第8回リトバス草SS大会(仮) - 主催 - 2008/04/23(Wed) 20:37:59 [No.239] |
└ さいぐさはるかが大学でぼっちになっているようです。 - ひみつ - 2008/04/25(Fri) 22:04:52 [No.250] |
└ Invitation to Hell(原題) - ひみつ グロ注意 - 2008/04/25(Fri) 22:00:53 [No.249] |
└ 虚構世界理論 - ひみつ - 2008/04/25(Fri) 21:55:39 [No.248] |
└ 誰かが何かを望むと誰かがそれを叶えるゲーム - ひみつ - 2008/04/25(Fri) 21:12:18 [No.247] |
└ Engel Smile - ひみつ - 2008/04/25(Fri) 18:30:18 [No.246] |
└ 笑顔(SSのタイトルはこちらで) - ひみつ - 2008/04/26(Sat) 08:41:43 [No.251] |
└ 夏祭りトーク - ひみつ - 2008/04/25(Fri) 18:30:17 [No.245] |
└ 小さな頃の大切な想い出 - ひみつ - 2008/04/24(Thu) 20:17:47 [No.244] |
└ 笑う、ということ - ひみつ@初 - 2008/04/24(Thu) 18:57:03 [No.243] |
└ 笑顔の先に - ひみつ@甘 - 2008/04/24(Thu) 10:56:09 [No.242] |
└ 遥か彼方にある笑顔 - ひみつ@長いですスミマセンorz 初めてなので優しくしてもらえると嬉しいかも - 2008/04/24(Thu) 02:49:25 [No.241] |
└ 感想会ログー次回ー - 主催 - 2008/04/27(Sun) 01:58:36 [No.253] |
私には葉留佳という妹がいる。 その葉留佳は学年、いや、学校のトラブルメーカーで、問題ばかり起こしては私達風紀委員を困らせている。 でも、そんな彼女は誰とでも接することができる。 棗鈴なんかの人見知りな子とも、持ち前の明るさで仲良くなることができた。 その葉留佳を知らない人は学校中そうはいない。 でも、私はどうだろう? 葉留佳の片割れである私は。 風紀委員長の私は、一言で言えば『皆の敵』。 風紀を乱す生徒に厳しく接するからだろうか、私と親しくしてくれる生徒は数えるほどしかいない。 それどころか、誰もあまり話しかけてくれない。 たぶん、私の存在は知っていても、それはあくまで『風紀委員長』というわけで、私の名前を知らない、という生徒が多いんだと思う。 今まで私はそれで良いと思っていた。 諦めていたのではなく、満足していた。 でも、いつからか私は、皆と楽しくやっている葉留佳のことが、羨ましいと思い始めていた…。 私も葉留佳のように、皆に好かれたい。 葉留佳のように、皆と楽しく笑っていたい。 だから私は、これからは皆に明るく接していこうと思った。 誰かが何かを望むと誰かがそれを叶えるゲーム 1時限目の休み時間、廊下で直枝理樹を見つけた。 「おはよう、直枝理樹」 「あ、おはよう…ってどうしたの? 二木さん」 「何かおかしい?」 「え、いや、別に…」 嘘なのはわかってる。 初めから笑顔でいる人が笑顔でいるのは普通。 でも、今まで笑顔じゃなかった人が、急に笑顔で声をかけてきたら、おかしく思うのは当然でしょう。 そんなことわかってるんだから、隠さずに言ってほしい。 だから言ってやった。 「言いたい事があるならはっきり言いなさい」 「いや、何でもないよ」 知ってる? 人って、はっきり言われるより、何も言われないほうが悲しく思う生き物なのよ。 そんな心の叫びに気付いたのか、直枝理樹はおずおずと言う。 「えっと、何で笑顔なのかなって思って」 「別に理由なんてないわよ、駄目かしら?」 「いや、そんなことはないけど」 「そ、じゃあ私は仕事があるから」 最後まで直枝理樹は怪訝そうな顔をしていた。 本当ならここで本当の理由を話しておくべきだったのかも知れない。 葉留佳のように皆と仲良くしたいって。 でも、私はそんなに正直にはなれないから。 私は不器用だから。 だから私はそっぽを向くことしかできなかった。 昼休み、私は直枝理樹達のクラスへいった。 目的は…さぁ、私にもわからないわ。 教室をのぞくと、直枝理樹達が何かをしようとしているところだった。 