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季節は冬めき、いよいよ全ての葉っぱが路上に落ちようかという今日この頃。 気温もだんだんと下がり始め、同時に防寒具も必須になり始める時期になりつつあった。 かくいう僕も寒さを凌ぐ為に座布団の代わりに布団の上に座って暖をとり、みかんを食べながらテレビを見ていた。 僕と鈴が住んでいるこの部屋には炬燵やストーブなどの暖をとることの出来る電化製品はなく、ブランケットや毛布で暖まるしかない。 鈴は寒がりだから炬燵を欲しがっているけれど、如何せん今の僕達の懐事情は木枯らしが吹きつける物寂しい冬のような状況が現状だったりする。 財政の一途は悪化とはいかないまでもどうにも余裕が見受けられる兆しというものがない。 だから仕方なしに僕達は炬燵やらストーブには頼らずこの冬を過ごしていかなければならない。 そう考えると懐だけではなく心も寒くなっていくように思えた。 現実逃避。 僕は取り敢えず当面のお金の工面は頭の隅に追いやってそのまま布団に寝転んだ。 「おぎょーぎが悪いぞ、理樹」 我が家の財政難について考えあぐねていると横から鈴の注意を受ける。 僕の行動に腕を組みながら半眼を投げる鈴。 僕にそう言いつつも鈴は僕の隣に寄り添って同じようにぐうたらとしている。 同じような体勢だからあんまり強く人のことは言えないし、家事で疲れているのは分かるけれど人に注意するときくらいはもう少ししゃんとして欲しいかなあ、なんて思ってしまう。 「鈴も食べる?」 「いらん。というかお前、あたしがみかんをあんまり好きくないのを知ってて言ってるのか?」 僕は咄嗟にみかんを差し出すことで話を反らそうとしたけれど、逆に鈴の機嫌を損ねてしまったようだ。 が、言葉ではそう言いつつも僕の方へとぐいぐい体を押し付けてくるという事は構って欲しいことの表れなんだろうか。 分かりやすい反応だなあなんて僕は思わずくすりとにやけ、自惚れてしまう。 視線を巡らすとテレビに映し出されている映像が目にとまった。 映っているのはありきたりなバラエティー番組。 僕、こういうベタな番組嫌いなんだけどなあ。 と思ったけど、他のどの番組もつまらないし。 無音と言うのも寂しいし、生活音を取り入れるためにも仕方がないから点けている。 僕は残ったみかんを口に放り込み、既に剥き終わった皮をゴミ箱に投げ捨てた。 へたったみかんの皮は綺麗な放物線を描いてゴミ箱の中へと消えていった。 「ん〜」 一方の鈴はというと布団の上をごろごろと転がっていて時折僕の方へと体を押し付けてはまた転がり始める行動を繰り返している。 「ところでさ、鈴。さっきから何やってるの?」 「うみゅ?」 ごろごろと転がっていた鈴は僕の声に動きを止めた。 シーツは既にしわくちゃになっていて大半は敷き布団から剥がれている。 アイロンをかけるのは鈴だけど、流石にもう直ぐ寝るだろう場所を荒らされてはどうにも居心地が悪い。 なので、なるべく転げ回る行為を止めて欲しいと婉曲に言おうとしたら鈴の方から意外な返答が返ってきた。 「ああ、いやされてる」 「癒されてる?」 胸を張って鈴はなぜか誇らしげに告げる。 いや、僕の目にはただ布団とじゃれているだけにしか見えないんだけども。 それでも鈴はどうだと言わんばかりの様子を崩さない。 「って、ここは僕の布団でしょ」 「そーだ」 よくよく見てみると鈴の布団の位置は変わっておらず、僕がいる布団はもう既に荒涼たるものとなっていて、僕の枕なんかは押し潰されそうなほど鈴が抱きしめていてこれまたなかなか凄惨な状態だった。 「布団が恋しいのは分かるけど自分の布団で癒されてね」 「いやだ」 「またなんだって…」 鈴は僕の言うことは聞かずそのまま布団に顔を埋める。 僕の布団なだけに鈴の頭を埋める行為はなんだか見ていて気恥ずかしかった。 「…言わなくちゃダメか?」 その一言がこの場の空気を変えたのだろうか。 先程までの様子とは一変した鈴に僕は訝しさを感じるも、鈴の問いに僕は首を縦に動かし首肯する。 だって僕は訳を知りたい訳だし。 きちんとした理由があれば僕だって鈴に怒ることは無いのだから。 鈴は視線を泳がせ、うろたえている。 それでも鈴は追憶を想い起こしながら、ぽつりぽつりと経緯を零し始めた。 「今日はあたしが一人で布団を干そうと思ったんだ」 「うん」 「理樹はいつも仕事で忙しいし、たまにはあたしがやらなきゃって思った」 鈴と僕とで家事分担をする。 一緒に暮らすと決めて当初に決めた約束だった。 基本的な家事は鈴がこなして、時間が余ったり男手を要するだろう作業は僕がこなす。 かさばった布団は重くはないけれど運び辛いという理由で布団干しは鈴の代わりに僕が引き受けていた。 「でも、出来なかった」 「どうして?」 鈴は泣きそうな顔で僕を睨む。 そこまで言わせるのか、と言いたげな表情だった。 だけど、僕は鈴の考えが皆目見当もつかない。 僕には黙ることで鈴の発言を促すことしか出来なかった。 鈴は何も言えずにただ口を何度か開けたり閉じたりを繰り返す。 