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ダイブ - ひみつ@遅刻 - 2008/02/23(Sat) 23:17:44 [No.178]
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真夜中の内緒話 - ひみつ ちょっぴり優しくして - 2008/02/23(Sat) 17:46:56 [No.170]
時をかけちゃった少女 - ひみつ - 2008/02/21(Thu) 02:58:00 [No.168]
感想会ログとか次回とか - 主催 - 2008/02/24(Sun) 23:06:52 [No.180]


時をかけちゃった少女 (No.166 への返信) - ひみつ

 鈴は最近憂鬱だった。
原因は彼女の兄の恭介にあった。恭介がことある毎に鈴に「理樹とこれからもいっしょにいたいのなら、今年のバレンタインは手作りチョコを渡せ」といっていたからだ。
 いつもどおり、出来合いのチョコでいいだろ、と鈴がいっても全く聞いてくれない。

 そんなこんなで2月12日。

 朝、目を覚ましたときから鈴は憂鬱だった。
 バレンタインデーまで残り少なくなるにつれて、馬鹿兄貴が言う回数がとみに増えてきたからである。今日も馬鹿兄貴が「チョコを作れ」といってくるのか、と思うと、鈴は憂鬱でしかない。
 しかし、その心配は杞憂だった。
 それ以上のニュースが恭介の元――いや日本中に舞い降りてきていたから。



『時をかけちゃった少女』



「数日前、ロシアの数学者がタイムマシンがあと3ヶ月以内で完成するといっていたときは、何を馬鹿なことを、とおもっていたが、まさか本当にというか、数日で完成するとは、おねーさんもびっくりだよ」
 感心したように来ヶ谷が言う。そう、『タイムマシン完成』のニュースが飛び込んできたのだ。
 日本中がこのニュース一色に染まっており、鈴たちが通っている学園でも、もちろん例外ではなかった。今、恭介、鈴、理樹、真人、謙吾、来ヶ谷の6人での帰っていたが、この話題が中心だった。
「もし、タイムマシンにのれたら、2039年になる前に、JFKの真相を暴きたいな」
「恭介、最近JFKでもみたの?」
 そんなことをいう恭介に理樹があきれたようにいった。
「真相を暴くとろくでもないことになりそうだから、やめておいたほうがいいと思うぞ…」
 とは謙吾。たしかに真相を暴くとロクでもなさそうな事件である、あれは。
「あたしは平安時代に行きたいな」
 みんなでどこの時代に行きたい、とか色々なことを話しあっていた。
 そんな、時だった。


 目の前に――何もないところから、車が突然あらわれたのは。


「うわっ」
 理樹のすぐ目の前を通り過ぎ車が急ブレーキをしてとまった。
「理樹、大丈夫か!?」
 と、鈴が理樹に呼びかける。
「う、うん、大丈夫だけど…、今…」
 理樹は車のほうをみつめていう。
「何もないところから車が出てきたように見えたんだけど…」
「理樹もそうか、あたしもそうみえた」
「鈴も?」
 不思議そうな顔をして理樹がいう。
「俺もだ、確かにさっきまで車なんてなかった」
「私もそう見えた、なにもないところから車が出てきた」
 恭介、来ヶ谷が同意し、続いて謙吾、真人も同意する。狐につままれたような気分で車をみていると、一人の女の子がでてきた。
 4歳くらいの、ショートヘアのよく似合ったかわいらしい女の子だ。手には一冊の絵本をもっていた。
 その女の子は鈴たちをみまわし――とてとてとかけだし――
「ぱぱこわかったよぉ」
 といって理樹に抱きついた。