「じゃあ、ストラックアウトでもするか」 「でもやるための道具とかないよ?」 「いや、実は用意はしてある」 「どこに?」 「前を見ろ、前を」 「え? ってうわ! なんかパネルとか置いてあるし!」 黒板の前には縦横3枚のパネルがはまった台が設置されていた。 「っていうかここでやるんだ。他の人の迷惑じゃない?」 「いや、訊いたら是非やれって」 「そうなんだ!?」 「ちなみに、パネルの裏にはミッションが書いてある。それをクリアしたらOK」 「最後に残った一人は九人全員にジュースおごりだ」 「また凄い提案だね…」 「緊迫した雰囲気を楽しむのもゲームの1つだ」 「まぁ…」 ストラックアウト。 あなた達としたら、楽しくなりそう。 私も一緒になってやりたい…。 風紀なんていう、堅苦しいものなんて気にしないで、皆で一緒にそんなことをしてみたい。 そんなことを言ったら、皆は仲間に入れてくれるかな…。 ○ ○ ○ 「ねぇ、私も入れてくれないかしら」 「あれ、二木さん」 「駄目かしら?」 「いや、いいぜ」 「ついにおねえちゃんも参戦だねー!」 「ふふ、そうね」 「ならおかしくなるが、パネル一個増やさないとな」 スパンッ 「お、二木、早速当てたな」 「簡単よ、こんなのは」 私はパネルの裏を見る。 『リトルバスターズに入る』 「…え」 本当に…? 私なんかが、あなた達のような人達の仲間になってもいいの? 「さ、二木、どうするんだ?」 「え…」 「入るよな?」 「え、えっと…」 迷うことなんてない。 入らせてくれる機会さえあるのなら、あなた達が受け入れてくれるなら、私は喜んで入るわ。 「えぇ、入るわ」 「よし、じゃあ今日から二木もリトルバスターズの一員だ」 「じゃあ、よろしく」 お辞儀をしてあいさつをする。 顔を上げると、皆が笑顔で私を迎えてくれていた。 あぁ、私は本当に、叶えることができた…。 ずっとずっと入りたかったこのリトルバスターズに、私は入る事ができた…。 これで私は、葉留佳と一緒に笑って過ごすことができる。 葉留佳の方をみると、葉留佳も笑顔で私を迎えてくれていた。 ○ ○ ○ ふと気付くと、私は頬に数滴の涙を伝わせながら、教室の前に立っていた。 「さて、始めるぞ」 直枝理樹達は教室の中でストラックアウトを始める。 その中に私はいない。 そう、私はまだ、孤独のまま。 誰にも笑うことができず、皆から敵視されている存在。 そんな私が、彼等の中になんて、入れるわけがなかった。 スパンッ 「お、理樹、一発目から当てるとはすげぇな」 「あはは、僕も運動神経上がったかな」 「え〜っと、理樹のミッションは…」 楽しそうな彼等を見ているのは、私には耐え難い。 あまりにも、私は間違えすぎたから。 本当は彼等のように楽しく生活したかったのに。 私はそれをしなかった。 皆に冷たく当たり続けた。 大切な葉留佳にも、ずっと冷たく接していた。 初めから笑っていれば、今頃私だってあの輪に入れてたと思う。 今見た幻覚のように、皆とストラックアウトが出来たんだと思う。 でも、私はこんなだから。 今頃皆と仲良くなんて、できないから。 私は涙を俯いて隠しながら自分の教室に戻った。 ○ ○ ○ 放課後、私はグラウンドへ行った。 直枝理樹達が放課後に野球をしているのはかねてから訊いていたから。 カンッ 「わぁ、理樹くん飛ばしすぎッ!」 「ごめん!」 葉留佳が宙を舞うボールを追いかける。 ザザーーッ そして葉留佳はダイビングキャッチをしてボールを捕った。 あぁ、そんなことをしたら服汚れるわよ、葉留佳。 「あぁ! 服が汚れたぁ!」 ほら見なさい。 「理樹くんのせいだよーー!」 「えぇ、僕のせいなの!?」 愚痴を言いつつも、その葉留佳の表情は笑ったままだった。 ねぇ葉留佳。 どうしたらあなたのようにいつも笑っていられるの? どうしたら私は、皆と仲良くなれるの? 教えて、葉留佳。 私もあなたのような存在でありたいのよ…。 ○ ○ ○ 葉留佳 Side カンッ 理樹くんが打った球は私の頭上を抜けた。 「わぁ、理樹くん飛ばしすぎッ!」 「ごめん!」 でもこれは特大のフライ。 これくらいなら追いつける。 ザザーーッ 余裕で追いつけるけど、敢えてダイビングキャッチをした。 勿論、そのほうが楽しめると思ったから。 服を汚れるのは承知だったけど、ここは理樹くんをいじめる絶好の機会。 「あぁ! 服が汚れたぁ!」 わざとらしく高々と声をあげる。 「理樹くんのせいだよーー!」 