僕は鈴が口にしてくれるのをただ只管に待つ。 もどかしく、歯痒く感じる時間だけが過ぎていく。 どれくらい経った時だろうか。 小さく息を吸い込む鈴の声が聞こえた。 「理樹の、匂いがしたから。あたまがまっしろになって、からだがしびれて…」 「あ――」 「なんかめちゃくちゃいい匂いで、それからはもうくちゃくちゃで――うぅ……何言わせるんじゃぼけー」 「わぷ」 鈴は抱きしめていた枕とは別の近くにあった枕を僕に投げつける。 ただ力が入らなかったせいなのか、枕は僕の顔面にゆっくりと当たっただけで済んだ。 先程の鈴の一言に図らずも赤面してしまった顔を隠すことに関して言えば、投げられた枕はちょうど良かったのかもしれない。 僕は枕を顔に押し付ける。 「あ、これ、ちょっと分かるかも」 「……何がだ?」 ふと僕はあることに気付いた。 鈴が抱いている枕は僕の枕。 つまりは、投げられた枕は僕のじゃなくて鈴がいつも使っている枕で。 埋もれている最中、僕は鈴と同じように鼻を利かせた。 「鈴の枕。ちゃんと鈴の匂いがする」 「あ……うぅ…」 照れる鈴をよそに鈴の香りをたっぷりと堪能する。オーデコロンのようないい匂いは鼻孔を通して僕を蝕んでいくような錯覚すら覚えた。 鈴は恥ずかしさのあまりか僕の枕に顔を埋めている。 隙間から見えた真っ赤に染まった顔を見て、僕は先程の自分が言った言葉を思い返して先程以上に、もっと言うならば今の鈴と同じくらい赤く頬を染める。 鈴と目が合う。視線は次第に絡み合い、艶やかささえ帯びているようにさえ感じた。 蕩けた瞳は僕だけを映し、時同じくして潤み始めた瞳は僕に何かを訴えているかのように思えて。 「ん…」 「んぅ……ふ…」 どちらからともなく自然と僕達はキスをした。 唇を押し付け合う少し荒っぽい口付け。 もっと互いの匂いを感じれるように僕は鈴の頭を自分の方に引き寄せる。 鈴も僕の首の後ろに手を回して離すまいとしているのが感触で分かった。 それでも物足りなく感じ始めていた僕は少しだけ開いていた鈴の唇に舌を入れた。 「んっ……はむ…」 鈴は驚いたのかくぐもった声を上げる。 そんな鈴の非難を無視して僕は鈴の舌を探り当てそのまま絡めた。 鈴はどうやら観念したらしく、この状況下に関して怒ることも咎めることさえもせずに僕の舌を受け入れ始めたのが霞みがかった頭の中でも理解出来た。 淫らな水音がお互いの情欲を高め合い、唾液が唇の端から流れ落ちていることに構わず遮二無二になって僕らはキスを続けた。 しばらくキスを続け、再び唇を離したのはいつのことだっただろうか。 銀色の唾液の橋が艶やかに輝き、まるで名残惜しむかのようにゆっくりと消えていった。 よくよく見ると、今更ながら僕が鈴を押し倒しているような体勢をとっていることに気付く。 鈴も今の僕達の体勢に気が付いたようでばつが悪いような表情で僕を睨む。 耳まで真っ赤にしちゃってまあ。 「…理樹、テレビ消さないのか?」 恥ずかしさ故からか、鈴は点けっ放しになっていたテレビに視線をやることで僕の注意を反らそうとしている。 相変わらずも陳腐な番組を垂れ流していたテレビをちらと一瞥。 適当に回し見をしていたから、チャンネルは手の届くところにあった。 鈴に向けている視線は決して外さずに手探りでチャンネルを探し当てスイッチを押す。 ぷつり。 何かが切れたような一瞬の電子音の後にはこの状況を妨げるものは何一つ無くなっていた。 ぷつん。 何一つ無くなったことをいいことに僕は理性を引き千切る。 僕は鈴の髪を手櫛で梳いてやりながら時折自分の方へ持って来てはその髪にキスをしたり鼻を押し当てたりした。 「なんか、今の理樹はすごくえっちぃな」 「うーん。ただ今は長く堪能していたいし、ね」 「…理樹のすけべ」 「すけべな僕は嫌?」 「やじゃないに決まってるだろ。ぼけぇ」 言っていて悔しいのか、頬を膨らます鈴。 額と頬にそっと口付けをし、鈴を宥めた。 鈴は黙って僕の行動を享受する。 顔が綻びつつあることをいいことに僕は鈴の服に手をかけた。 「って、いつの間にお前あたしの服を脱がしてるんだっ」 「えー…だって嗅ぐ時に邪魔だから」 「嗅ぐとか言うな! もっと歯に衣着せて言え! そこに鼻を押し付け――――んぁっ」 だってもっと女の子特有の、鈴の匂いを楽しみたいから。 僕は柔らかくていつまでも触れていたい心地にさせてくれる鈴の肌に直接鼻を押し当てる。 そういえば今まで致している時は互いの匂いのことなど考えもしなかった。 気が付いてみればこの甘い痺れにも似た甘美さはなるほど癖になりそうだった。 しばらくの間鈴の匂いを嗅いでいた僕は、一度断ち切った理性の残滓を敢えて自らの手で完膚なきまでに砕いた。 もっと余すことなく鈴の匂いを感じるため、そして僕の匂いを感じさせるために。 ただそれだけを本能に僕はもう一度鈴の唇を奪った。 [No.731] 2008/11/28(Fri) 03:09:32 |
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