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all 第15.5回リトバス草SS大会(仮) - かき - 2008/08/06(Wed) 22:57:13 [No.478]
第零種接近遭遇 - ひみつ@呆れるほどに遅刻。 8516 byte - 2008/08/09(Sat) 05:44:35 [No.495]
――MVPコウホココマデ―― - 主催 - 2008/08/09(Sat) 00:22:55 [No.493]
野郎どものクリスマス 3700byte - ひみつ - 2008/08/09(Sat) 00:11:06 [No.491]
野郎どものクリスマス - 雪蛙@5010byte 暇だったのでちょっと加筆・修正してみた - 2008/08/14(Thu) 02:19:01 [No.504]
二人、一緒に - ひみつ@まったく自重しない - 2008/08/08(Fri) 23:59:46 [No.490]
Re: 二人、一緒に - ひみつ@まったく自重しない 7104byte - 2008/08/09(Sat) 00:11:09 [No.492]
七人の直枝理樹 - ひみつ 10112 byte - 2008/08/08(Fri) 23:55:38 [No.489]
兄として思うこと - ひみつ 7531 byte - 2008/08/08(Fri) 23:49:39 [No.488]
円舞曲 - ひみつ 5331 byte - 2008/08/08(Fri) 23:26:58 [No.487]
とある夜 2852byte - ひみつ@初 - 2008/08/08(Fri) 22:34:32 [No.486]
彼が居ないと - ひみつ 10233byte - 2008/08/08(Fri) 19:25:47 [No.485]
寂寥は熱情の常 - ひみつ 8656 byte - 2008/08/08(Fri) 16:09:14 [No.484]
ガチ魔法少女なつめりん - ひみつ 9211byte - 2008/08/08(Fri) 02:12:04 [No.483]
ふぁみりー - ひみつ 10236 byte - 2008/08/08(Fri) 01:04:45 [No.482]
家族 - ひみつ@いまさら 7162 byte - 2008/08/10(Sun) 17:02:56 [No.500]
『そして誰もいなくなった』starringエクスタシー三人... - ひみつ 9912 byte - 2008/08/07(Thu) 23:50:04 [No.481]
宮沢謙吾の休日 - ひみつ 9673 byte - 2008/08/07(Thu) 23:00:22 [No.480]
ログとか次回とか - 主催 - 2008/08/11(Mon) 00:01:38 [No.501]


『そして誰もいなくなった』starringエクスタシー三人娘 (No.478 への返信) - ひみつ 9912 byte

「さて、揃ってるわね」
「……まあ、揃っているにはいますけれど」
 とある空き教室。その教壇に立ってぐるりと室内を見回す佳奈多に、佐々美は困惑気味の声を返す。原因ははっきりしていた。チラリと隣の席に目をやる。
 まず目に入ったのは、白いリボン。次いで、それ以上に目立つ亜麻色の長く美しい髪。そこからふわりと漂ってくる匂いに、佐々美は同性でありながらくらりとしてしまいそうな自分がいることに気付く。その少女――そう、少女である――は、きっと美しいだろう。佐々美はそう思う。きっと、というのは、目隠しと口に貼られたガムテープのせいで、その顔の半分ぐらいが隠されてしまっているからだった。
「二木さん。つかぬことを伺いますが」
「なにかしら」
「……コレ、なんですの?」
「んーっ! んーっ!!」
 コレ、つまり問題の美(仮)少女が呻き声をあげた。もちろん、ガムテープのせいでまともな声にはならない。ガタンガタンと縛り付けられている椅子ごと身を揺らすが、拘束から逃れることは叶わないようだった。ちなみに亀甲縛りである。ナイスエロティック!
「ああ、ソレね。今回の集まりの主旨上、一応呼んではみたんだけど……」
「んーっ! んーっ!!」
「ほら、色々あるのよ、大人の事情ってやつが。まあ、ぶっちゃけるとネタバレは重罪だからなんだけど」
 それはぶっちゃけすぎじゃないのか、などと思う佐々美であったが、おおらかな心でスルーしておくことにした。
「んーっ! んーっ!!」
 スルーすんなーボケー、とでも言っているのだろうか。
「それにしてもコレ、なかなかムカつく身体つきでいらっしゃいやがりますわね」
 佐々美がかなりどうかと思われる日本語でコレのスタイルを評する。縄によってより扇情的に強調されている美(仮)少女の肢体は、男性の欲情を、女性の嫉妬を誘うには十分すぎるほどのものだと言えた。
「ちなみに上から83、55、82よ。身長の関係で神北さんを僅差で抜いて総合2位らしいわ」
「それは大丈夫なんですの? ネタバレ的に」
「いくらやってもゲーム中に出てこない情報にネタバレもクソもないわよ。ついでに笹瀬川さんは78、54、81ね」
「ついでで人のスリーサイズを暴露しないでほしいのですけれど……それとなんですの、その無性に癪に障る笑みは」
「余裕の笑みよ」
 一瞬ブチ切れそうになった佐々美だが、寸でのところで理性を働かせることに成功する。おーけい、くーるだ、KOOLになろう。
「……ふ、ふふ。余裕? 二木さん、あなただってそうたいして変わらな」
「数字なんてものに囚われている時点であなたは負けているのよ。実際に見て触ってどうなのか、重要なのはそこ」
「ぐッ……! そ、それはネタバ」
「ああ、大丈夫。既存の立ち絵とCGでも80というにはちょっと大きいかなーって感じだから」
「キィィィィィィィィィッ!!」
「うちの妹なんて、81であの立ち絵よ?」
「キィィィィィィィィィッ!!」
「ああ、でも笹瀬川さんは数字とブツが一致してたわね」
「キィィィィィィィィィッ!!」
「ところで、いつになったら本題に入れるのかしら」
「キィィィィィィィィィッ!!」

