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all 第18回リトバス草SS大会 - 主催 - 2008/09/24(Wed) 22:45:02 [No.594]
えむぶいぴーらいん - 主催 - 2008/09/27(Sat) 00:21:28 [No.610]
クロノオモイ - ひみつ 初投稿@EXネタバレ有 10283 byte - 2008/09/27(Sat) 00:02:44 [No.609]
崩落 - ひみつ@4275 byte - 2008/09/27(Sat) 00:01:22 [No.608]
[削除] - - 2008/09/27(Sat) 00:01:12 [No.607]
ある日の実況中継(妨害電波受信中) - ひみつ 12587byte EXバレなし - 2008/09/26(Fri) 23:59:02 [No.605]
[削除] - - 2008/09/26(Fri) 23:39:49 [No.604]
その傷を、今日は黒で隠し、明日は白で誤魔化す - ひみつ@11761 byte EXネタあり - 2008/09/26(Fri) 23:36:57 [No.603]
傘の下 - ひみつ・初@EXネタなし@11403 byte - 2008/09/26(Fri) 23:30:52 [No.602]
計り知れないヒト - ひみつ@ 16232 byte EXネタバレありますヨ - 2008/09/26(Fri) 23:05:33 [No.601]
向こう側の話 - ひみつ 14619 byte - 2008/09/26(Fri) 22:59:53 [No.599]
ネタバレなし - ひみつ - 2008/09/26(Fri) 23:02:32 [No.600]
[削除] - - 2008/09/26(Fri) 22:32:25 [No.598]
こんぶのかみさま - ひみつ@18230 byte バレありません - 2008/09/26(Fri) 22:13:37 [No.597]
イスカールのおうさま - ひみつ 18892 byte EXバレ有 捏造設定注意 - 2008/09/26(Fri) 00:33:03 [No.596]
出た!!!! - ひみつ@EXネタバレあーりませんの 11216 byte - 2008/09/25(Thu) 01:43:51 [No.595]


出た!!!! (No.594 への返信) - ひみつ@EXネタバレあーりませんの 11216 byte


 ふにゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ――……

 夜。女子寮中に響きわたる悲鳴。ほとんどの人間はそれを聞いて体を強ばらせるものの、それも一瞬。すぐに興味を失って元の日常へと帰っていく。だがそれも当然で、悲鳴の主はいつもいつもいつも学校を騒がしている一団の中の一人なのだから。
 もちろんそんな薄情な反応を示すものばかりではない。女子寮の中で5人、叫び声をあげた少女の仲間だけは可能な限りの素早さで悲鳴があがった場所、すなわち鈴の部屋へと駆けつける。
「大丈夫か、鈴君!」
「まだ私は何もしてないですよネ!?」
「うわぁっ! くるがやにはるかっ!? 何なんだお前ら、何なんだ!!」
 悲鳴があがってから2秒。入り口からは来ヶ谷が、ユニットバスからは葉留佳が飛び出してきた。突然飛び出してきた友人達に、鈴はレノンを肩からぶら下げて呆然とする。
「何だとは何だ。鈴君の悲鳴が聞こえたから飛んできたと言うのに」
「やはは、ちょっとイタズラをしようとして忍び込ませて貰っただけですよ。気にしない気にしない」
 両方ともかなり気になる内容である。特に来ヶ谷の方は比喩かどうか悩むところだ、時間的に。
「まあ、そんな事はどうでもいい。突然叫び声をあげてどうしたというのだ?」
 人間かどうか疑われているのを笑顔でどうでもいいと切り捨てた来ヶ谷は、鈴に向き直る。鈴はと言えばその言葉にビクリと怯えた表情になり、震える指でソレを指し示す。
「ん…………」
 指された方を見る二人。そこには黒光りする憎いやつ、ぶっちゃけるとゴキブリがいた。それも、特大サイズだった。





 出た!!!!





