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all 第1回リトバス草SS大会(仮) - 主催 - 2008/01/09(Wed) 22:19:44 [No.124]
M - ひみつ@超遅刻ついでに半オリキャラ - 2008/01/13(Sun) 13:35:25 [No.132]
戦いの終わりは。 - ひみつ@大遅刻 - 2008/01/13(Sun) 00:36:13 [No.131]
馬鹿兄妹 - ひみつ - 2008/01/12(Sat) 22:01:01 [No.130]
夕焼けに赤く燃える男と男の友情 - ひみつ - 2008/01/12(Sat) 18:20:51 [No.129]
そこに○○○○がある限り - ひみつ - 2008/01/12(Sat) 02:35:57 [No.128]
対男子(一部女子含む)用殲滅兵器くどりゃふかまーく... - ひみつ - 2008/01/12(Sat) 01:51:58 [No.127]
感想会ログとか次回とか - 主催 - 2008/01/14(Mon) 00:35:04 [No.134]


M (No.124 への返信) - ひみつ@超遅刻ついでに半オリキャラ

「はあ」
 身の入らない授業。彼女にとって苦手なはずの古典は、普段は一文字残らずノートに書き写すのだが、どうしても集中することが出来ない。今日はどの授業も似たようにずっとため息をついていた。ノートには、今日の痕跡は何一つ残っていない。誰かに借りるしかないな、と考え、古典を諦めた。
「はあ」
 頬に手をつき、外を見やる。他のクラスが体育をしているようだ。種目は100メートル走。そこで小柄な女子が一際目立つスピードで白線の中を駆け抜けていた。
 その少女の姿を目に入った瞬間、ビクンと彼女の身体は波打った。息が乱れる。力が入らない。我慢できず、机に突っ伏す。
 何故、授業に身が入らないのか。その理由は彼女自身も分からない。
 ただ、夜、彼女に会うのが待ち遠しい。




『M』





 古典から、そのままホームルームまで。彼女の興奮が落ち着くことは無かった。汗をびっしょりとかき、顔は高潮している。
 傍から見れば、身体の調子が悪い人に見える。興奮しまくっているだけなのだが。
「右菜、大丈夫?」
 彼女を心配して、同じソフトボール部仲良し三人組の左恵子が声を掛けた。
「あ、うん。大丈夫だから」
「どこが大丈夫なのよ。明らかに調子悪そうじゃない」
 右菜の声を聞き、ソフト部三人組最後の一人、中島が突っ込みを入れる。誰が見ても普通の調子ではない右菜を見て、冷たく言い放つ。「今日は部活休め」
 冷たく聞こえるが、彼女を知るものであれば、何故自分達に嘘をつくのかという怒りからの物言いなのだが。
「ううん、行けるよ」
「無理だ。ほら、これあげるから」
 そう言って、中島が渡したものは、黒ずんだ如何にもゴミにしか見えないものだった。
「これは?」
「佐々美様の練りかけた消しゴムのカス。レモンの香りを放っているから、気分が悪くなったら匂いを嗅ぐとすっきりするはずよ」
「ありがとう」
 早速、右菜は匂いを嗅いだ。中島の言うとおり、その物体からはレモンの香りがした。それでいて、奥底には佐々美の汗の匂いまで含まれている仕様に驚く。先ほどまでの興奮もあり、その上更に憧れの佐々美の匂いまで嗅いでしまった右菜のボルテージはMAXまで振り切り、オーバーレブ、メーターは赤色を越え、前人未踏の虹色空間へとのぼりつめる。鼻血は勢いよく飛び出し、穴と言う穴から謎の液体を振りまく。
「ちょ、え? 大丈夫!? 人として大丈夫!?」
「あへへ、ちょっろ興奮しすぎららけらからぁ」
 言葉も覚束ない右菜は、なんとか左恵子にふらふらとしつつも返事する。左恵子からティッシュを借り、とりあえず、飛び出した液体を拭き、鼻にもティッシュを詰める。下半身の液体までは、恥ずかしくて言えず、寮に帰ってから恥ずかしいシミがばれないように洗濯をすると心に誓う。
 こんなリアルに天国へと旅立てるアイテムをくれた中島。戸惑いながらも、聞いておかねばならないことがある。
「これほんろにもらっへいいろ?」
 何を言っているか分からない。中島には通じたようで、ゆっくりと首を縦に振る。
「あげる。その代わり早く元気になること。オッケー?」
「あふぅ……」
「じゃあ、私ら部活行くから。気をつけて帰るんだよ」
「ふぁーい」
 興奮しすぎて、もう何がなんだか分からなくなっている右菜。とりあえず、腰砕けになっていて、帰るのに時間かかりそうだなと、人事のように考えていた。




