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小さな頃の大切な想い出 (No.239 への返信) - ひみつ


私はよく夢を見る。

今は存在しない、おにいちゃんの夢。

大好きだったおにいちゃんの夢。

でも今日は、おにいちゃんの夢じゃなかったんだ。





「小さな頃の大切な想い出」





小さな子供達が草原で遊んでいる。

その子達は、追いかけっこをしているようだった。

「ほら、理樹、それじゃあ俺にはおいつけないぞ」
「まってよ恭介。ぼくにおいつけるわけないじゃない」
「はは、理樹はよわいな」
「謙吾は剣道してたからいいんだろうけど、ぼくはなにもやってなかったんだよ?」
「俺としょうぶしてたらつよくなれるぜ」
「真人にかてるわけないよ」
「理樹はよわい」
「鈴にいわれるとかなりおちこむよ…」

そう、これはずっと昔のリトルバスターズ。

まだ私達と出会っていない頃の、リトルバスターズ。

そんな夢を何で私は見てるんだろう。


「うわぁ!」


どさっ


小さな理樹君がこけた。

「いったたぁ…」
「大丈夫か、理樹」
「はは、やっぱり恭介たちにはかなわないよ」
「いや、俺は理樹みたいにそんなこけ方はできない」

小さなきょーすけさんに賛同するように、他の3人も頷いた。

「ぜんぜんうれしくないよ…」

りきくんは少し拗ねているようだ。
なんだか見ていて微笑ましい。

私がこのぐらいの時も、よくおにいちゃんに慰められたな。


☆ ★ ☆


「おにいちゃん、おいかけっこしよう」
「病院(ここ)で?」
「うん、ここで」
「えーっと、人の迷惑になっちゃうよ」
「じゃあお外で」
「うーん…じゃあ屋上でしようか」
「うん!」

おにいちゃんは優しかった。
私がやる事は大抵付き合ってくれた。
自分の体はそんなことを出来る体ではないのに。
でもその頃の私は、そんなこと、よくわからなかったから。

「でも、もうお昼だから、お昼ご飯食べてからな」
「えー」
「俺もう腹減って、追いかけっこなんかしたら倒れちゃうぞ」
「えー」
「だから、な?」
「うん。じゃあはやくたべてあそぼ」
「って小毬はお昼ご飯どうするんだ?」
「おにいちゃんのをもらう」
「病院(ここ)のご飯なんて美味しくないぞ?」
「うん、いいの」


私とおにいちゃんは二人で一人分のお昼ご飯を食べて屋上に出た。

「ほら小毬、俺を捕まえてみろ」

そう言っておにいちゃんは走り出す。

「よーし」

私はおにいちゃんを追いかける。

でも、おにいちゃんは予想以上に走るのが速く、なかなか距離が縮まらない。

「どうした小毬。早く捕まえろよ」
「うぅー、おにいちゃんはやいぃ」

必死でおにいちゃんを追いかける。

「わぁ!」


どさっ


足をつまずき、私は顔の方から地面へ。

「小毬! 大丈夫か」
「うぅぅ…いたいぃ」

私は涙声だった。

「ほら、痛いの痛いのとんでいけー」

当然、そんなことを言っても痛みが無くなる訳もない。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」

とうとう私は泣きだした。

「小毬」

おにいちゃんは優しく私を呼びかける。

「小毬が泣いたら、俺も悲しいよ」
「どう、して?」

嗚咽の混じった声で私は訊く。

「俺は小毬の笑っている姿が好きなんだ。小毬が泣いてるところなんて見たくない。少しでも長い間、小毬の笑顔が見ていたいんだ」

きっとこの時にはもう、自分が近いうちに死ぬ事を予感していたんだろう。

「だから、な? 笑おう、小毬」
「うん」

でもその頃の私はそんな事も知らなくて。

ただ純粋に、おにいちゃんと笑って過したいと思っただけだった。

ずっとこうして遊んでいられれば良いと思っていた。

「えへへー」
「じゃあ続きするか」
「おにいちゃんつかまえた!」
「え、あ!」

泣き止んだ私は、おにいちゃんの袖をしっかりと掴んでいた。

「あはははは、泣いたのは小毬の作戦か?」
「うん! そうだよー、えへへー」

私達は、空が真っ暗になるまで、遊び続けた。


☆ ★ ☆


「恭介つかまえた!」
「え、あ、おい、今のはなしだろう」

理樹くんはきょーすけさんの袖をしっかりと握っていた。

「今のはお前をたすけるために…」
「でもタイムともなにもいってないもん」
「ま、今のはゆだんした恭介がわるいんじゃねぇの」
「そうだな」
「しかたないか」
「うん」