「んーっ! んーっ!!」

「さて、今日集まってもらったのは他でもないわ。あの集団……リトルバスターズになし崩し的に属することになってしまった私達だけど」
 一応断っておくと、佐々美や佳奈多がリトルバスターズに参加する類の話は以前から存在しており、これはその手の話である。断じてネタバレではない。仮に実際そうなっていたとしても、それは偶然である。
「一度、私達のポジションというものについて話し合っておくべきだと思ったの」
「なんというか、意外にもまともな提案ですわね……」
 リトルバスターズという集団は、一応草野球チームである。今までは10人(内マネージャー1名)でやってきていたわけだが、ここに新たに3人が加わることでレギュラー争いが生じることになる。
「まあ、わたくしは当然、棗鈴からピッチャーの座を奪うということになるのでしょうね。二木さんは……キャッチャーなんてどうかしら。三枝さんと双子バッテリー。彼女、確か左利きでしたわよね? ちゃんと鍛えれば戦力になるかもしれませんわ。もっとも、わたくしがいる以上控えにしかなりませんけど。おーっほっほっほ!」
「なに? あなた寝ぼけてるの?」
 ハッ、と鼻で笑われる。
 一瞬ブチ切れそうになった佐々美だが、寸でのところで理性を働かせることに成功する。おーけい、くーるだ、くーるびゅーてぃーになろう。
「……ふ、ふふ。寝ぼけている、ですって? これでもわたくし、あなたのことを評価して」
「誰が野球の話なんかしていたのよ」
 あっさりばっさりと斬り捨てられた。
「ポジションって言ったら、ボケとツッコミのことに決まっているじゃない」
 そして然も当然であるかのように言われた。
 これは二木さんなりのボケなのかしら、ツッコんだ方がいいのかしら、などと佐々美が思案しているうちにも、佳奈多は話を進めていく。
「考えてもみなさい。あのリトルバスターズという集団には、バカと確信ボケと天然ボケしかいないのよ? それを今まで、直枝はたった一人で……かわいそうに」
 ボケ9に対してツッコミ1。何かこう、想像することすら恐ろしくなってくる比率である。
「直枝は今、これまで一時も休まずツッコミ続けてきた無理が祟って寝込んでいるわ」
「それはなんというか、まあ……というか、そういう設定なんですの? 縛りがどうとか」
「縛り? 何を言っているのかわからないわね。縛られてるのはそこのソレだけで十分よ」
「んーっ! んーっ!!」
「とにかく。私達は新ヒロインとして、彼になるべく負担をかけないようにするべきだとは思わない?」
「まあ、一理あると言えないこともないですけれど」
 しかし説得力がなかった。今回の佳奈多を見る限り、彼女はどうやっても理樹に負担をかける側なのではなかろうか。しかも自覚もなくこんな集まりを開いているくらいだから間違いなく天然ボケの類である。
 天然ボケ佳奈多。
 佐々美は頭の中で何度かその言葉を繰り返してみる。そこはかとなく新ジャンルの匂いがした。アホの子佳奈多と言い換えるとちょっとかわいいかもしれない。
 すぱぁんっ!
「いたぁっ!?」
 脈絡なく響く快音と、頭のてっぺんを揺らす軽い衝撃。どこから取り出したのか、佳奈多は関西のお土産屋に置いてあるようなでっかいハリセンを携えていた。
「い、いきなりなにするんですの!?」
「何か失礼なことを考えていそうな顔をしていたから、ツッコんだだけよ。これから風紀を乱す者にはこのハリセンでツッコミを入れていこうと思うのだけど、どうかしら」
 理不尽極りなかった。要するにあのハリセンが振るわれるかどうかは佳奈多の機嫌ひとつにかかっているわけで、これはもはや恐怖政治であるとさえいえた。所詮ハリセン、されどハリセン。ツッコミの達人が振るうハリセンは鋼鉄さえも切り裂くという。
「まあそれは冗談だけど」
 そう言って佳奈多は、問題のハリセンをぽーいと放り捨てた。咄嗟にそれを掴み取る佐々美。
「なんでやねーん!」
 すかっ。
 外した。
「……はっ!? わ、わたくしは、今、なにを……!? か、身体が勝手に……まさかこのハリセンには、偉大な芸人の魂が籠められているとでも!?」
 すぱぁんっ!
「いたぁっ!?」
 佳奈多が二本目のハリセンでツッコんでいた。
「はぁ。まったく、人選を間違えたかしらね……というか、もっと他にマシな新ヒロイン候補はいなかったのかしら。杉並さんとかあーちゃん先輩とか……いっそストレルカとヴェルカを擬人化でもしといた方がまだよかったとさえ思えてくるわ」
「く、屈辱ですわ……犬さんより下に見られるなんていたぁっ!?」
 すぱぁんっ! と三度目のツッコミ。
「こ、今度はなんですの!?」
「犬さんっていう言い方がボケっぽかった」
 理不尽だった。

