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all 第7回リトバス草SS大会(仮) - 主催 - 2008/04/09(Wed) 22:56:46 [No.217]
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幸多き妄想の海にて少女はかく語りき。 - ひみつ - 2008/04/11(Fri) 21:52:10 [No.227]
ただ「生きる」ということ - ひみつ@容量越えのため厳しくお願いします - 2008/04/11(Fri) 21:48:46 [No.226]
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恭介の一問一答 - ひみつ - 2008/04/11(Fri) 03:53:14 [No.224]
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個人の力は無力に近し - ひみつ - 2008/04/10(Thu) 23:03:31 [No.222]
棗家スタイル - ひみつ - 2008/04/10(Thu) 19:19:51 [No.221]
シアワセの在り方 - ひみつ - 2008/04/10(Thu) 11:56:52 [No.220]
[削除] - - 2008/04/10(Thu) 11:49:33 [No.219]
感想ログと次回と - 主催 - 2008/04/13(Sun) 02:33:14 [No.236]


棗家スタイル (No.217 への返信) - ひみつ


「理樹」

突然、鈴が話しかけてきた。

「何? 鈴」
「こいつは何を言っているんだ?」

鈴が教科書の文を読みあげる。

「この文章を読み、皆さんにも人助けの精神をもっていただけると『ツラい』です」

人を陥れろってこと!!?

「ちょ、ちょっと貸して、鈴!!」

鈴から教科書を借り、読み返す。

『この文章を読み、皆さんにも人助けの精神をもっていただけると"幸い"です』

あれ? 普通だ。

「あれ、鈴。どこがおかしいの?」
「どこって、そりゃ作者が人助けする心を持つことを望んでないとこだろ。なんだ、正当なことなのか?」

ここで『うん』って答えたら鈴、信用しちゃうんだろうな。

「鈴、これ『ツラい』じゃなくて『サイワい』って読むんだよ」
「なに!? そうなのか!!?」

鈴は心底驚いたようだった。

そこへ……

「おう理樹、鈴。なにやってんだ?」

真人が来た。

「真人! これを読め!!」
「あ? なんだ急に」
「いいから読め!」
「んだよ、え〜っと? この文章を読み、皆さんにも人助けの精神をもっていただけると…え〜っと、これは謙吾に教えてもらったんだ、確かな〜」

緊張の一拍。

「そう! 『シアワい』だ!!」

微妙におしい気がするけど全然違う!!!

「真人、これ『サイワい』って読むんだけど…」
「なに!?」

驚きの表情を見せた後……。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーー!! また謙吾にだまされたーーーーーー!!!」

雄たけびをあげる。

「謙吾ーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

謙吾の名前を叫びながら教室を出て行った。

「えっと、よかったね、真人も漢字読めなくて」
「うれしくない」

確かに、嬉しくないだろう。


「じゃあ、他の人達にも聞いてみる?」
「そうだな」

僕は携帯で皆を呼び出した……。





「なに!? 鈴、こんな字も読めないのか?」

一番驚いたのは恭介だった。

「お前、俺の妹だったらこれくらいの字読めないとダメだろう」
「うっさい、バカ兄貴。じゃあお前は読めるのか?」
「もちろん」

そういって恭介は得意げに言う。

「これは『ツラい』だ」

鈴と同じ間違いをしたぁーーーーーー!!!

絶対棗家の人達全員『サイワい』を『ツラい』って読むよこれ!!!!

なんか鈴が落ち込んでる!!

「恭介、これ、『サイワい』だよ」
「なに!? そうなのか!!?」

鈴と同じ反応……。

鈴がさらに落ち込んでる!!!

「なんだ、恭介氏に鈴君。こんな字も読めないとは、まだまだだな」

横から来ヶ谷さんが言う。

「見分け方は『辛い』は『立』、『幸い』は『土』だ」
「なに!? そうなのか!!」

二人で同時に言う。

そして鈴。

「ん? ちょっとまて、『立』も『土』も両方に入るぞ?」

鈴が言う。

「…ホントじゃないか!!」

恭介が賛同。

「『辛い』には下の部分に『土』を逆さに向けたものが、『幸い』には真ん中に『立』が入っているじゃないか」

確かに入ってる!!!!

