第7回リトバス草SS大会(仮) - 主催 - 2008/04/09(Wed) 22:56:46 [No.217] |
└ 猫は笑顔を求める - ひみつ 初、甘、遅刻 - 2008/04/12(Sat) 16:48:51 [No.235] |
└ ある現実。 - ひみつ@初 - 2008/04/12(Sat) 14:30:58 [No.233] |
└ 私の幸せ - ひみつ@ちょいダーク - 2008/04/12(Sat) 05:43:01 [No.232] |
└ 幸薄い - ひみつ@ぢごく - 2008/04/12(Sat) 05:20:04 [No.230] |
└ 願い事ひとつだけ - ひみつ - 2008/04/11(Fri) 23:01:20 [No.229] |
└ 儚桜抄 - ひみつ - 2008/04/11(Fri) 22:15:05 [No.228] |
└ 幸多き妄想の海にて少女はかく語りき。 - ひみつ - 2008/04/11(Fri) 21:52:10 [No.227] |
└ ただ「生きる」ということ - ひみつ@容量越えのため厳しくお願いします - 2008/04/11(Fri) 21:48:46 [No.226] |
└ 幸福論 - ひみつ - 2008/04/11(Fri) 21:05:59 [No.225] |
└ 恭介の一問一答 - ひみつ - 2008/04/11(Fri) 03:53:14 [No.224] |
└ [削除] - - 2008/04/11(Fri) 03:51:42 [No.223] |
└ 個人の力は無力に近し - ひみつ - 2008/04/10(Thu) 23:03:31 [No.222] |
└ 棗家スタイル - ひみつ - 2008/04/10(Thu) 19:19:51 [No.221] |
└ シアワセの在り方 - ひみつ - 2008/04/10(Thu) 11:56:52 [No.220] |
└ [削除] - - 2008/04/10(Thu) 11:49:33 [No.219] |
└ 感想ログと次回と - 主催 - 2008/04/13(Sun) 02:33:14 [No.236] |
「ちょっと、鈴!!」 「うるさい!うるさい!!」 「鈴っ!!」 大好きな人、いつも仲良しな人達が怒鳴りあっている 彼女は彼の声を無視して走り去っていく 彼はそこに立ち尽くしていて、僕達はそれを悲しい気持ちで見つめていた 猫は笑顔を求める 今日の昼ごろ、リンとリキが喧嘩した。 そして、今の現状がこうだ 「はぁ〜」 さっきからため息ばかりついているのはリン。 彼女・・・・リンは僕の命の恩人だ 今年の夏、僕が飢えで死に掛けていた所を助けてくれたのだ そんな訳で僕はリンが大好きだ そして今その命の恩人は 「うぅ〜・・・なんであんな事言ったんだ」 「でもあれは理樹が・・・・」 ひどく落ち込んでいた。 さっきからずっと一人ごとを呟いている リキとリンが喧嘩をしたのは僕が知る限りでは初めてだ。 最古参のドルジにも話を聞いてみたけど、喧嘩をしたのは今回でまだ2回目らしい そもそもが不器用で純粋なリンだし、喧嘩の相手があのリキだ ここまで落ち込むのも納得はできる。 ふと彼女がジッと一方向に視線を向けているのに気づいた 彼女の視線の先を見てみると リキが赤いヒラヒラを頭につけた女の子と話していた たまに僕達に 「ほわぁ〜!!? ポテチが〜」 とか言って倒れながら美味しいものをくれる良い人だ その子とリキがそれはとても仲がよさそうに喋っていた リンの顔が寂しそうに歪む リンは彼女たちの方をしばらく見ていたけど彼女達が喋りながら去っていくと 「理樹なんて、・・・・・大嫌いだ」 ポツりとそう呟いた とても寂しそうな声だった 「・・・・・・・・・・・」 僕たちはリンが大好きだ そして大好きな人の寂しそうな顔なんてのはもちろん見たくない。 