「え……ええ!?」
 少女のその言葉に理樹が驚き、まわりも驚いた。
「理樹、お前子どもがいたのか」
「少年、娘がいたのか、お姉さんに内緒で!」
「いないから!」
 そう理樹が反論すると、
「ぱぱ。どうしてそんなこというの?」
 そういって、うるうると涙目で少女は理樹をみつめた。その様子に理樹はなにもいえなくなる。
「それにこの少女、みればみるほど少年にそっくりだぞ?」
その言葉で、皆がその女の子をみつめた。
「おお、たしかにそっくりだな」
 鈴のその言葉にみんなが同意した。
「で、でも僕、こんな子しらないし……あ、そうだ、パパの名前、いってみて」
 きっと人違いだろう、そう理樹は思って少女にきいた。
「なおえりき」
 しかし、その期待もむなしく少女はそうこたえた。
「ほら、やっぱり理樹くんの娘さんじゃないか、さぁはけ、はけ」
「ほんとにしらないんだって!」
 そう理樹がとまどっていた時である。
「くるがやさん、パパいじめちゃだめ」
 そう少女がいったのは。
「おや、あったことあったかな?」
「なんどもある…忘れちゃったの?」
 そう少女が言う。
「え?」
「来ヶ谷、この少女にあったことあるのか?」
 今まで静観していた恭介がきいた。
「いや、あったことないが……ひょっとして他にもあったことある人この中にいるか?」
 そう来ヶ谷が少女に聞くと、
「うん、りんさん、きょーすけさん、まさとさん、けんごさん、みんなあったことある」
 少女はそう答えた。
 その言葉にみんなが顔をみあわせる。
 全員が全員この少女にあったことがなかったからだ。
「まさか」
 そんな中恭介は一人、そういって行動を開始した。

 20分後。

「間違いなく、この少女は未来から来た」
 そう恭介は結論付けた。
「車の中にあるものに、今の時代にはないものがあった。それにこの車、少し運転してわかったんだが、人とか障害物が先にあったら自動的に止まるようになっている、この機能をもった車は今の時代開発されていない、つまりこの少女が未来から来た可能性はかなり高い」
「で、それで僕の娘ってこと?」
「みたいだな」
 そう恭介が言うと「うん」と少女――名前はさっき聞いたところ理沙というらしい――はうなづいた。
「タイムマシンが完成した日にこんなことが起こるとはな」
 謙吾がそういって感心した。
「どうして、理沙はこの時代にきたんだ?」
 恭介がきく。
「えほん、くるまのなかにとりにいったらへんなスイッチがはいっちゃったの」
 理沙はそういったあと。
「ごめん、パパ」
 そういって理樹に謝った。
「うーん、僕に謝ってもしょうがないんだけどね」
「?」
 理沙はわけがわからない、といった表情をした。きっと理沙にとってはいつでもパパはパパなんだろう。
 たしかにタイムマシンの概念を少女が理解するのは難しいのかもしれない。
「となると、やることは一つだな…理沙くん、ママの名前教えて…」
「来ヶ谷さん、その質問は絶対やめて!」
 真っ赤な顔をして、理樹がいう。
「どうした、少年?将来の伴侶がだれかしりたくないのか?」
「知ったら僕どうすればいいのさ!その人とあったらどうすればいいのかわからなくなるよ!」
「気合だ、少年」
「無理だよ!」
 そう理樹は必死に否定する。
「今から知っておけば、もっと仲良くなれるんじゃないか?」
 鈴がいう。
「そういう問題じゃないよ!」
「ほら鈴君もそういっているじゃないか、さぁ、理沙くん、ママの名前を」 
「まて来ヶ谷、その質問はしてはいけない」
「そうだよね、恭介」
 安心したように、理樹はいった。
「ここは一つ、俺たちがママをさがさないと」
「は?」

 そして、鈴たちは、校内でママを探しを開始した。謙吾と真人に、タイムマシンの見張りをさせ、残りの5人でママ探しを開始した。もっとも理樹は「ほ、ほんとに探すの!?」といって、未だにとまどっていたが。
「ママに早く会いたい」
 そう理沙がつぶやいた。
「おお、早くあわせてやるぞ」
 理沙は知り合いもしくはママがいたら呼びかけるようにしている。ちなみに”ママ”と呼ばれなかったことで、鈴と来ヶ谷はママではないらしい。
「大体、この学園の中にいるの?」
 理樹が当然の疑問を口にする。
「もしいなかったらとんでもないろくでなしに少年はなることになる」
「そうだな」
 恭介が同意する。
「はい?」
 そんな理樹の態度に恭介はため息をついた。
「お、あそこにいるのは西園じゃないか、おーい西園」
 恭介が呼びかけると、美魚がよってきた。
「なんでしょう、みなさん」
「おい、理沙、この人がママか?」
「んーーん、違う」
「………恭介さんそれはなんの冗談ですか?…笑えませんよ?」
「あー西園女史、実はな」

