「起きて……起きて」 「スーッスーッ」 「起きろっつてんだろこのダラズが!」 ドグシャアアアアッ 「な、なんなのよ」 安眠をむさぼっていた私の前に現れたのは一匹の……何だろう、これ。とにかく謎の生き物だった。 「あのところであなたは誰?」 いきなり茶菓子を要求してきた謎の生き物のあまりの剣幕に逆らえないまま準備し、全部食べ終わったのを見計らってずっと聞きたかったことを聞いてみた。 「ああ、言ってなかったか。わしはヤマネのかき(仮)と呼んでくれ」 「はあ、山根さん」 「ちがう、ヤマネは種族名だ。さっき作者がネットで適当に珍獣を探した結果見つかった由緒正しい天然記念物だ」 言ってる意味はよくわからないがとりあえずかき(仮)さんと呼べばいいのだろうか。 「さて、ノース。君は大きな運命を背負っている。今すぐこの魔法のペンをとるんだ」 「あの私、ノ……」 「とっととやれつってんだろ!」 バキイイッ 今度は顎を思い切り殴られて吹っ飛ばされた私は、仁王立ちするかき(仮)さんが差し出したペンを手に取った。 チャラ…… 「えらくBGMが短かったな。まあいい。特に問題はないだろう。さあ、ノース。紙に何かを書くんだ」 「何かって何を書けばいいの?」 「何でもいいがここはお約束に従って『空を飛ぶ』あたりでいいだろう」 「わ、わかりました」 いまいち事情が飲み込めないけれど、ここで口答えしたらまた殴られそうだからしぶしぶ紙を取り出し書こうとするが、ペンが紙に触れたとたん信じられないことが起こった。紙がペンが光りだし、そして私の周りをものすごい風が取り囲んだ。 「はあ、そんなパジャマ姿じゃパンチラしないだろ。いつでもスカート穿いてパンチラの準備しとけよ」 かき(仮)さんが呆れたような様子でものすごく理不尽なことを言っているのを聞こえなかったことにして、私は言われたように紙に文字を書きだした。 「えっと空を」 プスーッ けれどさっきまであれだけ光っていたペンと紙は、二文字書いただけでまるで電池が切れたように光を失ってしまった。 「あのかき(仮)さん。このペン書けなくなってしまったんですけど」 「何を馬鹿なことを。世界を救う魔法少女の魔力なら連続して何万文字も書けるはずだぞ」 「でも本当に書けないんです」 「信じられん。だが確かに今のお前からは魔力を少しも感じられん。一体どういうこと何だノース」 「あのさっきから疑問の思ってたのですけど、ノースさんて誰ですか?」 「ノースはお前だろう」 「あの私ノエスなのですけれど」 「……何やってやがんだあああっ!」 ドグラガッシャアアアアアアアアン 今までで最強の一撃に私は壁まで引き飛ばされてしまった。 「なんでそんな大事なことを今まで黙ってた」 「言おうとしたんだけれどそれをかき(仮)さんが……」 「ああん!」 「ヒイイッ」 がんばって反論してみようとしてけれど、かき(仮)さんに威嚇されてそのまま言葉を飲み込んでしまった。 「こっちは1クールしかなくて大変だってのに余計なことしやがって、少しは俺にも1年単位の行動計画を立てさせろよ」 「間違えたのかき(仮)さんじゃないですか」 「まあいい。お前の魔力ははっきり言ってゴミみたいだが、それでも二文字あれば『死ね』でも『殺す』でも書ける」 「そんな殺伐とした言葉しか書けないんですかっ!」 「落ちつけノエス。お前にも悪い話じゃない。お前誰か好きな奴いるか?」 「い、いますけれど」 「このペンさえあればそいつを簡単に『服従』させることができるぞ」 「もっと普通の恋愛用語は思いつかないのですか!?」 「はん」 「鼻で笑われた」 こうして私とかき(仮)さんの世界を救う物語は……当然作者は続けるつもりはない。 [No.108] 2007/09/24(Mon) 21:45:38 |
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