「作戦会議を行う」
 鈴の部屋の前の廊下。そこで後から合流した小毬とクド、美魚を加えて作戦会議を行う6人。ちなみに司会進行は来ヶ谷、書記はクドだ。
「作戦〜どうすれば可愛い女の子同士のベットインが見られるか〜に関してとりあえず意見があったらバンバン言って欲しい」
「違います。〜男性の美しい絡みを実現しよう〜です」
「〜イタズラの極意とは何か〜なーんてどうでしょうネ?」
「ち、違うよー。鈴ちゃんの部屋のゴキブリをどうにかするんだよー」
 開始早々、司会進行を含めたメンバーの半数が半ボケするなかで(半分は本気)、一人頑張って話を元に戻そうとするのはリトルバスターズ最大の良心、小毬。ちなみに廊下で車座になって座り、とんでもない事を言う一同は道行く人達から奇異の目で見られているがそこはそこ、その程度で怯む精神構造をしている人物はリトルバスターズに一人もいない。
「うむ、では改めて。〜鈴君の部屋に出た巨大ゴキブリをなんとかしよう〜の会議を始める!」
 来ヶ谷の大声に固まる道行く人達。ここが夜の女子寮である以上、通行人はもちろん女子生徒であり、もちろんゴキブリが得意な訳がない。巨大という言葉が頭につけばなおさらだ。それはともかくとして会議は始まる。
「一番てっとり早いのはこれですね」
 そういって美魚が取り出したのは設置型殺虫剤。水を入れると煙が出て、ゴキブリに限らずノミといった小さな虫まで殺してしまう優れものだ。たまにベッドでネコと寝る鈴には最適かもしれない。
「だけどそれだと今夜は鈴さん、今夜は部屋に居られませんね」
 クドが心配そうに言うと、それを葉留佳が受け継いだ。
「誰かの部屋に泊まればいいじゃん?」
 その言葉が言い終わると同時、それぞれがそれぞれの顔を見始める。
「わ、私は無理だよー。さーちゃん、人が来るの嫌がるし」
「私の所も無理ですネ。相部屋の2人が頷くはずないですから」
 まず真っ先にダメを出したのは小毬、そして発案者である葉留佳もNOである。
「私たちの部屋はスペースが…………」
「すいません、私の本がいっぱいですので…………」
 クドと美魚の部屋も却下。となれば残りは一人である。その一人に自然、視線は集中する。
「私の部屋か? 大丈夫だ」
「本当か、くるがや!」
「ああ本当だとも。一人部屋だから一つのベッドに二人きり、そして一人用のだから寄り添うように…………」
「よし、別の作戦だ」
 暴走する来ヶ谷をあっさりとスルーした鈴に対して抗議するものは誰も居なかった。

「しかしな、対ゴキブリだと打てる手もそう多くはないだろう」
 気を取り直した来ヶ谷が話を進めるが、設置型殺虫剤を使わないというならば本当に打てる手は幾つも無い。
「徹底交戦だ」
 全員の顔が嫌悪に歪む。
「た、戦うのですか?」
 特に代表してクドが疑問を口にする。彼女らはまだ見ていないが、巨大ゴキブリという情報だけは得ている。そんなヤツと戦いたいと考える女の子はそうはいない。直接あの大きさを見た三人はその気持ちは尚更で、来ヶ谷さえも冷や汗を流している。
「うん、ちょっとおねーさんが短気だったかも知れない。もう少し意見を集めてみようか」
 取りなすような来ヶ谷の声でヤツと戦わない為に必死で頭を動かす全員。しばらく経って、小毬が顔をあげる。
「外に誘導してみたらどーでしょう? 窓から外に続くように餌とかをおいて、それで出ていくのを待つとか」
「わふー。そ、それはいい案ですっ!」
 早速クドが飛びついた。それに気を良くした小毬は笑って話を続ける。
「そうすれば私たちも殺さなくて済むし、ゴキブリさんもいなくなって万々歳。どうかな、これ?」
 みんなを見渡すが、いい案だ。といったような顔をしているのはクドのみ。他の大半の人間は顔を青くしている。
「あれ、みんなどうしたの?」
「…………それ、外からゴキブリが誘導されて来ませんかネ?」
 引きつった顔で代表したのは葉留佳。そう、方向性が指定できない以上、室内に餌をバラまけば外から大量にゴキブリがやってくる可能性が高い訳で。
「「「「「「……………………」」」」」」
 否応無しに頭によぎるのは、ゴキブリ村と化した鈴の部屋。
「………………………………ゴメンナサイ」
「まあ、その、何だ。こ、厚意だけは受け取っておく」
 長い沈黙の後、この上なく申し訳なさそうにした小毬に対して珍しく鈴がフォローをいれた。
「さて、他に案はないかな?」
 流石にこの話題を引きずりたくはないのだろう、即行で話を進める来ヶ谷。そしてまたしばらくの沈黙の後、次に声を出したのはクドだった。
「あのー。生物の授業で習ったのですけど、このような生物にはフェロモンってありましたよね? ならゴキブリが嫌がるフェロモンをまいてみてはどうでしょうか?」
 その言葉に鈴と葉留佳、小毬の顔が輝く。
「それだっ!」
「ナルホド、行けそうですね!」
「すごいよクドちゃん!」
「そ、そうですか。えへへ…………」
 三人からの褒め言葉に照れるクド。が、残る二人の顔はやはり青い。
「あー。クドリャフカ君、知ってるかな? 危険フェロモンは濃度が薄まると集合フェロモンになるのだよ?」
 来ヶ谷の言葉に全員の表情が固まる。一時的にゴキブリがいなくなった鈴の部屋だが、時間を置くにつれて集まってくる住民達。いつしかその部屋にはゴキブリ王国が築かれて――――

