第0回リトバス草SS大会(仮) - ひみつ - 2007/12/25(Tue) 23:04:22 [No.110] |
└ 夢、過ぎ去ったあとに - ひみつ 心弱い子 - 2007/12/29(Sat) 02:36:29 [No.119] |
└ 夢想歌 - ひ み つ - 2007/12/28(Fri) 22:00:03 [No.117] |
└ 前夜 - ひみつ - 2007/12/28(Fri) 21:59:21 [No.116] |
└ 夢のデート - ひみつ - 2007/12/28(Fri) 21:57:46 [No.115] |
└ 悪夢への招待状 - ひみつ - 2007/12/28(Fri) 21:52:10 [No.114] |
└ 思わせぶりな話 - ひみつ - 2007/12/28(Fri) 20:51:04 [No.113] |
└ 一応チャットでは名乗ったのですが - 神海心一 - 2007/12/30(Sun) 18:39:38 [No.121] |
└ 変態恭介 - ひみつ - 2007/12/28(Fri) 19:13:52 [No.112] |
└ もしも恭介がどこに出しても恥ずかしくない漢(ヲタク... - ひみつ - 2007/12/28(Fri) 00:44:32 [No.111] |
└ 感想会ログとか - 主催っぽい - 2007/12/30(Sun) 01:14:54 [No.120] |
【恭介、本を拾う】 「ねえ、昔みたいに、みんなで何かしない?」 だから僕はそう提案していた。 「ほら、小学生の時。何かを悪に仕立て上げては近所をかっぽしてたでしょ、みんなで」 恭介なら、そうしてくれるはずだ。 十年という月日が経っても、僕と同じ気持ちでいたから。 そして、今も、恭介は僕たちのリーダーだったから。 「じゃ……」 恭介が屈んでいた。 その手が何かを拾い上げる。 ふと違和感が走る。 この世界の正しさなんてものを疑うほど、僕は疑心に囚われてはいないはずなのに。なぜだろう。その時僕は、今目の前にある現実がどこか致命的な部分で間違っているように感じてしまっていたのだ。 「……同人誌を作ろう」 「「「「……はい?」」」」 恭介以外全員の声がハモる。みんなの視線は恭介の手の中にある一冊の本に注がれている。あれは、間違いない。僕の目が急におかしくなったとか、そういうことでないのだとしたら、アレは―― 「18未満お断りの同人誌ですね。しかも男性向け」 「西園さん、いつの間に」 「お気になさらずに」 突然現れた西園さんは、白い日傘をゆらゆらさせながらまた去っていった。恭介は全く意に介さない様子で僕らに向き直り、決然とこう告げるのだった。 「同人サークルを作る。サークル名は――リトルバスターズだ」 いやいやいやいや。 高速で首を横に振る僕らに恭介が気付くのは一体いつになるのやら―― ちょっと首が疲れてきましたよ? もしも恭介がどこに出しても恥ずかしくない漢(ヲタク)だったら 【恭介、本を読む】 朝の恭介の発言の意図を確かめるため、授業が終わると僕はすぐに恭介の教室に向かった。 「ちょっとー、見たー? あれ」 「見た見た。何なの? ちょっとキモいっていうか」 「ちょっとカッコよさげだったのにねぇ。ゲンメツー」 三年の階はちょっと妙な雰囲気だった。あちこちで不穏なこそこそ話が繰り広げられているみたい。聞こえない。聞こえない。僕は何にも聞いてない。 恭介は教室で大人しく読書をしていた。いつもと同じように、どこか神聖な雰囲気を醸し出す恭介。しかし、今日は全く別の意味で近寄りがたい存在となっていた。出来れば声をかけずにユーターンして教室に戻り、真人と謝筋肉祭の続きをしたい衝動にかられるが、なんとか意を決して声をかける。 「恭介」 「おう、理樹か」 「何、読んでるの?」 僕の問いに教室全体がうんうんと頷いているのが如実に感じられる。それが聞きたかったんだ! という心の声が聞こえてくるようだ。 そんな空気を読んでか読まずか、恭介はしれっと答える。 「いや、F○teのエロ同人だけど」 言っちゃった――――っ!! はっきり! くっきり! え? 教室でエロ同人読んで何が悪いの? とでも言いたげだ! 「ほら理樹見ろよ。