 事情を全員で説明する。

「なるほど、そういうわけですか」
「ま、そんなわけで全員で探しているんだ」
「しかし、本当に理沙さんは直枝さんにそっくりですね」
 感心しながら美魚はいう。
「これはひょっとしたら、直枝さんの処女懐胎、という展開もあるかもしれません」
「ないよ!それは!ってか僕、何者だよ!」
「冗談です――ではちょっと真面目に考えて見ましょう、理沙さん、その本見せてください」
「はい」
 美魚がそういうと素直に理沙は本を手渡した。
「やっぱりそうですか」
「その絵本で何かわかったの?」
 理樹がいう。
「この絵本、よく出来ていますが自作のものです」
「え、そうなの!?」
「というと、容疑者は一人に絞られるのではないですか?」
 その言葉で皆は顔を見合わせた。
「小毬ちゃんか…小毬ちゃんはかわいいし、理想の相手だな」
そう鈴が納得したように言う。
「そうだな、理想の相手だな」
 恭介が鈴と、理樹二人をみつめ「なぁ鈴?」と、鈴のほうを向いてそういった。
「とりあえず、いってみよう」
 そう来ヶ谷が皆を促した。


 小毬をさがして数分後。
「あれ?みんなどうしたの?」
 そういって、小毬がよってきた。
「あ、かわいいね、この子」
 そういって理沙を抱きしめた。
 各人思い思いに小毬をみつめていた。
「この子、どうしたの?」
 ほおずりしながら、小毬がきく。
「理樹の娘だ」
「…………………………………………………………え?」
 そういった瞬間、小毬の周りの空気が凍りついた。
「も、もういっかい鈴ちゃん、いってくれるかな」
「理樹の娘だ、小毬ちゃん」
「り、りりりりりりり、鈴ちゃん、いつの間に理樹くんとそういう仲になったの!?」
 いつものんびりした小毬が鈴を殺しかけないような勢いで、つめよった。
「ち、違う、母親はあたしじゃない」
「じゃあ、誰!?ゆいちゃん!?みおちゃん!?」
すごい勢いで二人に詰め寄る。
「違うぞ、おちつけ、小毬ちゃん」
 あの来ヶ谷ですら、こうなっているあたりからして、彼女の迫力は押して知るべし、である。
「母親は小毬ちゃんだ」
「え、えええええええ!?わ、私ま、”まだ”理樹君とそんな関係に、そんなかんけーじゃ、関係じゃ」
 そういって顔を真っ赤にして小毬は気絶した。


20分後。

「さっきまでの私はみなかったことにしよう」
 そういって小毬はまわりを指差し――、
「みられなかったことにしよう」
 そういって自分を指差した。
「無理だ、コマリマックス」
「ふぇ〜ん」
「しかし、小毬ちゃんでもなかったか」
「うん。こまりちゃんは、いつもえほんとか、おかしとか、くれるやさしいひと…だけどさっきちょっとこわかった」
 そう理沙はいった。
「ふぇーん、だっていきなりだったからびっくりしたんだよぉ」
 今は事情を聞いてとりあえずは落ち着いていた。
「やっぱりこの学園にはいないんじゃない?」
 とは理樹。なんとしても理樹ははやく終わらせたかった。
「少年、何を言っているんだ、まだまだこれからだ、調査は」
 そう、来ヶ谷がいきこんだときである。「あ、おばちゃん」と、理沙がいったのは。
 皆で理沙のほうをみると、寮母さんがいた。葉留佳と何か話していた。
「理沙は寮母さんとも知り合いなのか、理樹か理樹の奥さんがこの学園の先生にでもなっているのか?」
 そう鈴がいう。理沙は、とてとて二人にむかっていき――、そして転んだ。寮母さん葉留佳が振り返る。
「おやおや、大丈夫かい?」
「大丈夫デスか?」
 そう二人が呼びかける。鈴たちも理沙にかけよった。
「うん、大丈夫だよ、おばちゃん」
 そういった、理沙は、”葉留佳”のほうを向いていた。
「お、おばちゃん、私がデスか!?」
「うん、おばちゃん」
 そう、悪意のかけらもなく理沙いう。
「ガーン、あ、姉御?私そんな老けてみえますかネ?」
「……」
「いや、ちょっと無視しないでくださいヨ、姉御?」
「いや、これは」
「意外な」
「展開だね〜」
 来ヶ谷、美魚、小毬がそういった。



