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逃げた。 ここから、先へと。 死というものと、となり合わせになったとき。 「はぁ、はぁ…っ」 僕は走っていた。 ここから、逃げるために。 横を通り抜ける風の音はうるさく、僕を急き立てるように感じた。 なぜ逃げているのだろう。 それは、 「…はっ…、はぁ」 それは、そのとき感じたもの。 なぜか分からないけど、僕はものすごく、恐怖を感じたんだ。 その人は逃げろといった。 そこから先へ。 現実と向き合え、といった。 怖かった。 こわかった。 …なにがだろう。 なにが、こわかったんだろう。 僕は 周りの景色が消えてゆく。 今まで形を保っていたものに、次々と霞がかかってゆく。 現実では、無くなる。 「…はぁ……っ」 今までなんとも感じていなかった校門までの距離が、ものすごく長く感じた。 それだけ、ここは冷たく暖かい。 「鈴……」 僕は一緒に走っているはずの鈴に声をかける。 なぜか、不安になったから。 「……ん」 かすかに、鈴の声と鈴の音。 そして、足音。 安心した。 …ここに、いた。 ここには優しい人たちがいっぱいいた。 僕は死なない、と。 僕はこの先に進め、と。 背中を押してくれた人たちがいた。 僕には、その人たちに感謝を伝える方法が無い。 まだ、ない。 僕はそのとき 走っている。 消え去ってゆく夢の中を、走っている。 消えてゆく。僕らの世界が。 「…はっ…」 真っ白で、そこはまるで雪のようで、何もかもが白く埋め尽くされ、 そして、きれいだった。 そんな中、消え去る瞬間でも、その世界は、 きれい、だったんだ。 ずっとずっと、僕は旅をしてきたような気がした。 深い深い雪の中、ずっと何かを探すように。 隠された秘宝を探すように、ただ。 歩いて、歩いて、歩かされていたような、感覚。 僕は、どうして、何のために、ここまで。 ここまで、歩いてきたのだろう。 僕はそのとき、ずっと 外が、見えた。 その外は、もう。 真っ白で、何かがある白ではなくて、ただ何もない白で。 空白。 その言葉通りの、そと。 「…もう、すぐ…」 この守られた、暖かくて、それでいて冷たい世界。 そこから、出て行ってしまう。 なくなってしまう。 いままでの、何もかも。 何も…。 なにも…? 僕はそのとき、ずっと探してきたものが その世界には、どんな思いがあったのだろう。 暖かかった。 ずっと、暖かいと、信じて疑わなかった。 ずっと、ずっと、信じていた。 そんな、子供のときのような、そんな、すばらしい時間がいつまでも。 いつまでも、続く、って。 信じていたのに。 しんじて、いたのに。 僕はそのとき、ずっと探してきたものが、砕け散るのを ―――知った。 知って、しまった。 僕は、その暖かい世界から、一歩踏み出した。 何も無い、空白へと。 本当は何もなかったんだ。 もとから。 その何も無いものを、僕はずっと追いかけていたんだ。 でも。 でも、間違いなく、その探し物は僕を繋ぎとめていたんだ。 僕を支えていたものが、砕けて、散って、ぼろぼろに。 そうだ。だから僕は、あのとき。 逃げたんだ。 あそこから、あの、なにもないと、知らされてしまったあそこから。 だから。 僕は、こわかったんだ。 僕が、僕自身が崩壊していくような、そんな感じがした。 そう。 ここは、くうはく。 何も無い、しろ。 僕がずっと、しんじていた。 何かがあると、しんじていたこのしろの中に。 僕は、ただ。 ただ、沈んでいった。 何かがあると思っていた底は、ただのしろ。 [No.448] 2008/07/31(Thu) 14:50:37 |
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