「えぇ、僕のせいなの!?」 勿論、誰のせいでもない、飛び込んだ私が悪いんだけど。 でも、理樹くんいじめるの楽しいから。 ごめんね、理樹くん。 「やはは、まぁいいんですけどネ」 やっぱり楽しい。 リトルバスターズに入ってから、楽しい事ばっかり。 リトルバスターズの皆といれば、ずっと笑っていられる。 でも、何かが足りない気がする。 そんなの考えなくてもわかる。 二木佳奈多(お姉ちゃん)がいないから。 お姉ちゃんがいれば、きっと今のリトルバスターズはもっと楽しくなる。 お姉ちゃんはいつもはあんな性格でも、本当はとても優しい。笑うことだってできる。 だから、お姉ちゃんもきっと、笑う機会があれば、きっと…。 ふとした時に、小さなことが気になりだすのは世の必然。 気にしないでおこうと思えば思うほど、気になる。 私の視界の隅に、人らしきものが映った。 目を凝らす。 お姉ちゃんだ。 私達のほうを見ている。 でも、そのお姉ちゃんは寂しそう。 涙を流しているようにも見える。 ほんの少し風が吹いただけで、崩れ去りそうなくらい、弱々しい。 「おねえちゃーーーーん!」 私は叫んだ。 ○ ○ ○ 佳奈多 Side 「おねえちゃーーーん!」 葉留佳の声が聞こえる。 私の存在に気付いたんだろう。 「おねえちゃーーーーん」 私は立ち去ろうとする。 本当なら、返事をしたい。 大声で、葉留佳の声に応えたい。 でも、そんなこと、私は今までしなかった。 だから、今もできない…。 「いっしょに野球しよーーよ!」 足を止めた。 葉留佳、そんな言葉を、私にかけてくれるの? こんな冷えきった私に、声をかけてくれるの? 「ぜったい楽しいから、ね! いっしょにやろーー!」 そうね、きっと楽しいわね。 あなたが楽しそうなんだから、それが私にとって楽しくないわけ、ないでしょうね。 でも私はあなた達と一緒にいることなんてできない…。 「二木さん、ほら、おいでよ!」 …え? 「佳奈多さん、れっつ・あ・べーすぼーるなのですっ!」 「佳奈多君、早く来るがいい」 私を受け入れてくれている? 「ほら、二木、ぐずぐずしてないで早く来い」 「一緒に筋肉つけようぜ」 「二木も、野球ぐらいはできるんだろ?」 「かなちゃん、一緒にやりましょ〜!」 「や、やるならさっさと来い!」 あんまり面識のない人達まで、私のことを呼んでくれている…。 「早く行ってはどうですか? 二木さん」 いつの間にか隣には、確か、そう、西園美魚が立っていた。 彼女もまた、私の後押しをしてくれる…。 「ほら、お姉ちゃん。皆待ってるよ」 葉留佳が近づいてきて私の手を掴んだ。 「で、でも葉留佳」 「一緒にやれば、絶対楽しいよ、ね?」 「でも私は…」 「それに、お姉ちゃんがいないと、なんだか物足りなくて…」 「っ! 葉留佳っ」 「だから、ね?」 葉留佳、あなたは私にきっかけをくれるの? 皆の前で笑うことのできない私に、笑うきっかけをくれるというの? 「きっとリトルバスターズに入れば、学園生活が楽しくなるよ」 葉留佳がそれを私に与えてくれるというのなら。 「お姉ちゃんの笑う姿、もっと見たいよ」 私は喜んで受け取らせてもらうわ。 「だから入ろうよ、リトルバスターズに」 「えぇ、そうね…」 ありがとう、葉留佳。 ○ ○ ○ 葉留佳 Side 昼休みの終わり、私は理樹くん達に言った。 「ねぇ皆、お願いがあるんだけど、いいかな?」 皆の視線がこっちを向く。 「お姉ちゃんを、リトルバスターズに入れてくれないかな」 突然だったから驚いたかな、と皆を見ると、そんなに驚いた風には見えなかった。 「いいぜ、二木佳奈多だったっけか? 大歓迎だ」 恭介君が賛成してくれる。 「うん、いいよ」 「大歓迎だよ〜」 恭介君に続き、皆も同じ意見だった。 「じゃあ誘いに行くか」 恭介君が誘いに行こうと提案する。 「あ、駄目だよ」 私はそれを止める。 多分、いきなり面識の少ない人が誘うと怪しまれる。 「今度私が誘ってみるからさ、そのとき皆も一緒に誘ってよ」 「まぁそれならそれでいいが」 もちろん、皆もOKを出してくれる。 これで後はお姉ちゃんに声をかけるだけ。 5時限目が終わったらすぐに声をかけようとしたけど、いなかった。 6時限目が終わった時も、同等にいなかった。 仕方なく、野球の練習へ行く。 そして、お姉ちゃんを見つけた。 「おねえちゃーーん!」 そう叫んでも、お姉ちゃんは返事をしてくれない。 それでも私は言い放った。 