「グスッグスグス」 「どったのみおちん」 中庭を歩いていたら信じられないものを見つけた。何が起きても平然としてそうなあのみおちんが泣いているなんて。 「あっ三枝さん。すみません、この本を読んでたらつい」 「何だ本か。何か悲しいことがあったのかなって心配して損した」 カバーが掛けられているから何の本かわからないけれど、こんだけ泣くんだからきっとすごくいいんだろうな。ちょっと読んでみたくなった。 「いえ、悲しいというのも間違いではありません。感動半分悲しみ半分といったところでしょうか」 「ねえ、ちょっと見せて見せて」 「はい」 みおちんが読むような本だったらきっとすごく難しいんだろうけど、意地でも読んでみたくなった。そして渡された本を開いてみる。 テニスの王子様42巻 「……」 「私はコミックス派なので私にとっては今日がお別れです。グスッもう会えないんですね」 えっとどうしよう。つっこみたいけど慰めた方がいいのかな。 「あははは、そんな泣かなくてもまたすぐ面白いマンガ見つかるって」 けどその一言でみおちんはかつてないきつい視線をわたしの方に向けた。 「見損ないました。どれだけいたずらを繰り返しても、人の痛みを知る優しさは決して失わない人だと思っていたのに」 「ちょっそんなおおげさなこと」 「はっ!? いけません。嘆いていても仕方ありません。友達が間違った道に進もうとしているのなら、それを正すのが真の友情。というわけでまず軽く三時間ほど塚リョに説明。そのあと青学、他校と広げていきましょう」 「最初の時点で全然軽くない!」 「ああ、時期も近いですしミュージカルの方が先の方がいいでしょうか。でも原作を知らないとわからない部分も多いですし。覚えることが多くて大変ですね」 「そんなの覚えたくない!」 「さあ、行きましょう」 「いやだああああっ!」 細い体からは信じられないほどのパワーでみおちんが私をひっぱっていく。そんな私の耳に吹奏楽部の練習の曲が届いた。ドナドナだった。 [No.358] 2008/06/08(Sun) 21:10:20 |
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