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たぶんこれは第9話 - 海老 - 2006/10/04(Wed) 23:51:40 [No.80]
遅くてごめんなさい&とりあえずかきさんの伏線は回収... - 春日 姫宮 - 2006/07/16(Sun) 00:56:13 [No.71]
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何も進展のない五話 - イクミ - 2006/04/22(Sat) 20:30:43 [No.49]
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話の大まかな流れを決める3話 - おりびい (代理:かき) - 2006/04/16(Sun) 23:54:13 [No.40]
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いち - かき - 2006/04/16(Sun) 23:49:45 [No.38]


いち (No.37 への返信) - かき

 ……さようなら……

 ……  っ……

















 ――。

 ――――。





 透き通るような、夢を見ていた。
 柔らかな永遠。一面の白、ただそれだけが頭に残っている。
 とても悲しくて、寂しい夢だったように思う。
 具体的な中身は思い出せない。ひどくぼやけていて、掴み取れそうになかった。
 右手を軽く握ってみる。思った通り、何も掴み取れはしない。
 ――僕は、一体……?
 漠然とした思考。焦点はなかなか定まらない。
 意識をかき集める。濃い靄(もや)の中、自分を探し求める。
 どくん、どくん。心臓の音が聞こえる。自分は確かに生きている、とそれだけで少し安心する。
 ふと、気付く。左手の温もり。
 優しい、優しい温もりだった。それはそう、泣きたくなるぐらいに。
 離さないよう、ぎゅっと握り締める。柔らかい心地よさ、壊してしまわないよう注意しながら。
 ぎゅっ、握り返される手。
 嬉しくなって、少しだけ力を込める。
 ――ぴくっ。
 途端、揺れる。
「……朋也、くん?」
 少しの間を置いて、声。
「朋也くんっ」 
 あれ、この声は……
 促されるようにまぶたを開く。真っ白な天井。
「朋也くんっ!」
 声のした方に顔を向ける。
 その時になって、ようやく自分がベッドに寝かせられていることに気付いた。
 ベッドの横。俺の左手を握っているのは……
「ふる、かわ?」古河渚、だった。
 まどろみの中で感じた温もり。彼女に違いなかった。
 ずっとこうして手を握っていてくれたのだろうか。……多分、そうなんだろうな。
「古河?」返事のない古河にもう一度声をかける。
「……え?」
 え? 返ってきたのはたった一文字。それも疑問の言葉。
 不安になって俺は口にする。あまりにも分かりきった、馬鹿げた質問を。
「古河じゃ、ないのか?」
「……」
 返事はない。質問の馬鹿さ加減に、呆れて声も出なくなったのだろうか。
「おーい、古河?」
「……岡崎です」
「お、岡崎? いやいや、お前、古河だろ?」
 古河の口から出てきた予想だにしなかった言葉。驚いて、がっと身を起こす。
 突然の動きに、それまで寝ていた身体と、それにベッドが合わせて軋む。
 何とかそれをやり過ごし、改めて、俺は女性の姿を目に映した。
 癖なのだろう、高い位置で二本跳ねた髪がまず目に付いた。大きくて少し垂れ気味の目が俺の顔を見つめている。
 髪は少し長くなったようだ。頭の後ろ、青色のリボンで束ねられている。
 初めて見る髪型だったけど、でも、どう見ても彼女は「古河渚」だった。
「古河……だよな?」
「……朋也くん」古河の声は震えていた。「ひどい、です……」
 それは今にも泣きそうに。気の弱い古河だから、こっちとしても泣かれるのはたまらない。
 たまらない、のだが、それ以上に古河の言葉に違和感を持った。
 朋也くん。……朋也くん?
 確か古河は俺のこと、「岡崎さん」って呼んでなかったか?
「ちょ、ちょっと待ってくれ古河っ!」
「……ません」
「え?」
「古河じゃありませんっ! 岡崎ですっ!」
「え、と。じゃ、じゃあ、お、岡崎?」
 予想外に強い古河の口調に、情けなくも俺は押される形になってしまう。
「……」
 言われたとおり岡崎と呼んでみたのに、それでも古河は不満そうだった。
「……渚」
「は?」
「渚。わたしの名前です」
「いや、いやいやいやちょっと待てよ」
「待ちません。渚、です」
 ずいっと身を乗り出して。
 今までずっと「古河」だったのに、それを突然、「渚」と。
 呼べるはずもなかった。
「渚、です」
「いや、だから」
「な・ぎ・さ」
 古河は頑固だった。相当に。
 こんなところもあったんだ。古河の意外な一面を知って驚く。
 同時に少し微笑ましくも思う。そして、嬉しくも。俺の知る古河は、自分を出すことのできない、優しいけれど気の弱い奴でしかなかったから。
 変わったのだろうか。それとも今まで表には見せていなかっただけだろうか。
 少し考えて、俺は頭を振る。そんなのどっちでもいい
 こうして俺に対して強く迫ってくる古河。それが現実。
 違うか。だから古河じゃなくて――
「……なぎ、さ?」
 言われた通り、名前で呼んでみる。
「はい」
 ふんわりと。
「……渚」
「はいっ」
 満面の笑み。見ているだけでこっちも幸せになれそうな、そんな笑顔。
 いいな。素直にそう思う。
「朋也くん」渚は握った手にまた少し力を加える。「身体、平気ですか?」
「身体?」
「はい」
「ん、どうもないけど」言って、少し考える。「そもそもさ、俺、どうしたんだ?」
「覚えてないんですか?」
 心配そうな渚の顔。胸が痛む。
「……ああ。正直さっぱりなんだ。つーか、ここは?」
 と、今さらといえば今さらな疑問。
「病院です。藤林さんの勤めてる」
「ふ、藤林ぃ?」
「はい。そうですけど」こくん、と小首を傾げて言う。可愛い。「どうかしたんですか?」
「い、いやだって」
 勤めてる?
 おいおい、だって俺たち――
「俺たち、高校生だろ?」
「え、えええええええっ!?」


[No.38] 2006/04/16(Sun) 23:49:45

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