「んーっ! んーっ!!」

「まあとにかく、しっかりしてちょうだい笹瀬川さん。あなたは貴重な戦力なのだから」
 その戦力を潰そうとしているのはどこのどなたかしら、とそれこそツッコミを入れてやりたい気分の佐々美であったが、おおらかな心でスルーしておくことにした。
「というか、このおしとやかなわたくしのどこにツッコミの素養があるというんですのいたぁっ!?」
 すぱぁんっ! と以下略。
「今のがボケでなくてなんだというの?」
「くぅッ……!」
「で、一応質問には答えましょう。あなたのツッコミの素養、それは」
 どうせまた天然ボケなのだろうと佐々美は当たりをつける。ならば、報復のツッコミを入れる絶好のチャンスであった。気取られぬよう、それでいてすぐにでもハリセンを振れるように身構える。
 佳奈多が口を開いた。
「声よ」
 ぱしぃんっ!
「なっ……」
 佐々美のスイングは速く、そして正確だった。にもかかわらず。確かに佳奈多の頭頂部を直撃するはずだったそれは、しかし佳奈多の持つハリセンによって受け止められていた。
「ボケてもいないのにツッコもうとするのはルール違反よ」
「その発言がすでにボケボケですわよっ!」
 一度ハリセンを引き、角度を変えてのもう一打。またも止められる。
「あなたにはツッコミとしての重要な能力が欠けているようだわ」
 ツッコもうとする佐々美と、それを受ける佳奈多。二人のハリセンの応酬は、さながらチャンバラ染みてきていた。
「何がボケであるかを見極める能力。あなたには、それが決定的に欠けている」
「どの口がそれを言うんですのっ!?」
「んーっ! んーっ!!」
 すぱぁんっ!
 二本のハリセンが同時に美(仮)少女の頭部をはたく。
「んんー……きゅう」
 そのまま動かなくなった。
「なんだ、やればできるじゃない」
「思わずやってしまいましたけど、ちょっと不憫ですわね……」

「んーっ! んーっ!!」
 復活はわりと早かった。

(……なんとかしてこのボケ女にツッコミを入れてやらねば、わたくしの面目が丸潰れですわ……!)
 しかし佳奈多は、その理不尽さによって自身の隙をことごとく潰している。彼女にツッコミを入れるのは、並大抵のことではないだろう。ツッコミビギナーの佐々美には、いささか荷が重かった。
(かのツッコミマスター、直枝さんならばどうするのでしょう)
 どういうわけかティーカップを持ち出してきてお茶を楽しみ始めた佳奈多に視線を向ける。ものすごくツッコみたいが、返り討ちに遭うのは佐々美もすでにわかっているので我慢している。
(……ん? 直枝さんといえば……)
 ふと、思いつく。
「二木さん、先ほど直枝さんが寝込んでいるという話がありましたけれど。お見舞いにいかなくてよろしいの?」
 佳奈多はティーカップを置くと、ひとつ溜息をついた。
「なんで私が」
「だって、お付き合いしているのでしょう?」
 佳奈多の言葉を遮って言ってやると、彼女は言葉を詰まらせた。ビンゴである。隙がないのなら作ってしまえ。
「それは……そう、だけど」
 歯切れ悪く答える佳奈多の顔は、よく見ればうっすらと朱に染まっている。二木佳奈多も結局は女の子なのだということがわかって、佐々美は少しばかり微笑ましい気分に浸った。とはいえ、目的は忘れない。
「しかし、アレですわね。直枝さんのような方が相手ですと、些細なことでもツッコまれて窮屈だったりしません?」
 自分がツッコミを入れるのは無理だとしても、この場は佳奈多にボケとしての自覚を持たせるのが雪辱に繋がると佐々美は考えた。とりあえずツッコミ気取りだけはやめさせることができるはずである。
 佳奈多は顔に浮かぶ朱の色を先ほどより濃くしつつ、案外素直に答えた。
「別に、窮屈ではないけれど……というか、窮屈なのはむしろ直枝の方じゃないかしら。まあ、確かに些細なことですぐツッコんだりするのはどうにかしてほしいかもね」
「ええい、うるさいですわよっ! あなたにはこの称号がお似合いじゃなくて!?」

 佳奈多は『ボケスタシー』の称号を得た!

「んーっ! んーっ!!」

 おわる。


[No.481] 2008/08/07(Thu) 23:50:04

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