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たぶんこれは第9話 - 海老 - 2006/10/04(Wed) 23:51:40 [No.80]
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何も進展のない五話 - イクミ - 2006/04/22(Sat) 20:30:43 [No.49]
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いち - かき - 2006/04/16(Sun) 23:49:45 [No.38]


色々と真っ黒な6話 (No.37 への返信) - 翔菜




 ――あらすじ配信ここから(スポンサー:〜どこでも繋ぎます!〜スキマ産業株式会社〜)――


 川くだりは順調だった。
 俺を阻む者はいない。
 吹きさらす風となりてガリクソンさん(百八歳)はネバネバタ州のミシシッシッピー川をくだっていた。

 『紙が、紙が――』

 突然頭の中に響く声。
 ……否、これは想いか。
 ガリクソンさんはそれでも川くだりを続ける。
 この想いに応える事が出来ないのは彼が一番わかっていた。
 けれども何をすればいいのかがわからなかった。


 ――I do not understand Japanese.


 だって日本語わかんねぇし。


  *


 春原は電波を送っていた。
 トイレという閉鎖空間に置いてでも電波は送れる。
 だってほら、携帯電話通じてるじゃないか。
 春原が送っている電波はそれとは全く違うのだが、それでも彼は届く事を信じる。
 だがしかしそれが届きそうな気配は無い。
 頭を垂れ、絶望に暮れ、しかし諦めない。
 曰く、ウサ耳は月−地球間の交信が可能だととある偉大な神主様は言っていた。
 ならば、

「届けっ、僕の想い!」

 両手を頭の上にウサ耳のように。
 そう、月−地球間の交信が可能だと言うのならば自宅との交信などわけもないはずだ。
 さらに妹と言う血縁の深い者であればより一層成功確率は高まるに違いあるまいと、春原は考える。
 紙を、紙を、紙をと電波を送り続ける。


 ――I do not understand Japanese.


「!」

 受信に成功したのか、何かが聞こえた。
 行ける、そう思い春原は再度送信を行う。
 受信したのは英語。ならば英語で返さなくてはと頭から英語を搾り出す。
 春原に外国人の知り合いは居ない、ならば知らない人。
 そう、まずは自己紹介だ。春原は意外と礼儀正しかった。

「ア、アイアム」

 驚きだ春原、ちゃんと言えたじゃないか。
 頑張れ!

「アイアム北京原人!」


 ――あらすじ配信ここまで(スポンサー:〜あなたのお尻に座薬と言う名の安らぎを〜イナバ薬局)――











 第6話 「ない頭絞って4話のあらすじの続き考えてみました」











 カンカン、と歩くたびに響く金属音。
 古ぼけ、錆付いた階段は崩れるのではないかと言う幻想すら覚えさせる。
 そして幻想は、現実になり得る。
 これから出会う相手は、場合によっては今人間関係に置いて自らの立っている場所を崩しかねない相手だ。

 ひとつ、犬の鳴き声。
 夜間の住宅街の一角に轟くそれは、不思議と恐怖を抱かせる。
 否、……こんなものはよくある事。
 日常のようでいて非日常。それが今、杉坂(ノイズが入って名前が表示されない)に恐怖を抱かせているのだ。

 指定された部屋の前に立ち、杉坂は唾を飲み込む。
 ノックしようとし、一瞬だけ躊躇をした後、それでも叩く。
 しばらくするとそれに応答するような声がして……、
 ノブが回り、ドアが開く。

「いらっしゃいませ、杉坂さん」

 そこからは顔を覗かせたのはにこやかな裏の無い――だからこそ恐ろしい――笑みを浮かべた女性……藤林椋だった。

「……」

 杉坂は、睨む。
 敵などではなく、信用など出来そうも無い相手を見る目で。

「ふふ……そんな顔、しないで下さい。決して、杉坂さんにとって悪い話ではないと思いますから」

 そう言うと、杉坂を部屋に招き入れようとするように背を向け歩き出した。


  *


「ここまでほぼ計画通り……なのですけれど、1人でも味方がいれば助かります」

 椋がコト、とマグカップを置く。
 来客用のものである。
 湯気が僅かに視界を霞ませ、しかしそれは恐怖を霞ませるには至らない。
 重い沈黙の中正面に座るが口を開く様子は無く、
 ――試されている。
 そう気付き、杉坂が口を開く。

「でも、まさかあなたが……」
「不思議でもないでしょう? 渚さん側の勢力につけば渚さんの手に岡崎くん……いえ、朋也くんを他の方々に渡さないようにしなくてはならない」
「ですが、」
「ですがもデスノートもデストローイもありません。私ではあの4人組に加わる事はほぼ不可能。だから、独立勢力なんですよ」

