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No.204へ返信

all 第6回リトバス草SS大会(仮) - 主催 - 2008/03/26(Wed) 23:51:21 [No.201]
頭が春 - ひみつ@ちこく - 2008/03/29(Sat) 04:38:49 [No.213]
それはとても小さな春 - ひみつ 甘@遅刻はしたけど間(ry - 2008/03/29(Sat) 02:03:12 [No.212]
春秋 - ひみつ@遅刻 - 2008/03/28(Fri) 23:46:30 [No.211]
葉留佳の春の悲劇 - ひみつ - 2008/03/28(Fri) 23:27:42 [No.210]
最後の課題 - ひみつ - 2008/03/28(Fri) 22:05:49 [No.209]
ほんの小さな息抜き - ひみつ - 2008/03/28(Fri) 21:58:39 [No.208]
宴はいつまでも - ひみつ - 2008/03/28(Fri) 21:57:58 [No.207]
はなさかきょうすけ - ひみつ - 2008/03/28(Fri) 21:57:57 [No.206]
春の寧日 - ひみつ - 2008/03/28(Fri) 21:56:39 [No.205]
春の朝 - ひみつ - 2008/03/28(Fri) 17:14:22 [No.204]
少年、春を探しに行け。 - ひみつ - 2008/03/27(Thu) 21:20:32 [No.203]
感想ログとか次回とかー - 主催 - 2008/03/30(Sun) 01:35:31 [No.216]


春の朝 (No.201 への返信) - ひみつ

 雀がどこかで鳴いている。窓から朝日が差し込んでいる。遠くの踏切の音が、澄んだ空気を伝ってここまでやってきた。朝だ、起きなきゃ。



 ゆっくりと身を起こして、ベットから抜け出す。少し寒いけど、これに負けると遅刻は確定、風紀委員長が遅刻だなんて学校中のお笑い種だ、ぐいっと背を伸ばし、深呼吸した。肺が冷たさに驚いて、目が覚める。
 さて、そんなことをしつつ隣を見れば、ルームメイトは夢の中、すやすやとした寝息がここまでやってきて、とても和む。

 ぼーっとしている彼女を、ぼーっと見つめる。私が過ごす時間の内、最も静かで最も安心できる時間。カチリコチリと時計の音に、くーすかくーと小さな寝息、静かに時間が流れていく。

 これがないと、私の朝ははじまらない。
 葉留佳だの葉留佳だの葉留佳みたいな問題児を追いかけてばかり居ると、少しばかり荒んだ気持ちになってしまうから……うん、前みたいなのだったら別にいいんだけれど、これからは少しだけ……少しだけ丸くならないといけないから。
 そんな事を思ってため息を一つ、私が丸く? 自分で言っておいて想像がつかない。
 ひとまず、悩みをためておくとろくなことがないので、葉留佳あたりをこきつかって鬱憤を晴らすことにしよう。これで少しは丸くなれる。

 そんなことを思いつつ、カーテンをまとめて窓を開ければ、薄い青空が視界に広がって、春風が静かにカーテンを揺らす。木では蓑虫も揺れている、春の景色。うん、目が覚める。

 今日もいい天気、せっかくだから、今の内に校庭を掃除してしまいましょう。
 これからは終業式、始業式、そして入学式と行事ラッシュ、あまりみっともない学校を見せるのは風紀委員長としては認められない。
 ブロークンウィンドウの理論にのっとって、新入生は綺麗な校舎で迎えてあげないと、後々風紀の乱れに繋がるのだし。 
 まぁ作業要員としては、葉留佳あたりが暇しているだろうから適当にとっつかまえて、あとは風紀委員の面々と、他に、風紀委員会から注意を受けている学生が6……7……8人、奉仕活動ということで作業してもらって、クドリャフカにも手伝ってもらいましょう。

 そこまで考えて、ふと彼女の顔を見る。
 私が一番頼りにしている、一番頼りない……友人。
 ほわんとしたその顔は、毎日見ても何故か飽きることがない。



 夢の世界のクドリャフカ、あなたはどんな夢を見ているのかしら?