『一緒に野球をしよう』と。 その言葉を先駆けに、皆もお姉ちゃんを誘ってくれた。 すかさずお姉ちゃんのところへ行った。 お姉ちゃんは皆と遊ぶきっかけが欲しいだけ。 きっかけさえあれば、お姉ちゃんは皆と楽しく遊べる。 だから私はお姉ちゃんの手を掴んだ。 そしてお姉ちゃんは『リトルバスターズに入ろう』という私の言葉を受け入れてくれた。 ○ ○ ○ 佳奈多 Side 「よし、そうとなればテストだな」 「やっぱりやるんだ」 「リトルバスターズに関心がある」 「えぇ、とてもあるわ」 「合格」 「それテストなのかな…」 そんなくだらないものも、今の私にとってはとても嬉しかった。 「ふふ」 だから自然に笑いがこぼれた。 「どうかした?」 直枝理樹が訊いてくる。 今度の私は正直に答える。 「あなた達って、ホント楽しいことしてるのね」 「あはは、まぁね」 「二木もリトルバスターズに入ったんだから、楽しい事をすることになるんだぞ」 「もちろん、望むところよ」 「じゃあお姉ちゃんは今からノックをして真人くんにボールを当てて『おら、しゃきっとしやがれクズ野郎』と言う事!!」 ズビシ、と葉留佳が私を指差してくる。 「わかったわ」 今の私ならどんなことだってやるわ。 それを私は精一杯楽しむ。 今まで味わうことのなかった楽しさを、私は味わいたい。 勿論、私は葉留佳の言われたとおりにした。 井ノ原真人は痛がっていたけど、私はとても楽しかった。 その後の野球の練習の時も、私はずっと笑顔だった。 その笑顔は誰でもない、葉留佳が与えてくれたもの。 笑いたくても笑えなかった私に、きっかけをくれた。 一度与えてもらったものを失わないためにも、私にはやるべきことがあった。 翌日。 「風紀委員を辞める?」 先生が驚いた表情で言ってきた。 「はい」 「いや、はいって、君がいなくなったら、学校はめちゃくちゃだよ」 「そうでしょうね」 ホント、そうでしょうね。 だって、これからは私が風紀を乱す側につくのだから。 「とにかく、辞めさせてもらいますから」 「ちょ、ちょっと二木さん」 一方的に押し付けて私は教室を出た。 どんなことを言われても、私は風紀委員には戻らない。 『皆の敵』ではありたくないから。 皆と楽しく遊びたいから。 いつまでも、笑っていたいから。 「お姉ちゃん!」 葉留佳が私の隣を歩く。 「先生となにしてたの?」 「ん、風紀委員を辞めてきたの」 「そうなんだ」 「えぇ、だからこれからはあなた達と思いっきり遊べるわ」 「ホント? じゃあ早く皆のところへ行こ! ってあれ!?」 「ほら、早くしないと、昼休み終わるわよ!」 私は走りながらそう言う。 「あ、待ってよぉ!」 あぁ、なんて楽しいんだろう。 こんな楽しい毎日を過せるようになるなんて夢にも思わなかった。 ずっと笑っていられる日々が来るなんて、想像もできなかった。 そんなものを手に入れることができた。 私はそれを失いたくない。 でも、きっと大丈夫よね? 大好きなあなたが与えてくれたものなんだから、きっと失わないわよね? 皆違う道へ行っても、私達はずっと仲間でいられる。 皆一緒に、笑っていられるよね、葉留佳。 「お、やっときやがったな」 「遅れてごめんなさい」 「なにしてたの?」 「ちょっとね」 「言っちゃいなよ、お姉ちゃん」 「えっと、風紀委員を辞めたのよ」 「おぉーー!」 「んじゃ皆で風紀委員脱退祝いのパーティをしなくちゃな」 「ふふ、じゃあ楽しみにしてるわ」 「勿論だ、やるからには、徹底的にやらないとな」 「じゃあ日時は後日決めましょ〜」 「お、小毬、今回も主催でいくのか」 「よぅし、任せてぇ〜」 「んじゃ、皆揃ったし、今日も始めるか」 「今日は何するの?」 「ん、そうだな…」 始まりは遅くても、遅れた分を取り返すぐらい、楽しめば良い。 どんなことでも精一杯楽しんでみせる。 それに、今までのあなた達を見ていると、リトルバスターズにいて楽しくないというのは考えられない。 だっていつもあなた達は、笑っていたから。 私が入った時も、あなた達はずっと笑っていた。 心から祝福してくれるかのように、迎え入れてくれた。 だから私も、今こうして笑うことができる。 全ては、リトルバスターズの皆のおかげ。 私の笑いの絶えない日常は今、幕を開けた…。 [No.247] 2008/04/25(Fri) 21:12:18 |
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