 ……………………………………………………

 沈黙が痛い。鈴も今度はフォローする余裕も無く泣きそうな顔をしている。
「そ、そうだ! フェロモンで思い出しましたが、ホイホイ系でフェロモンを使ってゴキブリを集めるタイプのものってありませんでしたっけ? それなら貴奴等も一網打尽!」
「――こんな話があります」
 なんとか明るくしようと大声を出した葉留佳だが、重く静かな美魚の声に嫌な予感が止まらない。
「とある古いマンションの話です。そのマンションの一室に住んでいた男性は不精で不潔でした。ですのでたくさんのゴキブリがその部屋に住んでいたそうなのですが、友人を呼ぶのでゴキブリを駆除しようとフェロモンタイプのホイホイを仕掛けたそうなのです」

 〜

 その日の夕方、仕事から帰って玄関を開けた男性は顔をしかめる。なぜか床一面に黒い絨毯が敷き詰められていたのだ。こんなインテリアに変えた覚えのない男性は不思議そうな顔をしながらもホイホイの成果を確かめようと、靴を脱いで仕掛けを見に行く。
 しかし仕掛けたハズの場所にホイホイは見当たらず、見えるのは黒い山がこんもりとしているのみ。なんだこれはと男性がソレに触れた瞬間、黒い山ががカサカサと微妙に動く。
 そこで男性は気がついた、気がついてしまった。その黒い山の正体が■▼●◆の集団だった事に。それも五体満足の存在は極少数、大半は翅だったり脚だったりがもげていたり、絶命している黒もいた。そして無くなった部分は――――奴等の口の部分で蠢いていた。
 喰っている、共食いをしている。余りのおぞましさに男性は恐怖する。ふと、足に痛みが走った。恐る恐るそこを見て見れば、足に群がる黒い絨毯が、ワサワサと、体を登ってくる黒い絨毯が。そして男性は奇声を発しながら無我夢中で部屋を飛び出した。足にはまだ少しの黒をへばりつけて、赤い血をダラダラと流しながら。

