵隊の勇姿を。
 ならば、溜飲は下がる。
 勝てなかったのは、少し癪ではあるが――。

「悪くはない戦争だったぜ、大将。……カスター少将、先に帰陣させてもらう」

 最後に敬礼を交わして――英霊は、一足先に現世から去った。
 そして、その主も――……

「……あの国を、頼む」

 万能の願望器に託した、唯一つの願いを託して。
 返事を待たず、電子の海に解体され、消えた。

 彼だけではない。
 64人のマスターが、戦争の名の下に今宵果てる。

 これが、戦争。
 これが、聖杯戦争の残すものだった。




「考えたんだがな」

 マイルームに戻ると、セイバーは唐突に口を開いた。

「アスタ、オマエは願いを持つべきだ」

 願い?
 聖杯に託す願い、ということだろうか。
 それならば既にセイバーに語ったはずだが――……

「“聖杯を他に渡さない”が願いであるものか。
 百歩譲ってもそれは西欧財閥とやらの目的であって、オマエの願いではないだろう」

 なるほど。言われてみればそういうものかもしれない。
 自分が聖杯を得ることはまず無いだろうが……

「なるほど、オマエの背に守るべきものがあるのは理解した。
 だが、それだけではダメだ。前に進まないものは、今以上の強さを得ることはない。いつか世界に押し潰される。
 願いを持つ者は、強い。その一点においてライダーのマスターはオマエより強かったといっていい」

 それは異論ない。一回戦は危うい戦いだった。
 ……なるほど、このままでは次の勝利も覚束ない、ということか。
 ようやくセイバーの言わんとしていることに納得ができた。

「いや、そういう実務的な話じゃなくてだな、うーん……」

 セイバーは何やら唸っていたが、やがて諦めたように頭を振った。

「まぁ、いい。ともあれ、願いを見つけろ。
 見込みはある。オマエはきっと英雄になれる。
 己に、オマエの英雄譚を見せてくれ」



一回戦終了

残り人数
128→64


[No.586] 2014/01/18(Sat) 00:44:05
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