ほら、ときょーすけさんはポケットから飴玉を取り出し、理樹くんに手渡す。

「まさか理樹にわたるとはな」
「へへー、ゆだんするからだよ」

理樹君は飴玉をもらって嬉しそうに笑っていた。
でも、飴玉をとられたきょーすけさんもなぜか笑っていた。
それどころか、他の3人も笑っていた。

「よし、じゃあ今度はとるぞ」
「え、まだやるの?」
「あたりまえだろ、日がくれるまでやるぞ」
「飴玉は?」
「さいごに残ってる分だけもらえる」
「えー、せっかく手にいれたのにー」
「いっかいで終わっちまったら、あめの数も1個しか変わらないぞ」
「よし、次はあたしが全部もらってやる」

そういってりんちゃんは走り出す。

「あめってあくりょくいくらあったらつぶせるんだ?」

真人くんが走り出す。

「そんなこと知るか」

謙吾くんが走り出す。

「ほら、ぐずぐずしてないでやるぞ」
「う、うん」

きょーすけさんと理樹くんも走り出す。

文句を言っていたわりに、理樹君は終始笑顔のままだった。

きっと飴玉をもらうことよりも、きょーすけさんを捕まえたことよりも、

皆と遊べる事が嬉しかったんだろう。

その後もずっと、その草原に笑い声が絶える事はなかった。





夕暮れ。

「もう夕方か」
「時間がたつのってはやいね」
「さ、何個飴玉もってるか言っていくぞ」
「あたしは3つだ」

りんちゃんがポケットから飴玉を取り出して見せる

「俺は2つだ」

真人くんも手のひらに飴玉を乗せて見せる

「俺も2つだ」

謙吾くんも飴玉をポケットから出す。
手のひらに乗せた瞬間、真人くんが謙吾くんの飴玉を1つ盗んだ。

「あ、おい」
「ゆだんしてるからだよ」
「この、返せ!」
小規模な乱闘が起こる。

「わぁ真人、謙吾、やめなよ」
「おい、真人、返してやれ」
「いやだね、こいつがゆだんしたからわるいんだぜ?」
「おい真人」

きょーすけさんは止めに入っているがなかなか治まらない。
りんちゃんは呆れたようにそれを見ている。
理樹くんはあたふたしている。
でも、すぐに理樹くんが提案した。

「ほら真人、僕の1つあげるから、ね?」
「お、いいのか理樹!」
「うん、だからそんな争い止めよう」
「いいわけないだろ」
「でも、このままじゃ…」
「だいたい理樹、お前いくつ持ってるんだ」
「え、えっと、1つ」

結局理樹くんはあの後ずっととられてばっかりだった。

「ならもっとダメだ。真人、お前は罪のない理樹の大切な飴玉をとるのか?」
「う…」

真人くんが固まる。

「わ、わぁったよ、返すよ、ほら」

真人くんは謙吾くんへ飴玉を返す。

それにしても、やっぱり理樹くんは優しいな。
1つしかないのに、何も悪い事とかしてないのに、あげようとする。
それも理樹くんの『幸せスパイラル』なのかな。
小さい頃からそんな事できるなんて、理樹くんは凄いなぁ。