 場所はかわって。風紀委員室。
「それにしても今日はほんとありがと、手伝ってもらって」
「のーぷろぶれむです、佳奈多さん、困ったときはお互い様、ですよ」
 そういってクドが微笑む。
 佳奈多が風紀委員の数人がが風邪をこじらせ数日学校にこられない状況になってしまい、困っていたところ、昨日の夜、クドが手伝いましょうか、といってくれたのだ。
 最初は断ったが、クドの必死さに負けて手伝ってもらうことにした。
「佳奈多さんはもう少し周りに頼ってもいいと思います」
「うん」
 それは来ヶ谷にもいわれたことがあった。手伝ってもらったが確かにこういうのもいいのかもしれないな、と佳奈多はおもった。
 こうして"自分"というものはかわっていくのか、案外心地いいかもしれない、そう佳奈多はおもった。
「そういえば、明後日はバレンタインですね」
 ふとクドがつぶやいた。
「佳奈多さんは誰かに渡すんですか?チョコレート」
「…そんな相手いるわけないじゃない」
 そういいながら、彼女の頭の中には一人の男性が浮かんでいた。
 でも彼にチョコレートは渡さないだろうな、とは思っている。
 初めて好きになった人なんだけど、葉留佳がいるので遠慮している相手だ。
(ま、あきらめているのは慣れているし)
 それだけを話すと、静かな空気が流れた。
 この時間が一番の至福ね…。
 佳奈多がそうおもっていたときだった。ドタドタと誰かが走ってくる足音がしたのは。
「やっぱりここにいたか!」
「来ヶ谷さん、何かあったんですか?」
 静寂なときをぶち壊され、思わず言葉遣いが少し乱暴になってしまう。
「理沙君、この人だろう?」
「うん」
「……その子、どうしたんですか?」
 そういえば、この前も子どもがこの学園に迷い込んできたことをふと思い出した。
 そうおもっていると、その少女は佳奈多のほうによってきて――
「ママ〜」
といって、佳奈多に抱きついた。
「え?え?え?え?」
「か、か、か、佳奈多さん、子どもがいたんで…」
「いるわけないじゃない!来ヶ谷さんこれはいったい何の冗談ですか!?」
 そう佳奈多がおこったときである。
「理沙、理沙!?」
 そういって、教室に誰かがはいってきたのは。


 20分後。

「信じられるわけないでしょう!」
 なんどいってもわからない佳奈多に皆うんざりしていた。
「これは事実だ、信じろ」
 と誰もがいうが聞く耳をもたない。ちなみにクドはとっくに納得していた。
「大体どこの誰だかしりませんが、あなたもよくこんな冗談につきあいますね!?」
 そういって、さっき風紀委員室にはいってきた女性にいう。
「自分に向かってあなたって言い方もないと思うけど、さすが私ってところかしら」
 そういいながら、さっき風紀委員室に入ってきた女性――未来からきた佳奈多――はわらった。タイムマシンを誤作動させた娘を迎えに来たのだ。
「やれやれ、佳奈多くんは強情でこまる。タイムマシンが完成したニュースは君も知っておろうに」
「だからといってこんなこと信じられますか!」
「……以前からいっているだろう?もう少し余裕を持って行動したらどうだと」
「これはそういう問題じゃありません!大体私は直枝理樹のことなんか、好きじゃ――」
 理樹のほうをみながらそこまで言って言葉につまる。みると、少し顔が赤くなっていた。
「お姉ちゃん、理樹君のことが好きだったんですネ」
「ち、ちがうわよ、葉留佳。私は――」
「葉留佳、騙されちゃダメよ。この人強情でなかなかそれを認めようとはしないけど事実だから」
 というのは未来佳奈多。
「あんたがそれをいうか」
 と、恭介がつっこむが華麗にスルーされた。
「大体、私って言うなら証拠、みせてください」
 そう佳奈多がいうと、未来から来た佳奈多は少し考え、ポケットから鏡をとりだした。
「そんな鏡いくらでもこの世にあるでしょう?そんなんじゃ証拠になりませんね」
 そう、佳奈多がいうと、未来佳奈多はにやっと微笑んで――にっこりと微笑みなおし、鏡に向かってこういった。