***





 まともに立てるようになってから、下校の準備を始める。既に陽は沈み始めていた。
 右菜は、自分の馬鹿さ加減に呆れつつも、手際よく準備を進め、足早に教室を後にした。
 一人きりで夕日色の廊下を歩く。昼間あれだけいた生徒達は誰もいない。運動部の声は外から聞こえてくるので、不安感は特には無いのだが、妙な気分になる。わくわくするというか、どきどきするというか。知らず、スキップのような足取りになっている自分に気づくと恥ずかしくなったが、誰もいないことを思い出すと、寧ろ自主的に早足からスキップへと切り替えた。
 スキップなんて小学生以来だろうか。なんだか楽しくなってきて鼻歌までこぼれだす始末。それでも楽しければ何でもいいのだ。
 次の角を曲がれば下駄箱だ。ならば、我がVターンの餌食にしてやろうぞ。
 妙な思考に捕らわれ、右菜はスケート選手のような体勢を取り、直角ターンを決める。
「ぎゃっ」
 が、決めた矢先、誰かにぶつかってしまう。
 ぶつかった反動で右菜も倒れてしまい、腰を打つ。元々低い姿勢で決めたターンだけに身体的なダメージはそれほど無い。それよりも相手だ。
 視界の端に映ったのは、長い髪の少女がごろごろと転がって、壁にぶつかっていた映像。死んでいないか心配で恐る恐る声を掛ける。
「きゅー」
「え、あ、な、棗さん」
 右菜がぶつかってしまった相手は、毎晩寮で壮絶な戦いを繰り広げている相手。憧れの佐々美のライバルである、棗鈴だった。
 佐々美のライバルといえば、憎き人物である。佐々美が自分達を見ず、ずっと鈴を見ていることは知っていたし、こちらを見て欲しいと嫉妬に駆られる時もあった。だが、毎晩戦う内に、次第に考えが変わっていく。我侭で子供少女だと思っていた彼女を、ひとつ見直す出来事もあった。そして、あの蹴り。
 右菜の視線は一箇所に集中する。それは鈴の太もも。小さい体の、比率としたらモデル並みにすらりと伸びたそのしなやかな白花石膏のような真っ白な太もも。力強さの内にも、女性らしい柔らかさも含んだその足。毎晩蹴られている内に右菜は目覚めたのだ。
 蹴られる快感に。
 誰にも言えなかった。体育の時間に走る鈴の体操服姿が眩しすぎてじゅんじゅんなったなんて。スパッツ最高だなんて。
 スパッツ?
「……」
 いや、今私は何を考えた?
『スパッツ抜き取っちゃいなよ』
 彼女の中の悪魔がそう呟く。
(いや、でもそれは犯罪じゃ)
『ばれなきゃいいじゃん』
(確かに……)
『ダメです!』
 彼女の中の天使が叫ぶ。
『微妙にばれる痕跡を残して後でお仕置きキックしてもらうべきです!』
 彼女の中の天使はドMだった。
 右菜は覚悟を決めた。
 オーケイ。私の中のエンジェル&デビル。これはミッションなのだ。気絶している内にスパッツを抜き取る。モロばれではダメだが、微かに私だと分かる痕跡を残しつつ。
 完全犯罪以上の、未完成犯罪。そんな大きなミッションを前に、右菜は興奮で内股になりぷるぷる震えていた。今後のことを考えると……。
 いやいや。そう、気を持ち直してミッションに望む。まずはゆっくりとスカートをまくり上げ……。いや、これはスカートを下げたまま抜き取るほうが興奮するのではないのだろうか。間違いない。そのプレイのほうが、お預け感がまるで違う。一人お預けプレイだ!
 本格的に目覚め始めた、いや覚醒し始めた右菜を止めるものは誰もいない。
 そろそろと、気絶した鈴のスカートの中に手を差し入れる。少し触れてしまった太ももが柔らかすぎて、一瞬気が遠くなったが、それも焦らしプレイのひとつと考え、幸福から逃げるように手を深く強くスカートの中へと進める。
 集中。
 頭の中でスカートの中をイメージし、そのイメージどおりに手を動かす。微かなミスも許されない。全て、理想郷のため。ハイキックパラダイスのために。
 今までの人生で一番の集中力を発揮する右菜。そして、遂にスパッツの下腹部部分へと手が届く。あとはこれをゆっくりとずり下げるだけ。
 1センチ。1ミリ。繊細な指使いが試される。今の彼女の指は、ベテランのパンツ職人並みへと昇華された。
 スカートからゆっくりと黒いスパッツが姿を現す。それを目にした瞬間、彼女の思考はホワイトアウトしかけたが、それでも持ち直す。 このスパッツお持帰りぃ!
「んん」
 ビクビク!
 気絶しているはずの鈴の口から吐息が漏れる。が、起きる気配はまだ無い。ふう、と額の汗を拭う。
「鈴。まだ忘れ物見つからないのー? って、え?」
「え?」
 時間が止まる。右菜は考えてもいなかった。下駄箱の前というポジショニングで誰かに見つかってしまうということを。普通の思考を持っていればそんなこと誰だって気づくはずなのだ。こんな公共の場所で何をしとるか、と。だが、スパッツ、ハイキックというスウィーツを見せ付けられた右菜には、目の前の人参しか見えずに突っ走るサラブレットの如く、止まることなんて考えもしなかったのだ。
 他人にこんな場面を目撃されたら、それこそ犯罪者の烙印を押されてしまう。それだけは避けねば。避けねば!
「ナーウッ!」
「カッパーフィールド!」
 走馬灯時に発揮されるような集中力により、職人から仙人レベルまでの超進化を遂げた右菜の指先は、鈴のスパッツを一瞬で引き抜く。そして、それをポケットにイン。 
「サプラーイズッ!」
「ぎゃー! 目がー!」
 目潰しをした後、目撃者の腕を取り、後ろに回りこむ。そして、人差し指を背中に突きつける。案外、これだけで何を突きつけられているか分からないもので。
「あら、あなたはいつも棗さんといる直枝さん……」
 目撃者は、いつも鈴のそばにいる男子、直枝理樹だった。軽い嫉妬を感じ、右菜の中の悪魔がちらりと顔を覗かせる。
「う、あ」
「ふむ、あなたなら分かるでしょ? あなたは何も見ていない」
「あ、あ」
 日本語を忘れてしまったように直枝理樹は、必死に首を縦に振った。
「ならば、開放しましょう。でも、もしも口外したら、その時は……」
 理樹の耳元でそっと右菜が呟く。「あふぅ」と耳に吐息の掛かった理樹は敏感に反応してしまったが、告げられた内容を聞くと戦慄する。必死に「絶対誰にも言いません!」と何度も叫ぶ。
「よろしい」
 ふと、理樹の背後から気配が消えた。理樹が後ろを恐る恐る振り向くと、そこにはもう誰もいなかった。
 先ほどのことを思い出す。ちょっと背中におっぱいが当たってたり、一番の性感帯の耳を刺激されたり、女の子同士のあんなシーンを目撃してしまったり。
 理樹は前傾姿勢になりながら、鈴の元へと駆け寄った。