なのでそれを見て、僕は周りの猫に合図を送る コクッ 周りの猫たちが一斉にうなずく (本当にリンに対しては犬以上の統率力を発揮するなぁ、僕たち) とりとめのないことを考えているうちに、それぞれがポジションに着く リンは僕たちと遊んでる時はいつもとても楽しそうだったから だから彼女に僕たちと遊ばせるために 「はぁ。 ・・・・ん?なんだお前ら距離なんかとって・・って!?」 とりあえず彼女に四方八方から飛び掛った。 総勢13匹の猫の群れが。 「う、うにゃぁぁぁぁぁぁぁ〜!?」 後には彼女の悲鳴が響く ・・・・・・・・・・って作戦失敗じゃん!!? 数日後 「本当にやるのかシャモン?」 「・・どうして?シューマッハ」 透明な壁・・・人間でいう窓を必死に開けようとしていると、後から名前を呼ばれた あれから数日がたったがリンはずっと落ち込みっぱなし どうしたものかと、恋愛事情に詳しいメス猫に尋ねてみたところ こういうのは何日かたってしまえばお互いの頭も冷えて誠心誠意込めて謝れば大丈夫とのこと リンはもう随分と反省?してるだろうし、とりあえずリキに無理やり会わせてやれば 事態は進展するだろうと、判断してリンを連れ出しに来たのだ 既にリキが河原で密かに野球の練習をしているのは確認済みである。 ちなみにシャモンとは僕の名前だ キョウスケが僕に名づけた なんでも雪国の由緒正しき名前らしい。 「ここに入ると、ストレルカに怒られるぞ」 「知ってるよ」 シューマッハと話しながらも必死に窓を開けようとする 「リキとの事ならほっとけよ、人間同士のことは人間に任せとけばいいんだ」 「そうだけど・・・でもじっと待ってるだけなんて僕は嫌だよ」 「リンの悲しい顔なんて見たくない」 「・・・・リキが戻ってきたらまた時間が少なくなる」 時間・・それは僕達がリンと遊ぶ時間のことを指す 今年の春以降、僕たちがリンと遊ぶ時間は随分減った それを悲しむ仲間はたくさんいる、もちろん僕もそうだ だからシューマッハは少しでもそれを取り戻したいんだろう でも・・・ 「確かにリンとリキが喧嘩してから、リンは僕たちとよく遊んでくれるようになったよ でもそれってこっちに逃げてきてるだけだろ? リンと遊べるのは嬉しいけど リンに・・・僕たちと遊ぶ時間をそんなふうには作って欲しくないよ」 リンと遊ぶ時間は僕たちにとって神聖でとても大事なこと だからその時間を逃げることなんかにして欲しくは無い とういうか・・・ 「そもそも、ため息だらけのリンと遊んでも楽しい?」 「それは・・・・」 確かにリンと遊ぶ時間は増えたけど、リンはずっと暗い顔だ これじゃあ、時間が増えて楽しみが減ったで、プラスマイナスゼロだ カタッ やっと窓が開いた 「僕は行くよ、シューマッハ」 「・・・・・」 シューマッハは答えなかった 彼女の部屋に入る リンは・・・・ベッドの上に寝転んでいた そしてその手には綺麗な石がついたもの・・・・たしかペンダントとかいうものだ いつの日かリンが僕たちに見せて言ってたっけ 「ほら、見てみろお前ら」 「綺麗だろ?理樹がくれたんだぞ、お弁当作ってくれたお礼にって」 そう本当に楽しそうな笑顔で。 だけど、今の彼女はあの時の表情とは正反対だ。 それを見て僕はなおいっそう決意を固くする (だけど、どうやってリンを連れ出そう?) 問題はそこだ。 猫の僕にできることなんてたかが知れている リンがペンダントを弄繰り回しているのを眺めながら作戦を考えていると 不意に昔のことを思い出した (そうか、アレを盗ればいいんだ!!) 