本編じゃ見られなかったイ○ヤの」 「ちょっと待って恭介! このままじゃ恭介のイメージが大変なことに!」 僕はなぜか本気で恭介の肩を揺さぶっていた。慌てふためく僕を「ふん」と恭介は鼻で笑っているように見えた。こんなことでうろたえるなんて、理樹はまだまだ修行が足りないな――などと。 「じゃあ聞くが――理樹」 「うん」 「この世界に、ブルマっ娘とのエロの他に、どんな大切なものがあるっていうんだ」 あーやっぱり恭介って(21)だったんだ―― そんなことを思いながら、僕の意識は急速にこの世界を離れていくのだった。 ちなみに、恭介とブルマの少女が花園で戯れている夢を見た。 超スピードで目を覚ましましたよ? 【恭介、アニメを見る】 寮にはテレビが三台しかない。食堂にあるのと、談話室にあるの、それに寮長室にあるの。生徒が見れるのは食堂にあるやつと談話室にあるやつなのだが、時間は決まっている。午後九時以降の視聴は一応規則で禁止されているのだ。 「でも、それじゃあ意味がないんだよぉ!」 「仕方ないよ恭介、規則なんだし」 「理樹! お前は何もわかっちゃいない!」 憂いを帯びた笑みを浮かべる恭介。 「恭介がそこまで言うなんて……何か理由があるんだね」 何か理由があるのかもしれない。恭介の考えは時として僕らには計り知ることが出来ない深度を持っている……こともある。最近ちょっと自信がない。 「ああ、そうさ理樹……こいつは俺の人生の問題なんだ」 「恭介……」 「今期ナンバーワンアニメ『くら☆など』が、俺はっ! どうしても見たいんだよおおおぉぉぉ!!」 「へっ?」 呆気に取られる僕らを尻目に『くら☆など』の魅力を訥々と語りだす恭介。それを詳細に記述するのは紙面の都合上不可能なのでカット。 「――馬鹿だな」 鈴の呟きが全てを代弁していた。 まぁ、いくら恭介でも無理だろ―― そう思っていた時期が僕にもありました。 ☆ ☆ ☆ 「おっす!」 いつもと同じ恭介の朝の挨拶だったが、幸せが溢れんばかりに輝いた笑顔。 「おっ、今日はやけに元気だな恭介。今日はあれか、筋肉祭りでもやってんのか?」 「いや、今日も良い日だな諸君! 朝飯食って、元気に一日頑張ろうじゃないか!」 真人を気持ちよくスルーするのはいつものこととしても、やけに元気だ。昨日は件のアニメのことで酷く落ち込んでいたというのに。 「まさか――恭介」 謙吾も同じことを思ったらしく、疑いの目で恭介を見ている。 「お前、食堂のテレビ夜中につけてみたんだろ」 「ちっち、そんなことするわけないだろマイシスター。規則で決まってるじゃないか」 もうそのレスポンスだけで引いてしまう鈴。鈴の後を引き継いで僕も聞いてみる。 「でも、見たんでしょ?」 「ああ、それはばっちり見たさ。いやぁ! 皆にも見せてやりたかったぜ!」 見たのか。 いい感じにテンションが上がって変な人になっていく恭介。だんごっだんごっと人目を憚らずに歌っている恭介から、僕らは半歩引いた。鈴なんか明らかに汚物を見るような目で見ている。 そんな僕らの横を通りすがるある人物。 「おはよう」 「寮長! おはようございます!」 いつも以上にいい返事をする恭介。 ん? よく見ると恭介と寮長が何かアイコンタクト。「越後屋、お主も悪よのぉ」「へっへ、お代官様こそ」という感じの。 「恭介まさか」 「みなまで言うな理樹」 どこか含みのある笑顔を浮かべる恭介。こうなると恭介はどうあっても口を割らない。どうやって寮長を仲間に引きずり込んだのか、僕らに知る術はなくなったわけだ。恭介は誰も聞いていないのに、饒舌に『くら☆など』の美点を語り続ける。どうにでもしてくれと、僕らは恭介の話を聞くことしか出来なかった。 「ま――何にでもどこかに抜け道があるってことだな」 アニメ見たさに一晩で寮長まで抱き込む恭介。 ジェバ○ニ先生も爆笑だっぜ!(やけくそ) 【恭介、ダンスの監督をする】 放課後、練習に行く途中に通りかかった教室から聞こえてきたのは、やけに軽快な音楽とステップを踏むような足音、楽しそうな騒ぎ声。僕の耳が狂ったのでないのなら、この声にはばっちり聞き覚えがあったりします。 「葉留佳さん何やってるの」 「あっ、理樹く〜ん! やっほーっ!!」 扉を開けるとそこには予想通りの人と―― 「リキ、こんにちわなのです」 「理樹くん、こんにちわ〜」 クドと小毬さんまで。 