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体の痛みで恭介は目を覚ました。ここ三月で見慣れた真っ白な天井が視界に映る。清潔感のあるそれはなんとなく居心地が悪く寝返りをうって視界の外に追いやった。 病室には花束やらの見舞いの品で溢れている。夏休み中は一日とおかず誰かしら訪ねて置いていくため不釣り合いな生活感が漂い始めている。とはいえ真夜中のこの時間は誰もいないため病院内は静かなものだ。 「しまったな」 昼間眠りすぎたと冷静に判断する。それなりに体の自由がきくようになったとはいえ一日の大半をベットの上で過ごしている。そのため気がつくと眠りに落ちているというサイクルが確立し、睡眠は十分すぎるほどだ。普段ならなんということのない痛みに覚醒したのもそのためだ。 「何よりの問題はすることがないってことか」 もう一度眠ろうにも目は冴えていくばかり。退屈を紛らわすために積み重ねたマンガも全て読み終わっている。消灯を過ぎた時間に明かりがついていれば巡回の看護士に気付かれるおそれもある。リスクを負ってまで読むほどではない。 そんなとき恭介が思い出すのは自分たちが作りだしたあの「世界」のことだった。 「ただの夢、なわけないよな」 見舞いにきた他のリトルバスターズのメンバーにそれとなく話を向けてみたがはっきり記憶している者はいない。ただ曖昧な夢のように思っているようだった。もっとも来ヶ谷だけは何一つ語ろうとしなかった。 あの世界の中心だったのは自分なのだろうと思う。確かにあれは「存在」した世界なのだ。 「でなきゃ理樹の変わりっぷりは説明がつかないからな」 初めて病室を訪れた理樹を見た瞬間あの「世界」が在ったことを確信した。ずっと自分たちが守っていくのだと思っていたかわいい弟分は立派な男になっていた。隣にたたずむ鈴を「彼女だ」と紹介されたときは心から祝福したと同時に一抹の寂しさを覚えたものだ。 鈴も仏頂面に顔を背けていたが(恥ずかしさを隠すためだろう。頬が真っ赤だったのだから)はっきりと付き合いだしたことを報告してきた。 ずっとそうなればと願っていた。時に冷徹に鈴の心を裂くような真似をした。理樹の心を弄びもした。それを後悔し自分の殻にも閉じこもった。 だが二人はそんな恭介の試練にくじけることなく笑顔で二学期を迎えた。あの悲惨な事故にすら感謝したくなるほどの情景に恭介は深く安堵していた。 となると、恭介の次の思考は当然退院してからのことだ。漏れ伝わるところによるとリトルバスターズの面々も日常に退屈しているらしい。 「全く。今やリトルバスターズは理樹のチームだってのにな」 当の本人にはそんな自覚はないのだろう。まだまだ目が離せない。もちろん恭介にとってそれは喜ばしいことだ。 「快気祝いにパーッといきたいな。できるだけ大きなことが……」 そう、例えばケチのついた修学旅行のやり直しなんかどうだ? 夏休みは終わってしまったが構うか。入院中全く進んでない就活? 忘れたなそんなものは。 何気ない思いつきは最高のアイディアに思えた。メンバー全員でいくならいっそ車だ。レンタカーなら安く上がるし、ならば残りの入院期間中に免許をとっておくか。初ドライブで遠出になるがそんなスリルだってあいつらとなら最高のスパイスだ。 「地獄への片道切符ってか? シャレにならんが付き合ってもらうか」 最高の夏休みを迎えられそうだと、いたずらを思いついた子供のような笑顔を浮かべ日の出を待った。 [No.486] 2008/08/08(Fri) 22:34:32 |
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