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ずっと、ずっと。 こんな世界ばかりがただ、広がっていたら良いのに。 ものがたりはつづいていった。 『りき、いくぞっ!』 これは、きょうすけの声。 これは、ぼくらの日常。 これは、たのしい毎日。 『なんだ?きんにくは必要か?』 『いらん。おまえばかだろ』 いつだって楽しかった。 そう、昔はいつだって楽しくて。 でも。 『明日も、たのしいよね』 『ああ、もちろん』 今だって、その延長だ。 「……」 ここは、楽しい毎日の続き。 いつだって楽しい、僕らの日常。 「きょうすけ、りん」 僕は、ずっと楽しい時間を過ごしてきた。 だから、それはずっと変わらないと思っている。 そう、変わらない。不変のもの。 「まさと、けんご」 僕らは、子供の頃から一緒だった。 そう、毎日一緒に過ごしてきたんだ。 …今は? 今だって、ずっと、一緒だ。 「……」 ここは楽しい日常。 いつだって楽しいここは、闇の中。 『きょうは何をするの?』 毎日が楽しかった。 だから、僕は生きてゆけた。 『じゃあ…そうだな。花火でもするか!』 『いよっしゃあっ!!花火だぜっ!花火!!今日こそはけっちゃくつけてやるからな!』 『花火か…ひさしぶりだな』 何をするにも一緒で…彼らはもう、家族以上の存在ともいえるような間柄だった。 とにかく、これが僕の希望だった。 そして、未来だった。 『花火か…あたしは線香花火がやりたい』 『なにがたのしいんだ?すぐ消えちまうのに』 『…きっと、それがいいものなんじゃないのか?』 僕は花火は消えて欲しくないと。 そう思った記憶がある。 『まあ、いずれ消えるものは消えるしな』 『そういうもんか』 理解なんて、するもんか。 僕の大切なもの。 それは、なんだろう。 「…これ、かな」 僕の胸の中にある、ぬいぐるみ。 これは、僕の小さい頃からあって、みんなで遊んだ記憶がある。 もっとも、格闘ごっことかの悪役だったが。 「……」 それを見ると、僕の心は、安らぐんだ。 ずっと続いてゆくものはあるんだ。 そう、思えるから。 「…ずっと、一緒にいるよね」 僕らは、いつも一緒だったから。 ずっと彼らと生きてきて、ずっと彼らと一緒にいた。 他の人とは…どのように接していたんだろう。 思い、だせないな。 『きょうすけ』 『なんだ?』 ずっと、彼らといればいいと思っていた。 そうすれば、ずっと、楽しいんだから。 何も悪いことなんて起こらない。 『いまさ、なに、考えてたの?』 『うーん…。そうだな』 『なに?』 ずっと、五人でいればいい。 本気でそう思った。 『なに、考えてると思う?』 『え…っと…。わかんないよ…』 『…じゃあ、宿題な?』 きっと僕らなら、それは当たり前のように出来ることだと思った。 ずっと、一緒。 小さなころから、ずっと一緒で…。 今、この学校でもそんな毎日は続いている。 五人。 ずっと、一緒だ。 「……」 でも、ひとつだけ不思議なことがある。 なにか、足りないような気がするんだ。 それを思うのは、夜空の星を見たとき。 空から落ちる雪を見たとき。 あぜ道にたまる泥水を見たとき。 夕焼けに染まる空を見たとき。 どこまでも続く広い海と空を見たとき。 …どうして、だろう。 どうして足りないような気がするのだろう。 僕ら五人。 一緒にいれば何も足りないものなんてないはずなのに。 「……」 考えれば考えるほど分からなくなってきた。 でも、なにか心の中にひどく大きな隙間が開いた気がして。 それを埋めるためなのか、涙があふれ出てきた。 『きんにく、きんにくーっ!』 『まさと、好きだね。きんにく』 『ああ、もちろんさ!』 子供の頃の大切なもの…って、なんだっただろう。 なにか、大切なものなんて…たからものなんて、あっただろうか。 『りきもやるか?』 『えぇーっ…。どうやればいいの?』 僕はきっと、みんなといられればそれでよかったんだと思う。 ということは、今の大切なものもそれ、ということだ。 いつだって、大切なものは何も変わらない。 『とりあえず楽しめ、ってことだな!』 ずっと、楽しければよかった。 なんて、僕はおかしいのだろうか。 今だって、楽しい日常のはずなのに。 それは、空から落ちる水の波紋を見たとき。 『きょうすけ、どこいくのっ?!』 『着いてからのお楽しみだっ!』 ずっと、彼らと一緒にいた。 それは楽しいときも、つらいときも続いた。 …つらいときなんて、あったっけ? 思い出せない。 なにも、思い出せない。 『…着いたぞっ』 思い出せない? いや、そんなのじゃなくて…。 思い、出したくない。 『うわ…っ…』 なんで思い出したくないんだろう。 それたつらいことがあったから。 つらいことがあったから、つらいことを思い出したくない。 至極当たり前のこと。 元がなければ、事象は起こりえないのだから。 『ほら、きれいだろっ!』 そこは丘だった。 とてもきれいな緑の広がる丘。 どこまでも続いて…。 空と、溶け合う。 どこまでも続く、夢の世界。 ああ、僕は…。 いつまでもこんな世界で、生きていたかったのに。 ぽしゃん。 水の音がした。 大きな、水の音。 僕のたからものが、落ちた音。 「……」 雨が降っていた。 頭からつま先まで、もうびしょびしょだ。 早く、家に帰らなきゃ。 あの人たちのところへ、戻らなきゃ。 『……き…』 声がする。 あの、僕の手を引く、声が。 どこにいるの。 君は、誰。 『…りき…』 早く助けて。 僕は今、つらいんだ。 とても悲しいことがあったんだ。 いやなんだ。 たすけて。 抜け出せない。 あんな。 あんな――― 『りき!』 ひどい事故だった。 僕しか助からなかった。 みんな、死んでしまった。 いなく、なってしまった。 嫌だったから、僕はずっとみんなと一緒にいた。 そう。ずっと一緒にいたんだ。 『きみの力がひつようなんだ!』 早く、手を引いて。 助けて。 このひどい世界から…。 早く僕を出して。 ここは、闇。 ずっと僕のいたかった世界。 そう。 僕の周りには、みんながいる。 四人がいる。 ずっと、子供の頃から楽しかった世界。 つらいことなんて、何もなくて。 ねえ、きょうすけ。 僕、まだ、きょうすけの考えてること、分からないんだ。 いつまでに、考えればいいのかな。 いつでも良いのかな。 そうだよね。 ずっと、一緒にいるもんね。 この世界は、消えたりなんてしないよね。 でも、僕のたからものは、手の中から――― 消えてしまった。 ずっと、ずっと。 こんな世界ばかりがただ、広がっていたら良いのに。 [No.374] 2008/06/20(Fri) 19:18:10 |
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