 誰を呪ってやればいいのだるか。
 こんな、危険人物に目を付けられてしまった事は。
 視線を外すと、そこには女性の1人暮らしだと言うのに食器棚にある、使われた事の無いペアのマグカップ。
 一体それにはどんな祈りが篭っているのだろうか。

「けれどそれは……!」
「拙い、でしょう? だから渚さん側の勢力についた『フリ』をするんです」
「……」

 言葉に詰まる。
 渚側についた『フリ』をして、粛々と逆フラグを立てるべく動く。
 杏たちを抑える事は実質不可能だから、そちらにはあくまで中立であるかのように装う。

「それで、知ってしまった杉坂さんはどうするおつもりですか?」
「私は」

 自分から拒否もさせず教えたのに、何を言っているのかと思う。
 が、それを言葉として紡ぐ事は出来ずまた、詰まる。
 自らの心に迷いがあるとわかった。
 それでも、仁科を裏切ることなど杉坂には出来そうに無かった。
 渚の幸せを考えてもいた。
 訪れる沈黙。しかしすべてが静まり返るのでもなく、また響く犬の鳴き声。
 つーかうるせぇ。酔っ払いが犬に絡んでやがるなこれ。

「私は、守ります」

 何かを決意したかのように、杉坂。
 ふっ、と微笑み、椋は問いかける。

「こちらには、来て頂けませんか?」
「守るべき物が、ありますから」

 沈黙。ただ重くは無く、そして椋に押されるでもなく。
 揺るがし難い雰囲気を持った杉坂に有利とも言えそうな沈黙だ。

「杉坂さん」
「なん、でしょう?」
「法律なんてどうでもいいじゃないですか」
「ですよねー♪」

 ですよねー♪じゃねぇよ。
 つーかぜってぇ迷いないよお前。
 それよりも守るべき物っては法律だったのか。そーなのかー?

「協力、しませんか?」
「報酬は?」
「私が朋也くんを手に出来たとき、あなたの手に渚さんを」

 妖艶な笑みを浮かべる目の前の椋に対し、杉坂は冷や汗を掻きながらも不敵な笑みを返す。
 他の者が岡崎朋也を手中にすべく動く中、渚を狙うのは杉坂だけだ。
 唯一の敵となる朋也も、ハーレム状態(ある意味地獄)の中そう簡単には対処出来まい。
 もしも対処しようと杉坂との接触を試みれば「そんな影の薄い奴に興味があるのか!」と袋叩きにされる可能性も0ではない。
 記憶を失っているとは言っても、それくらいまでなら朋也だって頭が回るだろう。
 でもそこまで考えて別に影薄くねーよとちょっと泣きたくなる杉坂。むしろ泣いてもいいですかここで。

「でも、どうするんですか……椋さん。あなたのルートは」

 ふと、何かを受信した杉坂がそんな事を口走る。
 逆フラグ、それ即ち無理矢理自らのルートに引き込むという事だから。
 杉坂は躊躇う。同盟即刻破棄の可能性もある言葉を口にする事を。

「お姉ちゃんのルートのバッドエンド、ですよね」
「!」

 理解……否、認めていた。
 しかも同じ物を受信していたらしい。
 盟友として、幸先のいいスタートである。

「それについては問題ありません。何故なら、」

 椋は口元を悦に浸るかのように歪め、続ける。

「本当は、お姉ちゃんのエンドこそが私のルートのバッドエンド扱いなんですから」
「……あなたは」

 前言撤回。全然認めてなかった。
 むしろ開き直ってた。
 駄目だこいつ……早くなんとかしないと。そう思いつつも、杉坂は感じる。
 こいつは只者ではない……新世界の神にも届く女だ、と。
 現時点で敵に回すのは自らを奈落の底へ叩き落とす事になるかもしれない。
 一瞬考えた、やはり断るという選択を杉坂は即座に排除する。

「……何にせよ。私としても1人よりは2人の方が心強いですから」

 椋はそう言い、苦笑いを浮かべながら杉坂に向かって手を差し出す。
 杉坂もそれに応じるように手を差し出し、2人の手が重なる。

「紙に書くなんて大袈裟な事は出来ませんし、証拠を残すわけにもいきませんから」
「これで、同盟成立と言う事で」

 同じ意見。
 そして腹の中で考える事も同じだ。
 都合が悪くなれば裏切る、と。
 これは口約束のようなものだから、けれど、少なくともその時までは。
 2人は誰よりも強い絆を、繋いだままでいるだろう。


[No.55] 2006/05/12(Fri) 13:19:10

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