「こんなところで、何やってるの?」 「ちっちっち、分かんないなんて、理樹くん、そんなことでは駄目駄目ですヨ」 葉留佳さんの言葉に教室を見回してみると、整然と並べられていた机は綺麗に寄せられていて、床にはラジカセ。 「ダンス、なのですよっ!」 あ、なるほど。納得。 「楽しいよ〜」 野球だろうがダンスだろうが、何やってても楽しそうなのは小毬さん。クドや葉留佳さんだって言うに及ばずだ。 とりあえず、三人の練習を見学することにした。葉留佳さんたちのことだから割と適当なのかなぁと思ったら、割としっかり振り付けされていてびっくりした。 「へぇ、結構やるもんだなぁ」 「ふっ、これくらいで驚くのは早いぜ、理樹」 「うわっ」 いつの間にか背後にいたのは、ミスター想定外の異名をほしいままにしている恭介。どこから入ってきたんだろう。窓からか。ここ三階なのに。 「やっぱりこれは恭介の?」 「もちろん。曲チョイス俺、振り付け俺、超監督俺」 漫画雑誌らしきものを片手にこともなげに言ってのける恭介はやっぱり凄い、色んな意味で。 「完成形は、全員揃ってから、だぜ?」 ☆ ☆ ☆ 「というわけで全員集合してみました」 「あほだな」 「やあ理樹君ごきげんよう」 「これは羞恥プレイでしょうか……マニアックです」 鈴に、来ヶ谷さん、西園さん。 「なんでわたくしまでこんなことを……ぶつぶつ」 「……」←赤面していて言葉にならず。 笹瀬川さんに、なぜか二木さんまでいる。 そして、これは特筆すべきことなのだが――みんな一部の隙もないチア姿なのだ。両手にポンポン、ミニスカ。白ソックス。 壮観。 これを壮観と言わずして、一体何を壮観と呼ぶのか。 「恭介」 「どうした、理樹」 「どうしてチアガールなの?」 「それはもちろん――萌えるからだ」 ぐっと親指を突き出して、二カッと魅力的に笑う恭介。ごめん、恭介。僕、ついていけないかもしれない。 「ちなみに、チーム名はリトル・ラブラブ・アンデッドーズだ」 「恭介、まさか踊る時にゾンビのマスクつけたり、やたら動きにキレのあるリーダーがいたりしないよね?」 「……えらく具体的だな」 そんなことを言いながらも恭介の額には一筋の汗が。 誤魔化すように恭介はすっくと立ち上がり、居並ぶ団員達に向かって号令をかける。 「それじゃそろそろ行くぞ。準備はいいか?」 「おっけーですっ」 「どんとこいですヨ!」 クドと葉留佳さんが元気一杯に答える。他の皆もすぐに集中していくのが手に取るように分かる。無駄に鍛えられた感があるのが凄いなと思ったりしちゃいました。 恭介がおもむろにラジカセの前に立ち、再生スイッチに手を添える。高まる緊張感。 「ミュージック――スタート!」 もってい〜け最後に笑っちゃうのはわたしのはず〜♪ セーラー服だからです←結論〜♪ ちなみに。 小毬さんがいつも行ってる老人ホームの慰労イベントで披露するらしい。お爺さん達、ショック死しなければいいんだけど。結構本気で心配してますよ? 【恭介、思い出したかのように本を作る】 「オリジナルで行くべきです」 僕らが夏コミで発表する本の方向性は決まったのは、ほとんど西園さんの鶴の一声のおかげと言っていい。 当初、『かなぶんのなく頃に』で男性向け18禁を作ることを強硬に主張していた恭介だったが、同人サークル「リトルバスターズ!!」女性メンバー(実は男性メンバーもそんなに賛成してない)の必死の抵抗にあって、あえなく断念することになった。 「仮にも学生寮でエロ同人を本気で作ろうとしていた恭介氏の情熱には敬意を表しないでもないがな」 「そこ、感心しない」 来ヶ谷さんと恭介は、やはりどこか通じるものがあるようだ。視線を交し合っていい笑みを浮かべる二人を見て、背中を戦慄が走る。この二人を野放しにしてはならない。他メンバーの暗黙の了解である。 協議の結果、絵を描くのは小毬さん、来ヶ谷さん、西園さんを中心にしてその他のメンバーはサポート、ストーリーは全員で協力して作ることになった。どう考えても絵を描くほうに時間がかかるので、外部からも応援に来てもらった。 「なんでわたくしがこんなことを……ぶつぶつ」 「ざざみ、言ってることがダンスの時と変わらないぞ」 だから、さ・さ・せ・が・わ・さ・さ・み、ですわー! と、始まるいつもの鈴vs笹瀬川さんのバトル。