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No.243へ返信

all 第8回リトバス草SS大会(仮) - 主催 - 2008/04/23(Wed) 20:37:59 [No.239]
さいぐさはるかが大学でぼっちになっているようです。 - ひみつ - 2008/04/25(Fri) 22:04:52 [No.250]
Invitation to Hell(原題) - ひみつ   グロ注意 - 2008/04/25(Fri) 22:00:53 [No.249]
虚構世界理論 - ひみつ - 2008/04/25(Fri) 21:55:39 [No.248]
誰かが何かを望むと誰かがそれを叶えるゲーム - ひみつ - 2008/04/25(Fri) 21:12:18 [No.247]
Engel Smile - ひみつ - 2008/04/25(Fri) 18:30:18 [No.246]
笑顔(SSのタイトルはこちらで) - ひみつ - 2008/04/26(Sat) 08:41:43 [No.251]
夏祭りトーク - ひみつ - 2008/04/25(Fri) 18:30:17 [No.245]
小さな頃の大切な想い出 - ひみつ - 2008/04/24(Thu) 20:17:47 [No.244]
笑う、ということ - ひみつ@初 - 2008/04/24(Thu) 18:57:03 [No.243]
笑顔の先に - ひみつ@甘 - 2008/04/24(Thu) 10:56:09 [No.242]
遥か彼方にある笑顔 - ひみつ@長いですスミマセンorz 初めてなので優しくしてもらえると嬉しいかも - 2008/04/24(Thu) 02:49:25 [No.241]
感想会ログー次回ー - 主催 - 2008/04/27(Sun) 01:58:36 [No.253]


笑う、ということ (No.239 への返信) - ひみつ@初

「……」
 行き先は真っ暗。
 
 
   笑う、ということ
 
 
「…礼」
 今日も、授業が終わった。
 僕は、となりの席に声をかけようとして、立ち止まる。
「…鈴」
「……」
「帰ろうか」
「……」
 となりの机には、手向けられた白い花。
 …そっと、バッグを手に取り、寮へと向かう。
 
 
 
 寮で、何をするというわけでもなかった。
 宿題を解いた。
 そうして、お風呂に入り、ご飯を食べて、眠りにつく。
 どうしようもなく、作業的だ。
 でも、となりには鈴がいた。
 それだけで、もう、望むものはない。
 そう思う。
 
 
 
 今日も授業が終わった。
 鈴と一緒に、寮へと帰る。
「……」
 鈴は今日も喋らない。
 いつものことだ。
「鈴」
「……」
「今日はさ、どこかにいこうか」
「……」
 返事はなかった。
 それでも、今日はどこかに行こうと思った。
 
 
 
「……」
 とりあえず、と、学校の外へと出た。
 今は七月。
 もう、とても暖かい。
「どこに行きたい?」
「……」
 返事はない。
「…じゃあ、公園に行こう」
「……」
 やはり答えは返ってこない。
 それだったら、僕が動かなくてはいけない。
 半ば使命的なものを感じ、僕は鈴と一緒に歩く。
「もうすぐ、夏休みだね」
「……」
「鈴はどこか行きたいところとかある?海とか、山とかさ」
「……」
「行きたいところがあったら言ってね。僕もある程度までなら、連れて行ってあげるから」
「……」
 そうして、目的地へと進む。
 
 
 
 無駄な話をして、時間をつぶして。
 空が夕焼けに染まる頃、ようやく、公園に着く。
「……」
「公園だよ。鈴」
「……」
「何しようか。…ブランコとか、滑り台とか、色々あるよ?」
「……」
 僕は、鈴の興味のありそうなジャングルジムへと向かう。
「……」
 鈴も一緒だ。
「ほら、登ろう?鈴」
「……」
 そうして、ジャングルジムの天辺へ。
「……」
 鈴はやはり何も言わなかった。
 …それでも僕は、一人、前へ進んだ。
 
 
 
「なあ」
「…なに?」
 同じ学年の人に話しかけられた。
 大して面識があるわけでもないが、少し、話をしたことがあったはずだ。
 …名前は、思い出せない。
「お前、どうしたんだ?ショックでどうかしちまったのか?」
「…どうって…?」
「いや、お前よく独り言言ってるだろ?」
「……」
 …独り言?
 僕は独り言を発していたのだろうか。
 まったく、見に覚えがない。
「そんなに言ってた?」
「ああ。…もしかしてお前、無意識か?…ああ、なんかいってたな。ナルコ…なんとかって」
 そうか。…それなら、あるのかもしれない。
 もしかしたら。
「…そうかも」
「そっか。じゃあ、気にしないでおいてくれ。へんなこと言って悪かった」
「ううん。…じゃあ、またね」
「ああ」
 そうして、その人は友達のところへと戻っていった。
 …少し、悲しくなった。
 でも、僕には鈴がいる。
 
 
 
 また、作業的に数日が流れ、夏休み直前。
「今日も、どこか行こうか」
「……」
 また、僕は鈴と出かけることにした。
 少しでも、鈴が喋ってくれればと思った。
 これがきっかけになればと、思った。
「……」
 それでも、答えは返ってこなかった。
「じゃあ、今日は商店街に行こう」
 
 
 
 駅前。
 人が多かった。
 周りから聞こえる、笑い声。
 …どうして、こんなに不公平なんだろう。
「……」
「鈴、行こうか」
 どうしようもない。
 どうしようもなかった。
 だから、歩いた。
 
 
 
 たまたまだった。
 そこに、大きな鏡があった。
「……」
 となりには、変わらず鈴がいると思っていた。
「鈴…?」
 鏡には、僕の姿。
 当たり前だ。鏡には目の前にあるもの全てが映る。
 でも
「…りんっ…」
 鏡に映る僕のとなりには
「…どうして」
 鈴の姿は、なかった。
 頭が追いつかない。
 いつもいると思っていた、鈴がいない。
 …どこかではぐれたか。
 そんなわけがない。
 考えられる可能性。
 それは。
「ふふっ、はははっ…」
 鈴を、あの時、助け出すことが出来なかったということ。
「あははっ、ははははははははははっ!」
 笑いが止まらなかった。
 そうだ。
 僕はずっと幻想に浸かっていた。
 …あの日から、ずっと。
 助け出せたと思っていた。
 二人であのバスの爆発から逃げたと。
 でも、助け出せていなかったのか。
 ずっと、幻想でしかなかったのか。
 全てが僕の妄想だったのか。
 ひざが崩れる。
 それでも、笑い続けた。
 
 …そうすれば、すべてわすれられる。


[No.243] 2008/04/24(Thu) 18:57:03

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