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No.628へ返信

all 第19回リトバス草SS大会 - 主催 - 2008/10/15(Wed) 00:20:21 [No.621]
場所を変えてみたら - ひみつ@大遅刻の6575 byteorz ネタバレはありません - 2008/10/19(Sun) 22:53:04 [No.651]
over - ひみつ@4844 byte EXネタバレ パロディ注意 - 2008/10/19(Sun) 13:32:31 [No.650]
犯人はだれだ!? - ひみつ@EXネタはない@9,332 byte /超遅刻すみません - 2008/10/18(Sat) 16:23:16 [No.646]
変心の実 - ち゛こ゛く@≒2331bite EXネタバレ有り - 2008/10/18(Sat) 00:57:20 [No.641]
真説・本能寺 - ひみつ@EXネタ有 時間&容量オーバー 30419 byte - 2008/10/18(Sat) 00:11:35 [No.639]
「また」リコール隠し - ひみつ@6.824kb バレなし - 2008/10/18(Sat) 00:07:21 [No.638]
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仲間外れでも許せる理由 - ひみつ? 9207 byte - 2008/10/17(Fri) 22:45:54 [No.636]
変わるモノ - ひみつ@22437 byte EX微バレ 容量オーバー - 2008/10/17(Fri) 22:28:04 [No.634]
0:10えむぶいぴーらいん - しゅさい - 2008/10/17(Fri) 22:13:00 [No.633]
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焼菓子騒動 - ひみつ@13993 byte EXネタバレ0.1%くらい - 2008/10/17(Fri) 20:47:33 [No.631]
笑顔で - ひみつ@8673 byte EXバレなし - 2008/10/17(Fri) 04:59:11 [No.630]
わたしはあなたのゆめをみる - ひみつ@8940 byte 十七禁 - 2008/10/16(Thu) 21:16:14 [No.629]
繰り返しの中の小さな矛盾。 - ひみつ@6486 byte - 2008/10/16(Thu) 18:44:20 [No.628]
かわらないきみ と かわらないぼく - ひみつ@ネタバレなし 5382 byte - 2008/10/16(Thu) 12:10:36 [No.627]
視線の先には - ひみつ@15451 byte微かにEXネタバレ - 2008/10/15(Wed) 23:47:20 [No.626]
狂った天秤 - ひみつ@9504byte - 2008/10/15(Wed) 18:31:19 [No.625]
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ずっといっしょに - ひみつ@6817byte EXバレなしー - 2008/10/15(Wed) 03:18:29 [No.623]
感想会後半戦について - 主催 - 2008/10/19(Sun) 01:31:27 [No.647]


繰り返しの中の小さな矛盾。 (No.621 への返信) - ひみつ@6486 byte




 それはいつか気付くべきことで。
 でも、それはおかしいことで。
 
 
   繰り返しの中の小さな矛盾。
 
 
 夢を見た。
 遠く遠く、暗い夢。
 それが何かは思い出せなかった。
 でも、なぜか知ってはいけない気がした。
 それは、隠されるべきことで。
「…起きなきゃ」
 そうすることが、まるで義務のように。
 
 
 
「眠い…」
 昨日の夜に恭介が帰ってきて、その後いろいろとあったのだが、張本人たちは今日も元気だ。
「よう、理樹!!」
「理樹、どうした。そんなに眠いのか?」
「いやまあ…」
 そんなこんなで席に着く。
「うぃす」
「恭介、おはよう」
 恭介も元気だ。
 昨日は就職活動行ってたというのに、たいしたものだ。
「おはよう、遅くなった」
「おはよう」
 鈴が猫を連れてきた。
 白い猫。
 いつか見たことがあると思ったら、そういえば昨日の夜の猫だ。
「新入りだ」
「知ってるよ」
「わかめ食わせるか」
「アホかお前っ!!」
 名前はレノン。
 名付け親は恭介。
 その名前が、元から決まっていたかのようにぴったり来るのは何でだろう。
 …違和感。
「よし、そろそろ行くか」
 そんな違和感もすぐに無くなり、日常へと溶け込んでゆく。
 そうして、校舎へと歩き出した。
 
 
 
 野球のボールが落ちていた。
 ただの、野球のボール。
 薄汚れた、使い古された、ただ飛んできただけだろうボール。
 それなのに、それだけなのに、僕にはそれが。
 わざと落とされたように、見えた。
「……」
 どうしてだろう。
 僕は、みんなから何かを期待されているような気がした。
 なにか、話さなくてはいけないような。
 話し声が聞こえるのに、僕には沈黙に感じる。
 まるで、舞台上で台詞を忘れた役者のように。
 そんな、プレッシャーを感じた。
「ねぇ、みんなで何かしない?」
 それなのに、僕は普通に話を始める。
 どうしてだ?
 どうして、僕は今こんなことを言ったんだ?
 …それは、恭介が、少し前に将来の話をしたから。
 昔のことが懐かしくなり、またみんなで何か出来ないかと思ったから。
 それだけ。
 それだけ、か?
「何だよ唐突に」
「なにか、って?」
 その返された台詞でさえ、決められたもののようで。
 怖い。
 僕は、どうしてこんなところにいるのだろう。
 …ここは、どこなんだ?
「小学生のとき、みんなで近所をかっぽして歩いてたでしょ?」
 恐ろしい。
 きっと、僕は気付いてはいけないことに気付いてしまったんだ。
 あの、ボールだって、そう。
 本当は、僕は気付くはずがなかったんだ。
 気付かないように、おいてあったはずなんだ。
 …僕は、気付いた。
 気付いて、しまった。
「だからさ、みんなで何か出来ないかって思ったんだけど…」
 いや、これは正しいことなんだ。
 気付いていようが気付いていまいが、僕が言うことに変わりは無い。
 だって、これはいいことのはずなんだ。
 みんなで、何かできればと思う。
 それは、当たり前のことなのに。
 僕が勘ぐりすぎているだけなのだろうか。
 そう思うと、今まで考えてきたこと全てが消えてしまいそうになる。
 朝の、違和感のように。
「じゃあ、野球をしよう」
 恭介の、言葉。
 突拍子もないもののはずなのに、その言葉もまた、決められたものに聞こえた。
 …いや、僕が野球のボールを見たからそんな気がするだけなんだろう。
 きっと、そうなんだ。
 そうでなければ、いけないんだ。
「へ?」
「…は?」
 恭介が、僕の見つけた白球を手で、スピンさせる。
 どうして?
 どうして僕は、こんなにも違和感を覚える?
 今見ているものが、全て、僕の記憶の中の何かと重なる。
 その何かは、僕には分からない。
 どうして、僕はこの光景を、知っているんだ。
「野球チームを作る。…チーム名は、リトルバスターズだ!」
 どうして、僕は。
 