もう見慣れた光景である。 「でも、笹瀬川さんが絵描けるなんて、来ヶ谷さんよく知ってたね」 「少年、私にわからないことはないのだよ」 来ヶ谷さんに限っては本当っぽいので笑えない。怒らせたらどんな目にあうのだろうか。ぶるぶる。 そんなこんなで、夏を目指して、僕らの同人誌製作が始まったのだった。 ☆ ☆ ☆ 後から聞いた話だが、コミケで本を出すのは恭介にとって一つの夢だったらしい。締切直前、完徹三日目の夜にぼそっと僕にだけ教えてくれた。 「鈴にはキモいキモい言われるけどな……」 こう見えても恭介は、鈴の言葉にだけはショックを受ける。他の誰に何を言われても意に介さないが、鈴だけは特別。そういう恭介を見るのは、こう言っちゃ悪いが微笑ましい。 「笑うなよ、兵が見ている……」 「何かのネタだってことは分かるけど、それ以上は僕の突っ込みの許容限度を越えてるよ……」 「まぁ、なんだかんだ言いながら鈴も楽しんでやってくれたみたいだから、良かったよ」 小毬さんや来ヶ谷さんに教えてもらいながら一生懸命絵を描いている鈴、という構図を制作期間中に何度も見た。その度に恭介は嬉しそうに笑っていた。恭介のそんな気持ちは僕にもわかる。本当に少しだけ、なのかもしれないけど。 そんな話をしていたら照れくさくなったのか、「『くら☆など』の時間だ! 後はよろしく頼むぜ!」などと言って、さっさと部屋を出て行ってしまった。 「真夜中、男同士の語らい……ああ、萌えです」 「西園さん、誤解を招くようなことを呟かない」 「うふふふふ」 駄目だ。完全に脳内薔薇の花畑状態に入ってしまわれた……と思ったら意外に早く帰還してくれた。 「恭介さんって、いいお兄さんですね」 「どうしたの、いきなり」 「鈴さんがあんなに懐くのも無理ないですね」 「懐いてる?」 「はい」 鈴は部屋の隅の方に作った机(みかん箱机)に突っ伏して寝ている。まじまじとその寝顔を眺めてしまう。 「この年になっても、こんなに仲の良い兄妹……珍しいと、思います」 「そう……だね」 「私にもこんな兄がいたらなぁとか、時々思うことがあります」 うん。 それには素直に頷ける。 「突然ですけど、鈴さんの小さい頃の夢って、直枝さんはご存知ですか?」 「ううん」 聞いたことがない。 「これ、内緒ですよ……来ヶ谷さんがやっとのことで口割らせたんですから」 言いながらうふふふふと口の中で笑う西園さん。 「……お嫁さん、なんですって」 「へ?」 「恭介さんの」 ――おにーちゃんの、およめさんになる。 遥か昔、鈴は恭介のことを「おにーちゃん」と呼んでいた頃があったそうだ。鈴にいじめられた恭介が涙ながらに話してくれたことがある。真人と会った頃には既に「恭介」と呼び捨てだったそうだから、もっと前のことか。 なんていうか、くすぐったいな。鈴にもそんな頃があったんだなぁと思うだけで。 段ボールの机でよだれ垂らして眠る鈴が、急にものすごく可愛い女の子に見えてきた。守ってあげたくなる。恭介が鈴を見て思うように、僕も。 「うふふ」 「あははは」 西園さんと声を殺して笑い合う。こんなこと話してるって鈴に知れたら、きっと怒るだろうな。相手が僕であることを差し引いても、ハイキック三発分くらい。いや、もっとかも。 ひとしきり笑い合うと、どちらからとなく溜息をついた。 「あと、何ページかな」 「もう後少しです。頑張りましょう」 三十分くらいで恭介は戻ってきた。なんかつやつやしてる。何してたんだか。 ☆ ☆ ☆ その後のこと。 なんだかんだとあったが、無事に本は完成した。 そして、これは最後に確認しなかった僕たちが悪いのだが、なぜか巻末に誰も書いていないBL系の小説が載っていた。誰もが知らないと言ったが、これを入稿しに行ったのは誰なのか、僕はしっかり知っている。犯人は誰なのか、あえて記述することでもないので、ここでは割愛。 しかし、なんでモデルが僕と恭介なのかなぁ。 僕らのことを、汚物を見るような目で見る鈴の視線が辛すぎるんですが、ねぇ? おしまい [No.111] 2007/12/28(Fri) 00:44:32 |
この記事への返信は締め切られています。
返信は投稿後 30 日間のみ可能に設定されています。