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屋上というのはその場所柄か、人を解放的な気分にさせると思う。 なので、とりあえずパンツ一丁になってから叫んでみた。 「小毬さーん、好きだぁああぁあああぁぁああぁぁぁあっ!!」 途端に下界がガヤガヤと騒がしくなる。その騒がしさを掻き消すように、届く声がある。 「わっ、私も好きだよーっ」 喧騒は、拍手と祝福の声へ変わっていった。 「という夢を見たんだ」 「ほわあっ」 今日も今日とて屋上で小毬さんと過ごす昼休み。何とはなしに昨晩見たかもしれない夢の話をすると、小毬さんは実に直球な反応を見せてくれた。顔を赤くしてオロオロしているのがたいへん微笑ましくてよろしい。 僕は屋上の場所柄のせいで解放的な気分になりたかったので、まあとりあえず上着のボタンを外して脱ぎ捨てた。うん、なんか解放的になってきた気がする。ノリでシャツもボタンを引き千切るくらいの勢いでご開帳だ。本当に千切れた。 「ほわあっ」 小毬さんが例の、両手で顔を覆いつつも開けた指の間からしっかりと見ているといういかにも西園さんがやりそうなポーズを取る。どうだい小毬さん、普段から女装とかさせられて実はそんなにやぶさかでもない僕だけど、けっこうたくましい体つきだとは思わない? 「まあそんなわけだから夢を再現してみようと思うんだ」 ベルトに手をかける。 「ほわあっ」 さっきからそれしか言ってないけどそこがたまらなく魅力的だよ小毬さん。 「小毬さん、とりあえず教室に戻っててくれるかな」 「う、うん……おっけーいですよ〜……」 ああっ、魅力が半減だっ。 なんだかそわそわしながら屋上を後にする小毬さん。そしてズボンを下ろすぅあっ! よし、これで夢を再現するための条件はクリアされた。後は叫ぶだけだ。テンションがアゲアゲになってきたのでとりあえず踊る。踊り狂う。イィーヤッホォォオォウ!! ついでに叫ぶ。 「朱鷺戸さーん、好きだぁああぁあああぁぁああぁぁぁあっ!!」 「あるぇええぇぇぇー?」 下界から小毬さんのものらしき声が聞こえてきたけど、まあ僕がゾッコンラブなのは朱鷺戸さんなのだからしょうがない。そりゃまあ小毬さんだって美味しく頂けるものなら頂いてしまいたいけど、やっぱり二股はよくないと思うんだ。 「きょげえええええっ!!」 謎の奇声とピンク色。気付けば僕は飛び蹴りか何かで蹴り飛ばされていた。空を飛ぶって気持ちいいね。そして、ずっしゃあああああと多分無駄に派手に着地する僕。滑り転がっているとも言う。フェンスにぶつかったところでようやく止まった。 「いたた。いきなり酷いなぁ。いったいどこから湧き出てきたのさ、朱鷺戸さん」 「湧き出たって何よ、あたしは天然水か何か!? それともなに、あたしのこと遠回しに天然ボケだとでも言いたいわけ!? ええそうよ、どうせ天然ボケよ、発表直後から公式サイトで天然ボケスナイパーとか言われて天然ボケをスナイプするのか天然ボケなスナイパーなのかっていう議論が巻き起こった挙句に店頭デモでボケまくりの完全無敵少女と名付けられてあっさり決着が着いたってくらい天然ボケよっ! もう運命なのよ、宿命なのよっ、そんぐらい天然ボケなのよっ、なによ、笑えば!? 笑えばいいじゃないっ! 天然ボケな沙耶かわいいよ沙耶あーっはっはっは! って笑いなさいよっ!!」 「天然ボケな沙耶かわいいよ沙耶あーっはっはっは!」 「うんが―――――っっ!!」 また蹴られた。ピンク。フリルとかは付いていないようだ。 朱鷺戸さんは真っ赤な顔で肩を上下させ、しまいにはハァハァと息を荒げている。なんだろう、萌えているのだろうか。とりあえず落ち着いてもらったほうがいいようだ。 「どうどうどう。ほら、トランクスも脱ぐから落ち着いてよ」 「落ち着けるかぁぁあああぁああぁぁぁっ!!」 蹴り上げられた。不幸にも、僕の大事なボールとバットに直撃する。 「ぐがどぼっ!?」 「ああっ、だ、大丈夫理樹くん!?」 股間を押さえてのた打ち回る僕に、朱鷺戸さんはああやってしまったと言わんばかりに心配そうな声をかけてくれる。照れ隠しですね、わかります。いやでもこれ、正直洒落にならないんだけど。うん。 「ふ、ふふふ……これはもう、バットを捨ててグローブを取るしかないかな……攻守交代の時間だよ……」 「いやあっ! しっかりして理樹くんっ! 攻めのままの理樹くんでいてよぉっ」 朱鷺戸さんはもう涙目だ。なんというか、そそる。でも僕は、受けもけっこういいんじゃないかなーって思うんだ。いや、もちろん相手は女の子限定だけど。なんというか恭介とか真人とか謙吾とかがかなりキモい感じになりそうだったので、やっぱり僕はバットを取ることにした。バットのままでもキモいのは変わりないとか言っちゃダメだと思うよ。 「……泣かないで、朱鷺戸さん」 指先で、その涙を拭ってやる。吐き気がするほどのキザっぷりだけど、朱鷺戸さんは天然な上に耐性がないからポッとか効果音出しながら顔を赤くしてくれるんじゃないかな。 ポッ。本当に赤くなった。 「り、りきくん……」 「大丈夫だよ。ちょっとひん曲がっちゃっただけだから」 「ほ、ほんとに? ほんとに大丈夫なの?」 「うん。そんなに心配なら見てみる?」 「キーーーック!!」 折れた。 僕のバットがかっ飛ばす白球が朱鷺戸さんのグローブに収まることは、もう永遠になくなってしまった。 世界が暗転する。 「きょーすけが帰ってきたぞーっ!」 遠くから声がして僕は呼び覚まされる。 それが指し示す意味も眠気で判然としない。 「ついにこの時がきたか……」 が……続いて聞こえてきた喜びに打ち震える声で目が覚める。 ふんと鼻息が聞こえて、それは床に飛び降りていた。 「真人……こんな時間にどこ行くのさ……」 恐る恐る訊いてみる。 「……戦いさ」 「……は? こんな夜に? どこで?」 「ここ」 親指で床を指す。 不敵な笑みを残し、勢いよくドアを開け放つと部屋を飛び出していった。 追おうにも、僕のバットはいつになく金属バットな感じだったので部屋の外に出るのは憚られた。あとなんか、白球が、こう。うん。 [No.539] 2008/08/31(Sun) 11:31:29 |
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