![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
新しい願望が目覚める。 女神の永遠の光が飲みたくて、 夜を背にし、昼を面にし、 空を負い、波に附して、 わたしは駆ける。 (『ファウスト』第1部より) 天球の外 リキ、おじいさまから新しい望遠鏡を買ってもらいました! 今晩、一緒に星を観ませんか? そう言ってリキを誘い出した。待ち合わせは午前2時、屋上で。 もちろん後日に佳奈多さんや井ノ原さんたちとも天体観測しようと思っているけど、やっぱりいの一番に好きな人と2人きりで星を観たかった。 寮の部屋、値段を訊くことが憚られるような立派な望遠鏡を前にして、私はもしかしなくてもケチな人間なのでしょうかと何度も自問自答したけれど、そのうちそんな罪悪感などどうでもよくなった。こんなことでぐじぐじ悩むなんてちっぽけだ。 まぁ、これぐらいのわがままならいいでしょう。わふ。 ……何がいいの……クドリャフカ? 早く寝なさい……ふぁ…… あ、ごめんなさい佳奈多さん……おやすみなさい。 ……おやすみ……クドリャフカ…… 電気を消し、一旦ベッドに潜り込む。佳奈多さんが寝付くのを待ってから、望遠鏡を小脇に抱えて外へ出た。想像以上に寒かったので、マントは3重に羽織った。 待ち合わせ場所に、リキはまだ来ていなかった。 深い深い群青色の空を見上げると、月がちょうど真上にあった。周囲には僅かばかりの雲が漂う。 季節によるものか、いつもより空が高く、丸く見える。空そのものが魚眼レンズになったみたいに。 月を頂点にした、巨大なプラネタリウム。 空の限界が見て取れるのに、その先の宙だって見えるのに。 天球はいつもより巨大な、重みのある姿を、私の前に晒していた。 ――それに圧倒されながらも、私は心に別の空を思い浮かべていた。 それは、私が恭介さんに消去された時の、偽物の夜空。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ こんな時間に呼び出して済まない。なんで呼んだかは――もうわかるよな はい 理樹と結ばれた。良かったじゃないか。 それでもう……十分だろう? いいえ 諦めきれないのか? コスモナーフトが? はい そう言っても、もうこの世界はまもなく終わる。 それに、能美がコスモナーフトになりたいといっても、見通しはあるのか? そうじゃないんです。叶う叶わないの話ではないんです。 だって、わたしは…… ――そう、わたしは。 コスモナーフトに、なりたいんです。 たとえそれが遠い道のりでも。絶望的であろうとも。 それが私の見つけた道標、星座なのです。 コスモナーフトになって何がしたいか、なんて、今はまだわからないけど。 それでも、私の方角は、今まで私の人生に関わった人たちが示してくれました。 もう、お母さんも、お父さんも、おじいさまも関係ないのです。 ――私だって、何度もそのことを諦めようとしました。 そして世界は繰り返されていきました。 でも、私自身がどんなにそのことから逃げようとしても、いずれ私はそこに戻ってきた。 どんなに世界が繰り返しても、結局私は、コスモナーフトになりたい私だった。 その命尽きるまで、コスモナーフトの方角へ進め。 私の内側から、何かが――そう促してくるのです。 そこまで一息に言い切った。 恭介さんは依然厳しい目を私に向けていたけれど、やがて訥々と言葉を口にした。 あっちの世界――要するにバスの事故現場だが…… ようやく俺自身がどこに居て、出来ることはなにか、どれくらいの時間で死ぬのか、どれくらいなら動けるのか、目測がついてきた。 もし。もしもだ。万に一つ。 俺たちが、能美が助かるのなら。 いや、もう助からなくたって。 その標、見失うなよ。 もちろんです。 背筋を伸ばし、恭介さんを、そしてその背後にある天球の外を、しっかりと見据えた。 そして、私は消えた。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 深呼吸を何度かしているうちに、大好きな人の足音が聞こえてきた。 こんばんは。いい夜だね、クド。 わふ。お待ちしていましたのです。 ――あの偽物の空を見なくなってから、何ヶ月が経っただろうか。 目の前の天球は、相変わらず、ひたすらに大きく、その果ては遠い。 それでも。 私は、もう迷わない。 いつからか見つけた、天球の外の星座に向かって、私は駆ける。 [No.781] 2008/12/13(Sat) 00:27:48 |
この記事への返信は締め切られています。
返信は投稿後 30 日間のみ可能に設定されています。