##ストーリー## 遥か未来。 長年に渡る人間の環境汚染とたった一度の天変地異によって地上は決定的に汚染され、人間は未だ清浄な高空に建造した空中都市への移住を余儀なくされた時代。 都市の外は汚染された環境に適応した種……『変異生物』の生息圏となり、人間は厚い雲の壁に守られた空中都市に閉じ篭って生活を続けていた。 空に孤立した人類の生活を繋ぐため、人類は新次元の航空機を開発した。 物理法則をねじ伏せ、心を糧に飛ぶ機械の天使。 人はそれを、Alaと呼んだ。
空中都市国家エルドラドの辺境、ロアノーク。 老朽化し、静かに朽ちていくのを待つだけの箱庭で暮らす少女、エリリ・セリリはある日、雲を突き破って落ちてきた1機のAlaと郵便屋と出会う。 アスタと名乗った郵便屋は、遠い地で待つ彼女の母の元にセリリを送り届ける依頼を受けたという。 親友に背中を押され、セリリは故郷を離れ母に逢うことを決意する。 目指すは遥か空の彼方、空中都市国家タカマガハラ。行く手を阻むのは空に満ちる死、変異生物。そして様々な思惑を胸に空に生きる空賊と軍隊。 少女の運命を乗せて、郵便屋は天空に羽撃く。
##登場人物## 基本的に所属する文化圏に則った表記がなされる。 つまりタカマガハラ人は「氏・名」。
●ミサキ・アスタ
「空を捻じ伏せろっ、ソルアヴィス!」
23歳。タカマガハラ出身。 郵便屋であり、Ala『輝くソルアヴィス』の操者。 13歳の時に変異生物に襲われ両親を亡くし、その際に偶然乗り込んだAlaソルアヴィスのパイロットとなる。 Alaは一度同調するとその心を消去するまで操者を変えられないため、そのまま郵便屋となった。 Ala単独での太平洋横断を成功させた唯一人のAla乗りである。 両親を事故で亡くしたためか空を死に満ちた絶望の世界と見ており、飛ぶことにポジティブなイメージを持っていない。 慎重かつ後ろ向きな性格で冒険を好まないが、一方で数多の危険な仕事をこなしてきた彼は冒険飛行家を目指す少年少女の憧れでもある。
●エリリ・セリリ
「このコはやれるって言ってる……反撃して、ベル!」
18歳。タカマガハラ出身。 経緯は不明ながらエルドラドの辺境にある老朽化した空中都市ロアノークで暮らしていた少女。 独学ながらメカニックとして一角の技能を修めており、親友のベルと共に手製のWINGSを作りながら外の世界に思いを馳せて生きてきた。 アスタとの出会いを経て、遠くタカマガハラにいる母に逢うことを決意する。 控えめだが意志が強く、こうと決めたらガンと譲らない性格。
●ベル・アステル
「そーね、生きて帰りましょ……」
18歳。エルドラド出身。 セリリの親友。独学ながらWINGSの操縦技能を修めており、手製のWINGSで実験飛行を繰り返していた。 セリリの背を押し旅に送り出そうとするが、その実自分も便乗してロアノークを出るのが目的であった。 エルドラドの首都ニューワールドで遭遇した事件により郵便屋となることを決意し、セリリと別れる。 その後、Ala『射抜くヴェルサギッタ』を伴いオリュンポスで再会。以後同行することになる。
●ファティマ・サンドラグプタ
「腹は決まったようだな」
34歳。アヴァロン出身。 郵便局副局長。Ala『導くディーレギーナ』の操者。 事故の際にアスタを拾い、そのまま郵便屋として引き取った。 凛とした女傑であり、たぶん性根は優しいのだが部下使いは非常に荒い。 基本的には直接登場せず、通信でアスタに指示を飛ばしてくる。
##登場ロボット## ●輝くソルアヴィス
「酷い有様だ……ここが地獄か?」
「いいえ、アスタ。本機の高度は維持されています。 生憎、天国には届きませんが」
主役ロボ。郵便局に所属するAla。マスターはミサキ・アスタ。 ロールアウト前に輸送中、変異生物に襲われたところを偶然乗り込んだアスタによって起動。 そのままなし崩し的に郵便屋となった彼によって運用される。 性能的には一般的なAlaであり、特別優秀ではない(というより、Alaは全て一品物の超兵器である)。 女性格であり、アスタには姉か保護者のように振舞う。主役ロボだが、ヒロインの一人でもある。
●ワナビー セリリが製作し、ベルが実験飛行を繰り返していたハンドメイドWINGS。 ロアノークから暫くベルとセリリが搭乗していたが、さすがに外海に出る能力はないためニューワールドでベルと共に別れた。
##用語## ●Ala アーラと読む。ラテン語で翼の意。 思惟物理学(サイ・フィジックス)に立脚する天使型航空機。 全高10mほどで、背中に翼を備える以外はシンプルな人型。 空中都市国家間をまともに移動できるほぼ唯一の手段だが、その製造方法やメカニズムにはブラックボックスが多く、基本的に『郵便局』だけがこれを生産し運用する。 ワイズマンエンジンという機関で統御されており、思惟を燃料として物理法則を書き換えて飛翔する。 ミスリルスキンと呼ばれる金属を構造材としており、これは生体と同じく常に代謝する。 よほど大きな損傷でなければ飛行しながら自己修復し、消耗した兵装も再生成される。つまりメンテナンスフリー。 パイロットが覚醒状態にある限り燃料の制限もないが、休息中の巡航や意識を喪失した場合の補助として必ず事象観測型人工知能が搭載されている。 要するに、人間と同質の『心』がある。 全て操縦者に合わせて用立てるワンオフモデルであり、全く同一の機体は存在しない。 なおパイロットは専属であり、一度定めると基本的に変更は出来ない(他の操縦者では拒絶反応が出る)。