 
 
「……」
 何かが、おかしい。
 さっきの出来事から、今の授業まで。
 ずっと、既視感を感じていた。
 何でなのか、それが分からない。
「理樹、悪い、ノート貸してくれっ」
「本当に悪いよ…」
 そういえば、デジャヴって言うんだっけ。
 こういう現象のことを。
 そうだ。
 きっと、そうなんだろう。
 ただ、昔の出来事と今の出来事が混同しているだけ。
 それだけ。
 本当に、それだけ。
「…はぁ」
 ため息をつく。
 そしてその瞬間、ドアが開く。
 なぜかその出来事が、また、頭に浮かぶ。
 これは三枝さんのはずだ。
 三枝さんが、僕に四字熟語辞典を借りに来る。
 そうして、その後―――。
「理樹くーんっ、おはよーおはよー」
「う、うん。おはよう」
 三枝さんが、僕の机の前までやってくる。
 ここまで、予想通り。
「どうしたの?」
「いやーちょっと四字熟語辞典を貸してもらえませんかネ」
 四字熟語辞典。
 こんなの予想なんかじゃない。
 ただ、確信していたのだ。僕は。
 これは、過去の回想に過ぎないのだから。
 ならば、その予想が外れるわけが無いのだ。
 そういうことなんだ。
 どうして、僕は。
「理樹くん?」
「さ、三枝さん。四字熟語辞典、持ってないんだ」
「そっか、じゃあ他の人に借りてくる。ありがとねーっ」
 どうして僕は、この出来事を過去のことと認識するんだ?
 過去にあったこと。
 でも、過去には無かったこと。
 現実味なんて、これっぽっちも無い。
 ただ、ここは幻想のように。
 ただ、ここは虚構のように。
「理樹ー、ノート貸してくれよぅ…」
 同じように繰り返されていく世界。
 僕はそのことを認識した。
 認識したとたん、この世界での常識は、常識で無くなった。
 今あるのは、ただの矛盾。
 
 
 
「…恭介」
 そのことを知った僕は、すぐさま恭介に相談に行った。
 きっと、恭介なら何とかしてくれるはずで。
 僕の記憶の中の恭介は、いつも、そうしてくれていたんだ。
 …でも、今は。
 信じられる記憶も、無い。
「どうした?」
「あのさ、少し、相談があるんだ」
「ここでいいか?」
「…長くなりそう」
「わかった。じゃあ、昼休みに中庭な」
 この僕の行動には、デジャヴを感じなかった。
 きっと、この世界でのイレギュラーなんだろう。
 きっと、そう。
 その行動だけが、今の自分の存在を定義する物のように感じた。
 
 
 
 それから二時間。
 授業なんて聞いていなかった。
 聞いていても結局は同じ授業だし、何より今の状況のことで頭がいっぱいだった。
「……」
 中庭に、一人向かう。
「…うん」
 恭介が、中庭に立っていた。
 僕はひとつ深呼吸をすると、前へと踏み出す。
「理樹か」
「うん…」
「…どうした?」
 いつもと変わらない日常に戻ったようだ。
 本当に、いつもどおりのよう。
 …でも、ここは、繰り返しの中なんだ。
「恭介、あの…」
「お前は、気付いたのか」
「え…?」
「もう、気付いたのか」
 何の話だ?
 気付いた?何に?
 …この世界の、矛盾に?
「きょ、恭介、どういう…」
「でも、まだ早すぎた」
 僕の話なんて、聞いていない。
 ただ、進んでゆく。
 僕はここにいるのだろうか。
 ふと、不安になった。
「それは、まだ、気付いてはいけないことだったんだ」
「……」
「早すぎた。…本当に、な」
「…恭介…」
「お前は弱すぎる。だから、俺に頼っちまう」
「…どうして…?」
「それを自分で乗り越えて、自分で歩いていけるようにならなくちゃいけない」
「…ここは」
「理樹…。頼んだぞ」
 
 ―――どこ?
 
 瞬間、僕の目の前が黒に染まる。
 いや、黒なのか、それすらも判別が出来ない。
 だんだんと、黒すらも見えなくなってゆく。
 怖い。
 その感情すらも薄れ、ただ、空白へと落ちてゆく。
 僕は今、何を考えていたのだろう。
 僕は今、何をしていたのだろう。
 記憶は無くなり、遠く、暗い中で眠りについた。
 また、繰り返すそのときまで。


[No.628] 2008/10/16(Thu) 18:44:20

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