「む、漢字の上部分に『立』が『辛い』、『土』が『幸い』だ」
「わかりづらい」

え、鈴これわかりづらいの!?

「あぁ、俺もこの覚え方はまったくわからないぜ……」

恭介まで!?

「もう少し良い覚え方はないか?」
「いや、今のが多分一番覚えやすいと思うんだけど」
「もっといい覚え方があるはずだ」

そういって恭介は語りだす。


「ある日、立(りつ)君と土(つち)君がいました。

立君と土君はとても仲の良い友達でした。

ある日、立君は土君に『ひとつになろう』と提案しました。

ですが土君には実は土(ど)さんという彼女がいたのでした。

土君が立君の提案を受け入れ、土さんと別れてめでたくひとつになったのが『辛い』、

土君が立君の提案を受け入れず、土さんとひとつになろうとしたところを立君が無理やり間に割り込んできたのが『幸い』だ。

どうだ、良い考えだろう?」


なんか凄い画期的な考え方だ!!!
なのにかなり複雑だ!!!!

「わかりずらいよ恭介!!!?」
「…そうか!?」

なんか驚いている。
自信があったんだろう。

「立(りつ)×土(つち)…案外、いけるかもしれませんね…」

なんか西園さんがつぶやいてるし!!!?

「二人とも一文字ずつですし、覚えやすい漢字なので評価は高くもらえるかもしれません…」

ダメだ!! 変なスイッチ入ってる!!!!
ていうかこの会話アイドル目指すとかそういう会話じゃないからね!!!?

「それならこういうのもあるんじゃないか?」

西園さんにツッコむ前に鈴が話しだす。

「横にしたらバランスが良いのが『幸い』、悪いのが『辛い』」
「鈴、それいちいち横にしないとわからないってことじゃ……」
「もちろんだ!」

ダメじゃん!!!!
ってなんで自信あり気!?
だいたい横にするぐらいなら普通に見たほうが早いよ!?

「じゃあこいつはどうだ?」
「…どんなの?」


「あるところに、土(つち)王国と土(ど)王国がありました。

ふたつの国は友好関係にあり、国と国の境目にある谷を二本の橋で繋ぎました。

そして、それから友好関係が続いていったのが『幸い』、

友好関係は保っていたが土(ど)王国が核兵器実験をしていて、誤って土(つち)王国に核を落としてしまったほうが『辛い』だ。

これならどうだ?」


確かに友好関係続いてたら『幸い』だし誤って核落としたら土(つち)王国も土(ど)王国も『辛い』だろう。

「ってその考えなんか悲しいよ!!!」
「なに、これもダメなのか……」

なんか心底残念そうだ。

「これならどうだ!」

今度は鈴。

「180°回転させて似ていたら『幸い』、違ったら『辛い』」

確かに180°回転させても『幸い』には見えるし『辛い』は見えない。

「いちいち回転させないとわからないってことじゃ……」
「うん、そうだ」

ダメじゃん!!!
そもそもなんで向きにこだわるの!?

「もう普通に漢字の上部分が『立』なら『辛い』で『土』なら『幸い』でいいんじゃない?」
「それで覚えられたら誰も苦労しない」
「いやまぁ……」

ちょっと黙り込んで、

「それじゃあ、二人で出した案の中で覚えやすいのを選べば?」

多分、来ヶ谷さんの言うような覚え方には戻ってくることはないだろうし、
このまま討論されるとこっちまで頭が混乱しそうだ……。


「そうだな、よし。鈴、どれが良かったと思う?」
「う〜ん…。難しいな」
「皆、どれが覚えやすかった」
「う〜ん……」

皆でうなり始める。

ってなんで皆真剣に考えてるんだろう……。

「いっそのこと新しいのでこういうのはどうだ?」

来ヶ谷さんが提案を出す。


「兄が積み木をしていました。

兄はしばらくしてトイレに行きました。

兄想いの妹はその積み木の続きをしてあげようと思いました。

そして完成したは良いが勝手に完成させたことで兄に怒られて泣いたほうが『幸い』、

失敗して『こんなんできるかーーー!!』と蹴りを喰らわして積み木を壊してしまって(『辛い』の一角目相当。壊した欠片)兄に思いっきり怒られて泣いた方が『辛い』」


なんかどっちに向かっても悲しい!!!!?