●称号 Alaの型式番号にあたるもの。 称号自体は名詞だが、機体名と続けて称する場合にはその称号に即した動詞となる。 たとえばソルアヴィスの称号は「太陽」であり、正式名称は「輝くソルアヴィス」。
●オーバードライブ エネルギープールを消費することでワイズマンエンジンを過剰稼働させ、物理法則の書き換えを攻撃に転用する行為。 さすがに万能とはいかず、そのAlaのクセや性質が強く出る。 いわゆる、必殺技。
●WINGS ウィングスと読む。 航空力学に依る飛翔体の総称。 戦闘機であれ空中戦艦であれ、Ala以外の航空機は基本的にこれに分類される。 作中時点の多くの小型WINGSは現在の航空機に四肢をつけたような姿をしており、主に内海での活動に使用される。 Alaに比べれば総合的に劣り、特に航続能力は著しく低い。 変異生物に対しては数を揃えることでどうにか対抗できるが、国家間移動は自殺行為である。 四肢の稼動はバッテリー、推進はGMHD推進(汎流体電磁推進)が主流。
●空中都市 雲壁に守られた高空に存在する人の生活圏。 大小さまざまな空中都市群が集まって7つの国家を形成しており、 タカマガハラ(日本、及び一部東南アジア系) エルドラド(南北米大陸系) アヴァロン(英連邦系) ユートピア(ロシア、スラヴ系) コンロン(中国、一部東南アジア系) オリュンポス(欧州諸国) ジャンナ(アラブ諸国) が存在する。
●雲壁 クラウドシールド。空中都市を防護する防衛気象兵器。 ナノマシンを含む雲で形成され、水爆の直撃でも防ぎきる耐久性と86%までの損傷ならば12秒以内に完全復帰させられる自己修復能力を備える。 都市群国家をぐるりと覆う一次雲壁、その内部に点在する空中都市をそれぞれ覆う二次雲壁が存在する。 一次雲壁は物理防護に主軸が置かれているため、極々稀に変異生物が侵入することがある。
●雲海 あるいは、単に海。 本来の海洋は人類の生存圏ではなくなったため、作中単に“海”と称した場合は空を意味する。 空中都市国家の一次雲壁外に広がる空を“外海”、各空中都市の二次雲壁と一次雲壁の間に広がる空を“内海”と称する。
●変異生物 汚染された環境に適応した生物種の総称。 概ね巨体であり、超音速で飛ぶ飛翔体に肢と触手で組み付くだけの身体能力がある。 生態についてはよくわかっていない部分が多いが、少なくとも人類にとって天敵であることは間違いない。
●思惟物理学 サイ・フィジックス。 一定量以上の思念により物理法則に干渉する科学技術の総称。 空中都市やAlaはこの技術の産物である。
●郵便局 空中都市間の連絡を代行する国際機関。 空中都市は基本的に自給自足可能だが雲壁の影響で国家間を繋ぐ長距離通信は不可能であり、また一部の特殊な物質や薬品関係は手に入らない。 そのため、それら希少な物品や情報の輸送を担う。 その重要性のため如何なる空中都市国家も彼らの行動に制限はかけられず、また任務の障害はなんであれ実力で排除することを認められている。
●ワイズマンエンジン 思念を燃料、思惟を命令として物理法則を書き換える機関。 郵便局が保有する最重要機密であり、その構造・原理は多くが謎に包まれている。 操縦者の意識がある限り永久機関の如く振舞うが、単位時間あたりのエネルギー生産量は既存の動力に劣る場合もある。
●事象観測型人工知能 主にAlaに搭載されている高度なAI。 自我を持ち、感情を備え、他者に共感する能力を持つ。つまり、機能的には人間の心と遜色ない。 強いて言えば感情の起伏が小さいが、これは長期に渡りワイズマンエンジンを安定的に稼動させるために意図的に調整されているに過ぎない。 基本的には社会規範を尊重するが、パイロットとの主従は徹底されているためパイロット次第では不法行為を容認することもある。
●量子ストレージ Alaが備える物理的に存在しないカーゴブロック。物体を情報に変換して輸送できる。 だいたい300立米程度の容積があり、質量は問題にしない。 外部からの衝撃は当然伝わらないが、Alaの事象観測型人工知能の記憶素子に存在するためその部位が破損すれば当然、格納物も損なわれる。
##こぼれ話## 確か2回目のオリロボスレぐらいから捏ねている遠未来の地球を舞台にしたポストアポカリプスロボットもの。 着想は「ナウシカみたいな終末世界にラピュタみたいな空中都市が浮かんでいて紅の豚みたいな飛行機乗りが活躍する話」。 要するに安易なジブリファンタジー感。
基本的に主役ロボットのソルアヴィスのみで進むロードムービー形式の話であり、分類的にはリアルロボ系の作品でありながら作劇上多数のメカニックが登場する蓋然性が低い。 余談だがかなり古くから弄っているオリロボなのについぞSRCシナリオが完成しないのはこの設定が致命的にゲームに落とし込みにくいせい。
初出はオリロボTRPGのゲストNPC。当初は本当に郵便屋さんの乗り物でしかなかった。 かなりの回数の設定変更が行われているが、本編がアスタがセリリを母親に届けるまでを描くという路線は(基本的に)変わっていない。 軍隊や無法者も存在するが、それらは途中の障害物でしかなく打倒するべき敵ではない。 これは郵便屋さんのお話なのだ。
[No.648] 2017/11/28(Tue) 23:20:02 |