「おはよう、理樹………はぁ…」

 そういって鏡をまたしまう。その行動にまわりのほとんどが固まった。
「理樹、みんなどうしたんだ?」
「いや、僕もわかんない」
 そういって二人は顔をみあわせる。理樹と鈴だけ、この行動が何を意味しているのかわからなかった。
「いや、これはやられますね」
「ああ、全くだ」
「これは反則ですヨ、お姉ちゃん」
 納得する数人を横目に佳奈多は口をぱくぱくさせていた。
「じゃあ、もう一ついきましょう」
「いかなくていいです!納得しました!」
 そう、佳奈多が顔を耳まで真っ赤にして言う。
「さっきよりちょっとソフトだから安心して」
「ソフトでも何でもダメです!」
 いつもは物静かな佳奈多が激しく言い争っていた。
「こんなあせったお姉ちゃん、はじめてみましたヨ」
「全くだな」
 そういって葉留佳と、来ヶ谷がうんうん、とうなづきあっている。
「あまり私に逆らうと、今度は生徒手帳をまわりにみせながらさっきのことをやりますよ?」
 その言葉に佳奈多の顔が一気に青ざめた。
「まぁからかうのはこの辺にしましょうか。それと、過去の私、素直にならないと、他の人にとられるから、素直になりなさい。私と理樹が結婚する未来はこの時点では確定していないんだから」
「どういうことデスか?」
 意味がわからず葉留佳が聞く。
「その辺のことは西園さんにでも聞いて頂戴、私なんかよりその辺のこと詳しいと思うから、お願いするわね」
「私に任せないでください」
 美魚のそんな様子をみて未来佳奈多は微笑む。
「じゃあね」
 そういって、未来佳奈多はさっていった。


「葉留佳、塩もってきて、塩!」
 去ったのを確認し、佳奈多が叫ぶ。
「お姉ちゃん、その前に聞いておきたいんだけど、理樹くんの事すきなの?」
「…ええ…」
 未来佳奈多がまた現れるかもしれない、そうおもうと、反論できなかった。
「ごめん、葉留佳」
「謝る必要、ないデスよ、もっと早く言ってほしかった気はしますケド。あ、そうだ、みおっち、さっき未来のお姉ちゃんがいっていたこと説明してくれる?まだ確定していないとかそういうの」
 そういって、葉留佳は美魚に説明をお願いした。
「簡単にいいますと、未来は一通りではないということです。理沙さんがいる世界では、直枝さんと二木さんが結ばれたみたいですが、たとえば、ここで直枝さんが違う人、たとえば鈴さんを結婚相手に選んだとしましょう。でも直枝さんが二木さんを選んだ未来が消えるわけではないのです。別次元として確固として存在しています。そんな感じで色々な世界が存在しているんです。小説とかではたいていこのような仕組みになっていますね。『また逢えたらいいね』という小説でも――」
「あーなんとなくわかったデスよ」
「ここからがいいところなんですが」
「とりあえず西園女史は自重しろ。つまり、理樹くんが必ず、佳奈多くんを選ぶというわけではないってことだろう」
「まぁそういうことです……まぁ可能性は高いみたいですけどね……まったく、もてる人は大変ですね」
 そういって美魚は理樹をみつめた。
「え?え?」
 その美魚の言葉に理樹は戸惑った。
「それはともかく、理樹、悪かったな、変な思いをさせて」
 そういって恭介が理樹に謝った。
「謝るくらいならこんなことしないでよ、恭介」
 理樹があきれたようにいう。
「まぁこっちにも色々事情があるんだよ」
 そういって恭介は鈴をみつめた。
 その言葉を最後に、全員、解散した。




「理樹は二木さんを選ぶのか」
 鈴は寮にもどってからそうつぶやく。
「理樹は、二木さんを選ぶ…」
 そうなんどもつぶやいていた。
 鈴の中でいいようのない、感情がうずまいていたから。
(あたしたちはずっと一緒にいるはずなのに…)
 理沙から聞く限りまわりのみんなはずっと一緒にいるらしい。理沙がクドをいれた全員をしっていたのがその証左だ。
 でも――、何か納得出来なかった。
『理樹とこれからもいっしょにいたいのなら、今年のバレンタインは手作りチョコを渡せ』 
 馬鹿兄貴のこの言葉がよみがえる。
「とりあえず」
 そういって、立ち上がる。
「作ってみるか」
 そう鈴はつぶやいた。
 ――なぜだかそうしないといけない気がした。

 どこからともなく、『ミッション・コンプリート』そう恭介の声が聞こえたような気がした。



おまけ。
「そういえばお姉ちゃん?」
「ん?」
「生徒手帳って何ですか?」
「忘れて、ほんとに忘れて…」
「ってかお姉ちゃん、すごい人になってましたね…」
「それもほんとに忘れて」

 変わるのが心地よい、今日そうおもったが、あれが未来の自分だとおもうと、佳奈多はため息しか出なかったとか。


おしまい。
参考資料:http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1090139.html


[No.168] 2008/02/21(Thu) 02:58:00

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