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all 第9回リトバス草SS大会(仮) - 主催 - 2008/05/08(Thu) 20:11:00 [No.255]
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機械音痴の小説書き - ひみつ - 2008/05/09(Fri) 19:36:28 [No.264]
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そんな風に生きてきて。 - ひみつ - 2008/05/09(Fri) 18:54:37 [No.262]
じっとまって、ただ。 - ひみつ - 2008/05/09(Fri) 18:53:56 [No.261]
[削除] - - 2008/05/09(Fri) 16:50:52 [No.259]
神秘には神秘的な死を(修正) - ひみつ - 2008/05/09(Fri) 16:53:07 [No.260]
もっと! もっと愛を込めて! - ひみつ@25kbとか\(^o^)/ - 2008/05/08(Thu) 23:39:05 [No.258]
姉妹二組 - ひみつ - 2008/05/08(Thu) 21:29:07 [No.257]
前半戦ログですよ - 主催 - 2008/05/11(Sun) 02:33:25 [No.280]
ゴミ箱さんの変(感想会へのレスSSです) - ひみつ@なんか書かなきゃいけない気がしたんです… - 2008/05/11(Sun) 21:26:46 [No.285]
後半戦ログですー - 主催 - 2008/05/11(Sun) 23:23:27 [No.287]


そんな風に生きてきて。 (No.255 への返信) - ひみつ


 カリカリ…
 カリカリカリ…
 
 ノートに鉛筆を走らせる音が、部屋に響く。
 
 カリカリ…
 カリカリ…ボキッ
 
 芯が折れた。
 その芯はノートの上を転がり、下へと落ちる。
「……」
 折れた芯のかけらが、ノートにあとをつける。
 僕の書いた字の上にも、まだ何も書かれていない、空白のページにも。
 
 
   そんな風に生きてきて。
 
 
 授業が始まる。
 その教室には、僕ひとりしかいない。
「…直枝」
 目の前の先生が話しかける。
「…その…大丈夫か」
 きっと、あの事故のことを言っているのだろう。
 どの時間でも繰り返されるやり取りだ。
 そんなとき、僕は決まってこう返す。
「大丈夫です。僕は、つらくありませんから」
 そうか、と声が聞こえた。
 そうして、今日も授業が始まる。
 
 
 
 カリカリ…
 カリ…カリカリ…
 
 ノートに文字を並べてゆく。
 白かったノートが、黒くなってゆく。
 
 カリ…
 
 僕は手を止めた。
 手が痛い。
 文字を書きすぎたせいだろうか。
「……」
 僕は手を、ひとつ大きく振ると、また文字を書き始めた。
 
 …カリ
 
 今日もまた、一本芯が折れた。
 
 
 
『大丈夫です。僕は、つらくありませんから』
 その言葉を、何回繰り返しただろう。
 学校に持ってゆくのは、授業の準備と一冊のノート。
 席はいつもと変わらない、教室の左奥。
 窓からは、いつもと変わらない景色が見える。
「…直枝、ここの答えは」
 授業の進度は他のクラスと変わらない。
 たまに僕が持病の関係で寝てしまうときもあるが、いつものことなので、大して問題はなかった。
「…では、今日の授業はこれで終わりだ。…起立」
 そうして、寮へと帰る。
 
 
 
 …カリカリ
 
 どうして僕は、こんなことを始めたのだろう。
 そんなことを思いつつも、僕は、ノートへと文字を書く手を休めることはしなかった。
 
 カリカリ…ボキッ
 
 今日は二本、芯が折れた。
 
 
 
 今日は休日。
 学校はなく、つまりは、何もすることがない、ということだ。
「……」
 僕は、ノートを広げた。
 筆箱から、鉛筆を取り出す。
 
 …カリ、カリカリ…ボキッ
 
 …ボキッ
 
 僕はこの音が嫌いだ。
 この、芯の折れる音が嫌いだ。
 とても、痛い。
 
 …カリ…
 
 また、僕は鉛筆を削り、ノートへと手を滑らせた。
 
 カリカリ…
 カリ…カリカリ…
 
「……」
 
 ボキッ…
 
 今日だけで、四本も芯が折れた。
 
 
 
「……直枝くん」
 となりのクラスの女の子に話しかけられる。
 いつか、同じクラスになったことのある人だ。
「…あの…」
 ああ、そうか。
 この人もだ。
 いつもと、同じことを僕に聞くつもりだ。
「大丈夫です。僕は、つらくありませんから」
 だから僕も、同じように返す。
「……」
 一瞬、相手がきょとん、とする。
 そして、一拍おいてから僕に一声かけて、その場を去っていった。
 
 
 
 …ボキッ…
 
 また、折れた。
 …今日は寝よう。
 
 …パタン
 
 ノートを閉じて、机の端へと置く。
 そうして、ベッドへと足を運ぶ。
 
 …バタン
 
 
 
「……」
 体中が痛い。
 ベッドが硬い。
 …いや…。
「……」
 ここは床の上だ。
 昨日、ベッドへと向かう途中に倒れてしまったらしい。
 そんなに疲れていたのだろうか。
「……」
 僕は床から起き上がり、昨日からずっと着たままだった制服のしわを伸ばす。
 そして、今日という一日がまた、始まった。
 
 
 
「直枝?…おい、直枝っ」
 授業中。
 先生の声が頭上から聞こえてくる。
「話を聞いているのか?…眠ってはいなかったようだが」
「…あ…はい。大丈夫です。…すみません、ぼーっとしちゃって…」
「…具合が悪かったら無理せず保健室に行け。そのほうがいい」
「ありがとうございます。…でも、大丈夫です」
 別に具合の悪いわけではない。
 ただ、少し疲れているだけだ。
「じゃあ、授業を再開するぞ。…教科書の…」
 先生が黒板の前に戻り、授業がまた、始まった。
 
 
 カリカリ…
 
 部屋に帰ると、また、ノートを広げた。
 削りなおした鉛筆でまた、文字を書いてゆく。
 このノートもあと、一ページ。
 
 …カリ…カリカリ…カリ
 
 残り、十行。
 
 カリ…カリ
 
 九行。
 
 カリカリ…
 
 八行。
 
 …カリ…
 
 七行。
 
 カリ…カリカリ
 
 六行。
 
 カリカリ…カリ…カリ
 
 五行。
 
 カリ…
 
 四行。
 
 カリカリ
 
 三行。
 
 …カリ…
 
 二行。
 
 カリ…
 
 一行。
 
 カリ…ボキッ
 
 
 …バタン
 
 音が聞こえた。
 目の前には、暗闇。
 体が痛い。
 どうしてだろう。
『理樹…』
 声が聞こえる。
 それと同時に、意識が遠ざかってゆく。
『理樹っ!』
 これはあのときの記憶。
 思い出したくなかった。
 それでも、周りが思い出させ続けた記憶。
『りきっ…』
 僕は何も救えなかった。
 守りぬけたのは、僕の体だけ。
 それも、僕の力ではなく、僕以外の人々の力によって、だ。
『…り…きっ』
 何も、残らない。残るはずがない。
 僕はただ、慣性的に生き続けただけだ。
 それも、
『…り』
 ここで、
『き』
 終わり。
 
 
 
 僕は暗闇に居続けた。
 残ったのは、折れた十本の芯と、真っ黒になったノート一冊。
 それだけだった。


[No.262] 2008/05/09(Fri) 18:54:37

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