クラナドリレーSS本投稿スレ - かき - 2006/04/16(Sun) 23:47:39 [No.37] |
└ たぶんこれは第9話 - 海老 - 2006/10/04(Wed) 23:51:40 [No.80] |
└ 遅くてごめんなさい&とりあえずかきさんの伏線は回収... - 春日 姫宮 - 2006/07/16(Sun) 00:56:13 [No.71] |
└ 1分で読み終わる第7話 - 心華 - 2006/05/27(Sat) 16:14:15 [No.58] |
└ 色々と真っ黒な6話 - 翔菜 - 2006/05/12(Fri) 13:19:10 [No.55] |
└ 何も進展のない五話 - イクミ - 2006/04/22(Sat) 20:30:43 [No.49] |
└ ついカッとなって書いた。反省してる第四話 - のど - 2006/04/19(Wed) 11:46:36 [No.44] |
└ 話の大まかな流れを決める3話 - おりびい (代理:かき) - 2006/04/16(Sun) 23:54:13 [No.40] |
└ 第二幕 - 仁也 (代理:かき) - 2006/04/16(Sun) 23:52:44 [No.39] |
└ いち - かき - 2006/04/16(Sun) 23:49:45 [No.38] |
2003年 部屋は散乱していた。 部屋にひとつだけある机の上には読みかけの雑誌、散乱した空き缶。床には脱ぎっぱなしの制服。しかしそんなことには構わず、彼は急いでトイレに入った。 ガサガサっという音。「ふぅー、たすかったー」という声。そして再びトイレの扉が開き、笑顔がこぼれる。 「サンキュー、ガリクソン」 窓をガラガラと開け、その向こうに見える青空に向かってVサインを決めた。 ――本当に呑気な男。 それから、彼は机の上の雑誌を手に取り、パラパラとめくる。雑誌の表紙には、下着姿の女性が描かれていた。 何故か体がカっとして、わたしは思わずぎぎぎ、と音を立てる。今のわたしにはそれしかできないからだ。 「ん?」 彼は音のした、つまりわたしの方を向いた――見た目よりはずっと繊細なのかも知れない――そしてやっとつぶやいた。 「そういえば、僕なんでここにいるんだろう?」 ポリポリと腕をかく。 「どうやったら戻れるのかな?」 それからが大変だった。 彼は、自分のおかれた状況を理解する間に、時計の長い針がくるりと一回まわった。 「つまり、僕は今、僕が高校生だった頃の時間、その頃住んでいた寮にいる……ってことでいいのかな?」 そのとおりだよ、とわたしは彼に言いたかった。 そして謝りたかった。 彼のことも助けることができなかったからだ。 彼とあの人が、不完全な形で世界を遡ることになったのは、わたしの力がもう足りなくなってしまったからだった。 そのせいで、彼とあの人は15年の時を隔ててこころとからだが入れ替わり、わたしは一緒に遊んでいた「人形」の中に――この何もできない体の中にいる。 扉が開く音がした。 「あ、岡崎」 彼はヒンズースクワットを止め、玄関に向けて顔を上げる。 「やあ」 あの人――敢えて呼ぶなら、おとうさん――だった。おとうさんは憔悴していた。瞳の周りには隈がべったりと張り付いている。 そのはずだった。わたしのせいでおとうさんも、いきなり15年後からこの世界にとばされてきたんだから。 ふたりは同じ15年後からやってきた、仲間だった。わたしもそのひとりだった。 でも、きっとふたりともそのことに気付かないまま、この誤った世界を生き続けるのかも知れない。 自分のしたことが、恐ろしかった。 叫んで、本当のことを話して、何度も謝って、そして罰して欲しかった。 おとうさんは暴漢からわたしを庇おうとして、刺されたんです。春原さんは地震が起きて、運悪く落ちてきたトイレの天井に潰されるところだったんです。 またひとりぼっちはいやでした。だから、なにかしたかったんです。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい―― わたしはずっと孤独に耐えて行けばよかったんだ。今までもそうして来たんだから。 ひとを助けるなんて、思い上がりだった。 「なあ岡崎、信じないと思うけど聞いてくれ。多分僕15年後から来た」 「春原お前もか!」 「馬鹿って言わないでくださいねぇっ。これは本当の事なん……ってあれ?」 2018年 「なんだここ。ってうわっ」 突如激しい揺れが彼を襲った。と、同時にぐわん、という、意識を失うほどの大きな音が彼の頭上に響いた。 何がなんだか分からなかったが、何か影が降りてきた気がした。それを反射的にかわした。 いきなり雨が降る。雹が降る。 頭に叩きつけられる水、氷、地面は煙をあげ部屋は真っ白になる。 部屋? 部屋なのに何故雨が降るのか? 気が付くと、がれきの中に彼の体は埋もれていた。 目から5cm――いや3cmのところに、鈍い光を放つ棒があった。先ほどの影はこれだったのか。 「ははっ。人にこき使われて神経のすり減った大人だったら、これであの世行きだったかも知れないけどなっ」 とりあえず笑ってみる。たちまち口の中に砂が入り、彼はむせた。 「げほっ、げほっ。これ、ひょっとして今でもピンチ?」 何故だか分からないけれど、ズボンもパンツも足下に落ちていた。びしょ濡れで。 [No.71] 2006/07/16(Sun) 00:56:13 |
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