 犬たちと遊んでいる夢? みんなと遊んでいる夢? 

 それとも……もしかして私といる夢をみてくれているの?



 私がいることなど気づきもしない、私が考えている事なんて知らないだろう。彼女は幸せに眠り続ける。
 まるっきり無警戒な顔で、たまに寝言を言ったりしながら、朝日に照らされている小さな少女。誰を怖がる事もなく、誰を傷つける必要もないその顔は、とても純粋でとても暖かくて……とても羨ましい。
 私には、きっとこんな寝顔はできない。寝ているときですら、何かに追われている……何に? そんなの知るわけないじゃない。
 葉留佳と仲直りして、これできっと私たちは解放される……そう思ったし、事実荷物から重さはなくなった。
 でも、重さはなくなっても、荷物の量は変わらなかったのだ。

 学校の規律を守る、冷厳な風紀委員長。それが私。変わることがない、私。
 結局の所、これが私の立ち位置なのかもしれない。それを楽しむか、運命を呪うかは私次第。

「……楽しめるかしらね、あなたのように」
 私の問いかけにも気付かず、静かに眠るクドリャフカ。私があなたに頼っている事なんて全然知らないでしょう?
 でもこれからも知らないで欲しい。私は、きっとそれを知られると、あなたに頼れなくなるから。私が素直になれるまで、それまでは……お願い。
 




 日射しが強くなる、頬が熱い。寮の中では、生徒の足音が響き、外からは通勤する車の音が聞こえてくる。
 そろそろ幸せな時間もおしまい。もう起こさないと……私がクドリャフカの寝顔に気を取られて遅刻したとかなったら、葉留佳にいいようにからかわれてしまう。

「クドリャフカ、朝よ、起きなさい」
 それはとても惜しい気持ち、こんな寝顔を壊すのはとても嫌。
「わ……ふ〜」
 小さな声と、のんびりとした動き。残念だけど、私があなたに頼るのはまた明日。
「たまには一人で起きなさいクドリャフカ。子どもじゃないんだから」
 それはきっと嘘、クドリャフカが一人で起きられるようになったら、寂しいのはこっちにいる大きな子ども。
「わふ……佳奈多さん?」
 クドリャフカの目が覚める。ぽやんとした瞳がこちらを見つめる。
「佳奈多さんじゃないでしょう……ほら、起きて着替える、歯ブラシ、寝癖を直しなさい、忘れ物はない? あーもう、たらたらしないっ」
「わ、わふっ!?」
 飛び起きて制服に向かうクドリャフカ、そんな彼女のベットを直しながら、私は大仰にため息をつく。

「こんなんじゃ、いつまで経っても子どものままよ? ちゃんと独り立ちできるようになりなさい」
「わふ……申し訳ないのです」
 縮こまるクドリャフカ、でもごめんなさい、今の言葉は私への言葉、。
「でも、いつか佳奈多さんに頼られるような素敵なれでぃーになれるよう頑張るのです!」
「無理ね」
「わふっ!? 即答されたですっ」
 そう、無理。だって、もう私はあなたに頼ってばかりなのだから……それに、私は素敵なレディーなんかじゃない、ただの意地っ張りな子どもなのだ。



 騒がしい朝は今日も過ぎていく。それはとても幸せな朝、毎日続く幸せな朝。
 そして、私は、こんな日常がずっと続く事を祈っているのだ。
























「ところで佳奈多君」
「なんでしょう?」
「最近遅刻が増えていると聞いたのだが、体調でも悪いのかね? それとも朝帰りか何かかな」
「来ヶ谷さんが詮索するような事は何もありません。たまたまです、以後気をつけます」
「あと、昨日葉留佳君が君の寝顔を盗撮すると言って出て行ったきり戻らないのだが……」
「そういうのを聞いているんなら止めて下さい。葉留佳は星を見て寝たいそうなので、二木特製ハンモックで外の木にぶらさがっています」
「……そうか、見ながらではなく見て、か。後で回収するとしよう」
「それでは」
「うむ、では」
 


[No.204] 2008/03/28(Fri) 17:14:22

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