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その時、二木佳奈多は仲直りした妹に尋ねた。 「ねえ。何で直枝理樹を選んだの?」 「え?」 きょとんとした顔で振り返る葉留佳に、佳奈多は続ける。 「拠り所にするのなら、彼じゃなくても良かったでしょう?現実は置いておいて、助けを求めるのならあの四人の中では一番頼りないと思うのだけど」 「むー、理樹くんをバカにすると許さないから」 「私だって直枝理樹の頼もしさは、まあ、今では知ってるわよ。でも普通、助けを求めるのなら棗恭介じゃない?」 唸りだしかねない妹を宥めつつ疑問をぶつける。 佳奈多にとっては当然の疑問だったのだ。 結果的に彼は最高の結果を出してくれたけれど、もしも自分が葉留佳の立場であったとして、果たして彼に頼る気になれるか、と。 もちろん葉留佳だって無意識の依存だったのだろうし、明確な理由を口にできるわけではないのだろう。 ただ、無意識ならばより頼りになりそうな人物に依存するのが自然ではないのか。そんな疑問だった。 「そりゃ恭介さんは完璧超人だから頼りになるけどさ。なんてゆーか、優しくはないと思うんだよね」 「そう?幼馴染の為に世界まで作ってしまうような男が?」 「うん。恭介さんが大事なのはもう決まっちゃてて、優先順位があるんだ。だから、もし私を助けることで鈴ちゃんたちが窮地に立つようなことがあれば、きっと見捨てる」 「それでも、両方を助けてしまうのが棗恭介じゃないの?」 「あれれ?佳奈多ってばやけに恭介さんに詳しいね。何かあったの?」 「質問しているのはこっちよ」 「まあいいですけどネ。……確かに両方助けちゃうのかもしれないけどさ、でも結局、自発的に介入してくることはなかっただろうし」 「まあ、そうね。そんなお人好しは直枝理樹だけだわ」 「でしょ、というのも何だかヘンな気もするけど、まあそーゆーコト。それにね、やっぱり見捨てられるのが怖かったんだと思う」 後半は早口だった。葉留佳は俯き、それからゆっくりと顔を上げる。 「理樹くんってさ。何も知らないくせにヘンなトコで鋭くて、ちょっとでも関わると見て見ぬフリができない人だから。やっぱり、無意識にSOSサイン出しちゃったのかも」 「直枝理樹なら、介入してきてもいいと思ってた?」 「そんなことない!そんなことない、と、思う」 「ハッキリしないのね」 「なら佳奈多が私なら、どう思う?」 「私なら遠ざけるわね。決まってるじゃない」 「だよネ。全く我が姉ながら怖いなぁ」 「ちょっと。それはどういう意味?」 やはは、と笑って葉留佳は誤魔化す。全然誤魔化し切れてなんかいないけど。 「でもね。私と佳奈多の立場が逆でも、絶対理樹くんは動いたと思うよ」 「………なぜ、そうも言い切れるのかしらね、貴方達は」 「え?」 「こっちの話。で、理由を聞いてもいい?」 「ん、だって理樹くんは実はワガママさんだからネ。どこまでも普通なのに、自分が納得できるまで諦めたりしないんだよ」 「もうその時点で普通じゃないわ。アレ、絶対頭のネジが何本か飛んでるわよ」 「それを言うならリトルバスターズのメンバーは全員そうだって」 「確かに、そうかもね」 佳奈多も含めて、きっとそうなのだろう。コワレテイルわけじゃなくて、ただ人よりほんのちょっぴり珍しいだけの話。 「あんなに楽しくて、大切なモノがあったらさ。そりゃあ何が何でも、何を犠牲にしてでも守りたくなるってもんですヨ」 きっと、葉留佳の言ったことが全てなんだろう。そのカタチはそれぞれ違っていたにしても。 誰だって何かしら背負っていて。それが重荷であるのなら、軽くするには二つしか方法がない。 自分が強くなるか、他人を頼るか。 でもその中で、他人に頼る方法を知らない不器用の集まりが、あのリトルバスターズだった。 その中で唯一、頼り方を知っていたのが直枝理樹だったから。 葉留佳にしても佳奈多にしても、気がつけば彼に心を許している。 「でもまあ、こんな『世界』を作っちゃうのは、野生の本能ってやつかな」 「あらどうして?私には感情の塊に思えるんだけど」 「恭介さんはそうかもしれないけどね。やっぱりさ、誰でも生存本能ってヤツはあると思うんだ。それが夢でも、終わりを先延ばしにできるなら……縋りつきたくなるもん」 「そう、ね」 そうでなければ、こんな不可思議な世界は生まれなかっただろう。 二人を助けたいという想いが一つであることが事実である一方で、やはりそれぞれが心の奥底で願いを秘めている。 だからこそこうして姉妹は和解できて、幸せの可能性を手に入れた。 だが、夢の中でだけハッピーエンドを迎えたって仕方がない。いずれ覚める夢だとしても、せめてシンデレラのようにガラスの靴は残さなければ。 「でもね、葉留佳。きっと大丈夫よ。直枝理樹は我慢ができない人だから」 「大丈夫って、何が?」 「私たちのハッピーエンドだけじゃ終わらないって事。『Nothing or All』だとしてもね。きっと、辿りつけるから」 「佳奈多?」 「そろそろ次だわ。でも、忘れないでね」 「にゃはは、佳奈多は心配症だなぁ。大丈夫だって。もしも忘れてても、理樹くんが思い出させてくれるから」 「そう。なら、安心ね」 「うん、安心。だから、もう行くね」 「ええ」 白い世界は完全に白紙に戻る。この上に、次はどんな物語が重なるのだろう。 イレギュラーであっても、筆を持たない佳奈多には描くことはできないけれど。 「ねえ、棗恭介。貴方は本物の奇跡の起こし方を、知っているのかしら?」 もう何も残っていない空を、仰ぎ見た。 [No.453] 2008/08/01(Fri) 17:31:14 |
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