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〜雨の中の待ち人〜 しとしとと雨が降っている空には分厚い雲が立ち込めていて見た限り晴れることはないと思う。 「こんな日って気持ちが沈むわ…」 誰も聞こえないくらいの声で呟いた。 「はぁ…」 溜息まで出てしまった。 「早く来なさいよ…もう…女の子に待たせるなんてどうなのよ…」 周りを見ると雨が降ってるのに小学生くらいの小さな子が傘をさしながら遊んでいた。 傘がクルクルと回っている。 赤、緑、白、黒、青…いろいろな色が回っている。 こんなに傘が綺麗とは思ったことはなかった。 「でも、本当にこんな天気の悪い日なのに元気よね…私もそんな日があったのかしら…」 気づけば私はなに年寄り臭いことを言っているのかしら… 「ははは…」 なんか一人で笑っているのも悲しい。 やっぱり私の隣にはまだあいつは来ていない。 あいつがいないと調子が上がらないような気がしてたまらなくなる。 「でも…私が来たのが早すぎたのかしら?」 腕時計を見たら待ち合わせの時間より時計の針が一回りくらい出来るくらいだからしかたがない。 「でも…こんなに人を待つことが楽しいなんて思ったことはないわね…」 私の目の前を通る人はみんな傘をさしていて、仕事に行くような人、遊びに行くような人、沢山の犬を連れて散歩している人、コンビニの袋を持っている人、沢山の人がいて見るのが飽きることがない。 「犬か…飼うならストレルカかヴェルカみたいな犬がいいわね。猫なら鈴さんと一緒に居るような可愛いのがいいかも…ドルジだけはちょっと嫌だわ…」 寮では動物は飼えないけど、将来は動物を飼ってみたい。 小さくても、大きくてもどっちでも良いけど、可愛いくて、出来れば毛がふわふわなの良いと思うんだけど… そんなことを思っていたら、目の前に人が通った。 その人の手には数冊の本が抱かれている。 この近くにある図書館から借りたのかな… 雨に濡れないように大切に持っている。 「なんの本かしら?私もたまには読書でもしてみようかな。最近全く本なんか読まないし…探せば面白い本が見つかるかもしれないわ…」 絵本…? もう高校生だし… 他になら国語の教科書に出てるような日本文学小説もいいわね。 夏目漱石、太宰治、宮沢賢治、森鴎外… 有名どころも久しぶりに読んでみようかしら。 読んだことはないけど海外文学小説もあるかな。 メーテルリンク、アンデルセン、ルイス・キャロル… 知ってる作家は童話作家くらいみたい… あ…でも学校にも図書室あるし、そこで見つけてもいいわね。 ふと車道に目をやってみるとバスが来ていた。 沢山の人が出たり、入ったりしていた。 「あの人、どこに行くのかしら?」 バスに乗った人の中にアタッシュケースを持ってる人がいた。 アタッシュケース持っているんだから遠くに行くと思うんだけど… 行き先は国内? それとも国外? この冬の時期に寒いところなんて行かないと思うけど、暖かいところかしら? 今テレビでも韓流ブームだから韓国? でも、韓国は日本と変わらないところにあるから日本と寒さは変わらないと思うし、それに韓国は本場のキムチとかで体を温めるのかしら? 考えれば私は生まれて一度も海外に旅行に行ったことがない。 死ぬまでには海外旅行もしてみたい。 フランス、イギリス、アメリカ、日本の何倍も寒いかもしれないけどロシア、アメリカ、近場なら中国…良い思い出を作れるならどこでも良いかもしれない。 国外の旅行じゃないとしたら、年末だから帰省するのかしら… 私も実家に帰った方がいいのかも… でも葉留佳が帰るなら帰っても良いけど、直枝が残るなら残ろうかな。 そんなことを考えているとバスはいつの間にか出ていた。 再び腕時計を見てみたら待ち合わせの時間まで針が少しでたどり着くくらい。 「あと少しみたいね…」 時計から目を離して小さく息をすると白くなっていた。 「息が白い…気づかなかったけど寒くなってたのね…」 待ち始めてから時計の針が一回りするくらいなんだから気温が変わることがあるかもしれないのは仕方がないと思う。 「厚着はして来たつもりなんだけど、寒いわね。カイロでも買ってくればよかったわ。」 片手はポケットに入れたけど片手は傘をさしているから入れることができないからだんだん冷たくて手が赤くなってくる。 ぱしゃぱしゃと水が切れるような音が近づいてくる。 「ご、ごめん…待った?」 傘を上げると直枝が走ってきたみたいで白い息を吐きながら立っていた。 「もう…走ってこなくてもいいように来なさいよ。」 溜息混じりに言うと直枝は苦笑していた。 「でも、寒くなかった?ほら。」 もう、なんでこんな恥ずかしいことが出来るのかしら… 顔が赤くなってることが自分でも分かるくらいだったけど、直枝は気づいていないようだった。 私は直枝と手をつないだ。 直枝の手は温かかった。 雨の中長い時間待ち続けるのは嫌だけど、好きな人を待っているのはそんなに嫌ではないということを思った。 「二木さん、どこに行きたい?行きたいところがあるならそこに行こうよ。」 直枝はニコッと笑いながら私に聞いてきた。 「そうね…」 確かに雨の日は雲が厚く掛かって気持ちが沈むかもしれない。 でも、雨の日に、好きな人を待つのは嫌ではないって思った。 そして私はこう答える… 『直枝の隣ならどこでもいいわよ?』 [No.869] 2009/01/10(Sat) 00:06:30 |
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