 後日、男性は一言こうとだけ漏らした。『ゴキブリ地獄』と――――

 〜

「専門家はこう話したそうです。フェロモンは強力で、最も強く本能に訴えかけるものだと。なんらかの原因でフェロモンの濃度が間違えられたそれはマンション中、そして周囲の家からもゴキブリを集めました。
 ゴキブリは体が小さい分頻繁な食事を必要としますが、食欲もフェロモンの強力さには勝てません。ですので空腹に耐えかねたゴキブリは周囲の栄養を求めて共食いを始めたのではないかと」
 長く気色悪い話が終わる。ここまでくるともう怪談の類だ。現に小毬とクドは気を失ってるし、鈴は耳を押さえてうずくまっている。かろうじて聞いているのは来ヶ谷と葉留佳くらい。まあ、聞いているといってもその顔はこれ以上ない位に固まっているのだが。
「――御清聴、ありがとうございました」
「いや、全力で止めるべきだったと後悔している所だ」
 脱落者を生き返らせながら言う来ヶ谷。ちなみに葉留佳はまだ再起動を果たしていない。
 そうしてひとまず全員が正気に戻ったところで再び作戦会議。
「……もうおねーさんの所で寝ないか、鈴君?」
 心底疲れきった顔で言う来ヶ谷。どう考えてもそれが一番のように思える。他のメンバーにしてもあの話の後でゴキブリと戦おうとは微塵も考えられない。それはもちろん鈴も同じ事で。
「――ううっ」
 泣きそうな顔で思案する鈴。
「うううううぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっっ!!」
「あの話を聞いた後のゴキブリと比べてもそこまで嫌がるのか。おねーさん、結構ショックだよ…………」
「そんな事無い、くるがやは大好きだ!」
 本気でガックリ来ている来ヶ谷に向かい、思わず大声を出す鈴。そして一回その言葉を出したら止まらない。言葉を続ける鈴。
「だから、今日は来ヶ谷の部屋に泊まる」
「ああ、それがいい」
 下心を出す元気もないのか、来ヶ谷はそうとだけ頷いてから鈴の部屋の扉を見る。つられて他のみんなも鈴の部屋を見る。
「それじゃあ、とりあえずの生活用品と明日の教科書を取り出さないとな。それに、殺虫剤も仕掛けなくてはならないし」
 お泊り会をした事があるはずの部屋が地獄門に見える。それがその場にいた全員の意見だった。もしも開けた瞬間に黒い絨毯が見えたら小毬とかクドとかはまた失神するだろう。と、

 カリ……

「ひっ!」
 それは誰の悲鳴だったのか。目の前の扉が鳴った。しかも続けざまにカリカリと妙な音が鳴る。
 小毬とクドは震えながら抱き合っていて、鈴は目に涙をたたえながら葉留佳の後ろにへばりつき、美魚は平然と座っている。来ヶ谷は最後の一人が特に納得いかないながらも、自分が開けなければ永遠にこのままだと思い意を決して地獄門を開ける。
(本当に、床一面に黒い絨毯があったら嫌だな)
 どこか現実逃避気味にそう考えながら開いた先の床を見ると、そこには黒色の反対の色である白色が。
「ん?」
「レノンっ!?」
 鈴の声が響く。そう言えば彼女の悲鳴が聞こえた時には肩にいたはずの白ネコはいつの間にかいなくなっていた。部屋から逃げる時に落としてしまい、閉じ込めてしまったのだろう。
「なんだ驚かせる、なぁぁぁ!!?」
 来ヶ谷の口から大声が出る。彼女の視線の先、レノンの口には蠢く大きな黒が。
「ゴ、ゴ、ゴ……」
 言葉にならない声が口から漏れる。そんな来ヶ谷は無視し、レノンはようやく見つけた御主人さまに捕らえた獲物を見せようと走り寄る。
「うわぁぁぁ! レノン、来るなレノン!!」
「ちょ、鈴ちゃん離して! ゴキが、ゴキが私の方にぃ!」
「本当に大きいゴキブリです……」
 呆然とする来ヶ谷。再び失神した小毬とクド。どうにかレノンを追っ払おうとする鈴にとばっちりを食う形になった葉留佳。そして一番余裕のある美魚。
 ――――ゴキブリ騒ぎはまだ終わらない。



 その頃、男子寮の中で顔を真っ青にしている男がいた。
「…………」
 彼はこの世界でのゲームマスター、レノンと繋がっている男。だがしかし彼は常にレノンと繋がっている訳では無い、それは人間の精神構造では決して不可能な事だ。だから彼は必要な時に短時間だけレノンと繋がり、他はおおまかな行動命令だけ与えているに過ぎない。だからレノンをネコでは無いのではないかと疑うものはいない。
 今夜もレノンと少しだけ繋がり、彼の妹の安否を確認するだけのはずだった。しかし繋がった瞬間に感じた口の違和感。ソレがなんなのか理解した瞬間に彼はレノンとの繋がりを絶ったが、ソレがなんなのかと理解してしまった時点で手遅れなのは言うまでもない。
「ゴキブリを咥えるなぁぁぁーーーー!!」
 恭介の怒声が虚しく夜に響く。


[No.595] 2008/09/25(Thu) 01:43:51

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