昔、お腹が空いて本当にどうしようも無かった時に一度だけ人間のお店とやらで魚を盗ったことがある その時の人間の怒りようはすごく、鬼の形相で追いかけてきたものだ 正直、リンにそんな風に怒られるのはとても嫌だけど仕方が無い。 僕は覚悟を決めた ならばあとはチャンスを待つだけ。 じっと待つこと数十分。 まさかこんな所で鼠取りの基本、待ち伏せがいかされるとは思わなかったが、ついに チャンスは訪れた コンコン 「ん?」 部屋に響き渡るドアをノックする音 そして赤いヒラヒラが入ってきた 「鈴ちゃん、いる〜?」 リンの意識が彼女の方へ向く その隙をついて僕はペンダントへ飛び掛った 「なっ!? なにぃ!!」 いきなり現れ、ペンダントを奪った僕に仰天の声を上げるリン だけど、そんなことは気にしてられない 「ほわぁ!!?」 入ってきた彼女の足の間を通る。 ・・・・・・・今日はカエルだった 全速で廊下を疾走する 目指すはリキがいる河原だ 「待て!! シャモン!!」 (待てと言われて待つ奴なんかいないよ) 僕は後を振り返りリンが追ってきているのを確認して走り続けた 息も絶え絶えで河原に着く あとはリキを見つけてそこまでリンを誘導すればいい リンは一つのことに集中すると周りが見えなくなるから簡単に誘導できるだろう (さて、リキは・・・っと) 追いかけてくるリンを意識しつつ、斜面を下る だけど、そこで誤算が三つ リンが思いのほか素早くて全速力で逃げていたために僕の速度はとても速かったこと。 そして、昨日の雨のためにとても滑りやすくなっていたこと。 最後に川の水は増水し流れも普段より遥かに速くなっていたことだ。 車は急には止まれない 猫に対する都会の恐ろしさを一言で表現したこの名言のとおり 僕は河におもっいっきりダイブした 「シャモン!!」 リンの声が聞こえる でも駄目だ、リンの今いる場所からじゃ間に合わない (あぁ、ろくに泳げない猫の体が恨めしい。) 鈴を笑顔にするはずなのに逆に泣き顔にさせてどうするんだ 薄れ行く意識の中、僕が耐え難い自己嫌悪と猫嫌悪に陥っていると 一人の男が川に飛び込んだ 理樹side 「・・・危なかった」 自分の濡れて重くなった服を見てそう呟く もう少し遅ければ間違いなくシャモンは溺れ死んでいただろう。 鈴の足元でグデ〜となっているシャモンを見てそう思う。 乱れた息を整えていると鈴がこちらに顔を向けてきた。 あの日喧嘩をして以来まったく顔を合わせていないだけに少し気まずい だけど鈴は気まずそうにしながらも僕に声を掛けてきた。 「ありがとう、理樹。お前のおかげで助かった」 「う、うん」 「そ、それと」 そこで鈴は言葉を止めて顔をうつむかせた そして・・ 「それとごめん・・・・理樹」 「え・・・」 「あたしがつまんない意地をはったから・・・・」 「ごめんなさい」 そう言って鈴は深々と頭を下げた。 正直、驚いた 今まで鈴と喧嘩した時は必ずといって良いほど僕のほうから先に謝っていたから 「「・・・・・・・」」 まだ僕の心情は複雑だけど、喧嘩の原因は些細なものだし あの喧嘩の原因については二人でゆっくり話すことが大切だと、事情を知った西園さんも言っていた。 それにあの鈴が、頭を下げてまで謝ってくれたんだ。 だから、だから僕は笑顔で鈴に声をかけた。 猫side 「鈴、風邪ひかないうちに帰ろっか」 そういって手をさしだすリキ 「・・・・うん。」 リンはそれを見て照れくさそうにして、それでもしっかりと手をつなぎあわせた。 水びたしの僕たちの頭の上でつながれる手。 ちょっと予定外のことになってしまったけど とりあえず・・・これで良しかな なぜなら 彼女は今とても綺麗な笑顔を浮かべていて それを見られる僕もまたとても幸せだから [No.235] 2008/04/12(Sat) 16:48:51 |
この記事への返信は締め切られています。
返信は投稿後 30 日間のみ可能に設定されています。