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all クラナドリレーSS本投稿スレ - かき - 2006/04/16(Sun) 23:47:39 [No.37]
たぶんこれは第9話 - 海老 - 2006/10/04(Wed) 23:51:40 [No.80]
遅くてごめんなさい&とりあえずかきさんの伏線は回収... - 春日 姫宮 - 2006/07/16(Sun) 00:56:13 [No.71]
1分で読み終わる第7話 - 心華 - 2006/05/27(Sat) 16:14:15 [No.58]
色々と真っ黒な6話 - 翔菜 - 2006/05/12(Fri) 13:19:10 [No.55]
何も進展のない五話 - イクミ - 2006/04/22(Sat) 20:30:43 [No.49]
ついカッとなって書いた。反省してる第四話 - のど - 2006/04/19(Wed) 11:46:36 [No.44]
話の大まかな流れを決める3話 - おりびい (代理:かき) - 2006/04/16(Sun) 23:54:13 [No.40]
第二幕 - 仁也 (代理:かき) - 2006/04/16(Sun) 23:52:44 [No.39]
いち - かき - 2006/04/16(Sun) 23:49:45 [No.38]


たぶんこれは第9話 (No.37 への返信) - 海老

 ごゆっくりどうぞ。
 店員はそう言い残すと、踵を返し店の奥へと戻っていく。壁際に位置したテーブルの上にはコーヒーが三つ。それぞれが手を伸ばし、取り敢えずは喉を潤した。
「久しぶりだな。宮沢」
「お久しぶりなの」
「お久しぶりです。坂上さん、ことみさん」
 お昼には少し早いくらい。そんな、どこかのんびりとした一時に、智代、ことみ、有紀寧の三人は、とあるオープンカフェに集まっていた。
 快活な青空の下、三人の横目に映るテラス席がぽつぽつと賑わいをみせている。
「二人とも知り合いだったのか?」
 外とは打って変わり人気のまばらな店内。智代の声に応じて、ことみと有紀寧は顔を見合わす。
「お会いするのは今日が初めてですね」
「私も初めましてなの。えっと……」有紀寧です。とタイミング良く合いの手が入る。「有紀寧ちゃん。私はことみ。ひらがなみっつで、ことみ。呼ぶ時はことみちゃん」
「初めまして、ことみさん」
 言いながら微笑む有紀寧とは対称に、ことみの笑顔は小さく歪む。
「有紀寧ちゃんは」瞳をうるうるさせながら有紀寧を見る。「いじめっ子?」
「いえ、ことみさんは年上ですから」
「それなら私も『有紀寧さん』って呼ぶの」
「わたしは年下ですよ」
 そう、やんわりと答える有紀寧。「うー」と駄々でも捏ねるようにじたばたすることみ。
 それを見る智代は、頬杖を付きながら呆れ顔を浮かべる。
 ――『お久しぶり』から入ったのは会話の流れのためのご都合主義、ということにしたとしてもだ、
「年上の方には正しい敬称が必要ですから。ね、ことみさん」
 じたばた、うーうー。
 ……この二人、本当に年下(年上)なんだろうか――。
 と、智代はそこまで考えると、わざとらしく咳払いを一つ。仕切り直しでも図るかのように二人の顔を見る。
「二人とも、そこら辺でいいか。早めに本題に入ってしまいたいんだが」
「……そうだったの」思いだしたようにことみ。
「朋也さんのお話、ですか」笑顔のままに有紀寧。
「ああ。まずは現状を宮沢に説明したいと思う」





 たぶんこれは第9話。





「――というのが数日前の出来事で、一応、私とことみは朋也ハーレム化計画に参加していることになっているんだ」
「そんなことになっていたんですか……」
 智代はああと頷きつつ、ふうとため息も一つ。まあ、それもそのはず。『朋也の現状の説明』なんて面倒にも程がある。それこそ、タイトル挟んで省いてしまいたくなるくらいに。
「じゃあ、今日わたしをここに呼んだのは、わたしもそのグループに――という事なんでしょうか?」
「いや、そうではないんだ。ことみ、ここから頼む」
「わはっはほ」
 いつの間に頼んでいたのやら。ほぐほぐとアップルパイを口いっぱいに含みながら、ことみが智代と席を入れ替わる。
「けふろ……」含んでいた物をゴクンと飲み込み、何でもなかったように話し出す。「結論から言ってしまうと、智代ちゃんに有紀寧ちゃん、それに私を加えたこの三人で手を組んでほしいの」
 有紀寧が一瞥した先で、こくりと智代が頷く。
「正確に言えばことみと私はすでに同盟済みだから、あとは宮沢だけという事になる」
「……ことみさんと坂上さんは、ハーレム化計画の一員ではないんですか?」
「宮沢、それはあくまで『一応』だ。私とことみはハーレム化計画に入った翌日には、もう二人で同盟を組んでいる」
 ふふふ、とどこか恍惚とした表情でカップを目の前に持ち上げながら、そんなことをのたまう智代。あの智代さん、コーヒーが微妙に残ったままカップを回されるのはどうかと存じますが。
「まあ、表面上はあちらにも所属し続けるつもりだ。あんなチームに何か出来るとも思わないが……戦いに敵の情報は必要不可欠だからな」
 妙な重さを持った智代の言葉。無意識に有紀寧はつばを飲み込む。
「それに」アップルパイの最後の一切れを含んで、ことみが続ける。「この三人はすごくバランスがいいの。有紀寧ちゃんが遠距離のおまじないが使えて、智代ちゃんは接近戦も可能。そこに私の知識や兵法を組み込めれば隙はなくなって――間違いなく、勝率は全グループ中最高値になるはずなの」
「理論上の問題は何一つなし。どうだろうか、宮沢」
 ことみ、智代。二人の視線が有紀寧へと集中する。
 すっと張り詰めていく空気。今まで聞こえていなかった時計の針の音までが、有紀寧の耳に飛び込んでくる。
 瞳を閉じ、ゆっくりと有紀寧は考える。
 ――手を組んでしまっていいのだろうか。そもそも全グループとは他にどれくらいあるのか。理論上とは言うものの、ペナントレース開始前のプロ野球の順位予想のように、最後には無かったことにされてしまうのではないか。私のおまじないの情報はどこから。兵法を一体何に使うのだろう。というか、あっさり『一応』と言い切ってしまうようなグループと手を組んでいいものか。でもだからといって自分一人、どことも手を組まずに朋也さんの奪取は可能なのか――。
 逡巡よりも長い思考の果て、深呼吸のような深い吐息ともに、有紀寧はゆっくりと瞳を開ける。


 ――悩んでは、いけない。


 恋は戦い、愛は死合。
 恋は愛のために、愛は恋のために。
 こんなところ、悩むことが必要な場面じゃない――。
 有紀寧は二人それぞれに視線を送り、すっと頬を緩ませた。
「一緒に頑張りましょう。智代さん、ことみさん」
 綻んだ有紀寧の笑顔が、波紋のようにことみと智代にも広がっていく。
「よかったの。有紀寧ちゃんならそう言ってくれると思っていたの」
「――よし。これで役者は揃ったな」

 



 かくして生まれた新同盟。
 あのハーレム化計画の翌日。何かと忙しい身――で、いなかったはずのことみと智代は、実は裏で手を組んでいた。
 そして、そこに有紀寧が新規メンバーとして参入。
 その実力はどれほどか――。
 正直、現時点では予想できないので、続きはWEB、今後のお話の中で。


[No.80] 2006/10/04(Wed) 23:51:40

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