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No.245へ返信

all 第8回リトバス草SS大会(仮) - 主催 - 2008/04/23(Wed) 20:37:59 [No.239]
さいぐさはるかが大学でぼっちになっているようです。 - ひみつ - 2008/04/25(Fri) 22:04:52 [No.250]
Invitation to Hell(原題) - ひみつ   グロ注意 - 2008/04/25(Fri) 22:00:53 [No.249]
虚構世界理論 - ひみつ - 2008/04/25(Fri) 21:55:39 [No.248]
誰かが何かを望むと誰かがそれを叶えるゲーム - ひみつ - 2008/04/25(Fri) 21:12:18 [No.247]
Engel Smile - ひみつ - 2008/04/25(Fri) 18:30:18 [No.246]
笑顔(SSのタイトルはこちらで) - ひみつ - 2008/04/26(Sat) 08:41:43 [No.251]
夏祭りトーク - ひみつ - 2008/04/25(Fri) 18:30:17 [No.245]
小さな頃の大切な想い出 - ひみつ - 2008/04/24(Thu) 20:17:47 [No.244]
笑う、ということ - ひみつ@初 - 2008/04/24(Thu) 18:57:03 [No.243]
笑顔の先に - ひみつ@甘 - 2008/04/24(Thu) 10:56:09 [No.242]
遥か彼方にある笑顔 - ひみつ@長いですスミマセンorz 初めてなので優しくしてもらえると嬉しいかも - 2008/04/24(Thu) 02:49:25 [No.241]
感想会ログー次回ー - 主催 - 2008/04/27(Sun) 01:58:36 [No.253]


夏祭りトーク (No.239 への返信) - ひみつ

 夏。
 夏祭りの会場から少し離れた山の中腹で僕は来ヶ谷さんと一緒にいた。射的やらなにやらで、二人とも疲れ果て、休んでいる。僕は普段の格好で、来ヶ谷さんは和服を身に纏っていた。「どうだ、惚れ直したろう?少年」と、来ヶ谷さんに待ち合わせ場所でいわれてすごくどきどきした。
 今日は来ヶ谷さんとつきあってから、初めての夏祭りだった。虚構世界で僕と来ヶ谷さんの二人ともが虚構世界でのことを思い出し、それがきっかけで僕たちは付き合いはじめた。僕と、来ヶ谷さんがつきあい始めたきっかけ、来ヶ谷さんとの恋人同士としてのやりとり、そして終わらない6月20日のことなど全部。それらすべてを僕たちは思い出していた。
「風が、気持ちいいな」
 髪をたなびかせながら、笑みを――本当に素敵な笑みを浮かべながら、来ヶ谷さんがいった。
 僕が目を離せないくらい、本当に素敵な笑顔だった。
「どうした?少年、おねーさんに見とれたか?」僕の視線に気づいたのだろう、来ヶ谷さんがいった。
「うん」
 自然と言葉が口から出た。僕のこの言葉に来ヶ谷さんが顔を真っ赤にする。
「……少年は本当に女殺しだな、この独特な雰囲気を楽しみたいから、軽口をたたいたのに無意味じゃないか」
「だって、本当に笑顔、かわいかったし」
 僕がそういうと、来ヶ谷さんがふむ、といいながら、手を口元にやった。
「少年にそういってもらえると、うれしいよ」
 この言葉では来ヶ谷さんは、顔を真っ赤にせず、ただ、うれしそうに微笑んだ。…ちょっと、意外だった。顔を真っ赤にする、とおもったのに――いや、別に来ヶ谷さんの顔を赤くするのが目的ではないんだけど。
「今の、君にならいってもいいかな」
「何を?」
「本当の、ことを」
「本当の、こと?」
「――君がきっと、勘違いしていることだ。聞きたいか?」
 来ヶ谷さんは笑顔でそういったので僕は「聞きたい」と答えた。そういうと、来ヶ谷さんは話し始めた。