「そういえば恭介はいくつなの?」

思い出したように理樹くんはきょーすけさんに訊く。

「ん? 俺は7つだ」
「一人勝ちだったもんねぇ」
「みんな弱すぎなんだよ」

そう言ってきょーすけさんは笑った。

「さ、もう暗いし、帰ろうぜ」
「そうだね」
「明日はなにして遊ぶかなぁ」

そうして理樹くんたちは暗闇に消えていった。


☆ ★ ☆


「さ、そろそろ病室に戻るか」
「えー、もっと遊ぼうよぉ」
「ダメ、上を見なよ、もう真っ暗だぞ」
「もっと遊びたいーー」
「俺ももう疲れた、何時間やったと思ってるんだ」
「おにいちゃんなかなか捕まえられないー」
「それは小毬が遅いからだ」
「むーー」

確かにおにいちゃんは速くてなかなか捕まえられなかったけど、私はおにいちゃんと遊べて嬉しかった。
おにいちゃんと遊ぶだけで、私の心は満たされていった。

だから私はそっぽを向いて拗ねたフリをする。
あくまでフリ。

そのフリもすぐに止め、笑顔に戻る。
自然に出る笑み。
見ると、おにいちゃんも笑っていた。
満面の笑みで、笑っていた。

「さ、戻ろう」
「うん!」
「明日は室内で遊ぼうな」
「なんで?」
「かなり疲れたから」
「えー、明日もお外で遊ぶのー!」
「一日は休ませてくれ」
「じゃあ、かくれんぼ」
「ん、まぁかくれんぼぐらいなら、いいか」

そんな事を話しながら私達は病室に戻っていった。


☆ ★ ☆


朝、清々しいほどに晴れた朝。

「ん〜…」

ひとつ、背伸びをする。それから身支度を整えて学校へ。
といっても寮生活だから、そんなに時間はかからないんだけど。

「おはよう、小毬さん」

理樹くんが笑顔で挨拶をしてくれる。

「うん、おはよーございます」

私も笑顔で返す。

「ほら、理樹、小毬、遊ぶぞ」

きょーすけさんが私達を呼ぶ。

「え、朝から遊ぶの?」
「当たり前だろう」

何故だろう、そんなやり取りを見ているだけで笑みがでてくる。

やっぱり、あの夢を見たからかな…。

「よし、今日は…そうだな、追いかけっこをしよう」
「追いかけっこ? 鬼ごっこじゃなくて?」
「そうだ、全員が敵だ」
「っで、どんなルールなの?」
「全員この飴玉を3つずつ持ち、捕まえられたやつは捕まえたやつにこの飴玉を1つやること。時間は放課後まで、以上」
「長いね、時間」
「そうでないと面白くないだろ」
「まぁね」
「よし、じゃあ30秒後にメールを全員に出すからそれが開始の合図だ」

今日見た夢も、そんな内容だった。

でも今回は、理樹くん達5人だけじゃない。

はるちゃんやくーちゃん、ゆいちゃんにみおちゃん。

そして、私がいる。

きっとこれだけ揃えばとても楽しくなる。

夢の中の理樹くんたちも楽しそうだったけど、今からやるのはもっと楽しそう。

高校生になっても皆は子供心を忘れていない。

笑うことを忘れていない。

私もそう。

皆で楽しく遊ぶ事が出来る。

それがとても嬉しい。

だから、私は幸せ。


おにいちゃん、おにいちゃんが死んだ日、おにいちゃんは私に自分がいた事を夢と思えって言ったよね。
私はそれを守ったよ。
だから、今まで笑顔のままで過せてきた。

でも、おにいちゃんが本当にいて、今はもういないってわかった今でも、私は笑っていられるよ。

もちろん、おにいちゃんがもういないっていうのは寂しいし、悲しいよ。

それは乗り越えられない。

でも、理樹くんに笑っていられる強さを与えてもらったから。

おにいちゃんも私の悲しむ姿より、笑っている姿の方が好きだって言ってくれたから。

だから、私はずっと笑っているよ。

どんな事があっても、笑っているよ。

天から見守ってくれているおにいちゃんも、きっと笑ってるよね。

私もおにいちゃんの笑ってる姿が大好きだから。


一人が笑うと皆が幸せになり…皆が笑うと、世界が幸せになる。

世界が幸せで包まれるように、私はこれからもずっと笑っているから…。


[No.244] 2008/04/24(Thu) 20:17:47

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