しかも兄と妹って、来ヶ谷さん恭介と鈴を思い浮かべてない!!?

「それだ!!」

恭介と鈴が二人同時に言った。

「え、いいの!!!?」


結果、二人の意見が一致したため、(彼等だけの)『幸い』と『辛い』の区別の仕方が決まってしまった。


その翌日。


「理樹」

鈴が話しかけてくる。

「怒られて泣いたほうが『幸い』だったか?それとも怒られたて泣いたほうが『辛い』だったか?」

どっちも一緒じゃん!!!

「理樹」

今度は窓の方から恭介が声をかけてくる。

「怒られて泣いたほうが『幸い』だったか? それとも怒られて泣いたほうが『辛い』だったか?」

いや、同じだから!!!
ていうかやっぱり棗家はそういう種族なの!!?

「ん〜、なんかややこしいな、この覚え方」
「そうだな……」

今頃!!!?

「ッ!鈴、見ろ!」

『幸』と『辛』が書かれた字を指差す。

「漢字の上部分に『土』があると『幸い』、『立』があると『辛い』なんじゃないのか!?」
「ホントだ!」

えええええ!!!
昨日はそれで『わからない』って言ったよね!?

「大発見じゃないか、なぁ?理樹!!」
「え、いや、まぁ……」

まぁ、二人が納得したのならツッコむのは止めておこう。
ここで『昨日も出た』なんていえばきっと彼等はまた悩むだろう。
『昨日選ばなかったんだから覚えにくいんだろう、別の案を考えよう』なんてことになってまた変な案が飛び交うに違いない。

そんなことになれば、また恭介達は混乱してしまう。

それを避けるためには、なにも言わないでおくべきだ……。

「もっと簡単にすればだな……」

恭介が再び口を開く。

「上が『土』で『幸い』痛くなかった。もし上に人が『立』っていたら辛かっただろうな」
「名案だ、さすがあたしの兄だ」
「だろう?」

恭介の言葉に鈴が共感している…。

あぁ、駄目だ。
僕が何も言わなくても、恭介達はどんどん先へ進んで行ってしまう。
もちろん、間違った方向へ。

もう覚え方なんてどうでも良くなってきた。
大体、なんで漢字二つの見分け方だけでこんなに時間をかけてるんだろう。
っというかもう一番簡単な覚え方が昨日の初めに出てたのに……。

僕は恭介と鈴が次々に覚え方を出している場を後にして、ジュースを買いに行った……。





それから一週間が経って、ようやく二人は『漢字の上部分の違い』の覚え方に戻ってきた。
そのころにはもう、覚え方を使わなくても、ひと目で『幸い』と『辛い』の区別がつくようになっていた。


一週間で漢字二つ……。

小さかった頃は、もっと素直に覚えられていたはずなのに……。

高校生にもなると、余計な事を考えてしまうのだろうか。

いや、恭介達が特別なだけなんだろうな……。


きっと恭介達はこれからも、一週間に漢字を二つずつ覚えていくのだろう。

あぁ…なんか恭介達が哀れに見えてきたよ……。

でも、どんな些細な事にも真剣に取り組む姿勢は、僕は凄いと思う。

ただ、その姿勢が凄いだけで、取り組む対象はちっぽけなものなんだけど……。

きっと恭介達は、これからもそんな生き方をして行くのだろう。

それが『棗家スタイル』なのだから……。


[No.221] 2008/04/10(Thu) 19:19:51

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