「本当に、私は笑わない、子どもだったんだ……笑い方を、知らなかった…というより人間に興味をもてなかった」
「興味が、もてない?」
「他の人が、笑おうが、泣こうが、私にはどうでもいいことだったんだよ、嫉妬すら覚えていなかった」
「?」
 最初と最後の言葉が僕にはつながらなかった。
「普通、私みたいに笑えない人は、嫉妬を覚えるものなんだよ。少年、この感情わかるか?」
「いや、わかんない」
 僕にはわからなかった。理解することが出来なかった。
「そう、か。少年はいい人生を歩んできたな。まぁとにかくだ。私はそれすら覚えなかったロボットのような存在だったんだ……少年。私は笑い方をしらなかった、どうして笑うのか、わからなかった。君と付き合い始めて、初めてわかったんだ、何もかも」
「でも、来ヶ谷さん、笑っていたじゃない」
 教室でよくみる来ヶ谷さんはよく笑っていた。鈴や、クドで遊んで。僕がそういうと、来ヶ谷さんは少し考えていう。
「たとえばだ、少年。少年にとって非常に難しい、数学の宿題を出されたとする。他の人の力を借りずに解かないといけないとしたら、どうやってその問題をとく?」
 僕は少し考える。
「参考書をみる?」
「そうだな、それが普通だ」
 それが何の関係が…、そこまで考えて、わずかばかりだが僕はぞっとした、ぞっとなんか、したくなかったのに。来ヶ谷さんに対してぞっとしたことがたまらなく嫌だった。
「つまりはそういうことなのだよ、少年。私は人間の行動パターンを覚えるため、本を読んだんだ。こういうときに人は笑う、こういうときに人は泣く、そういうことを覚えた。信じられない、とおもうだろうけどな」
「……」
 僕は何も言うことが出来なかった。
「そして私は人と付き合い始めた。この学園に来てからもそれは続いた。クドリャフカ君や鈴君や小毬君をかわいい、と思ってああする自分は、作り物、なんだ。楽しかったが、正直、苦痛だと思ったこともある」
 僕の顔をちらり、と来ヶ谷さんはみて、再び話し始めた。
「君にクドリャフカ君をルームメイトとして紹介されたとき、断ったのは、寝るときくらい一人でいたい、と思ったからだ、そっちのほうが、落ち着くからな…、私を軽蔑するか?」
「……」
 僕は何もいえなかった。
 こんなとき、恭介だったらなんていうんだろうか。そこまで考えて、気づく。
「…しないよ、僕は」
 だって。
「そうなりたい、と来ヶ谷さんは願ったんでしょ?そうなった来ヶ谷さんに惚れたんだから。それに、来ヶ谷さん、今では苦痛じゃないんじゃない?」
「ああ」
「だったらいいじゃない、僕だって、こんな人になりたい、そうおもって変わってきた、と思うから」
 恭介みたいになりたい、であったころから、僕はそうおもった。その頃の僕と比べれば、僕だって成長しているはずだ。そのほかにも僕だって、いろいろなものに影響されて変わった。それを思えば、来ヶ谷さんがちょっと特殊だっただけだ。
「来ヶ谷さんは考えすぎなんだと思う、今までそういうこと、意識してなかったからしょうがないとおもうけど」
 以前、来ヶ谷さんは自分を不幸だとしらなかった、そういっていたことを思い出す。自分が変わることをしらないこと。それはひょっとしたら、本当に不幸なのかもしれない、そんなことをふと思う。
「…ありがとな、理樹君。理樹君に相談して本当によかった」
 僕の言葉に来ヶ谷さんはそう、いった。




「それにしてもどんな本読んだの?」
 何かすごいチョイスしたとおもう。
「少年誌、青年誌、少女漫画その辺をかたっぱしから」
「男子のことについて間違った認識をもっているのはそこから来ているんだね」
 いくらなんでも「あの子のおっぱい世界一」とか男子は叫んだりしないし、国道を裸で走ったりはしない。
 そんなことやる男子がいたらただの変態だ。
 と、来ヶ谷さんがきっと僕をにらんだ。…あ、失敗した。
「ん?今、何をいったのか、聞こえなかったな」
「いや、ごめん」
「男子の認識が間違っている、と聞こえたんだが」
「いや。そんなことないです」
「だったらなんで、私は、こんな格好をしているんだろうな?」
 来ヶ谷さんはそういいながら自分が纏っている和服を見た。来ヶ谷さんが今纏っている和服ところどころ破れていて、着るという表現はおこがましく、纏う、という表現が適切なくらいな格好だ。(僕的には、纏っているという表現だと布がすこしでもかかっていれば纏っている、という表現でいいとおもう、うん…実際にどうかはしらないけど)
 しかもその和服は土やら白いなんやらで汚れている。
 何をしていたのか言及するのははばかれるし、白いなにやらの正体についてはまちがってもいうことは出来なかった。
「まったくこんなところで人に見られたらどうするつもりだったんだ」
「だったらこの場から早く離れようよ」
「君とピロートークならぬ、夏祭りトークを楽しみたかったんだ、前にもいったとおり、女性が満足を感じるのは男性と違い、”コト”のあとだと」
「ってかそういうことをいうってことは来ヶ谷さんもノリノリだったって…あいたっ」
 蹴られた、超蹴られた。
「まったく、理樹君は…本当に私以外を彼女にするとダメな人だな、私以外に理樹くんみたいな鬼畜な人と一緒にいれるひとなんていないぞ?」
「…だね」
「…だからそう、ストレートに答えるな、と」
 そういう来ヶ谷さんの顔は真っ赤だった。
 さっき顔を赤くするのが目的じゃない、といったけどやっぱりこの顔をみていたい。
「でも、それが理樹君か。――これからもよろしくな」
 来ヶ谷さんが笑みをうかべる。
「うん」

 その来ヶ谷さんの笑顔に僕は力強く、そう答えた。


[No.245] 2008/04/25(Fri) 18:30:17

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