***




 やってもーたっ!
 寮に戻った右菜は、ベッドの中で悶々としていた。
 どうないしよ、どないしよ、とゴロゴロ転がっていると部屋のドアがガンと開かれた。顔を出したのは左恵子。
「右菜! 集合よ! 棗鈴が現れたわ!」
「棗様!」
「棗様?」
「ハッ! 棗サマンサ!」
 ハッとしてすぐに誤魔化す。はてな顔の左恵子を尻目に右菜は部屋を飛び出す。勢いで無かったことにしようとした。
「早く!」
「あ、うん」
 いつもの戦いの場に行くと、中島が一人で立ち向かっていた。
 鈴のローキックをなんとか捌いている。
「あ、やっと来た!」
「何うらやましいことしてるのよ!」
「え? 何が?」
「ハッ! 早くアイテムを使って応戦よ!」
「あ、うん」

 中島は『佐々美の飲みかけのレモンティー』を使った。

「佐々美様が私の中に!」

 左恵子は『佐々美が鼻をかんだティッシュ』を使った。

「ああ、佐々美様ぁ!」

 右菜は『鈴のスパッツ』を使った。

「うひょー! 棗様の恥骨部のにほひぃ!」

 右菜はハッとソフト部の二人が白い目で見ていることに気づいた。
「皆どうしたの?」
「右菜それって」
「それ!」
「あ、棗鈴が蹴りを放ってきたよ! 私が受け止める!」
「あ、うん」
 右菜は鈴の蹴りの軌道を一瞬で計算し、そこに尻を突き出す。
「あふぅ! ハッ!」
 そして、目撃する。スパッツを履いていない鈴の純白の※レジェンドオブ逆三角形を。
(※レジェンドオブ逆三角形とは、普段はスパッツや短パンを履いている人の絶対に目撃することの出来ないパンツの総称)
 それを見てしまった瞬間、右菜の鼻から血が噴出する。偶然、それが鈴の顔にかかり、鈴が怯む。その隙を鼻血を出しつつも右菜は見逃さず、すかさずスカートの中に顔を入れる。
「って、何すんじゃー!」
「うひょー! 絶景!」
 松島の景色以上に美しい白いクレバスに、右菜は意識を手放す。
 それを見ていたソフト部の二人、更に佐々美の三人は呆然とする。
 血(鼻血)だらけの鈴が、背を向けこの場を去ろうとする。一度だけソフト部連中に顔を向けそっと告げた。
「付き合う人間を選んだほうがいいと思う」
 鈴の言葉に、三人は無言で頷いた。
 気まずい空気。呆然と立ち尽くすソフト部達は動かない。
 一人右菜だけが、つま先をピンと張り、ビクビク痙攣しながら、幸せそうな顔をしていた。


[No.132] 2008/01/13(Sun) 13:35:25

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